- 「ブロック線図の問題が出ると、箱と矢印がごちゃごちゃして何をすればいいかわからない…」
- 「伝達関数って聞くだけで身構えてしまう。ラプラス変換とか出てきたらお手上げ…」
- 「G/(1+GH)の公式は知ってるけど、なぜこうなるのかが理解できなくて応用が効かない」
- 伝達関数とは何か?=「入力を何倍にして出す箱」と理解するだけでOK
- ブロック線図のルール=箱・矢印・加え合わせ点・引き出し点の4つだけ
- 直列=かけ算、並列=足し算、フィードバック=G/(1+GH)の3公式を「工場のベルトコンベア」で直感理解
- 電験三種の過去問(H30問13, H25問13, R5下問18)で確実に5〜10点取る手順
電験三種の機械科目で、「ブロック線図」の問題が出た瞬間、思わずページをめくって次の問題に逃げた経験はありませんか?
安心してください。ブロック線図の計算問題は、実はたった3つのパターンしかありません。「直列」「並列」「フィードバック結合」の3つです。この3つの公式さえ覚えれば、どんなに複雑に見える図でも、順番に箱をまとめていくだけで答えが出ます。
この記事では、伝達関数とブロック線図の基礎を「工場のベルトコンベア」に例えて、すべて図解で説明します。数式が苦手な方でも、「なぜかけ算なのか」「なぜG/(1+GH)になるのか」が直感的にわかるようになります。
目次
伝達関数とは?|「入力を何倍にして出す箱」
伝達関数(でんたつかんすう)とは、ひとことで言えば「入力を受け取って、何倍にして出力するか」を表す数式のことです。
工場のベルトコンベアで考えてみましょう。
🏭 工場のベルトコンベアのイメージ
あなたの前に「加工マシン」が1台あります。
・左から原材料(=入力)が入ってくる
・マシンの中で加工される
・右から製品(=出力)が出ていく
このマシンが「原材料を何倍の製品にするか」が伝達関数 G(s)です。
G(s):伝達関数(入力を何倍にして出力するかを表す関数)
X(s):入力(ラプラス変換後)
Y(s):出力(ラプラス変換後)
伝達関数 G(s) の中身は、実際にはs(ラプラス変換の変数)を含む分数式ですが、ブロック線図の計算では中身を気にする必要はありません。「G」「H」「G₁」「G₂」のようにただの文字として扱い、かけ算・足し算をするだけです。電験三種のブロック線図問題の9割は、G(s)の中身を展開しなくても解けます。
「伝達関数って、結局アンプのゲインみたいなもの?」と聞かれることがあります。まさにその通りです。アンプに1Vの信号を入れて10Vが出てきたら、そのアンプの伝達関数は「10」。入力を10倍にする箱、それが伝達関数の本質です。

ブロック線図の基本要素|覚えるのは4つだけ
ブロック線図とは、制御システムの信号の流れを、箱と矢印で表した設計図のことです。工場のベルトコンベアの配置図と思ってください。どこから原材料が入り、どのマシンを通り、どこから製品が出るかを一目で見えるようにしたものです。
ブロック線図に登場する要素はたった4つです。
| 要素 | 図の形 | 意味 | 工場で言うと |
|---|---|---|---|
| ブロック (箱) |
G(s)
|
入力を受け取り、伝達関数G(s)倍して出力する「加工マシン」 | 🏭 プレス機、塗装機など各工程の加工マシン |
| 矢印 (信号線) |
→ | 信号の流れる方向を示す。矢印の上に信号名を書く | 🔄 ベルトコンベア(材料を次のマシンに運ぶ) |
| 加え合わせ点 |
±
|
2つ以上の信号を足す(または引く)点。+か−の記号が書かれる | 🔀 2本のコンベアが合流する地点(材料の混合) |
| 引き出し点 | 信号を分岐させる点。同じ信号が2方向に流れる(信号はコピーされる) | 📋 製品をそのまま出荷しつつ、一部を品質検査に回す分岐点 |
「加え合わせ点」と「引き出し点」を混同しやすいので注意してください。
・加え合わせ点=2つの信号が「合流」する(足し算・引き算)→ 大きな丸に±が書いてある
・引き出し点=1つの信号が「分岐」する(コピー)→ 矢印の途中にある小さな黒丸
加え合わせ点は「合流」、引き出し点は「分岐」。この対比で覚えましょう。
🏭 ブロック線図を工場の配置図で理解する
ここまでの4要素を使って、1つの工場ラインをブロック線図で表してみましょう。
−
この図が読めれば、ブロック線図の基本はマスターです。次から、いよいよ3つの結合パターンを1つずつ解説します。

