電力科目の解説

【電験三種・電力】中性点接地方式|直接接地・抵抗接地・消弧リアクトル接地・非接地の違いを完全図解

😣 こんな経験はありませんか?
  • 「直接接地」「抵抗接地」「消弧リアクトル接地」「非接地」の4つが出てきて頭がパンクする
  • 「地絡電流が大きい方式はどれ?」と聞かれて、即答できない
  • 正誤問題で「抵抗接地方式は通信線への誘導障害が大きい」と出されて、○か✕か迷う
✅ この記事でわかること
  • そもそも「中性点接地」とは何か、なぜ必要なのか
  • 4つの方式の違いを「1枚の比較表」で完全整理
  • 電験三種の正誤問題で秒で解ける判定ポイント

中性点接地方式は、電験三種・電力科目の正誤問題でほぼ毎回出題される超頻出テーマです。4つの方式が登場しますが、実は比較軸はたった5つしかありません。この5つの軸を1枚の表に整理すれば、どんな出題パターンにも対応できます。

この記事では、まず「中性点を接地するとは何か」をゼロから説明し、4つの方式を図解で比較します。最後に、試験で狙われる正誤問題のパターンをまとめます。

そもそも「中性点接地」とは?

中性点=三相Y結線の「中心点」

送電系統の変圧器は、ほとんどの場合Y(スター)結線で接続されています。Y結線には3本の巻線が1つの点に集まる「中心点」があり、これを中性点(ニュートラルポイント:N点)と呼びます。

Y結線と中性点のイメージ
R
S
T
\ | /
N点
中性点
ここをどう接地するか?
⏚ 大地(アース)

この中性点を大地(アース)に接続することを「中性点接地」と言います。そして、「どのように接地するか」によって4つの方式に分かれます。

なぜ中性点を接地する必要があるのか?

「そもそも接地しなければいいのでは?」と思うかもしれません。しかし中性点を接地しないと、1線地絡事故(1本の電線が大地に触れる故障)が発生したときに深刻な問題が起きます。

異常電圧の発生

健全相(故障していない相)の対地電圧が最大で√3倍(約1.73倍)に上昇。機器の絶縁が耐えられなくなる可能性

🔥

アーク地絡の継続

地絡点にアーク(放電)が発生し続け、設備損傷や火災の原因になる

🔍

故障検出が困難

地絡電流が小さすぎて保護継電器が動作せず、故障を検出できない場合がある

中性点接地方式は、これらの問題を「どのバランスで制御するか」の設計思想の違いです。異常電圧を下げたければ地絡電流は大きくなり、地絡電流を小さくしたければ異常電圧が上がる――このトレードオフを理解することが、4つの方式を理解するカギです。

📐 核心のトレードオフ
地絡電流が大きい ⇔ 異常電圧が小さい
地絡電流が小さい ⇔ 異常電圧が大きい

4つの中性点接地方式を図解で理解

中性点接地方式は以下の4種類です。それぞれ「中性点と大地の間に何を挟むか」が違います。

① 直接接地

N
直結(何も挟まない)
⏚ 大地
地絡電流:最大
🔧

② 抵抗接地

N
⏚ 大地
地絡電流:中程度
🌀

③ 消弧リアクトル接地

N
リアクトル L
⏚ 大地
地絡電流:ほぼゼロ
🚫

④ 非接地

N
✕ 接続なし
⏚ 大地(繋がない)
地絡電流:極めて小さい
💡 覚え方のコツ
中性点と大地の間に「何を挟むか」で名前が決まります。
直接=何も挟まない / 抵抗=抵抗を挟む / 消弧リアクトル=リアクトルを挟む / 非接地=そもそも繋がない
とてもシンプルです。

① 直接接地方式|超高圧系統の標準

中性点を直接アースへ繋ぐ

直接接地方式は、中性点と大地の間に何も挟まない方式です。最もシンプルで、日本では187kV以上の超高圧・特別高圧系統に採用されています(275kV、500kVなど)。

メリット

  • 異常電圧が最も低い:健全相の電圧上昇が小さい(1.3倍以下)
  • 機器の絶縁レベルを下げられる:コスト削減効果が大きい
  • 保護継電器が確実に動作:地絡電流が大きいので検出が容易

デメリット

  • 地絡電流が最も大きい:故障点の損傷が大きい
  • 通信線への誘導障害が大きい:大きな地絡電流が近くの通信線にノイズを与える
  • 1線地絡時に送電を継続できない:即座に遮断器でトリップ
💡 なぜ超高圧で直接接地を使うのか?
超高圧系統(187kV以上)では、機器の絶縁コストが莫大になります。直接接地にすると異常電圧を低く抑えられるため、変圧器やがいしの絶縁レベルを下げられ、設備費を大幅に削減できます。地絡電流が大きいデメリットよりも、絶縁コスト削減のメリットが上回るのです。

