- 参考書に「時定数τ = CR」と書いてあるけど、なぜCRの積が"時間"になるのかがピンとこない
- RC回路は τ = CR、RL回路は τ = L/R ──「掛け算?割り算?」で混乱する
- 「63.2%」という中途半端な数字、覚えたけど使いどころがわからない
- 過去問で「スイッチを閉じてから0.5秒後の電圧を求めよ」と出て、手が止まった
- 時定数τの「直感的な意味」── なぜ63.2%なのか、5τで終わるのか
- RC回路 τ = CR とRL回路 τ = L/R の公式の導出なし・暗記法ありの覚え方
- τの単位検算で公式の正しさを自分で確認する方法
- 計算例3題── RC充電・RC放電・RL投入を実際の数値で手を動かす
- 試験本番で使える「初期値・最終値・τ」の3点セット解法
過渡現象の計算問題で、最初に求めるのが時定数τです。τさえ正確に計算できれば、あとは「63.2%ルール」に当てはめるだけ。つまり、時定数τは過渡現象という単元の"鍵"にあたる概念です。
この記事は、前回の「過渡現象とは?|RC・RL回路の「スイッチを入れた瞬間」を完全図解」の続編です。前回で「コンデンサは電圧を、コイルは電流を急に変えられない」という大原則を理解した方を対象に、ここからは"数値で解く力"を身につけていきます。
この記事を読む前に、過渡現象の基礎(RC・RL回路のスイッチ投入で何が起きるか)を読んでおくと、理解がスムーズです。コンデンサの充放電の仕組みはこちらの記事でも詳しく解説しています。
目次
時定数τとは何か?── 過渡現象の「スピードメーター」
⏱️ 時定数τの直感的な意味
時定数τ(タウ)を一言で表すと、「過渡現象の変化スピードを決める唯一のパラメータ」です。
もう少し具体的に言うと、τとは「最終値の63.2%に到達するまでにかかる時間」のこと。単位は必ず「秒(s)」になります。
時定数τ = 最終値の 63.2% に到達するまでの時間 [秒]
製造現場の例えで考えてみましょう。工場の恒温槽(温度を一定に保つ装置)の設定温度を25℃から80℃に変更したとします。ボタンを押した瞬間に80℃にはなりませんよね。じわじわと温度が上がっていき、ある時間で80℃に近づいていく。この「じわじわ」のスピードを決めるのが時定数です。
τが小さい恒温槽 → すぐに設定温度に到達する(高性能)。
τが大きい恒温槽 → なかなか設定温度に到達しない(低性能)。
電気回路でも全く同じです。τが小さいほどコンデンサは速く充電され、コイルには速く電流が流れます。τが大きいほど変化はゆっくりになります。
🤔 なぜ「63.2%」という中途半端な数字なのか?
「50%のほうがキリがいいのに…」と思いますよね。これは数学的な理由です。
過渡現象の増加カーブは 1 − e−t/τ という式で表されます。ここで t = τ を代入すると、
つまり、63.2%という数字は自然対数の底 e(≈ 2.718)の性質から自動的に決まる値です。覚えにくいですが、覚えるしかありません。語呂合わせで「ロクサンテンニ(63.2)でタウ!」と唱えて頭に焼きつけてください。
「t = τ で最終値の50%」ではありません。63.2%です。50%に到達するのは t ≈ 0.693τ(= τ × ln2)のとき。これを知らずに「半分だからτ」と答えると不正解になります。

RC回路とRL回路の時定数公式
📐 2つの公式を覚えるだけでOK
電験三種で出題される過渡現象は、ほとんどがRC回路かRL回路のどちらかです。それぞれの時定数の公式は以下のとおりです。
RL回路の時定数
コイルのインダクタンス ÷ 抵抗
覚え方:「Love(ラブ)はR(抵抗)で割る」
→ L ÷ R
🔍 なぜ「掛け算」と「割り算」で違うのか?── 単位で確認する
「RC回路は掛け算、RL回路は割り算」── これがよく混乱するポイントです。でも安心してください。単位を確認すれば一発で判定できます。時定数の単位は必ず「秒(s)」にならなければいけません。
RC回路の単位検算
ファラド(F)の定義は「1クーロンの電荷を蓄えたとき1ボルトになる容量」、つまり [C/V] です。これにオーム [V/A] を掛けると、分子分母のVが消えて [C/A] = [A·s/A] = [s] になります。
RL回路の単位検算
ヘンリー(H)の定義は「電流が毎秒1A変化するとき1Vの起電力を生じるインダクタンス」、つまり [V·s/A] です。これをオーム [V/A] で割ると [s] になります。
「あれ、RC回路って C×R? C/R?」と迷ったら、単位を代入して [s] になるかチェックしてください。C/R だと [F/Ω] = [C/V] / [V/A] = [C·A/V²] となり秒にはなりません。掛け算の C×R が正解と判定できます。この「単位検算」は過渡現象に限らず、電験三種のすべての計算問題で使える最強の検算テクニックです。