パターン①:直列結合|箱が並んだら「かけ算」
🏭 直列=ベルトコンベアで加工マシンが一直線に並ぶ
直列結合は、ブロック(箱)が一直線に連なっているパターンです。1台目のマシンの出力が、そのまま2台目のマシンの入力になります。
工場で言えば、「プレス加工 → 塗装」のように工程が直列に並んでいるラインです。
【直列結合のブロック線図】
🧠 なぜ「かけ算」になるのか?
具体的な数字で考えてみましょう。
🏭 具体例:原材料 1kg を2台のマシンで加工する
・マシン① G₁ = 3(入力を3倍にする)
・マシン② G₂ = 5(入力を5倍にする)
① 原材料 1kg がマシン①に入る
② マシン①の出力 = 1 × 3 = 3kg
③ この3kgがマシン②に入る
④ マシン②の出力 = 3 × 5 = 15kg
全体としては:1kg → 15kg → つまり15倍
全体の伝達関数 = G₁ × G₂ = 3 × 5 = 15
1台目の「倍率」に2台目の「倍率」をかける。それだけです。3台、4台と増えても同じ。全部かけ算するだけです。
箱が n 個直列に並んでいたら → G全体 = G₁ × G₂ × G₃ × … × Gn
等価変換前
等価変換後
直列=直(ちょく)=直(じか)にかける=かけ算。マシンが直列に並んでいたら、倍率を直にかけていくだけ。

パターン②:並列結合|箱が分かれて合流したら「足し算」
🏭 並列=同じ原材料を2台のマシンで同時に加工して、結果を混ぜる
並列結合は、同じ入力が2つ(以上)の箱に同時に入り、それぞれの出力が加え合わせ点で合流するパターンです。
工場で言えば、「同じ原材料をAラインとBラインで同時に加工して、最後に合流させる」イメージです。
【並列結合のブロック線図】
🧠 なぜ「足し算」になるのか?
🏭 具体例:原材料 1kg を2ラインで同時に加工する
・Aライン G₁ = 3(入力を3倍にする)
・Bライン G₂ = 5(入力を5倍にする)
① 同じ原材料 1kg がA・B両方のラインに入る
② Aラインの出力 = 1 × 3 = 3kg
③ Bラインの出力 = 1 × 5 = 5kg
④ 合流地点で合体 = 3 + 5 = 8kg
全体としては:1kg → 8kg → つまり8倍
全体の伝達関数 = G₁ + G₂ = 3 + 5 = 8
同じ入力をコピーして2台に送り、それぞれの出力を合流させるだけ。だから足し算になります。
※加え合わせ点の符号が「−」の場合は引き算:G全体 = G₁ − G₂
等価変換前
等価変換後
並列=並(なら)んで流れる=足し算。2本のラインが並んで流れて、最後に合流。合流したら出力を足すだけ。

パターン③:フィードバック結合|最重要の G/(1+GH)
🏭 フィードバック=製品を検査して、品質のズレをラインの先頭に戻す
フィードバック結合は、出力の一部を検査マシン H(s) に通して、入力側に戻すパターンです。これがブロック線図の問題で最も頻出のパターンです。
工場で言えば、「完成した製品を品質検査マシンに通し、その検査結果(不良率など)を生産ラインの先頭にフィードバックして、投入量を調整する」イメージです。
【フィードバック結合のブロック線図】
🧠 なぜ G/(1+GH) になるのか?|丁寧に導出する
ここが最も重要なポイントです。公式を暗記するだけでなく、なぜこの形になるのかを順番に追いましょう。使うのは中学の連立方程式だけです。
📝 導出ステップ
【ステップ1】各ブロックの関係を式にする
ブロック線図を見て、矢印の流れ通りに式を書くだけです。
式① 加工マシンの出力:Y = G × E(偏差Eを入力してG倍した結果がY)
式② 加え合わせ点の偏差:E = X − HY(入力XからフィードバックHYを引いた差)
【ステップ2】Eを消す(式②を式①に代入する)
式①のEに式②を代入:
Y = G × (X − HY)
【ステップ3】展開してYについて解く
Y = GX − GHY
Y + GHY = GX
Y(1 + GH) = GX
Y/X = G / (1 + GH)
G:前向き(フォワード)伝達関数
H:帰還(フィードバック)伝達関数
※ 加え合わせ点が「−」(負帰還)の場合は分母が 1 + GH
※ 加え合わせ点が「+」(正帰還)の場合は分母が 1 − GH
電験の問題では、加え合わせ点の符号を見落とすと即失点します。
・加え合わせ点に「−」がある → 負帰還 → 分母は 1 + GH(プラス)
・加え合わせ点に「+」がある → 正帰還 → 分母は 1 − GH(マイナス)
「マイナスで戻すからプラスで足す」と一見ややこしいですが、負帰還(−で戻す)は安定化させる制御なので、分母が大きくなる(1+GH)と覚えてください。出力が小さくなる=安定する、という直感です。
🏭 工場の品質管理でフィードバック結合を理解する
🏭 具体例:製品を検査して投入量を調整する工場
・お客様の注文(入力 X)= 100個
・加工マシン G = 作り出す力(倍率)
・検査マシン H = 「完成品のうち、何割を検査に回すか」
フィードバックなしだと、マシンは注文100個に対してG倍の操作をする。
フィードバックありだと、すでに完成した分を差し引いてから作るので、作りすぎない。
この「作りすぎない仕組み」こそが G/(1+GH) の意味です。
分母の 1+GH は「フィードバックで抑えられる量」を表しています。
フィードバック =「G を 1+GH で割る」。分子にGを書いて、分母に「1+一周の積(G×H)」を書く。これだけです。「一周の積」とは、入力から出発して帰還ループをぐるっと一周したときにかかる倍率(G×H)のことです。

