電力科目の解説

【電験三種・電力】架空送電線の構造|電線・がいし・鉄塔・架空地線を「鉄塔の上から下まで」完全図解

😣 こんな経験はありませんか?
  • 通勤途中に鉄塔を見て「あの部品って何?」と思ったけど、調べずに終わった
  • 「ACSR」「がいし」「架空地線」——名前は聞いたことあるけど、どこについてる部品なのかイメージできない
  • 過去問で「架空送電線路の構成要素に関する記述で誤っているものを選べ」が出て、勘で答えた
✅ この記事でわかること
  • 架空送電線を構成する 4つの部品 の名前・役割・見た目
  • 電線の種類(ACSR・TACSR・多導体)の違いが「一発で」わかる比較表
  • がいし・鉄塔・架空地線の「なぜこの形なの?」がわかる直感的な解説
  • 電験三種の過去問で どこが狙われるか を整理したポイント集

通勤中に窓の外を見ると、巨大な鉄塔に太い電線が何本も張られている光景が目に入ります。

あの鉄塔の頂上にある細い線は何か?電線を支えている白い皿のようなものは何か?——実はあの一つひとつが、電験三種の電力科目で出題される超頻出テーマです。

この記事では、架空送電線を「鉄塔の上から下へ」順番にたどりながら、4つの構成要素を完全図解します。暗記ではなく、「なぜこの部品が必要なのか」を理解すれば、正誤問題は怖くなくなります。

架空送電線の全体像|4つの構成要素を「上から下」でつかむ

架空送電線は、たった4つの部品で成り立っています。鉄塔のてっぺんから地面に向かって、以下の順番で並んでいます。

🗼 鉄塔を上から下にたどると…

最上部

① 架空地線(GW)——雷から電線を守る「避雷針」の役割

骨格

② 鉄塔(支持物)——電線を空中に持ち上げる「骨格」

腕の先端

③ がいし——電線と鉄塔を「絶縁」する白い皿

がいしの先

④ 電線(ACSR等)——実際に電気を運ぶ「主役」

💡 覚え方のコツ
地(架空地線)→ 鉄(鉄塔)→ が(がいし)→ 線(電線)」——上から下の順番で「ちてつがせん」と覚えましょう。試験で構成要素を聞かれたら、鉄塔の上から下にたどれば漏れなく答えられます。

では、ここから一つずつ詳しく見ていきましょう。主役の「電線」からスタートします。

④ 電線|電気を運ぶ「主役」はアルミ+鋼の二重構造

架空送電線は「裸電線」——被覆がない

まず最初に知っておくべきことがあります。家のコンセントに繋ぐ電源ケーブルは、ゴムやビニールの被覆で覆われていますよね。でも、架空送電線には被覆がありません。裸の金属線がむき出しです。

なぜか?理由は2つです。

理由①:放熱

大電流が流れると電線が発熱します。被覆があると熱がこもって電線が劣化するため、裸にして空気で冷やします。

理由②:コストと重量

何十kmもの電線に被覆をつけると、材料費も重量も膨大になります。高い鉄塔で地上から離し、がいしで絶縁すれば被覆は不要です。

ACSR(鋼心アルミより線)が主役

架空送電線で最も多く使われている電線がACSR(Aluminum Conductor Steel Reinforced=鋼心アルミより線)です。

ACSRは「おにぎり」のような二重構造をしています。

🔩

中心:鋼線(鉄)

電線を引っ張る機械的強度を担当。重力や風に耐える「骨」の役割。

外側:アルミ線

電気を流す導電性を担当。銅より軽くて安い。電気の通り道。

⚠️ なぜ銅線じゃないの?
銅は導電率が高いですが、重い&高価です。架空送電線は数十kmの長さになるため、重量とコストが大問題。アルミは銅より導電率は劣りますが、軽くて安い。「多少導電率が低くても、軽い方が鉄塔の負担が減る」という理由でアルミが選ばれています。