τが大きい = 変化が遅い。その直感的理解
🐢 RC回路:Cが大きい or Rが大きい → τが大きい → 変化が遅い
RC回路の τ = C × R で、C(コンデンサの容量)とR(抵抗)がτに与える影響を考えましょう。
| パラメータ | 変化 | τへの影響 | イメージ |
|---|---|---|---|
| C(容量)大 | ↑ | τ大(遅い)🐢 | 大きなバケツに水を溜める → 時間がかかる |
| C(容量)小 | ↓ | τ小(速い)🐇 | 小さなコップに水を注ぐ → すぐ溜まる |
| R(抵抗)大 | ↑ | τ大(遅い)🐢 | 細いストローで水を注ぐ → 流量が少なく時間がかかる |
| R(抵抗)小 | ↓ | τ小(速い)🐇 | 太いホースで水を注ぐ → 一気に溜まる |
🐢 RL回路:Lが大きい or Rが小さい → τが大きい → 変化が遅い
RL回路の τ = L / R は少し注意が必要です。Rが大きいとτは小さくなります(分母だから)。これはRC回路と逆の関係です。
| パラメータ | 変化 | τへの影響 | イメージ |
|---|---|---|---|
| L(インダクタンス)大 | ↑ | τ大(遅い)🐢 | 巨大な歯車を回す → 慣性が大きく動き出しが遅い |
| L(インダクタンス)小 | ↓ | τ小(速い)🐇 | 軽い歯車を回す → すぐに定常回転に達する |
| R(抵抗)大 | ↑ | τ小(速い)🐇 | 最終電流 E/R が小さいので、少ない電流で済む → 早く到達 |
| R(抵抗)小 | ↓ | τ大(遅い)🐢 | 最終電流 E/R が大きいので、たくさんの電流を流す必要がある → 時間がかかる |
製造設備のモーター(コイルを含む)は、Rが小さく Lが大きい。つまりτ = L/R が大きい → 起動に時間がかかるということです。工場でモーター起動時に「ブーン」と唸りが長く続くのは、RL回路の時定数が大きいからです。逆に家庭用の小型ファンはLもRも小さいので、一瞬で定常回転に達します。

63.2%ルールと5τルール── この表を暗記せよ
📊 τの倍数ごとの到達率一覧
時定数τの1倍、2倍、3倍…と時間が経過したとき、最終値の何%まで到達しているかを表にまとめます。この表が過渡現象の得点力を決めます。
| 経過時間 | 増加型の到達率 1 − e−t/τ |
減少型の残存率 e−t/τ |
試験での重要度 |
|---|---|---|---|
| 1τ | 63.2% | 36.8% | ⭐⭐⭐ 超頻出 |
| 2τ | 86.5% | 13.5% | ⭐⭐ よく出る |
| 3τ | 95.0% | 5.0% | ⭐ たまに出る |
| 4τ | 98.2% | 1.8% | △ まれ |
| 5τ | 99.3%(≒ 完了) | 0.7%(≒ ゼロ) | ⭐⭐ 「十分時間が経った」の判断 |
試験で実際に使うのは、63.2%(1τ)、86.5%(2τ)、99.3%(≒100%)(5τ)の3つだけです。そして増加型と減少型は足すと100%になるので、63.2%を覚えれば 36.8% は引き算で出ます。
🏁 5τルール ── 「十分時間が経った後」の正体
電験三種の問題文で「十分時間が経った後」「定常状態に達した後」という表現が出てきたら、それは「t → ∞(t = 5τ以上経過)」を意味しています。このとき過渡現象は終了しており、コンデンサは開放(電流ゼロ)、コイルは短絡(電圧ゼロ)として扱ってOKです。
定常状態のコンデンサ
「開放」(断線)と同じ
電流 = 0A
電圧 = 回路の条件で決まる値
定常状態のコイル
「短絡」(導線)と同じ
電圧 = 0V
電流 = 回路の条件で決まる値