3パターン完全比較|これだけ覚えれば問題が解ける
ここまでの3つの結合パターンを1つの表で整理します。ブロック線図の問題はすべて、この3パターンの組み合わせです。
| パターン | 図のイメージ | 公式 | 工場の例え | 演算 |
|---|---|---|---|---|
| 直列 | G₁ → G₂ | G₁ × G₂ | マシンが一直線に並ぶ。1台目の出力が2台目の入力 | × |
| 並列 | G₁ ↕(分岐+合流) G₂ |
G₁ + G₂ | 2ラインで同時加工。結果を合流して混ぜる | + |
| フィード バック |
G(前向き) H(帰還ループ) |
G
1 + GH
|
完成品を検査して、その結果で投入量を調整 | G÷(1+GH) |
🎯 ブロック線図3公式の語呂合わせ
直列 → かけ算(直にかける)
並列 → 足し算(並んで足す)
帰還 → G を「1+一周の積」で割る

複雑なブロック線図の解き方|「端っこから箱をまとめる」
電験三種の問題では、直列・並列・フィードバックが組み合わさった複雑なブロック線図が出題されます。でも解き方は簡単です。端っこ(内側)から順番に3パターンの公式で箱をまとめていくだけです。
🔧 等価変換の手順(3ステップ)
直列を見つけたら → かけ算でまとめる
隣り合った箱が一直線に並んでいたら、G₁×G₂で1つの箱にする
並列を見つけたら → 足し算でまとめる
分岐して合流する箱があったら、G₁+G₂で1つの箱にする
フィードバックループを見つけたら → G/(1+GH)でまとめる
帰還ループを見つけたら、前向きGと帰還Hを特定して公式に当てはめる
この3ステップを、図が1つの箱になるまで繰り返すだけです。「内側から外側へ」の順番でまとめていくのがコツです。
📝 練習問題:典型的なブロック線図を等価変換する
以下のブロック線図の全体の伝達関数 Y(s)/X(s) を求めてみましょう。
【問題のブロック線図】
✅ 解答手順
STEP 1 直列を見つける
G₁とG₂が直列に並んでいる → かけ算でまとめる
G₁G₂ を1つの箱「G」とみなす
STEP 2 フィードバック結合の公式を適用
前向き伝達関数 G = G₁G₂
帰還伝達関数 H = H
公式:全体 = G / (1 + GH) に当てはめる
Y(s)/X(s) = G₁G₂ / (1 + G₁G₂H)
複雑に見えても、やっていることは「直列→かけ算」「フィードバック→G/(1+GH)」の2回だけです。内側から順番にまとめることを意識すれば、どんな問題も同じ手順で解けます。

特殊ケース:H=1(単位フィードバック)
📋 出力をそのまま戻すケース=H=1
電験三種の問題では、帰還ループに箱(H)が書かれておらず、出力がそのまま加え合わせ点に戻されるパターンが頻出します。これはH = 1のケースです。「単位フィードバック」とも呼ばれます。
工場で言えば、「完成品をそのまま(検査マシンを通さずに)投入量の調整に使う」イメージです。
帰還ループに箱が何も書いてない場合は、自動的に H=1 として公式に代入するだけです。問題用紙で「あれ、Hがない?」と焦る必要はありません。
帰還ループの矢印に「1」と書いてある場合もあれば、何も書いてない場合もあります。どちらも H=1 です。「箱がない帰還ループ → H=1 → 分母は 1+G」と即座に判断してください。

