現場の品質管理

【完全図解】設計FMEAの作り方|工程FMEAとの違いと設計段階でリスクを潰す手順

😣 こんな状況になっていませんか?
  • 上司から「設計FMEAも品質保証部で確認しておいて」と言われたが、工程FMEAとの違いがよくわからない
  • 工程FMEAは作ったことがあるけど、設計FMEAは「設計部門の仕事」だと思っていた
  • DFMEAとPFMEAという略語が飛び交うが、何がどう違うのか説明できない
  • 客先監査で「DFMEAとPFMEAの整合性を確認させてください」と言われて冷や汗をかいた
✅ この記事でわかること
  • 設計FMEA(DFMEA)とは何か、工程FMEA(PFMEA)との決定的な違い
  • 設計FMEAの作り方を7ステップで図解
  • 故障モードの洗い出し方と、具体的な記入例
  • DFMEAとPFMEAの「つながり」と整合性チェックのポイント

「FMEAは工程FMEAしか作ったことがない」。品質保証部に配属されたエンジニアの多くが、最初にぶつかる壁がここです。

工程FMEAは「製造工程で何が失敗するか」を分析するもの。ここまでは経験がある。でも設計FMEAは「設計段階で何が壊れるか」を分析するもの。守備範囲がまったく違います。

しかしIATF16949の環境では、DFMEAとPFMEAの両方が必須です。しかも客先監査では「DFMEAで検出できなかったリスクがPFMEAでカバーされていますか?」と整合性まで問われます。

この記事では、工程FMEAの知識がある方を前提に、「設計FMEAは何が違うのか」「どう作るのか」を具体例付きで解説します。最後まで読めば、設計部門から回ってきたDFMEAを確認するとき、どこをチェックすればいいかがわかるようになります。

📘 前提知識:工程FMEAの作り方をまだ読んでいない方はこちらから
【完全図解】FMEAの作り方|工程FMEAを「形だけ」で終わらせない実務手順とRPN計算例 →

そもそも設計FMEA(DFMEA)とは何か?

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)には、大きく分けて2種類あります。

📐

設計FMEA(DFMEA)

Design FMEA

分析対象:製品の「設計」

問い:この部品の設計は、どんな壊れ方(故障モード)をする可能性があるか?

例:シャフトが折れる、シールが漏れる、コネクタが外れる

担当:設計部門が主体(品質保証部がレビュー)

🏭

工程FMEA(PFMEA)

Process FMEA

分析対象:製品の「製造工程」

問い:この製造工程は、どんな失敗(不具合モード)を起こす可能性があるか?

例:トルク不足で締まらない、溶接の溶け込み不良、寸法が規格外

担当:生産技術・品質保証部が主体

ひと言でまとめると、設計FMEAは「モノが壊れるリスク」を分析し、工程FMEAは「作り方を間違えるリスク」を分析するものです。

💡 なぜ品質保証部が設計FMEAを知る必要があるのか?
IATF16949の要求事項では、DFMEAで検出されたリスクに対して「製造工程での対策(PFMEA)」が整合しているかが問われます。設計部門が「シャフトの疲労破壊」というリスクを挙げているなら、品質保証部は「そのリスクをカバーするための検査が工程に組み込まれているか」を確認しなければなりません。DFMEAを読めない品質保証部は、客先監査で必ず指摘を受けます

設計FMEAと工程FMEAの違い|一覧表で完全整理

「DFMEAとPFMEAの違いは何ですか?」と聞かれたとき、以下の表で即答できるようにしておきましょう。見る項目は同じ(故障モード→影響→原因→対策)ですが、中身がまったく違います

比較項目 設計FMEA(DFMEA) 工程FMEA(PFMEA)
分析対象 製品の設計・構造 製品の製造工程
故障モードの例 破断、変形、腐食、絶縁破壊、漏れ、摩耗 トルク不足、寸法ズレ、異品組付け、溶接不良
原因の例 材料の選定ミス、肉厚不足、応力集中、表面処理の設計不備 設備の調整ミス、作業者の手順ミス、材料ロットのばらつき
影響(誰に影響?) 主にエンドユーザー(製品が市場で故障する) 主に次工程・顧客(不良品が流出する)
予防管理 設計計算、シミュレーション(CAE)、設計基準の適用 ポカヨケ、作業標準書、工程パラメータ管理
検出管理 設計レビュー(DR)、試作品の評価試験、耐久試験 寸法検査、外観検査、機能検査、SPC(管理図)
実施時期 製品の設計段階(図面確定前) 製品の工程設計段階(量産準備中)
主管部門 設計部門(品質保証部がレビュー参加) 生産技術部・品質保証部
略称 DFMEA(Design FMEA) PFMEA(Process FMEA)
🔧 現場の声
Tier1の品質保証部にいると、設計部門から「DFMEA確認してください」とExcelファイルが送られてくることがあります。このとき「工程で検出できない故障モードが、DFMEAの検出管理で本当に潰せているか」を見るのが品証の役割です。「設計レビューで確認する」とだけ書いてあったら、「具体的にどの試験で検出するんですか?」と突っ込むのが仕事です。

