機械科目の解説

【電験三種・機械】ヒートポンプとCOP(成績係数)|「冷房と暖房でCOPが違う」理由を完全図解

😣 こんな経験はありませんか?
  • ヒートポンプの「COP」が何を表しているのか、実はよくわかっていない
  • 冷房COPと暖房COPの式が違うけど、なぜ違うのか説明できない
  • 「暖房COP = 冷房COP + 1」と丸暗記しているが、理屈がわからず不安
  • 過去問でCOPの計算が出るたび、どっちの式を使えばいいか迷う
✅ この記事でわかること
  • ヒートポンプの仕組みを「熱の引っ越し」で直感的に理解
  • 冷房COPと暖房COPの式をエネルギー保存則から自力で導出できるようになる
  • 「暖房COP = 冷房COP + 1」の理由を図解で完全理解
  • 過去問頻出の2つの計算パターンを途中式付きで解説

ヒートポンプとCOP(成績係数)は、電験三種・機械科目の電熱分野でほぼ毎回出題される最頻出テーマです。

しかも、出題パターンは決まっています。「COP = 4.0のヒートポンプで水を◯℃加熱するのに必要な消費電力量は?」——このタイプの問題を確実に解けるかどうかで、合否が分かれます。

ところが、多くの受験生が「冷房COP = Q/W」「暖房COP = (Q+W)/W」を丸暗記して、なぜ式が違うのか理解していないのが実態です。丸暗記は本番のプレッシャーの下で公式を取り違えるリスクがあります。

この記事では、「なぜ暖房COPは冷房COP+1なのか」をエネルギー保存則から導出します。理屈で理解すれば、もう公式を間違えることはありません。

ヒートポンプとは?|「熱の引っ越し屋さん」

ヒートポンプを一言で言うと、「熱を低温側から高温側へ運ぶ装置」です。

自然界では、熱は高温→低温の方向にしか流れません(熱力学第二法則)。熱いコーヒーは放置すれば冷めますが、勝手に温め直されることはありません。

ヒートポンプは、電気エネルギー(仕事W)を使って、この「自然には起こらない方向」に熱を強制的に移動させます。

💡 「熱の引っ越し」で理解する
ヒートポンプは「熱の引っ越し屋さん」です。引っ越し業者(圧縮機)がトラック代(電気エネルギーW)を使って、荷物(熱Q)を低温側の部屋から高温側の部屋に運んでくれる。ポイントは、運んだ荷物(熱)の量は、トラック代(電力)よりもはるかに大きいこと。100万円で500万円分の荷物を運べるようなものです。これがCOP = 5の状態です。

ヒートポンプの4つの構成要素

ヒートポンプの中では冷媒(フロン等)が循環しており、以下の4つの機器を順番に通ります。

🔄
圧縮機
冷媒を圧縮
→高温・高圧に
🔥
凝縮器
冷媒が熱を放出
→液化
⬇️
膨張弁
冷媒を膨張
→低温・低圧に
❄️
蒸発器
冷媒が熱を吸収
→気化

この4つの機器をサイクル(循環)させることで、低温側から熱を「吸い上げ」、高温側に「吐き出す」のがヒートポンプの基本動作です。

⚠️ 試験でのポイント
正誤問題では「冷房時に室内機は蒸発器として機能する」「暖房時に室内機は凝縮器として機能する」の正誤が問われます。四方弁で冷媒の流れる方向を切り替えると、冷房↔暖房が切り替わることを理解しておきましょう。

核心|冷房と暖房で「エネルギーの流れ」が違う

ここがこの記事の最も重要なパートです。冷房と暖房でCOPの式が違う理由は、「何を得たいか」が違うからです。

冷房のエネルギーの流れ

冷房の目的は「室内から熱を奪うこと」です。

室内(低温側)
🏠
熱を奪われる
──Q→
蒸発器で吸熱
圧縮機
電力Wを消費
─Q+W→
凝縮器で放熱
室外(高温側)
☀️
熱を受け取る
📐 エネルギー保存則(冷房時)

室外に排出される熱 = 室内から吸収した熱 + 圧縮機の消費電力

Q高温側 = Q + W

冷房で「得たいもの」は「室内から奪った熱Q」です。これがどれだけ効率的に得られたかを示すのが冷房COPです。

暖房のエネルギーの流れ

暖房の目的は「室内に熱を与えること」です。冷媒の流れが冷房と逆になります。

室外(低温側)
❄️
熱を奪われる
──Q→
蒸発器で吸熱
圧縮機
電力Wを消費
─Q+W→
凝縮器で放熱
室内(高温側)
🏠
熱を受け取る

暖房で「得たいもの」は「室内に供給される熱Q + W」です。

ここが決定的に重要です。暖房時は、室外から運んできた熱Qに加えて、圧縮機が消費した電力Wも熱に変わって室内に放出されるのです。冷房時にはこの電力Wは室外に捨てていましたが、暖房時には「おまけの暖房」として室内で活用されます。