電線の種類を比較表で整理

ACSRの他にも、用途に応じていくつかの種類があります。電験三種で覚えるべきは以下の4つです。

種類 正式名称 特徴 使いどころ
ACSR 鋼心アルミより線 最も一般的。軽量・安価・高強度 一般的な送電線の大半
TACSR 鋼心耐熱アルミ合金より線 ACSRより高温に耐える(許容温度が高い) 大電流が流れる区間(送電容量UP)
硬銅より線 HDCC 導電率が高い。ただし重い&高価 短距離の特殊な用途
OPGWケーブル 光ファイバ複合架空地線 架空地線に光ファイバを内蔵。通信も兼ねる 架空地線(電力用通信回線として)
🎯 試験で狙われるポイント
「架空送電線で最も多く使われる電線は?」→ ACSR。「許容温度を上げて送電容量を増やすには?」→ TACSR。この2つは鉄板です。また「OPGWは架空地線に光ファイバを内蔵したもの」も正誤問題で出ます。

多導体方式|1本の代わりに「束」にして送る

超高圧(187kV以上)の送電線をよく見ると、1相あたり2本、4本の電線が束になっているのがわかります。これを多導体方式といいます。

「太い電線1本じゃダメなの?」と思いますよね。実は、太い電線1本にするより、細い電線を複数束ねた方がメリットが大きいのです。

📊 多導体方式の3つのメリット

① コロナ放電の抑制 電線表面の電位傾度(電界の強さ)が下がり、コロナ放電が発生しにくくなる
② インダクタンスの低減 等価的に電線の半径が大きくなるため、インダクタンスが小さくなる
③ 送電容量の増大 ①②の結果、同じ電圧でもより多くの電力を送れるようになる
💡 イメージ
太いホース1本でドバッと水を流すと、ホースの表面に圧力が集中してホースが破裂しやすくなります。でも、細いホースを4本束ねれば、1本あたりの圧力は分散します。これと同じで、電線を複数束ねると表面の電界が分散し、コロナ放電(電気が空気中に漏れる現象)を防げるのです。
🎯 試験で狙われるポイント
「多導体方式を採用する目的は?」→ コロナ放電の抑制、インダクタンスの低減、送電容量の増大。「静電容量はどうなる?」→ 増加する(等価半径が大きくなるため)。この点が引っかけで出ます。

③ がいし|電線と鉄塔を「絶縁」する白い皿

鉄塔は金属です。電線も金属です。この2つが直接触れたら、大量の電流が鉄塔を通って地面に流れてしまいます(地絡事故)。これを防ぐのががいし(碍子)です。

がいしは磁器(セラミック)やガラスでできた絶縁体で、電線と鉄塔のあいだに挟み込んで電気が鉄塔側に流れないようにブロックします。

がいしの2タイプ|「ぶら下げ」と「引っ張り」

送電用がいしは大きく2種類あり、鉄塔の役割によって使い分けられます。

種類 取付け方 使う場所 イメージ
懸垂がいし 鉛直にぶら下げる 直線部分の鉄塔(懸垂鉄塔) お皿を縦に並べて吊るしたイメージ 🍽️⬇️
耐張がいし 水平に引っ張る 角度・引留め鉄塔(耐張鉄塔) お皿を横に並べて綱引きしているイメージ 🍽️↔️
💡 連結個数で電圧がわかる
1個のがいしで絶縁できる電圧には限界があります。だから送電電圧が高いほど、がいしの連結個数が多くなります。66kVなら4〜5個、154kVなら10個前後、275kVなら16〜20個ほど。鉄塔を見上げて「がいしが何個ぶら下がっているか」を数えれば、おおよその送電電圧がわかります。