計算例①:RC回路の充電 ── 時定数と電圧を求める
📝 例題:RC充電の時定数とτ秒後の電圧
直流電源 E = 100V、抵抗 R = 5kΩ、コンデンサ C = 20μF の直列回路がある。コンデンサの初期電荷はゼロとする。スイッチSを閉じてから以下を求めよ。
(1)時定数 τ [ms]
(2)t = τ におけるコンデンサの電圧 vC [V]
(3)t = τ における回路の電流 i [mA]
ステップ1:時定数τを計算
= 20 × 10−6 [F] × 5 × 103 [Ω]
= 100 × 10−3 [s]
= 100 ms(0.1秒)
kΩ → Ω の変換(×103)と、μF → F の変換(×10−6)を忘れないでください。「キロ × マイクロ = ミリ」と覚えておくと便利です。つまり [kΩ] × [μF] = [ms] と暗算できます。
ステップ2:t = τ のコンデンサ電圧を計算
RC充電のコンデンサ電圧の式は vC(t) = E(1 − e−t/τ)です。t = τ を代入すると、
= 100 × 0.632
= 63.2V
63.2%ルールをそのまま使うだけです。最終値の100Vに対して63.2%なので 63.2V。
ステップ3:t = τ の電流を計算
RC充電の電流の式は i(t) = (E/R) × e−t/τ です。t = τ を代入すると、
= (100 / 5000) × 0.368
= 0.02 × 0.368
= 0.00736 A
= 7.36 mA
初期電流(t=0)は E/R = 100/5000 = 20mA です。t = τ では初期電流の36.8%まで減少するはずなので、20 × 0.368 = 7.36mA。一致しました。「初期値の36.8%」で検算する習慣をつけると、本番で計算ミスを防げます。
(1)τ = 100ms (2)vC = 63.2V (3)i = 7.36mA

計算例②:RC回路の放電 ── 2τ後の電圧を求める
📝 例題:RC放電の2τ秒後
コンデンサ C = 10μF が 50V に充電されている。このコンデンサを抵抗 R = 100kΩ を通して放電させる。
(1)時定数 τ [s] を求めよ。
(2)放電開始から 2秒後のコンデンサ電圧を求めよ。
ステップ1:時定数τを計算
= 10 × 10−6 [F] × 100 × 103 [Ω]
= 1 秒
「kΩ × μF = ms」の暗算ルールを使えば、100 × 10 = 1000ms = 1秒 と瞬時に出せます。
ステップ2:2秒後 = 2τ後の電圧を計算
τ = 1秒 なので、2秒後 = 2τ後です。放電の式は vC(t) = E0 × e−t/τ で、2τ後の残存率は先ほどの表から 13.5% です。
= 50 × 0.135
= 6.75 V
初期値50Vから2τ経過すると、約13.5%の 6.75V まで減少しています。あと3τ(合計5τ = 5秒)経てば、ほぼ0Vになります。
(1)τ = 1秒 (2)vC(2s) = 6.75V
放電は「初期値 × 残存率」の1ステップ。充電より簡単です。放電の式は(1−)がない分、計算ミスが起きにくいので得点源にしやすいパターンです。

計算例③:RL回路のスイッチ投入 ── 電流と電圧を求める
📝 例題:RL回路の時定数と1τ後の電流・電圧
直流電源 E = 24V、抵抗 R = 8Ω、コイル L = 0.4H の直列回路がある。コイルの初期電流はゼロとする。スイッチSを閉じてから以下を求めよ。
(1)時定数 τ [ms] を求めよ。
(2)t = τ における回路の電流 i [A] を求めよ。
(3)t = τ におけるコイルの電圧 vL [V] を求めよ。
ステップ1:時定数τを計算
= 0.4 [H] / 8 [Ω]
= 0.05 [s]
= 50 ms
RC回路の時定数(計算例①: 100ms)と比べると半分の速さです。このRL回路は50ms(0.05秒)で最終値の63.2%に到達し、250ms(5τ)で過渡現象が終了します。
ステップ2:t = τ の電流を計算
RL回路でスイッチを入れると、電流は 0 → E/R に向かって増加していきます。式は i(t) = (E/R)(1 − e−t/τ) です。まず最終値を確認します。
i(τ) = 3 ×(1 − e−1)
= 3 × 0.632
= 1.896A ≒ 1.90A
ステップ3:t = τ のコイル電圧を計算
コイルの電圧は vL(t) = E × e−t/τ で、最大値 E = 24V からゼロに向かって減少していきます。
= 24 × 0.368
= 8.83V
t = τ の瞬間において、
vR = i × R = 1.896 × 8 = 15.17V
vL = 8.83V
vR + vL = 15.17 + 8.83 = 24.0V = E ✅
抵抗の電圧降下とコイルの電圧を足すと電源電圧に一致します。これはキルヒホッフの法則そのものです。計算結果の検算に使えます。
(1)τ = 50ms (2)i = 1.90A (3)vL = 8.83V

