- 参考書に「E = kΦN」と書いてあるけど、このkって何?どこから出てきたの?
- トルクの公式「T = kΦIa」を暗記しろと言われたが、なぜこの形になるのか説明できない
- 過去問で「回転数が1,200rpmのとき…」と出ると、どの公式を使えばいいか迷う
- 誘導起電力 E = kΦN の導出過程(途中式を省略しません)
- トルク T = kΦIa の導出過程と物理的な意味
- 速度N・トルクT・電流Iaの3者関係を1枚の図にまとめた整理
- 実際の数値を入れた計算例2問(手を動かして定着させる)
直流機の計算問題は、突き詰めると「誘導起電力の式」と「トルクの式」の2本しか使いません。
この2本の公式を「暗記」ではなく「導出から理解」しておくと、過去問で数値が変わっても、条件が変わっても、自力で立式できるようになります。
今回は直流機シリーズの第2回。前回(第1回)で学んだ構造の知識をベースに、いよいよ計算の世界に踏み込みます。
【第1回】直流機の構造と原理|電機子・界磁・整流子の役割を完全図解 →
目次
公式を導出する前に── 記号の定義を整理する
公式の導出に入る前に、登場する記号を一覧表で整理しておきます。途中で「この記号なんだっけ?」となったら、ここに戻ってきてください。
| 記号 | 意味 | 単位 | 水車のたとえ |
|---|---|---|---|
| p | 磁極の数(N極の数。全体はN極+S極でp対) | ─ | 水車の水路の本数 |
| Φ | 1磁極あたりの磁束 | Wb(ウェーバ) | 1本の水路の水量 |
| Z | 電機子の全導体数 | ─ | 水車の羽根の総枚数 |
| a | 電機子巻線の並列回路数 | ─ | 水車の出口パイプの本数 |
| N | 回転数(回転速度) | min-1(rpm) | 水車の回転速度 |
| E | 誘導起電力(逆起電力) | V(ボルト) | 水車が生み出す水圧 |
| Ia | 電機子電流 | A(アンペア) | 水路を流れる水の量 |
| T | トルク(回転力) | N·m(ニュートンメートル) | 水車が軸を回す力 |
p, Z, a は直流機の「設計仕様」として最初から決まっている値です。一方、Φ, N, Ia は運転中に変化しうる値です。公式を使うとき「どれが定数で、どれが変数か」を意識するだけで、問題の見通しがグッと良くなります。

誘導起電力の公式 E を導出する
いよいよ本題です。直流機の誘導起電力 E の公式を、ステップ・バイ・ステップで導出します。
ゴールは以下の公式です。導出の過程で「なぜこの形になるのか」を完全に理解しましょう。
STEP 1:導体1本が1秒間に切る磁束を考える
電磁誘導の基本法則を思い出してください。導体が磁束を切ると起電力が発生する(ファラデーの法則)。
では、電機子上の導体1本は、1回転でどれだけの磁束を切るでしょうか?
磁極はp個あり、1磁極あたりの磁束はΦ [Wb]。導体が1回転すると、すべての磁極の下を通過するので、1回転で切る磁束の合計 = pΦ [Wb] です。
回転数はN [min-1](1分間にN回転)なので、1秒間ではN/60回転します。
したがって、導体1本が1秒間に切る磁束は:
STEP 2:導体1本あたりの起電力を求める
ファラデーの法則から、起電力 = 1秒間に切る磁束です(単位を確認すると、Wb/s = V)。
よって、導体1本あたりの起電力 e は:
STEP 3:電機子全体の起電力を求める
電機子にはZ本の導体がありますが、並列回路数 a で分かれているため、直列に繋がっている導体数は Z/a 本です。
電池を思い出してください。電池を直列に繋ぐと電圧が足し算になります。並列に繋ぐと電圧は変わりません。直流機の電機子巻線も同じです。Z本の導体がa本の並列回路に分かれているので、1つの回路に直列に並んでいる導体は Z/a 本。起電力は直列分だけ足し算されます。
電機子全体の起電力 E は、導体1本の起電力 e に直列導体数 Z/a を掛けたもの:

定数 k にまとめると E = kΦN
ここで、p, Z, a はすべて直流機の設計段階で決まる定数です。運転中に変化することはありません。
そこで、これらをまとめて定数 kE(起電力定数)と置きます。
これを使うと、誘導起電力の公式は次のようにスッキリ書けます。
E [V]:誘導起電力 Φ [Wb]:1磁極あたりの磁束 N [min-1]:回転数
この公式が教えてくれること
E = kEΦN は、たった3つの情報で起電力がわかることを意味しています。
| 何を変えると… | 起電力 E はどうなる? | 物理的な意味 |
|---|---|---|
| Φ を大きくする | E も大きくなる(比例) | 磁界が強いほど、導体が切る磁束が増える |
| N を大きくする | E も大きくなる(比例) | 速く回すほど、1秒あたりに切る磁束が増える |
| Φ を半分にする | E も半分になる | 磁界を弱めると発電力も落ちる |
工場で使う直流モータの速度を変えるとき、「電圧を変える方法」と「界磁電流を変えて磁束Φを変える方法」があります。E = kΦN の公式を見れば、NをコントロールするにはEかΦを動かせばいいとすぐにわかりますよね。これが第6回「速度制御」の記事に直結する話です。

トルクの公式 T を導出する
次はトルク T の公式を導出します。2つの導出方法がありますが、ここでは「エネルギー保存則(電力のバランス)」から導く方法を使います。最も直感的で、試験でも使いやすい方法です。
STEP 1:電力のバランスを考える
直流電動機では、電機子に供給された電気エネルギーの一部が機械エネルギー(回転運動)に変換されます。
ここで損失を無視すると、「起電力 × 電流 = 機械出力」が成り立ちます。
STEP 2:機械出力をトルクと角速度で表す
機械工学の基本公式として、機械出力 P = トルク T × 角速度 ω があります。
角速度 ω は回転数 N から次のように変換できます。
したがって、機械出力 P は:
STEP 3:2つの式を等号で結んで T を求める
STEP 1 と STEP 2 の電力が等しいので:
この式を T について解きます:
ここで E = (pZ/60a) × ΦN を代入します:
Nが約分されて消え、60も約分されます:

STEP 4:定数 kT にまとめて完成
pZ/2πa もすべて設計段階で決まる定数です。これをトルク定数 kT と置きます。
T [N·m]:トルク Φ [Wb]:1磁極あたりの磁束 Ia [A]:電機子電流
この公式が教えてくれること
| 何を変えると… | トルク T はどうなる? | 物理的な意味 |
|---|---|---|
| Ia を大きくする | T も大きくなる(比例) | 電流が増えると、導体に働く力(F=BIL)が大きくなる |
| Φ を大きくする | T も大きくなる(比例) | 磁界が強いほど、導体に働く力が大きくなる |
T = kTΦIa の式をよく見てください。回転数 N がどこにも登場しません。これは「トルクは回転数に依存しない。磁束と電流だけで決まる」という重要な事実を意味しています。停止状態(N=0)でも電流さえ流れればトルクが発生する──これが電動機が「起動できる」理由です。

2本の公式を並べて「速度・トルク・電流」の3者関係を整理する
ここまでで導出した2本の公式を並べます。
E は Φ と N で決まる
T は Φ と Ia で決まる
この2本の公式を見ると、Φ(磁束)が共通の「ハブ」になっていることがわかります。
Φ を介して、速度N・トルクT・電流Ia の3者が結びついているのです。これを1枚の図にまとめます。
⚡ 速度 N・トルク T・電流 Ia の3者関係図
① 「磁束Φが一定」のとき(多くの問題の前提条件)
→ E は N に比例、T は Ia に比例。シンプルな比例計算で解ける。
② 「トルクTを大きくしたい」とき
→ Φ を増やすか、Ia を増やすかの2択。
③ 「速度Nを上げたい」とき
→ E を大きくするか、Φ を小さくするかの2択(E = kΦN を N について解くと N = E/(kΦ))。