長幹がいし|笠形ではなく「棒状」のタイプ

懸垂がいしは「お皿が連なった形」ですが、もう一つ、棒状で1本のがいしもあります。これを長幹がいしといいます。

長幹がいしは連結部分がないため、汚れに強く(汚損対策)、塩害地域や汚染地域で使われます。

🎯 試験で狙われるポイント
正誤問題の定番:「雷撃による絶縁破壊は、がいし表面の気中放電(フラッシオーバ)で起こるように設計されている」→ 正しい。がいし内部が破壊されると交換が必要になるため、あえて表面で放電させる設計です。「がいし内部で起こる」と書かれていたら誤りです。

アークホーン|がいしを「雷のダメージ」から守る盾

がいし装置の両端には、アークホーンと呼ばれる金属の角(つの)が取り付けられています。

雷でフラッシオーバ(表面放電)が起きると、その後に続流(送電電流がアークとなって流れ続ける現象)が発生することがあります。アークホーンは、このアーク(電弧)をがいし本体から離れた位置に誘導して、がいしの損傷を防ぎます。

💡 イメージ
アークホーンは「雷のダメージを自分が引き受ける身代わり」です。がいし本体は高価で交換が大変。だからアークホーンという安い金属パーツに雷のダメージを集中させ、がいし本体を守っているのです。

② 鉄塔(支持物)|電線を空中に持ち上げる「骨格」

鉄塔の役割はシンプルです。電線を地面から高い位置に持ち上げて、安全な離隔距離を確保すること。人や建物に電線が近づきすぎないように、空中に持ち上げているのです。

鉄塔の分類|「形」と「使い方」の2軸で分ける

鉄塔は「形状」「機能(使い方)」の2軸で分類できます。

分類①:機能による分類

種類 設置場所 がいしの付け方 イメージ
懸垂鉄塔 送電線の直線部分 懸垂がいし(ぶら下げ) 洗濯物干しの「竿受け」のように電線を吊るす
耐張鉄塔 送電線の角度が変わる地点 耐張がいし(引っ張り) 綱引きの「審判」のように電線を左右に引き留める
引留鉄塔 送電線の終端(変電所入口など) 耐張がいし(引っ張り) 「ここで電線おしまい」のストッパー
💡 なぜ耐張鉄塔が必要?
送電線はまっすぐ一直線に張れません。山や川を避けてカーブします。カーブ地点では電線に横方向の張力がかかるため、それに耐えられる頑丈な鉄塔(耐張鉄塔)が必要です。直線部分は電線を吊るすだけなので、軽量な懸垂鉄塔で十分です。

分類②:形状による分類

形状 特徴 用途
四角鉄塔 最も一般的な形。4本の脚で安定性が高い 山間部・平野部の大半
鋼管柱 パイプ状。スリムで景観に配慮 都市部・景観配慮地域
門型鉄塔 2本の柱に横桁を渡した門の形 変電所の引込口など
⚠️ 航空障害灯の義務
地上高60m以上の鉄塔は、航空法により赤白の塗り分けまたは航空障害灯(フラッシュライト)の設置が義務付けられています。通勤中に赤白の鉄塔を見かけたら「あれは60m以上あるんだな」と思ってください。

① 架空地線(GW)|鉄塔のてっぺんにある「避雷針」

鉄塔をよく見ると、一番上に細い線が1〜2本張られているのがわかります。これが架空地線(GW:Ground Wire)です。

架空地線は電気を運ぶためのものではありません。目的は雷から送電線を守ることです。

架空地線の仕組み|「雷を自分に引きつけて逃がす」

STEP 1
雷が落ちてくる
🛡️
STEP 2
架空地線が受け止める
🏗️
STEP 3
鉄塔→接地線で大地へ逃がす

つまり、架空地線は「避雷針のロープ版」です。建物の避雷針が「雷を自分に引きつけて地面に逃がす」のと同じ原理で、送電線への直撃雷(直雷)を防ぎます。

遮蔽角|架空地線の「守備範囲」

架空地線で雷を防ぐには、送電線が架空地線の「影」に入っている必要があります。この「影の角度」を遮蔽角(しゃへいかく)といいます。

📐 遮蔽角とは
架空地線の真下から送電線の位置までの角度。遮蔽角が小さいほど、防雷効果が高い(送電線がしっかり「影」に入っている)。最近の超高圧送電線では遮蔽角を約20°以下にするのが一般的です。