DFMEAとPFMEAは「つながっている」|2つの関係を図解

DFMEAとPFMEAは別々のドキュメントですが、独立しているわけではありません。DFMEAで洗い出したリスクのうち「設計だけでは完全に潰せないもの」は、PFMEAに引き継がれます。この「つながり」を理解することが、客先監査で問われる「整合性」の正体です。

📐 設計FMEA(DFMEA)
故障モード
シャフトが折れる
設計での予防
応力解析(CAE)で
安全率2.0以上を確認
設計での検出
試作品の疲労試験で
100万回サイクル確認
⚠️ 設計だけでは潰しきれないリスク
「材料のロットばらつきで強度不足になる可能性」を
PFMEAに引き継ぐ
🏭 工程FMEA(PFMEA)
不具合モード
硬度が規格外
工程での予防
受入検査で
材料硬度を全数測定
工程での検出
ロット先頭5本の
硬度検査を実施
💡 ポイント:DFMEAの「特別特性」はPFMEAに必ず引き継がれる
DFMEAで「安全に関わる」「法規に関わる」と判定された特性(特別特性 ◇ や ▽ でマークされるもの)は、PFMEAとコントロールプランに必ず引き継がれなければなりません。この引き継ぎの抜け漏れがないかをチェックするのが、品質保証部の最も重要な役割です。

設計FMEAの作り方|AIAG-VDA方式の7ステップ全体像

ここからは、設計FMEAの具体的な作り方を解説します。手順はAIAG-VDA FMEA(2019年版)の7ステップに沿って進めます。この7ステップは工程FMEAと同じフレームワークですが、中身(書く内容)が違います

STEP 1
計画と準備

対象製品の範囲・目的・チームメンバーを決める

STEP 2
構造分析

製品をシステム→サブシステム→部品に分解する

STEP 3
機能分析

各部品の「機能」と「要求事項」を明確にする

STEP 4
故障分析

故障モード→故障影響→故障原因のチェーンを作る

STEP 5
リスク分析

重大度(S)・頻度(O)・検出度(D)を評価し、AP(優先度)を決定する

STEP 6
最適化

優先度が高い項目に対策を立案し、実行する

STEP 7
結果の文書化

FMEAフォームに記録し、客先・関連部署に共有する

📘 AIAG-VDA方式の7ステップと旧RPN方式の違いを復習したい方はこちら
【完全図解】AIAG-VDA FMEA 7ステップとは?|旧FMEAとの違い・RPNからAPへの変更点を徹底解説 →

STEP 1〜3:計画・構造分析・機能分析

最初の3ステップは「準備」です。ここを雑にやると、STEP 4以降で故障モードの漏れが発生します。具体例として「電動ウォーターポンプのシャフト」を題材に進めます。

📋 STEP 1:計画と準備

対象製品 電動ウォーターポンプ(型番:EWP-200)
分析対象の範囲 ポンプシャフトの設計に関する故障モード
チームメンバー 設計:山田(リーダー)、品質保証:田中、生産技術:佐藤、試験評価:鈴木
完了目標日 DR2(設計レビュー2回目)まで

🔍 STEP 2:構造分析(製品の分解)

製品を「システム → サブシステム → 部品」の3階層に分解します。工程FMEAでは「工程フロー」を分解しますが、設計FMEAでは「製品の構造」を分解する点が違います。

システム:電動ウォーターポンプ
駆動部
回転軸部 ← 今回の対象
シール部
ハウジング部
シャフト ← 分析対象
ベアリング
インペラ

⚙️ STEP 3:機能分析

分析対象の部品(シャフト)の「機能」と「要求事項」を書き出します。機能が明確でないと、故障モードが出てきません。「この部品は何をするために存在するのか?」を言語化するステップです。

