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- 客先から「AIAG-VDA FMEAで出して」と言われたが、旧FMEAと何がちがうのかわからない
- 構造ツリー・機能ネット・故障ネットなど、新しいことばが多すぎる
- RPNのかわりのAP(処置優先度)を、どう判定すればいいか知りたい
- AIAG-VDA FMEAとは何か、旧FMEAとの5つの違い
- 7ステップの中身(構造・機能・故障のつながり)
- AP(処置優先度)の表の読み方とRPNの問題点
- S・O・Dを入れるだけのAP判定ツール
AIAG-VDA FMEAとは、米国の自動車産業団体AIAGとドイツ自動車工業会VDAが2019年に共同で発行したハンドブックにもとづく、自動車業界共通のFMEAの進め方です。計画・構造解析・機能解析・故障解析・リスク解析・最適化・文書化の7ステップで進め、リスクの優先度はRPN(S×O×D)のかわりに、S・O・Dの組み合わせからH・M・Lを決めるAP(処置優先度)で判断します。

AIAG-VDA FMEAとは?旧FMEAとの5つの違い
それまで、米国の自動車メーカーにはAIAG方式、ドイツのメーカーにはVDA方式と、取引先ごとにちがうFMEAが求められていました。これを1つにまとめたのが2019年のAIAG&VDA FMEAハンドブックです。
| 項目 | 旧FMEA(AIAG第4版、2008年) | AIAG-VDA FMEA(2019年) |
|---|---|---|
| 進め方 | 決まった手順がなく、いきなり故障モードを書きがち | 7ステップ。構造・機能を先に決める |
| 優先度 | RPN=S×O×D(1〜1,000) | AP(H・M・L)。Sをいちばん重く見る表 |
| 管理策 | 予防と検出が1つの欄に混ざりがち | 予防策(Oに効く)と検出策(Dに効く)を分ける |
| FMEAの種類 | 設計(DFMEA)と工程(PFMEA) | +FMEA-MSR(使用中の監視とシステムの応答) |
| 考え方 | 帳票を埋める作業になりがち | 分析の手順が主役。帳票は結果のまとめ |
IATF 16949の本文がこのハンドブックを名指ししているわけではありません。ただ、多くの自動車メーカーが顧客固有要求事項(CSR)として使うように求めており、自動車部品の取引では事実上の共通ルールになっています。FMEAそのものの基本(故障モード・S・O・Dの意味)は、FMEAの記事で先に押さえておくとスムーズです。
FMEAとは?設計FMEAと工程FMEAの違い

AIAG-VDA FMEAの7ステップ
| ステップ | やること | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 1 計画と準備 | 目的・範囲・時期・メンバー・やり方・道具を決める(5T) | 対象とチーム、日程 |
| 2 構造解析 | 対象を上位・注目・下位の3階層に分ける | 構造ツリー |
| 3 機能解析 | それぞれの要素の働き(機能と要求)を書き、上の機能につなぐ | 機能ネット |
| 4 故障解析 | 機能を裏返して故障を出し、原因→故障モード→影響でつなぐ | 故障ネット |
| 5 リスク解析 | 今の予防策・検出策をあて、S・O・Dをつけ、APを決める | S・O・DとAP |
| 6 最適化 | AP=H・Mの項目に対策と担当・期限を決め、実施後に評価し直す | 対策と再評価 |
| 7 結果の文書化 | 結果をまとめて関係者に伝え、変更のたびに更新する | FMEAの帳票・報告 |
構造・機能・故障は「同じ木を3回描く」
ステップ2〜4は、同じ3階層を、ふつうの状態(構造・機能)とおかしくなった状態(故障)の両面から書く作業です。電動パワーステアリング(EPS)のモーターのコイル巻線工程で考えると、次のようにつながります。
| 階層 | 構造 | 機能 | 故障 |
|---|---|---|---|
| 上位 | EPSモーター | 決まったトルクで操舵を助ける | 故障影響:アシストの力が弱くなる |
| 注目 | 工程:コイル巻線 | 決まったインダクタンスのコイルをつくる | 故障モード:インダクタンス不足 |
| 下位 | 巻線機(4Mの1つ) | 決まった回数・張力で巻く | 故障原因:巻線の張力の異常 |
故障は「機能の裏返し」として出てくるので、構造と機能をていねいに決めるほど、故障の書きもらしが減ります。工程FMEAの下位の要素は、人・機械・材料・方法などの4M(+環境)で考えます。
設計FMEAの作り方7ステップ

