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こんな経験はありませんか?
「コロナ放電」と聞いて、何となく放電なのはわかるけど、なぜ送電線で問題になるのかわからない
Peekの式が出てきて、記号の意味がまったく頭に入らない
「多導体方式はコロナ対策」と覚えたけど、なぜ電線を束ねるとコロナが減るのか説明できない
○ この記事でわかること
コロナ放電が「なぜ」起きるのか――電線表面の電界集中のメカニズム
Peekの式の各記号の意味と、計算問題への対応法
コロナ放電の影響(コロナ損・雑音・腐食)と対策(多導体方式など)
コロナ放電は、電験三種・電力科目の送電分野で正誤問題と計算問題の両方で出題 されるテーマです。正誤問題では「発生条件」と「対策」の入れ替えが狙われ、計算問題ではPeekの式を使った臨界電圧の計算が出ます。
この記事では、まず「コロナ放電とは何か」をイメージで掴んでから、Peekの式を分解し、最後に試験で狙われるパターンを整理します。
コロナ放電とは?|電線のまわりで空気が「壊れる」現象
結論:電線表面の電界が強すぎて、空気の絶縁が部分的に破壊される現象
送電線に高い電圧をかけると、電線の表面に強い電界(電気の力の場) が発生します。この電界があるレベルを超えると、電線のまわりの空気の絶縁が部分的に破壊されて、薄紫色の光を伴う放電 が起きます。これがコロナ放電 です。
コロナ放電の定義
送電線の導体表面の電位の傾き(電界強度)が空気の絶縁耐力を超えたときに、導体周辺で発生する部分的な放電現象
コロナ放電のイメージ
電圧が低いとき(正常)
空気の絶縁が保たれている ○
電圧が高すぎるとき(コロナ発生)
薄紫色の光+「ジジジ」音
イメージのコツ
コロナ放電は「完全な短絡(スパーク)」ではなく、電線のすぐ近くだけで起きる「部分的な」放電 です。電線と大地の間で火花が飛ぶわけではありません。電線のまわりの空気だけが「チリチリ」と放電している状態です。暗闇で見ると薄紫色の光が電線を取り巻くように見え、「コロナ(corona=王冠)」の名前はこの光の見た目に由来します。
電線表面の電界が絶縁耐力を超えるとコロナ放電
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なぜ電線の表面で電界が強くなるのか?
「細い導体」に電圧をかけると電界が集中する
同じ電圧がかかっていても、導体が細いほど表面の電界は強くなります。これは「先端効果」と呼ばれる現象で、避雷針の原理と同じです。
水道管にたとえると、同じ水圧でもノズルを細くすると水が勢いよく出るのと同じです。電界も、導体の半径が小さいほど表面に「ギュッと集中」します。
太い導体(半径 r が大きい)
電界が分散 → 電界が弱い → コロナ発生しにくい ○
細い導体(半径 r が小さい)
電界が集中 → 電界が強い → コロナ発生しやすい
導体表面の電界強度(概略式)
E:導体表面の電界強度 [kV/cm]、V:電圧 [kV]、r:導体の半径 [cm]、D:線間距離 [cm]
r が小さいほど E が大きくなる ことがこの式からわかります。
つまり、コロナ放電は「電圧が高い」かつ「導体が細い」ほど発生しやすい ということです。これがコロナ対策の出発点になります。
細い導体ほど電界が集中してコロナが起きやすい
コロナの臨界電圧|Peekの式を分解して理解する
臨界電圧=コロナが発生し始める電圧
コロナ放電が発生し始める電圧をコロナ臨界電圧 と呼びます。送電線の電圧がこの値を超えるとコロナ放電が始まります。Peek(ピーク)が導いた実験式で計算できます。
Peekの式(コロナ臨界電圧)
