現場の品質管理

設計FMEA(DFMEA)とは?作り方7ステップを記入例で解説

設計FMEAとは何かを表すアイキャッチ。設計図のシャフトのひびを虫めがねで見つける

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 設計FMEAと工程FMEAの違いを、ひとことで説明できない
  • 工程FMEAは作ったことがあるが、設計FMEAの書き方がわからない
  • 客先監査で「DFMEAとPFMEAの整合性」を聞かれて困った
この記事でわかること
  • 設計FMEA(DFMEA)とは何か、工程FMEAとの違い
  • AIAG-VDAの7ステップに沿った作り方
  • シャフトを例にした、構造から対策までの記入例
  • 品質保証部がレビューで見るところと、よくある失敗
結論|まず30秒でわかる答え

設計FMEA(DFMEA:Design FMEA)とは、製品の設計の段階で、部品や製品が「どんな壊れ方をするか(故障モード)」「壊れたら使う人に何が起きるか(影響)」「なぜ壊れるか(原因)」を洗い出し、リスクの大きいものから図面が決まる前に手を打つための分析です。工程FMEAが「作り方の失敗」を見るのに対し、設計FMEAは「モノの壊れ方」を見ます。

設計FMEAとは何かを表すアイキャッチ。設計図のシャフトのひびを虫めがねで見つける
設計図のシャフトのひびを見つける設計FMEA
FMEAの記事(全4本)
  1. FMEAとは(設計と工程)
  2. 設計FMEA(DFMEA)(この記事)
  3. AIAG-VDA FMEA
  4. FTA(FMEAとの違い)

設計FMEAと工程FMEAの違い|「壊れ方」か「作り方の失敗」か

見る項目(故障モード→影響→原因→対策)は同じですが、分析する相手がちがいます。設計FMEAは製品の設計、工程FMEAは製造の工程です。

FMEAとは何か、7ステップの全体の流れ、S・O・Dの評価基準とRPNの計算、そのまま使える様式例は、FMEAとは?設計FMEAと工程FMEAの違い・作り方(様式例つき)にまとめています。工程FMEAの作り方を先に見ておくと、この記事の設計FMEAとの対比がはっきりします。

比べる点設計FMEA(DFMEA)工程FMEA(PFMEA)
分析する相手製品の設計・構造製造の工程
故障モードの例折れる・変形する・漏れる・腐食する・絶縁がこわれる締め付け不足・寸法ずれ・部品の付け間違い・溶接不良
原因の例材料の選定ミス・肉厚不足・応力集中・公差の決め方設備の調整ミス・作業手順のミス・材料のばらつき
予防の手段設計計算・CAE解析・設計基準ポカヨケ・作業標準・条件の管理
検出の手段設計レビュー・試作の評価試験・耐久試験寸法・外観・機能の検査、管理図
作る時期設計の段階(図面が決まる前)工程の設計の段階(量産準備)
中心になる部門設計(品質保証がレビュー)生産技術・品質保証

DFMEAとPFMEAは「つながっている」

設計だけでは潰しきれないリスクは、工程FMEAに引き継ぎます。たとえばシャフトの破断に対して、設計では応力解析と疲労試験で手を打っても、「材料のロットのばらつきで強度が足りなくなる」リスクは残ります。これを工程FMEAで「材料の硬さが規格外」という不具合として受け取り、受け入れ検査で硬さを測る、という形で管理します。安全や法規にかかわる特別特性は、工程FMEAとコントロールプランに必ず引き継ぎます。

APQPとは?5フェーズを1枚で理解
あわせて読みたい
APQPとは?5フェーズを1枚で理解

APQPの中で、設計FMEAはどこで作る?

設計FMEAと工程FMEAの違いの図。設計FMEAはモノの壊れ方、工程FMEAは作り方の失敗を分析し、設計で潰しきれないリスクを工程に引き継ぐ
設計FMEAはモノの壊れ方、工程FMEAは作り方の失敗

設計FMEAで見つけた故障モードには、ミスが起きない仕組みで対策することもあります。その代表がポカヨケです。

ポカヨケとは?発生前・発生時・発生後の3種類と製造業の事例30選を図解
あわせて読みたい
ポカヨケとは?発生前・発生時・発生後の3種類と製造業の事例30選を図解

ポカヨケの種類と事例30選

設計FMEAの作り方|AIAG-VDAの7ステップ

手順はAIAG-VDA FMEA(2019年)の7ステップで進めます。枠組みは工程FMEAと同じで、書く中身が「工程」から「製品の構造と機能」に変わります。

ステップ設計FMEAでやること
1 計画と準備対象の範囲・目的・チーム(設計・品質保証・生産技術・評価)・期限を決める
2 構造分析製品をシステム→サブシステム→部品に分ける
3 機能分析部品ごとの機能と要求(数値)を書く
4 故障分析故障影響←故障モード←故障原因の連鎖をつくる
5 リスク分析予防と検出の手段を書き、S・O・Dを評価してAP(H・M・L)を決める
6 最適化APの高いものに対策を決めて実行し、再評価する
7 結果の文書化記録して、顧客や関係部署と共有する