RC・RL 過渡現象の全パターンまとめ
📋 この1枚で試験に臨める ── 時定数・公式・初期値・最終値の一覧
過渡現象で出題されるパターンは4つしかありません。この表を試験直前に見返せるよう、ブックマークしておくことをおすすめします。
| パターン | 時定数 τ | 増加する量 | 初期値→最終値 | 減少する量 | 初期値→最終値 |
|---|---|---|---|---|---|
| RC充電 | C × R | vC E(1−e−t/τ) |
0V → E | i (E/R)e−t/τ |
E/R → 0 |
| RC放電 | C × R | ─ | ─ | vC, i ともに初期値×e−t/τ |
E → 0, E/R → 0 |
| RL投入 | L / R | i (E/R)(1−e−t/τ) |
0 → E/R | vL E×e−t/τ |
E → 0 |
| RL切断 | L / R | ─ | ─ | i, vL ともに初期値×e−t/τ |
E/R → 0, −E → 0 |
結局のところ、過渡現象の式は2パターンしかありません。
① 増加型:最終値 ×(1 − e−t/τ) → ゼロからスタートして最終値に近づく
② 減少型:初期値 × e−t/τ → 最大値からスタートしてゼロに近づく
どの物理量がどちらの型になるかは、「急に変えられないのはどっち?」で判断できます。RC回路なら電圧が急に変えられないので電圧が増加型。RL回路なら電流が急に変えられないので電流が増加型。

試験本番で使う「初期値・最終値・τ」の3点セット解法
⚡ 過渡現象は「3つの値」で解ける
電験三種の過渡現象の問題は、微分方程式を解く必要はありません。以下の3ステップで機械的に解けます。
t=0の瞬間、CはV保持
Lは I 保持
t→∞で C=開放
L=短絡として回路を解く
RC → τ=CR
RL → τ=L/R
この3つが揃えば、あとは「一般式」に代入するだけです。
f(t) = 最終値 +(初期値 − 最終値)× e−t/τ
この1つの式で、RC充電・RC放電・RL投入・RL切断のすべてをカバーできます。
・初期値 = 0、最終値 = E のとき → E(1 − e−t/τ)(増加型)
・初期値 = E、最終値 = 0 のとき → E × e−t/τ(減少型)
🎓 試験で間違えやすい5つの落とし穴
| No. | 落とし穴 | 対策 |
|---|---|---|
| 1 | 単位変換ミス(kΩとΩ、μFとFの混同) | 「kΩ × μF = ms」「MΩ × μF = s」を丸暗記 |
| 2 | RC回路とRL回路の公式を取り違える(掛け算 / 割り算) | 迷ったら単位検算。[s] にならないほうは間違い |
| 3 | 1τで50%到達と思い込む | 50%ではなく63.2%。「ロクサンテンニ!」 |
| 4 | 増加型と減少型の式を逆に使う | 「急に変えられない量」が増加型。それ以外は減少型 |
| 5 | 放電時の電流の符号を間違える | 問題文の「正の向き」の定義を必ず確認 |

まとめ ── 時定数τは過渡現象の「鍵」
📌 この記事の重要ポイント
| 時定数τの意味 | 最終値の63.2%に到達するまでの時間 [秒] |
| RC回路の公式 | τ = C × R(掛け算) |
| RL回路の公式 | τ = L / R(割り算) |
| 公式の見分け方 | 迷ったら単位検算。[秒] になるほうが正解 |
| 覚えるべき数字 | 1τ = 63.2%、2τ = 86.5%、5τ ≒ 100%(完了) |
| 解法の3ステップ | ① 初期値 → ② 最終値 → ③ τ を求めて一般式に代入 |
過渡現象は毎年のように出題されますが、問われる内容は結局「τを求める」「特定の時刻の電圧・電流を求める」「十分時間が経った後の値を求める」の3パターンに集約されます。この記事の計算例を3回繰り返して解けば、本番で手が動く状態になるはずです。
過渡現象を含む電験三種・理論科目の勉強法は、以下のロードマップ記事で全体像を把握できます。
📚 次に読むべき記事
この記事の前提知識。コンデンサとコイルの「クセ」をイメージで理解する入門記事です。
コンデンサの充放電に特化した記事。RC回路の過渡現象をさらに深掘りできます。
過渡現象の次は交流回路。理論科目のもう一つの大きな山を攻略しましょう。
合格者が「もっと早く買えばよかった」と後悔した学習アイテムを厳選。
「このまま今の会社で、この仕事を続けていていいのかな」── 夜、勉強をしながらそう感じることはありませんか? 電験三種を取得した私自身の経験から言えることがあります。「電験三種で人生変わる」は本当か?30代で取得した私の体験談 →