E₀ = 21.1 × m₁ × m₂ × δ × r × ln(D/r) [kV]
※ これは相電圧(対地電圧)の実効値です
各記号の意味|1つずつ分解する
記号
名前
意味・影響
21.1
定数
空気の絶縁破壊の強さ(波高値で約30kV/cm)を実効値に直した値(30÷√2≒21.1kV/cm)。Peekの原著の実用式の係数
m₁
電線の表面状態係数
電線の表面が滑らか→1.0 、撚線→0.8~0.9、汚れ・傷→さらに低下。m₁が小さい=コロナが発生しやすい
m₂
天候係数
晴天→1.0 、雨天→0.8 程度。雨の日はコロナが発生しやすい
δ
相対空気密度
標準状態(20℃, 1013hPa)で1.0 。高地(気圧低い)や高温→δ低下。δが小さい=空気が薄い=絶縁耐力が低い=コロナが発生しやすい
r
導体の半径 [cm]
r が大きい(太い導体)ほど E₀ が大きくなる =コロナが発生しにくい
D
線間距離 [cm]
D が大きい(線間が離れている)ほど E₀ が大きくなる
Peekの式の読み方のコツ
Peekの式は「臨界電圧E₀を上げたければ、式の中の値を大きくすればいい」 と読めます。m₁↑(表面を滑らかに)、m₂↑(晴天)、δ↑(低地・低温)、r↑(太い導体)→ すべてE₀を上げる方向 → コロナが起きにくくなる。
Peekの式:コロナ臨界電圧を決める5つの要素
コロナが発生しやすい条件|6つの要因を整理
Peekの式から読み取れる「コロナが発生しやすくなる条件」を整理します。正誤問題ではこの条件の○が直接問われます。
コロナが発生しやすい条件
理由(Peekの式との対応)
電圧が高い
送電電圧が臨界電圧E₀を超えやすくなる
導体の半径 r が小さい
E₀が下がる。表面の電界集中が強くなる
雨天・霧・雪
天候係数m₂が低下 → E₀が下がる
高地(気圧が低い)
相対空気密度δが低下 → 空気の絶縁耐力低下 → E₀が下がる
高温
空気密度δが低下 → E₀が下がる
電線の表面が粗い
表面状態係数m₁が低下 → E₀が下がる。傷・汚れ・撚線構造で悪化
逆に「コロナが発生しにくい」条件は
上の表の反対 ── 電圧が低い、導体が太い、晴天、低地(気圧が高い)、低温、表面が滑らか ── です。正誤問題では条件の逆転が狙われるので、「Peekの式の各要素が大きくなればE₀が上がり、コロナが起きにくくなる」 と覚えてください。
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コロナ放電の影響|なぜ問題なのか
コロナ放電が起きると、送電に以下の悪影響が生じます。
① コロナ損(電力損失)
空気中の放電にエネルギーが消費される。これをコロナ損 と呼ぶ。送電効率が低下する。雨天時に特に増大。
② コロナ雑音(電波障害)
放電に伴い高周波の電磁波(ノイズ)が発生。近くのラジオ・テレビに雑音障害 を与える。通信線にも誘導障害。
③ 騒音
「ジジジ」「ブーン」という可聴音が発生。送電線の近隣住民にとって騒音問題 になることがある。
④ 電線の腐食
コロナ放電でオゾン(O₃)や窒素酸化物 が生成。これが電線の表面を化学的に腐食し、寿命を縮める。
⑤ 高調波の発生
コロナ放電は非線形現象であるため、第3高調波などの高調波電流 が発生する。
試験での狙われポイント
コロナの影響で最も出題されるのは①コロナ損 と②コロナ雑音 です。「コロナ放電により電力損失 が発生し、通信線への誘導障害 の原因となる」→ ○。この2つは確実に押さえてください。
コロナ放電の5つの影響:損失・雑音・腐食・高調波・騒音
コロナ放電の対策|「電線を太くする」の最適解
Peekの式から、コロナ臨界電圧E₀を上げる(=コロナを発生しにくくする)ための対策が導けます。
対策①:多導体方式(最も重要!)