等価変換テクニック|加え合わせ点と引き出し点の移動
実際の電験の問題では、直列・並列・フィードバックの形に「そのままでは当てはまらない」ケースがあります。そんなとき、加え合わせ点や引き出し点の位置をずらして、3パターンに当てはめやすい形に変形するテクニックが必要です。
📦 引き出し点の移動
引き出し点(信号を分岐させる点)をブロックの前後に移動させるルールです。
| 移動方向 | ルール | 工場の例え |
|---|---|---|
| Gの後ろ → 前に移動 | 分岐した信号線に G をかける(Gを補う) | 加工後に分岐していたのを、加工前に分岐する。分岐した方も同じ加工を通す必要がある |
| Gの前 → 後ろに移動 | 分岐した信号線に 1/G をかける(Gで割る) | 加工前に分岐していたのを、加工後に分岐する。分岐した方は加工を「元に戻す」ために1/Gをかける |
⊕ 加え合わせ点の移動
| 移動方向 | ルール | 工場の例え |
|---|---|---|
| Gの前 → 後ろに移動 | 合流する信号線に 1/G をかける | 加工前に合流していたのを、加工後に合流する。合流する方は加工されていないので、1/Gで補正 |
| Gの後ろ → 前に移動 | 合流する信号線に G をかける | 加工後に合流していたのを、加工前に合流する。合流する方も同じ加工を通す必要がある |
「ブロックを飛び越える方向に移動したら、飛び越えたブロックの効果を補う必要がある」と覚えてください。
・ブロックの後ろ → 前に移動(まだ加工されてない方に移動)→ 加工分を補うためにGをかける
・ブロックの前 → 後ろに移動(すでに加工された方に移動)→ 加工分を打ち消すために1/Gをかける
「まだの方に行くなら補う(G)、もう済んだ方に行くなら戻す(1/G)」です。

電験三種のブロック線図問題を解く5ステップ
最後に、電験三種のブロック線図計算問題(H30問13, H25問13, R5下問18などの過去問パターン)を解くための実践的な手順をまとめます。
📝 問題を解く5ステップ
入力 X(s) と 出力 Y(s) を確認する
「何を入力して、何を出力として求めるのか」を図の端で確認。問題文の「Y(s)/X(s) を求めよ」を確認
直列部分を見つけてかけ算でまとめる
一直線に並んだ箱を先にまとめて、図をシンプルにする
並列部分を見つけて足し算でまとめる
分岐して合流する部分があればまとめる
フィードバックループを見つけて G/(1+GH) でまとめる
前向きGと帰還Hを特定し、符号(+か−か)を必ず確認
STEP 2〜4を繰り返し、1つの箱にする
全体が1つのブロックになったら、それが全体の伝達関数
⚠️ 試験本番のチェックリスト
☑️ 加え合わせ点の符号(+か−か)を必ず確認したか?
☑️ 帰還ループに箱がない場合、H=1として処理したか?
☑️ 直列部分を先にまとめてから、フィードバックの公式を適用したか?
☑️ 引き出し点や加え合わせ点の移動が必要な場合、GまたはG⁻¹を補ったか?
☑️ 最終的な式を選択肢と照合したか?(分数の形を合わせる)
ブロック線図の問題は、慣れると機械的に解けるようになります。最初は「見たことない形だ!」と焦りますが、どんな複雑な図でも、分解すれば直列・並列・フィードバックの組み合わせに過ぎません。過去問を5題ほど解けば、パターンが見えてきます。

まとめ|ブロック線図は「3パターンの組み合わせ」でしかない
✅ 伝達関数=「入力を何倍にして出力するか」を表す箱。出力 = G × 入力
✅ 直列結合=箱が一直線に並ぶ → かけ算(G₁ × G₂)
✅ 並列結合=箱が分岐して合流する → 足し算(G₁ + G₂)
✅ フィードバック結合=出力を検査して戻す → G / (1+GH)
✅ H=1(帰還ループに箱がない)→ G / (1+G)
✅ 複雑な図でも、内側から3パターンの公式で順番にまとめるだけ
✅ 加え合わせ点の符号(+−)の確認を絶対に忘れない
ブロック線図の問題は、一度パターンを覚えてしまえば「作業」として解けるようになります。電験三種の機械科目で自動制御分野は配点が安定しているので、ここで確実に5〜10点を取れるようにしておきましょう。
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ブロック線図の中にあるPIDコントローラの中身を詳しく解説。P・I・Dそれぞれの動作と定常偏差の仕組みがわかります。
ブロック線図に登場する「目標値」「偏差」「フィードバック」の基本概念を復習できます。
機械科目の全体像と自動制御分野の配点を確認。効率的な学習順序がわかります。
🚪 この記事を読んでいるあなたへ
ブロック線図のような「一見複雑だけど、パターンを知れば解ける」問題は、電験三種のあちこちに散らばっています。この「パターンを見抜く力」は、資格だけでなく、あなたのキャリアそのものを変える武器になります。