部品 機能 要求事項
シャフト モーターの回転力をインペラに伝達する トルク伝達能力:5 N・m以上、回転数:最大8,000 rpm
使用環境下で破損しない 疲労寿命:10年 / 10万km相当、安全率:2.0以上
冷却液の漏れを防止する(シール面の精度確保) シール接触面の表面粗さ:Ra 0.4以下、真円度:0.01 mm以下
💡 ポイント:「機能」は動詞で書く
機能の書き方で初心者がよくやるミスは「シャフト」と部品名だけ書くことです。機能は必ず「〇〇を△△する」という動詞の形で書いてください。「回転力を伝達する」「破損しない」「漏れを防止する」——動詞で書けば、その裏返し(伝達できない、破損する、漏れる)がそのまま故障モードになります。

STEP 4:故障分析|故障モード→影響→原因のチェーンを作る

ここが設計FMEAの核心です。STEP 3で書き出した各「機能」に対して、「その機能が失われたら何が起きるか」を考えます。AIAG-VDA方式では、故障を3つの階層で整理します。

💥
故障影響(FE)
上位システムへの影響
(エンドユーザーに何が起きる?)
⚠️
故障モード(FM)
分析対象部品の故障
(機能の否定形)
🔍
故障原因(FC)
下位部品・要素の問題
(なぜ故障するのか?)

📝 シャフトの故障分析(記入例)

機能 故障モード(FM) 故障影響(FE) 故障原因(FC)
回転力をインペラに伝達する シャフトが折れる(破断) ポンプ停止→エンジン冷却不能→オーバーヒート(安全問題) ①応力集中部の設計不備(R形状不足)
②材料強度の選定ミス
③共振周波数と使用回転数の重なり
シャフトが変形する(曲がり) 異常振動→ベアリング早期摩耗→ポンプ寿命低下 ①軸径が細すぎる(剛性不足)
②熱膨張の考慮不足
冷却液の漏れを防止する シール面から漏れる 冷却液漏れ→エンジンルーム内汚損→車両火災リスク ①シール接触面の表面粗さ指定が甘い
②真円度の公差設定が不適切
⚠️ 設計FMEAと工程FMEAの故障モードの書き方の違い
工程FMEAの故障モードは「トルク不足」「寸法ズレ」のように「作り方の失敗」を書きます。
設計FMEAの故障モードは「折れる」「漏れる」「変形する」のように「モノの壊れ方」を書きます。
ここを混同すると、DFMEAなのに「作業者がトルクを間違える」と書いてしまい、PFMEAと同じ内容になってしまいます。設計FMEAでは「なぜ壊れるか」を設計の観点だけから書くことが鉄則です。

STEP 5:リスク分析|S・O・DでAP(優先度)を決定する

故障分析が終わったら、各故障モードの「リスクの大きさ」を評価します。AIAG-VDA方式では、旧来のRPN(数値の掛け算)ではなく、AP(Action Priority:優先度)をH/M/Lの3段階で判定します。

📊 S・O・Dの評価基準(設計FMEA版)

工程FMEAと評価の観点が異なる点に注意してください。特に「O(頻度)」と「D(検出度)」の意味が違います。

評価項目 意味 設計FMEA(DFMEA)での評価基準 工程FMEA(PFMEA)での評価基準(比較用)
S
重大度
故障が発生したとき、エンドユーザーへの影響の大きさ エンドユーザーの安全・法規への影響で評価(10〜1)。車両火災・操縦不能→10、軽微な不快→2〜3 基本的に同じ(エンドユーザー影響)
O
頻度
故障原因が発生する頻度 設計上の予防管理がどれだけ効いているかで評価。CAE解析済み・実績ある設計基準適用→低、新規設計で実績なし→高 工程管理(ポカヨケ・SPC等)がどれだけ効いているかで評価
D
検出度
故障を出荷前に見つけられるか 設計検証(DV)・設計妥当性確認(PV)で検出できるかで評価。耐久試験で確認可能→低、現行の試験で検出不可能→高 工程内検査(寸法検査・外観検査等)で検出できるかで評価

📝 シャフトのリスク分析(記入例)

故障モード 故障原因 予防管理 検出管理 S O D AP
シャフト破断 応力集中部のR形状不足 CAE解析(安全率計算) 試作品の疲労試験(100万回) 9 3 3 M
シャフト破断 共振周波数と使用回転数の重なり 固有値解析(新規:実績なし) 振動試験(現行試験では確認項目なし) 9 6 7 H
シール面から漏れ 表面粗さ指定が甘い 設計基準に基づく粗さ指定(実績あり) リーク試験(気密検査) 7 2 2 L
💡 AP(Action Priority)の判定基準
H(High):対策必須。設計変更や追加試験が必要
M(Medium):対策を検討すべき。組織の判断で実施/不実施を決める
L(Low):現状の管理で問題なし。ただしS=9〜10の場合は注意