② 抵抗接地方式|日本で最も広く使われる方式

中性点と大地の間に「抵抗」を挟む

抵抗接地方式は、中性点と大地の間に抵抗器(接地抵抗)を接続する方式です。日本では22kV~154kVの高圧・特別高圧系統で最も広く採用されています。

抵抗を挟むことで、直接接地の「地絡電流が大きすぎる」問題と、非接地の「異常電圧が高すぎる」問題のバランスをとった「ちょうどいい」方式です。

メリット

  • 地絡電流を適度に制限:故障点の損傷を抑える
  • 異常電圧も適度に抑制:健全相の電圧上昇を許容範囲内に
  • 保護継電器の動作も確実:地絡電流が十分に検出可能
  • 通信線への誘導障害が小さい:地絡電流が制限されるため

デメリット

  • 接地抵抗器のコスト:抵抗器本体と設置スペースが必要
  • 抵抗器での電力損失:地絡時に抵抗で発熱する
  • 1線地絡時は送電停止:遮断器でトリップが必要(直接接地と同じ)
🔧 試験での狙われポイント
「抵抗接地方式は日本の66kV~154kV系統で最も広く採用されている」は○です。「通信線への誘導障害が大きい」→ ✕。直接接地に比べて地絡電流が制限されるため、誘導障害は小さいのが抵抗接地の特徴です。

③ 消弧リアクトル接地方式|アークを自動消滅させる

中性点と大地の間に「リアクトル」を挟む

消弧リアクトル接地方式は、中性点と大地の間にリアクトル(コイル)を接続する方式です。この方式の最大の特徴は、1線地絡事故のアーク(放電)を自動的に消滅させることができる点です。

なぜアークが消えるのか?|進み電流と遅れ電流の相殺

1線地絡が発生すると、送電線の対地静電容量を通じて進み電流(充電電流)が地絡点に流れます。この電流がアークを維持する「燃料」です。

消弧リアクトルは、この進み電流とちょうど大きさが等しい遅れ電流を中性点から流します。進み電流と遅れ電流が地絡点で相殺され、地絡電流がほぼゼロになります。アークの「燃料」が断たれるので、アークは自然に消滅します。

消弧リアクトルの原理イメージ
対地静電容量C
→ 進み電流 Ic(アークの燃料)
消弧リアクトルL
→ 遅れ電流 IL(打ち消し役)
地絡点の電流
≒ ゼロ!🎉
Ic(進み)と IL(遅れ)が相殺 → アークが消滅 → 送電を継続できる!

メリット

  • 地絡電流がほぼゼロ:故障点の損傷がほとんどない
  • アークが自動消滅:1線地絡時でも送電を継続できる可能性がある
  • 通信線への誘導障害が極めて小さい

デメリット

  • 異常電圧が高い:健全相の電圧上昇が大きい(非接地に近い)
  • 地絡故障の検出が困難:地絡電流が小さすぎるため保護継電器が動作しにくい
  • リアクトルの同調が必要:系統の対地静電容量と共振させるための調整が複雑
⚠️ 「消弧」の意味
「消弧(しょうこ)」とは「アーク(弧光放電)を消す」という意味です。消弧リアクトルは別名「ペテルゼンコイル」とも呼ばれます(発明者の名前に由来)。試験で「ペテルゼンコイル」と出ても、消弧リアクトルのことだと分かればOKです。
📘 関連記事
【電験三種・電力】フェランチ効果と調相設備|進相コンデンサ・分路リアクトルの役割を完全図解 →

消弧リアクトルは「分路リアクトル」とは別物。混同しないよう、リアクトルの役割を整理したい方はこちら。

④ 非接地方式|低圧配電系統の標準

中性点を大地に繋がない

非接地方式は、中性点を大地に接続しない方式です。日本では6.6kV以下の高圧配電系統で広く採用されています。皆さんが普段使っている「電柱から家庭に届く電気」の配電線は、ほとんどがこの非接地方式です。

メリット

  • 地絡電流が極めて小さい:対地静電容量を通じた微小な電流のみ
  • 1線地絡時でも送電を継続できる:供給信頼度が高い
  • 通信線への誘導障害がほぼない
  • 接地設備が不要でコストが低い

デメリット

  • 異常電圧が最も高い:健全相の対地電圧が最大√3倍に上昇
  • 地絡検出が極めて困難:地絡電流が小さすぎて保護継電器が反応しにくい
  • 間欠アーク地絡で異常な過電圧が発生する可能性
💡 なぜ6.6kV以下で非接地を使うのか?
低い電圧階級では、異常電圧が高くても機器の絶縁耐力で十分耐えられます。それよりも、1線地絡でも送電を止めない「供給信頼度」のほうが重要です。停電しにくい方が家庭や工場にとってメリットが大きいからです。