記入例|電動ウォーターポンプのシャフト(ステップ2・3)

構造分析:電動ウォーターポンプ(システム)→ 回転軸部(サブシステム)→ シャフト(分析する部品)。同じ階層にベアリングやインペラがあります。

機能(動詞で書く)要求(数値で書く)
モーターの回転力をインペラに伝えるトルク5N·m以上、最大8,000rpm
使う環境で破損しない疲労寿命10年相当、安全率2.0以上
冷却液の漏れを防ぐ(シール面の精度を保つ)表面粗さRa0.4以下、真円度0.01mm以下
POINT|機能は「〜を〜する」と動詞で

「シャフト」と名前だけ書くと、故障モードが出てきません。「回転力を伝える」と書けば、その裏返しの「伝えられない(折れる)」が故障モードになります。

AIAG-VDA FMEAとは?7ステップと旧FMEAとの違い、AP(処置優先度)を図解
あわせて読みたい
AIAG-VDA FMEAとは?7ステップと旧FMEAとの違い、AP(処置優先度)を図解

AIAG-VDAの7ステップとRPNからAPへの変更

設計FMEAの7ステップ。計画と準備、構造分析、機能分析、故障分析、リスク分析、最適化、文書化
設計FMEAの7ステップ:計画から文書化まで

ステップ4 故障分析|影響←モード←原因の連鎖をつくる

故障分析が設計FMEAの中心です。部品の故障モードを真ん中に置き、上の階層への影響と、下の階層の原因を1本の鎖でつなぎます。

機能故障モード故障影響故障原因
回転力を伝えるシャフトが折れるポンプ停止→冷却できない→オーバーヒート(安全)応力集中部のR不足、材料強度の選定ミス、共振周波数と回転数の重なり
回転力を伝えるシャフトが曲がる異常な振動→ベアリングの早期摩耗→寿命低下軸径が細い(剛性不足)、熱膨張の考慮不足
漏れを防ぐシール面から漏れる冷却液の漏れ→車両の汚損・火災のおそれ表面粗さの指定が甘い、真円度の公差が不適切
注意|原因に「作業者のミス」を書かない

設計FMEAの原因は、設計で手を打てるもの(材料の選び方・形状・公差の決め方など)だけを書きます。「締め付けを間違える」は工程FMEAの範囲です。

FTAとは?故障の木解析をわかりやすく|FMEAとの違いも図解
あわせて読みたい
FTAとは?故障の木解析をわかりやすく|FMEAとの違いも図解

故障の木解析FTAとFMEAの使い分け

設計FMEAの故障の連鎖の図。故障原因のR形状の不足から、故障モードのシャフトの破断、故障影響のオーバーヒートへつながる
故障原因・故障モード・故障影響の連鎖

ステップ5 リスク分析|S・O・DでAP(優先度)を決める

重大度S・発生度O・検出度Dを1〜10で評価し、AIAG-VDAのAP表でH(対策が必要)・M・Lを決めます。S×O×Dの掛け算(RPN)ではありません。

評価設計FMEAでの見方
S 重大度使う人への影響の大きさ。安全・法規にかかわれば9〜10
O 発生度設計の予防の手段がどれだけ効いているか。実績のある設計基準なら低く、新しい設計なら高く
D 検出度設計の検証(試作の試験など)で、量産前に見つけられるか。今の試験で見つけられなければ高く
故障原因予防検出SODAP
応力集中部のR不足(破断)CAEで安全率を確認試作品の疲労試験100万回933M
共振周波数と回転数の重なり(破断)固有値解析(実績なし)今の試験に確認項目なし967H
表面粗さの指定が甘い(漏れ)設計基準で粗さを指定(実績あり)リーク試験722L

APは、AIAG-VDAのAP表(S・O・Dの組み合わせの表)で決めます。顧客が独自の基準を決めている場合は、そちらに従います。

設計FMEAのリスク分析の図。重大度S、発生度O、検出度Dを評価し、APをH(対策が必要)、M(検討する)、L(今の管理でよい)で決める
S・O・Dを評価してAPをH・M・Lで決める

ステップ6・7 対策・再評価と文書化

APがHのものには必ず対策を決めます。方向は「発生しにくくする(Oを下げる)」と「見つけやすくする(Dを下げる)」の2つです。

方向共振のリスクへの対策の例担当・期限
予防を強くする(O↓)軸径を変えて固有振動数を使う回転数から離す。CAEをやり直し、余裕を20%以上とる設計・2回目のDRまで
検出を強くする(D↓)加振試験を評価計画に足し、共振点を実測で確かめる試験評価・妥当性確認の試験まで

対策のあとにS・O・Dを評価し直し、「対策前H→対策後M(またはL)」と変化がわかるように記録します。

品質保証部がレビューで見る3つのところ

  1. S=9〜10の項目:安全・法規にかかわる故障モードがもれていないか
  2. 検出の書き方:「設計レビューで確認」ではなく「○○試験で△△を確かめる」と具体的か
  3. 工程FMEAとのつながり:特別特性が、工程FMEAとコントロールプランの管理項目に入っているか
特殊特性とは?CC・SCの違いと図面の記号(▽S)の意味、管理方法を図解|判定ツール付き
あわせて読みたい
特殊特性とは?CC・SCの違いと図面の記号(▽S)の意味、管理方法を図解|判定ツール付き