計算例で手を動かして定着させる
公式は導出しただけでは使えません。実際の数値を入れて「手を動かす」ことで初めて定着します。ここでは2問の計算例を解きます。
計算例①:誘導起電力 E を求める
4極の直流発電機がある。電機子の全導体数 Z = 200、並列回路数 a = 2、1磁極あたりの磁束 Φ = 0.02 Wb、回転数 N = 1,500 min-1 のとき、誘導起電力 E [V] を求めよ。
解法:ステップバイステップ
与えられた値を整理する
p = 4、Z = 200、a = 2、Φ = 0.02 Wb、N = 1,500 min-1
公式を書き出す
数値を代入する
計算する
= 6.667 × 30

計算例②:トルク T を求める
ある直流電動機の誘導起電力が E = 200 V、電機子電流が Ia = 50 A、回転数が N = 1,200 min-1 のとき、トルク T [N·m] を求めよ。
この問題では p, Z, a の値が与えられていません。こういうとき、T = kΦIa の形ではなく、エネルギー保存の式 EIa = Tω から直接求めるのが定番の解き方です。
解法:ステップバイステップ
電機子内部の電力 P を求める
P = E × Ia = 200 × 50 = 10,000 W = 10 kW
角速度 ω を求める
T = P / ω で求める
p, Z, a が与えられている → T = (pZ/2πa)ΦIa を使う
E, Ia, N が与えられている → P = EIa、T = P/ω を使う
どちらの解き方でも答えは同じになります。与えられた条件に応じて使い分けるのがポイントです。

直流機シリーズ 全8記事のロードマップ
この記事は、直流機シリーズ全8記事の第2回です。公式を理解したので、次回は「直流電動機の種類と特性」に進みます。
直流機の誘導起電力とトルク|E=kΦNの公式を導出から計算例まで
計算問題で毎回出る公式群。導出過程を省略せず、速度・トルク・電流の3者関係を1枚の図にまとめる。
直流電動機の種類と特性|分巻・直巻・複巻の速度-トルク曲線を一目で比較
正誤問題の頻出テーマ。3種の等価回路と速度-トルク曲線を並べて比較。「直巻は無負荷危険」の理由を直感的に解説。
直流発電機の種類と外部特性|他励・分巻・直巻・複巻を一覧整理
電動機との対比で整理。外部特性曲線を並べ「なぜ分巻は電圧がほぼ一定か」を回路から説明。
電機子反作用とは?|磁束の歪みと減磁作用を図解で完全理解
穴埋め問題の定番。磁束分布図のBefore/Afterで「何が起きるか」を視覚化し、対策(補極・補償巻線)まで解説。
直流電動機の速度制御と始動法|電圧制御・界磁制御・抵抗制御を比較
穴埋め・正誤問題で出題。3つの速度制御法と始動抵抗法を整理し、「どの方法をいつ使うか」のフローチャートを提供。
直流機の計算パターン完全網羅|過去問5パターンを途中式なしで解説
計算問題の解法パターン集。等価回路から立式→数値代入の全手順。頻出5パターンを完全カバー。
ブラシレスDCモータとは?|永久磁石+インバータで「整流子いらず」
R01, R03で出題実績あり。従来の直流機との比較で「なぜブラシレスが増えているか」を解説。

まとめ
この記事では、直流機の計算問題の土台となる2本の公式を導出から解説しました。
- 誘導起電力:E = (pZ/60a) × ΦN = kEΦN
「導体が磁束を切る速さ」から導出。E は Φ と N に比例する。 - トルク:T = (pZ/2πa) × ΦIa = kTΦIa
「エネルギー保存則(EIa = Tω)」から導出。T は Φ と Ia に比例する。 - 磁束Φ が「ハブ」:速度N・トルクT・電流Ia の3者がΦを介して結びついている
- トルクの式に回転数 N は含まれない → 停止状態でもトルクは発生する
- p, Z, a が与えられたら直接代入、E, Ia, N が与えられたらP = EIa, T = P/ωで解く
この2本の公式は、第3回以降のすべての記事で使い続けます。特に第7回の計算パターン完全網羅では、この公式が大前提です。今のうちにしっかり理解しておきましょう。
📚 次に読むべき記事
まだ読んでいない方は、構造を先に理解してから公式に入ると腹落ちします。
4科目の全体戦略を確認し、機械科目の位置づけを把握しましょう。
参考書・アプリ・文房具など、合格者が使っていたグッズを厳選紹介。