4つの方式を1枚の比較表で完全整理

ここまでの内容を1つの表にまとめます。試験直前にこの表だけ見返せば、正誤問題はほぼ対応できます。

比較項目 ① 直接接地 ② 抵抗接地 ③ 消弧リアクトル ④ 非接地
挟むもの なし(直結) 抵抗 R リアクトル L 接続しない
地絡電流 最大 ⚡⚡⚡ 中程度 ⚡⚡ ほぼゼロ ⚡ 極小 ⚡
異常電圧
(健全相の上昇)
最も低い ◎ やや高い ○ 高い △ 最も高い ✕
(最大√3倍)
保護継電器
(地絡検出)
容易 ◎ 容易 ○ 困難 ✕ 困難 ✕
通信線への
誘導障害
大きい ✕ 小さい ○ 極めて小さい ◎ 極めて小さい ◎
1線地絡時の
送電継続
不可(即トリップ) 不可(即トリップ) 可能(アーク消滅) 可能
適用電圧
(日本の標準)
187kV以上 22kV~154kV 一部66kV系統 6.6kV以下
💡 この表の「斜めの法則」
表をよく見ると、「地絡電流」と「異常電圧」は必ず逆の関係になっていることがわかります。地絡電流が大きい方式(直接接地)は異常電圧が低く、地絡電流が小さい方式(非接地)は異常電圧が高い。このトレードオフさえ覚えれば、細かい○✕を丸暗記しなくても、論理的に正解を導けます。

適用電圧と日本の電力系統|「どの電圧にどの方式」

日本の電力系統では、電圧階級ごとに使われる接地方式がほぼ決まっています。この対応関係も試験で頻出です。

日本の電力系統と接地方式の対応
500kV
直接接地方式
275kV
直接接地方式
187kV
直接接地方式
── 187kV ── ここが境界 ──
154kV
抵抗接地方式
66kV
抵抗接地
消弧リアクトル(一部)
22kV
抵抗接地方式
── 6.6kV ── ここが境界 ──
6.6kV以下
非接地方式
⚠️ 試験で狙われる電圧の境界
「187kV以上 → 直接接地」「6.6kV以下 → 非接地」の2つの境界を覚えてください。問題で「154kVの送電系統に直接接地を採用する」と書かれていたら✕(154kVは抵抗接地)。このように、電圧の数字と接地方式の組み合わせで正誤を問われることが多いです。

電験三種で狙われる正誤問題パターン6選

中性点接地方式の正誤問題は、パターンが決まっています。以下の6つを押さえておけば、ほぼすべての出題に対応できます。

パターン①:適用電圧の入れ替え

問題文:66kVの送電系統に直接接地方式を採用する」

→ ✕:66kVは「抵抗接地方式」。直接接地は187kV以上。

パターン②:地絡電流と異常電圧の逆転

問題文:「直接接地方式は、地絡電流が大きく、異常電圧も高い

→ ✕:直接接地は地絡電流が最大だが、異常電圧は最も低い。地絡電流↑ ⇔ 異常電圧↓ のトレードオフを思い出す。

パターン③:誘導障害の方式入れ替え

問題文:抵抗接地方式は通信線への誘導障害が大きい

→ ✕:抵抗接地は地絡電流を制限するので誘導障害は小さい。誘導障害が大きいのは「直接接地方式」。

パターン④:消弧リアクトルの動作原理

問題文:「消弧リアクトル接地方式は、リアクトルに流れる進み電流で地絡アークを消滅させる」

→ ✕:リアクトルに流れるのは「遅れ電流」。この遅れ電流が、対地静電容量による「進み電流」と相殺して地絡電流をゼロにする。

パターン⑤:非接地方式の送電継続

問題文:「非接地方式は、1線地絡故障が発生しても送電を継続できる」

→ ○:非接地方式は地絡電流が極めて小さいため、1線地絡でも送電継続が可能。

パターン⑥:直接接地の絶縁レベル

問題文:「直接接地方式は異常電圧が低いため、機器の絶縁レベルを低く設計できる」

→ ○:これが直接接地を超高圧系統で採用する最大の理由。絶縁コストの大幅削減。

💡 迷ったときの判定フロー
STEP 1:電圧の数字を確認 → 187kV以上=直接接地、22~154kV=抵抗接地、6.6kV以下=非接地
STEP 2:地絡電流と異常電圧はトレードオフ → 片方が大きいなら他方は小さい
STEP 3:誘導障害は地絡電流に比例 → 地絡電流が大きい方式ほど誘導障害も大きい
STEP 4:消弧リアクトル=遅れ電流でアーク消滅。ペテルゼンコイルは同義語

まとめ|この記事の要点を30秒で振り返る

中性点接地とは? 三相Y結線の中性点を大地に接続すること
なぜ必要? 1線地絡時の異常電圧を抑え、保護継電器を確実に動作させるため
核心のトレードオフ 地絡電流が大きい ⇔ 異常電圧が低い(逆も然り)
直接接地(187kV以上) 地絡電流:最大 / 異常電圧:最低 / 絶縁コスト削減が目的
抵抗接地(22~154kV) バランス型。日本で最も広く使われる
消弧リアクトル接地 遅れ電流でアーク消滅。別名ペテルゼンコイル
非接地(6.6kV以下) 地絡電流:極小 / 異常電圧:最高 / 1線地絡時も送電継続

中性点接地方式の正誤問題は、「地絡電流と異常電圧のトレードオフ」と「電圧階級ごとの適用方式」さえ覚えていれば確実に得点できます。前のセクションの比較表を試験直前に見返してください。

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