APの判定にはAIAG-VDAのAPテーブル(S × O × Dの組み合わせ表)を使用します。旧来のRPN(S × O × D の単純な掛け算)とは判定ロジックが異なるので注意してください。

STEP 6〜7:最適化(対策)と結果の文書化

AP = Hと判定された項目には、必ず対策を実行します。対策には「予防管理の強化」と「検出管理の強化」の2つの方向性があります。

🔧 対策例:「共振周波数と使用回転数の重なり」への対策

対策の方向性 具体的なアクション 担当 期限
予防管理の強化
(O↓)
①シャフトの軸径を変更し、固有振動数を使用回転数帯域から離す(設計変更)
②CAE解析を再実施し、共振マージンを20%以上確保
設計部・山田 DR2まで
検出管理の強化
(D↓)
①試作品の振動試験(加振試験)を評価計画に追加
②共振周波数のスイープ試験を実施し、共振点を実測値で確認
試験評価部・鈴木 PV試験まで

対策を実行した後、S・O・Dを再評価してAPが下がったことを確認します。これをFMEAフォームに追記し、「対策前AP = H → 対策後AP = M(またはL)」と変遷がわかるようにします。

📄 STEP 7:文書化のチェックリスト

DFMEAの文書化で確認すべき5つのポイント:

AP = Hの項目に対して、すべて対策が記入されているか
対策後のS・O・D再評価が実施され、APが下がっているか
特別特性(安全・法規に関わる特性)がマークされ、PFMEAとコントロールプランに引き継がれているか
担当者と期限が明記されているか(「検討する」で終わっていないか)
DFMEAの最新版がDR(設計レビュー)で関係者にレビューされたか
🔧 品質保証部がDFMEAをレビューするときの3つの着眼点
S = 9〜10の項目:安全・法規に関わる故障モードが漏れていないか
検出管理の具体性:「設計レビューで確認」ではなく「○○試験で△△を確認」と書かれているか
PFMEAとの整合性:DFMEAで挙げた特別特性が、PFMEAの管理特性として網羅されているか

設計FMEAでよくある失敗5選

最後に、設計FMEAを作るときに初心者が陥りやすい失敗パターンを5つ紹介します。客先監査で指摘されやすいポイントでもあるので、事前にチェックしておいてください。

失敗①
工程FMEAと同じ内容を書いてしまう

故障モードに「寸法ズレ」「トルク不足」など、工程の失敗を書いてしまうケース。設計FMEAでは「折れる」「漏れる」「腐食する」など製品の壊れ方を書きます。

失敗②
故障原因が「設計の問題」になっていない

故障原因に「作業者のミス」と書くのはPFMEAの範囲。DFMEAでは「材料選定ミス」「公差設定の不備」「応力解析の不足」など、設計段階で対策可能な原因だけを書きます。

失敗③
検出管理が「設計レビュー」だけ

「設計レビューで確認する」はD(検出度)を下げる根拠になりません。「どの試験で」「何を」「いくつ試験して」確認するのかを具体的に書いてください。

失敗④
特別特性がPFMEAに引き継がれていない

DFMEAで「安全に関わる」とマークした特性が、PFMEAのどの管理項目と対応しているか不明確なケース。客先監査で「DFMEAとPFMEAの整合性マトリクスはありますか?」と聞かれます。

失敗⑤
FMEAが「量産開始後に初めて作られている」

DFMEAは図面確定前に作るものです。量産が始まってから「客先に提出するために慌てて作った」FMEAは、形だけの文書であり、リスクを潰す目的を果たしていません。

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まとめ

設計FMEA(DFMEA)の作り方と、工程FMEA(PFMEA)との違いを解説しました。最後に要点を整理します。

ポイント 内容
DFMEAとPFMEAの違い DFMEAは「モノの壊れ方」、PFMEAは「作り方の失敗」を分析する
2つのつながり DFMEAで潰しきれないリスクはPFMEAに引き継ぐ。特別特性は必ず引き継ぐ
作り方の基本 AIAG-VDA 7ステップに沿い、構造分析→機能分析→故障分析→リスク分析→最適化の順で進める
故障モードの書き方 「機能の否定形」で書く。機能が「回転力を伝達する」なら故障モードは「伝達できない(破断)」
品質保証部の役割 DFMEAの特別特性がPFMEA・コントロールプランに漏れなく引き継がれているかをチェックする

設計FMEAは設計部門の仕事ですが、品質保証部がその中身を「読めない」のは致命的です。この記事で解説した7ステップと、DFMEAとPFMEAのつながりを理解しておけば、次に設計部門からDFMEAが回ってきたとき、どこをチェックすべきかが明確になります。

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