1相あたり1本の太い電線を使う代わりに、2本~4本の細い電線を束ねて1相として使う 方式です。超高圧送電線(275kV以上)で広く採用されています。
単導体方式
1本の電線で1相 → 表面の電界が集中 → コロナが発生しやすい
2導体方式
2本の細い電線で1相 → 見かけの半径が大きくなる → コロナが発生しにくい
4導体方式
4本で1相(500kV系統) → さらに電界が分散 → コロナ抑制効果◎
多導体方式のメリットはコロナ対策だけではない
① コロナ臨界電圧の上昇 (等価半径が大きくなる=見かけ上「太い電線」になる)
② インダクタンスの減少 (送電容量の増大につながる)
③ 静電容量の増加 (充電電流は増えるが、送電特性の改善効果のほうが大きい)
試験では①が最も問われますが、②もときどき出題されます。
その他のコロナ対策
対策
Peekの式との対応
太い導体を使う
半径 r を大きくする → E₀が上がる
多導体方式を採用する
等価半径が大きくなる → E₀が上がる(最も効果的)
電線の表面を滑らかにする
m₁を大きくする → E₀が上がる
線間距離を広くする
D を大きくする → E₀が上がる
多導体で等価半径を大きくしてコロナを抑える
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計算問題への対応|Peekの式の使い方
計算例:コロナ臨界電圧を求める
例題
三相3線式送電線の仕様が以下のとき、コロナ臨界電圧(線間電圧)を求めよ。
・導体の半径:r = 1.5 cm
・線間距離:D = 500 cm
・電線の表面状態係数:m₁ = 0.85
・天候係数:m₂ = 1.0(晴天)
・相対空気密度:δ = 1.0
STEP 1
Peekの式に各値を代入して相電圧の臨界電圧 E₀ を求める
E₀ = 21.1 × m₁ × m₂ × δ × r × ln(D/r)
= 21.1 × 0.85 × 1.0 × 1.0 × 1.5 × ln(500/1.5)
= 21.1 × 0.85 × 1.5 × ln(333.3)
= 21.1 × 0.85 × 1.5 × 5.81
= 156.3 [kV] (相電圧)
STEP 2
線間電圧に変換する(三相なので √3 倍)
線間電圧 = E₀ × √3 = 156.3 × 1.732 ≒ 271 [kV]
計算問題の注意点
① Peekの式で求まるE₀は相電圧(対地電圧) です。問題が線間電圧を聞いている場合は√3倍 を忘れずに。
② ln(自然対数)の計算が必要。ln(333) ≒ 5.81 のような値は問題文で与えられるか、選択肢から逆算できることが多い。
③ 単位に注意。r と D は同じ単位(cm) で揃えること。
コロナ臨界電圧の計算例:相電圧から線間電圧へ
電験三種で狙われる正誤問題パターン6選
パターン①:発生条件の逆転(超頻出)
問題文: 「コロナ放電は、導体の半径が大きい ほど発生しやすい」
→ :導体の半径が大きいほど表面の電界が分散し、コロナは発生しにくい 。発生しやすいのは半径が小さい とき。
パターン②:天候・気圧の影響
問題文: 「コロナ放電は、雨天時や気圧が低い高地で発生しやすい」
→ ○:雨天→m₂低下、高地→δ低下。どちらもE₀を下げるのでコロナが発生しやすくなる。
パターン③:多導体方式の効果
問題文: 「多導体方式は、等価的な導体半径を大きくすることでコロナ臨界電圧を高め、コロナ放電を抑制する」
→ ○:多導体の最大のメリット。これがコロナ対策の定番。
パターン④:コロナの影響
問題文: 「コロナ放電により電力損失(コロナ損)が発生し、通信線への雑音障害の原因にもなる」
→ ○:コロナ損と雑音障害はコロナの代表的な影響。
パターン⑤:コロナと送電電圧の関係
問題文: 「コロナ放電は主に低電圧 の送電線で問題となる」
→ :コロナは電圧が高い ほど発生しやすい。主に超高圧送電線(154kV以上) で問題になる。6.6kVなどの低圧系統ではほぼ発生しない。
パターン⑥:多導体方式とインダクタンス
問題文: 「多導体方式は、コロナ対策だけでなく、送電線のインダクタンスを減少させて送電容量を増大させる効果もある」
→ ○:多導体にするとインダクタンスLが減少し、同じ電圧でより多くの電力を送れる。500kV系統で4導体を採用する理由の一つ。
迷ったときの判定フロー
STEP 1: 「コロナが発生しやすい/しにくい」→ Peekの式のパラメータが大きい→E₀上がる→発生しにくい
STEP 2: 「多導体方式」→ 等価半径↑ → コロナ抑制○ / インダクタンス↓ → 送電容量↑○
STEP 3: コロナの影響 → コロナ損(電力損失)+雑音(電波障害)+腐食(オゾン)
コロナ放電の正誤問題と黄金ルール
まとめ|この記事の要点を30秒で振り返る
コロナ放電とは?
導体表面の電界が空気の絶縁耐力を超えて起きる部分的な放電
発生しやすい条件
高電圧、細い導体、雨天、高地(気圧低い)、高温、表面が粗い
Peekの式
E₀ = 21.1 × m₁ × m₂ × δ × r × ln(D/r) 各パラメータが大きいほどE₀↑
影響
コロナ損(電力損失)/ コロナ雑音(電波障害)/ 騒音 / 電線腐食(オゾン)
対策
多導体方式(最も重要)/ 太い導体 / 表面を滑らかに / 線間距離を広く
多導体の副次効果
インダクタンスの減少 → 送電容量の増大
コロナ放電は、Peekの式を「各パラメータが大きい→E₀が上がる→コロナ起きにくい」と読める ようになれば、正誤問題はほぼ対応できます。計算問題では式に代入してlnを計算し、相電圧→線間電圧の変換を忘れなければ得点源にできます。
コロナ放電の発生条件・影響・対策・計算の全体像
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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