特殊特性(CC/SC)の記号と管理

コントロールプランとQC工程表の違い|IATFで求められる書き方と記載項目を初心者向けに徹底解説
あわせて読みたい
コントロールプランとQC工程表の違い|IATFで求められる書き方と記載項目を初心者向けに徹底解説

コントロールプランとQC工程表の書き方

設計FMEAの対策と再評価の図。APがHの共振のリスクに、軸径を変えて発生度を下げ、加振試験を足して検出度を下げ、Mに下げる
対策で発生度と検出度を下げ、APをHからMへ

設計FMEAでよくある失敗5つ

失敗正しくは
故障モードに「寸法ずれ」「締め付け不足」を書く「折れる」「漏れる」「腐食する」など、モノの壊れ方を書く
原因に「作業者のミス」を書く材料の選び方・公差・応力など、設計で手を打てる原因を書く
検出が「設計レビューで確認」だけどの試験で、何を、何個確かめるかを書く
特別特性が工程FMEAに引き継がれていないDFMEA→PFMEA→コントロールプランの対応を表で確かめる
量産が始まってから作る図面が決まる前に作る。あとから作ったFMEAはリスクを潰せない
設計FMEAのよくある失敗の図。故障モードにはモノの壊れ方を書く、原因は設計で手を打てるもの、検出は具体的な試験、図面が決まる前に作る
設計FMEAで起きやすい4つの失敗

よくある質問

Q. 設計FMEAとは簡単にいうと?

A. 設計の段階で製品がどう壊れるかを洗い出し、図面が決まる前にリスクの大きいものから手を打つ分析です。

Q. DFMEAとPFMEAの違いは?

A. DFMEAは製品の設計を相手に「モノの壊れ方」を、PFMEAは製造の工程を相手に「作り方の失敗」を分析します。

Q. 設計FMEAはだれが作る?

A. 設計部門が中心になり、品質保証・生産技術・評価の担当がチームで作ります。品質保証はレビューの役割も持ちます。

Q. RPNとAPの違いは?

A. RPNはS×O×Dの掛け算、APはS・O・Dの組み合わせの表でH・M・Lを決める方法で、重大度を重く見ます。

Q. 設計FMEAはいつ作る?

A. 製品の設計の段階で、図面が決まる前に作ります。設計の変更があれば、そのたびに見直します。

Q. 故障モードはどう出す?

A. 機能を「〜を〜する」と動詞で書き、その否定(できない・しすぎる・ときどきできない)を考えると出しやすくなります。

まとめ
  • 設計FMEAは「モノの壊れ方」、工程FMEAは「作り方の失敗」
  • 設計で潰しきれないリスクと特別特性は工程FMEAに引き継ぐ
  • AIAG-VDAの7ステップ:構造→機能→故障→リスク→最適化
  • 機能は動詞で書き、その否定が故障モード
  • APはS・O・Dの表で決め、Hには必ず対策と再評価
  • 図面が決まる前に作る
設計FMEAのまとめの図。モノの壊れ方を分析、7ステップで進める、APでH・M・Lを決める、工程FMEAへ引き継ぐ
設計FMEAの要点:APで優先度を決め工程FMEAへ引き継ぐ
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

設計FMEAを、IATF 16949のコアツール全体の中で位置づけて学びたいときに向いています。IATF 16949のコアツール(APQP・コントロールプラン・PPAP・FMEA・SPC・MSA)を、図解で解説した本です。第4版は、APQP参照マニュアル第3版とコントロールプラン参照マニュアル第1版に対応しています(日科技連出版社、岩波好夫 著)。

おすすめの本

品質管理の全体を、1冊で見渡したいときに向いています。品質管理と品質改善の基本を、図解でわかりやすくまとめた本です(日本実業出版社)。

おすすめの本

品質管理を、教科書で基本から学び直したいときに向いています。品質管理の基本をわかりやすく解説した教科書です(第5版)。

¥2,803 (2026/05/10 14:53時点 | Amazon調べ)
次に読むなら、この1本

設計で故障を防ぐ基本の1つが、部品を定格ギリギリで使わない「ディレーティング」です。

【最重要】ディレーティングとは?|部品を定格ギリギリで使ってはいけない理由
次のステップ
【最重要】ディレーティングとは?|部品を定格ギリギリで使ってはいけない理由

部品を定格ギリギリで使ってはいけない理由

続きを読む →
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーで回路設計・生産技術(品質改善)の実務

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

次に読むべき記事

設計FMEAの作り方がわかったら、FMEA全体の様式と、AP表の使い方を押さえましょう。

FMEAとは?設計FMEAと工程FMEAの違い・作り方を様式例つきで解説
まずはここから
FMEAとは?設計FMEAと工程FMEAの違い・作り方を様式例つきで解説

FMEAとは?様式と全体の流れ

全体像を見る →
この記事の続きはこちら

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
実務で使う

タグ

-現場の品質管理
-