OPGW|架空地線に光ファイバを内蔵

最近の架空地線には、光ファイバを内蔵したOPGW(Optical Ground Wire)が使われるケースが増えています。これは架空地線の中に光ファイバケーブルを通すことで、雷よけの役割と通信回線の役割を1本で兼ねる一石二鳥のケーブルです。

🎯 試験で狙われるポイント
① 架空地線は鉄塔の最上部に設置し、接地する(がいしで絶縁しない。鉄塔を通じて大地につなぐ)。
② 架空地線には裸電線を使う。
遮蔽角が小さいほど防雷効果が高い
OPGWは光ファイバを内蔵した架空地線で、電力用通信にも使用される。
——この4つが正誤問題の定番です。

地面の下も重要|埋設地線と塔脚接地抵抗

架空地線が雷を受け止め、鉄塔を通じて地面に逃がす——ここまではOKですよね。でも、地面に逃がす「最後の出口」の抵抗が高いと、うまく逃がせません

鉄塔の脚の部分の接地抵抗を塔脚接地抵抗といいます。この値が大きいと、雷電流が地面にスムーズに流れず、鉄塔の電位が上がります。すると、鉄塔からがいしを通って送電線に逆方向に放電してしまう——これを逆フラッシオーバといいます。

⚠️ 逆フラッシオーバとは
通常のフラッシオーバは「電線→がいし表面→鉄塔」の方向。逆フラッシオーバは「鉄塔→がいし表面→電線」の逆方向の放電です。塔脚接地抵抗が高いと、雷電流が逃げ場を失い、鉄塔の電位が急上昇して発生します。

これを防ぐため、鉄塔の地下には埋設地線が敷設され、塔脚接地抵抗を下げる工夫がされています。

🎯 試験で狙われるポイント
「塔脚接地抵抗を低くすることで逆フラッシオーバを防止できる」→ 正しい。「逆フラッシオーバは鉄塔側から電線側へ放電する現象である」→ 正しい。このセットで覚えましょう。

まとめ|架空送電線の4大構成要素を1枚の表で総整理

構成要素 位置 役割 試験の頻出ポイント
① 架空地線 鉄塔最上部 雷から送電線を保護(直撃雷防止) 裸電線を使用/接地する/遮蔽角が小さいほど効果大/OPGW
② 鉄塔 全体の骨格 電線を空中に支持し安全な離隔距離を確保 懸垂型(直線)と耐張型(角度点)の使い分け/60m以上は航空障害灯
③ がいし 鉄塔の腕先端 電線と鉄塔を絶縁 懸垂/耐張の使い分け/長幹がいし/フラッシオーバは表面で起こる設計/アークホーン
④ 電線 がいしの先 実際に電力を輸送する ACSR(最多)/TACSR(耐熱)/多導体方式(コロナ抑制・インダクタンス低減)

試験直前チェックリスト

☑ 架空送電線の主力電線は ACSR(鋼心アルミより線)
☑ 耐熱タイプは TACSR(送電容量UP目的)
☑ 多導体方式は コロナ抑制・インダクタンス低減・送電容量増大(静電容量は増加)
☑ がいしの絶縁破壊は 表面(気中放電)で起こるように設計
アークホーン はがいし両端に設けた金属電極でアークをがいし本体から離す
☑ 懸垂鉄塔は直線区間、耐張鉄塔は角度点・引留め点
☑ 架空地線は 裸電線 を使用し、鉄塔を通じて 接地 する
遮蔽角 が小さいほど防雷効果が高い
OPGW は架空地線に光ファイバを内蔵したもの
塔脚接地抵抗 を低くして逆フラッシオーバを防止

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