🔑 これがすべてのカギ

冷房で得たいもの = Q(室内から奪った熱)
暖房で得たいもの = Q + W(室外の熱 + 圧縮機の電力も熱になる)

COP(成績係数)の公式を「自力で導出」する

COP(Coefficient of Performance:成績係数)とは、ヒートポンプの効率を示す指標です。定義は非常にシンプルです。

📐 COPの定義

COP = 得たい熱エネルギー ÷ 消費した電力

「1の電力で、何倍の熱を得られたか?」を表す数値

あとは、前のセクションで確認した「得たいもの」を代入するだけです。

冷房COPの導出

冷房で得たいもの = 室内から奪った熱 Q

COP冷房 = Q ÷ W

暖房COPの導出

暖房で得たいもの = 室内に供給された熱 Q + W

COP暖房 = (Q + W) ÷ W

「暖房COP = 冷房COP + 1」の証明

暖房COPの式を変形してみましょう。

COP暖房 = (Q + W) ÷ W

            = Q/W + W/W

            = Q/W + 1

            = COP冷房 + 1
COP暖房 = COP冷房 + 1

暖房COPは冷房COPより必ず「1」大きい

これで「暖房COP = 冷房COP + 1」が証明されました。丸暗記ではなく、エネルギー保存則から2行で導出できるのです。

💡 なぜ暖房COPのほうが大きいのか?直感的な説明
暖房のときは、室外から運んできた熱Qに加えて、圧縮機を動かすために使った電力Wも最終的に熱に変わって室内を温めます。つまり「電力Wが丸ごと暖房のボーナスになる」のです。冷房時はこのWが室外に捨てられるだけなので、ボーナスはゼロ。だから暖房COPのほうが「+1」だけ大きいのです。

冷房COPと暖房COPの比較まとめ

項目 冷房COP 暖房COP
目的 室内を冷やす 室内を温める
得たい熱 Q Q + W
COP の式 Q / W (Q + W) / W
関係式 COP暖房 = COP冷房 + 1
COPの値 常に1以上 常に2以上(冷房COP+1なので)
COP=4の場合 1kWの電力で4kW分の冷房 1kWの電力で5kW分の暖房
⚠️ 試験で最も多い間違い
問題文に「COP = 4.0」とだけ書いてあったとき、それが冷房COPなのか暖房COPなのかを読み違えるミスが頻発します。「ヒートポンプ式給湯器」「暖房」と書いてあれば暖房COP、「冷凍機」「冷房」と書いてあれば冷房COPです。必ず問題文を確認してください。

計算例①|ヒートポンプ式給湯器の消費電力量を求める

【問題】
ヒートポンプ式電気給湯器の消費電力は1.5 kW、COP(成績係数)は4.5である。
17℃の水 460 L を 65℃ まで加熱するのに何時間かかるか。
ただし、水の比熱は 4.2 kJ/(kg·℃)、水の密度は 1 kg/L とし、熱損失は無視する。

STEP 1:情報を整理する

消費電力 P 1.5 kW
COP(暖房) 4.5 ※給湯器=暖房用途
水の質量 m 460 L = 460 kg
比熱 c 4.2 kJ/(kg·℃) = 4,200 J/(kg·℃)
温度変化 ΔT 65 − 17 = 48 ℃
求めるもの 加熱時間 t [h]
💡 ポイント:これは「暖房COP」
給湯器は「水を温める」のが目的。つまり暖房用途です。COPの式は COP暖房 = (Q+W)/W ですが、ここでは「COP = 得た熱÷消費電力」と直接使えます。

STEP 2:水に必要な熱量Qを求める

Q = mcΔT

Q = 460 × 4.2 × 48 [kJ]

Q = 92,736 kJ

(今回は比熱がkJ単位なので、そのまま掛け算すればkJで出ます)

STEP 3:消費電力量Wを求める(COPを使う)

暖房COPの定義より:

COP暖房 = 得た熱Q ÷ 消費電力量W

4.5 = 92,736 ÷ W

W = 92,736 ÷ 4.5

W = 20,608 kJ

STEP 4:加熱時間を求める

消費電力量W [kJ] = 消費電力P [kW] × 時間t [s] なので:

W = P × t

20,608 [kJ] = 1.5 [kW] × t [s]

t = 20,608 ÷ 1.5 = 13,739 s

t = 13,739 ÷ 3,600

t ≒ 3.8 時間(約3時間49分)
答え:約 3.8 時間
🔧 現場の声
エコキュート(ヒートポンプ式給湯器)が「深夜電力で約4時間かけてお湯を沸かす」のは、まさにこの計算の通りです。460LはJIS規格の大型タンクの標準容量。電験三種の問題は、実在の製品仕様をそのまま出題することが多いです。

計算例②|冷房COPから暖房能力を求める

【問題】
あるヒートポンプの冷房時のCOPが4.0、圧縮機の消費電力が2.0 kWである。
このヒートポンプを暖房に使用した場合、暖房能力 [kW] はいくらか。
ただし、熱損失は無視する。