RPNからAP(処置優先度)へ
ステップ5では、予防策と検出策を分けて書いたうえで、S(影響度)・O(発生度)・D(検出度)をつけ、APで優先度を決めます。
RPNの2つの問題
| 問題 | 例 |
|---|---|
| 安全のリスクが小さく見える | S10・O2・D2はRPN=40、S3・O5・D8はRPN=120。RPNだけ見ると外観不良のほうが先になってしまう |
| 同じ値でも中身がちがう | S10・O1・D10とS5・O4・D5はどちらも100だが、リスクの性質はまったくちがう |
APの表(DFMEA・PFMEA共通)
APは掛け算ではなく、S・O・Dの組み合わせで決まる表から読みます。Sをいちばん重く、次にO、最後にDを見る作りです。行がO、列がDです。
| S | O | D 7〜10 | D 5〜6 | D 2〜4 | D 1 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9〜10 | 8〜10 | H | H | H | H |
| 6〜7 | H | H | H | H | |
| 4〜5 | H | H | H | M | |
| 2〜3 | H | M | L | L | |
| 1 | L | ||||
| 7〜8 | 8〜10 | H | H | H | H |
| 6〜7 | H | H | H | M | |
| 4〜5 | H | M | M | M | |
| 2〜3 | M | M | L | L | |
| 1 | L | ||||
| 4〜6 | 8〜10 | H | H | M | M |
| 6〜7 | M | M | M | L | |
| 4〜5 | M | L | L | L | |
| 2〜3 | L | ||||
| 1 | L | ||||
| 2〜3 | 8〜10 | M | M | L | L |
| 1〜7 | L | ||||
| 1 | すべて | L | |||
S=9〜10の欄は、O=1以外ほとんどがHかMです。「めったに起きなくても、安全にかかわる故障には手を打つ」というのがAPの考え方です。RPNの例で見ると、S10・O2・D2(RPN40)もS3・O5・D8(RPN120)もAPではLで、RPNのように外観不良のほうが先になることはありません。一方、S9・O3・D7(RPN189)はH、S9・O4・D1(RPN36)でもMです。Sが高い故障は、RPNが小さくても対策の対象になります。

AP(処置優先度)判定ツール
S・O・Dを1〜10で入れてください。AIAG-VDAハンドブックの表にもとづくAPと、比べるためのRPNを出します。
入力すると、その場で判定し直します。入力した数字は画面の中で判定するだけで、どこにも送信されません。
H・M・Lごとの対応(ステップ6)
| AP | 対応 |
|---|---|
| H(高) | 予防策・検出策を改善する。しない場合は、なぜ今のままでよいかを示し、承認を得る |
| M(中) | 改善すべき。しない場合は、今の管理で十分な理由を文書に残す |
| L(低) | 改善してもよい。余裕があれば手を打つ |
対策を打ったら「だれが・いつまでに」を決め、終わったらS・O・Dをつけ直してAPを判定し直します。対策の多くは、O(予防)かD(検出)を下げるものです。Sは設計を変えない限り下がりません。

FMEA-MSRと、旧FMEAからの移行
FMEA-MSR|使っている最中の安全
| 種類 | いつ | 問い |
|---|---|---|
| DFMEA(設計) | 設計の段階 | この製品はどう壊れるか |
| PFMEA(工程) | 製造の段階 | この工程はどう失敗するか |
| FMEA-MSR | お客さまが使っている最中 | 故障が起きたとき、車の監視機能が見つけて安全な状態にできるか |
FMEA-MSRは設計FMEAを補うもので、自己診断やフェイルセーフのある電子制御の部品が主な対象です。
旧FMEAからの移行のコツ
いちばん多い失敗は、旧FMEAのExcelを新しい様式に流しこんで終わりにすることです。旧FMEAには構造・機能の情報がなく、原因が「作業者の確認ミス」のように人にかたよりがちで、S・O・Dの点のつけ方も社内ルールのままのことがあります。おすすめは、①新規品か大きな設計変更のある製品を1つ選び、②その製品だけステップ1〜7でゼロから作り、③できた「正しい型」をにた製品に広げる、という順番です。
特殊特性(CC/SC)とは?

AIAG-VDA FMEAでよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 新しい様式に旧データを移せば対応完了 | 構造・機能の分析をやり直さないと中身が変わらない |
| APはS×O×Dのしきい値で決める | 掛け算ではなく、S・O・Dの組み合わせの表で読む |
| AP=LならFMEAに書かなくてよい | Lでも故障と管理策は記録する。対策の必要度が低いだけ |
| 予防策と検出策を1つの欄にまとめる | 予防はO、検出はDに効く。分けて書くと弱いほうがわかる |
| 一度作れば終わり | 設計変更・工程変更・市場の不具合のたびに更新する |
コントロールプランとQC工程表の違い

よくある質問
- AIAG-VDA FMEA=2019年の自動車業界共通のFMEAの進め方
- 7ステップ。構造→機能→故障を先に決めて書きもらしを防ぐ
- 予防策(O)と検出策(D)を分けて評価する
- 優先度はRPNではなくAP(H・M・L)。Sをいちばん重く見る
- FMEA-MSRが加わった。移行はパイロット製品でゼロから

AIAG-VDA FMEAを、ほかのコアツールとあわせて体系的に学びたいときに向いています。IATF 16949のコアツール(APQP・コントロールプラン・PPAP・FMEA・SPC・MSA)を、図解で解説した本です。第4版は、APQP参照マニュアル第3版とコントロールプラン参照マニュアル第1版に対応しています(日科技連出版社、岩波好夫 著)。
品質管理の全体を、1冊で見渡したいときに向いています。品質管理と品質改善の基本を、図解でわかりやすくまとめた本です(日本実業出版社)。
品質管理を、教科書で基本から学び直したいときに向いています。品質管理の基本をわかりやすく解説した教科書です(第5版)。
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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