STEP 1:情報を整理する

冷房COP 4.0
消費電力 P 2.0 kW
求めるもの 暖房能力 [kW]

STEP 2:暖房COPを求める

COP暖房 = COP冷房 + 1

COP暖房 = 4.0 + 1 = 5.0

STEP 3:暖房能力を求める

暖房COP = 暖房能力 ÷ 消費電力 なので:

暖房能力 = COP暖房 × 消費電力

暖房能力 = 5.0 × 2.0

暖房能力 = 10.0 kW
答え:10.0 kW
💡 検算してみよう
冷房能力 = COP冷房 × P = 4.0 × 2.0 = 8.0 kW
暖房能力 = 冷房能力 + 消費電力 = 8.0 + 2.0 = 10.0 kW

別ルートでも同じ答えになります。「暖房能力 = 冷房能力 + 消費電力」という関係はエネルギー保存則そのもの。検算に使えるので覚えておきましょう。

COP計算問題の「解法フローチャート」

ヒートポンプの計算問題は、以下のフローで機械的に解けます。

STEP 1

冷房 or 暖房を判定する
「給湯器」「暖房」「加熱」→ 暖房COP
「冷凍機」「冷房」「冷却」→ 冷房COP

STEP 2

必要な熱量Qを求める
Q = mcΔT (水の加熱問題の場合)

STEP 3

COPの定義式から消費電力量Wを求める
W = Q ÷ COP

STEP 4

求めるもの(時間・電力量など)を算出
W = P × t から t を求める、またはW自体が答え

STEP 5

単位変換
kJ → kWh(÷3,600)、秒 → 時間(÷3,600)など

出題パターンの整理

出題パターン 与えられるもの 求めるもの
パターンA COP、消費電力P、水の量・温度 加熱時間 t
パターンB COP、水の量・温度、時間 消費電力 P
パターンC 冷房COP、消費電力P 暖房能力
パターンD COP、消費電力量 [kWh] 得られた熱量 [kJ]

どのパターンでも、COP = 得た熱 ÷ 消費電力(量)を立式して、求めたい変数について解くだけです。

正誤問題で狙われるポイント5選

COP計算だけでなく、ヒートポンプの原理に関する正誤問題も出題されます。引っかけやすいポイントを整理しておきましょう。

✅ 正しい記述
「ヒートポンプは少ない電気エネルギーで、それ以上の熱エネルギーを得ることができる」
→ COPが1以上なので正しい。「エネルギー保存則に反する」わけではなく、外部(空気中)から熱を汲み上げているから。
✅ 正しい記述
「四方弁を切り替えることで冷房と暖房を切り替えられる」
→ 冷媒の流れる方向を逆にすることで、蒸発器と凝縮器の役割が入れ替わる。
❌ 誤りの記述(頻出の引っかけ)
「暖房時のCOPは冷房時のCOPより小さい」
。暖房COP = 冷房COP + 1 なので、暖房COPの方が大きい。
❌ 誤りの記述(頻出の引っかけ)
「冷房時、室内の熱交換器は凝縮器として動作する」
誤り。冷房時、室内の熱交換器は蒸発器(冷媒が室内の熱を吸収して気化する)。凝縮器は室外機側。
❌ 誤りの記述(頻出の引っかけ)
「ヒートポンプのCOPは常に1未満である」
誤り。ヒートポンプのCOPは通常3〜6程度。1以上が当たり前。COPが1を下回るなら電気ヒーターと同じなので、ヒートポンプの意味がない。
🔧 現場の声
エアコンのカタログスペックには「暖房COP 5.0」「冷房COP 4.0」のように記載されています。暖房COPの方が1大きいことを確認してみてください。実際にはカタログ値は理想条件の数値で、外気温が下がるとCOPは低下します。だから真冬に暖房効率が落ちるのです。

まとめ|COPは「丸暗記」ではなく「導出」で覚える

この記事の内容を振り返ります。

✅ この記事のポイント
1 ヒートポンプは「熱の引っ越し屋さん」。低温側→高温側に熱を運ぶ
2 COP = 得たい熱 ÷ 消費電力(効率を示す指標)
3 冷房COP = Q/W、暖房COP = (Q+W)/W
4 暖房COP = 冷房COP + 1(圧縮機の電力がボーナスになるから)
5 計算問題はQ = mcΔTで必要熱量を出し、COP = Q/Wで消費電力を出す
6 問題文で「給湯器」「暖房」→暖房COP、「冷凍機」「冷房」→冷房COPと判定する

ヒートポンプとCOPは、機械科目の電熱分野で最も出題頻度が高いテーマです。しかし、原理を理解すれば公式は自力で導出できますし、計算パターンも限られています。

この記事を読んで「COP暖房 = COP冷房 + 1」の理由が腑に落ちた方は、もう本番で公式を間違えることはないはずです。

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