- 「電源が並列に3つ並んでいる回路」が出た瞬間、どこからキルヒホッフを立てるか迷う
- テブナンで解こうとしたが、開放電圧を求めるのに結局キルヒホッフが必要で二度手間になった
- 重ね合わせの理で解くと電源の数だけサブ回路を作る必要があり、3電源で心が折れた
- ミルマンの定理の考え方を「お金の割り勘」のたとえで直感的に理解
- 公式の「分子」と「分母」が何を意味するのかを図解で完全理解
- 電験三種の過去問(R5年度下期 問6 等)レベルの問題を途中式付きで解く
- テブナンの定理・重ね合わせの理との使い分け判断基準
電験三種の理論科目で、こんな形の回路を見たことはありませんか。
「電圧源+内部抵抗」のセットが、2本、3本と並列につながっていて、最後に負荷抵抗がぶら下がっている。この形の問題を見ると、キルヒホッフで連立方程式を組むか、テブナンで等価回路を作るか……どちらにしても、それなりの計算量が発生します。
でも、この「並列電源回路」には、公式に数値を代入するだけで端子電圧が一発で出る定理があります。それがミルマンの定理です。
この記事では、ミルマンの定理を「なぜこの公式になるのか?」から丁寧に解説し、電験三種の過去問レベルの計算例まで完全にカバーします。
目次
ミルマンの定理とは?|「並列電源の端子電圧」を一発で出す公式
💰 「割り勘」のたとえで直感的に理解する
いきなり公式を見ても「なぜこれで求まるの?」がわからないので、まずイメージから入りましょう。
3人の友人(Aさん、Bさん、Cさん)が、1つの飲み会の費用を「出せる金額」と「その人の影響力(発言力)」に応じて決めるとします。
・Aさん:「1万円出す」(発言力:大きい)
・Bさん:「5千円出す」(発言力:中くらい)
・Cさん:「3千円出す」(発言力:小さい)
最終的な「1人あたりの会計額」は、発言力が大きい人の意見に引っ張られますよね。全員の意見を「発言力で重み付けして平均」したものが最終結論になります。
ミルマンの定理はまさにこれです。各電源の電圧を、その電源の「影響力(=内部抵抗の逆数)」で重み付けして平均することで、並列接続点の端子電圧が求まります。
つまり、「内部抵抗が小さい電源」ほど端子電圧に大きな影響を与え、「内部抵抗が大きい電源」は影響が小さいということです。抵抗が小さい=電流を流す力が強い=発言力が大きい、というイメージです。
📐 公式
n個の「電圧源+内部抵抗」が並列に接続された回路の端子電圧 V は、以下の公式で求まります。
※ 分子=各電源の「電圧÷内部抵抗」の合計 / 分母=各「内部抵抗の逆数」の合計
コンダクタンス(G = 1/R)を使うと、さらにシンプルに書けます。
G = 1/R(コンダクタンス、単位はジーメンス [S])
分子 =「各電源が流そうとする電流」の合計(E/R は短絡電流に相当)
分母 =「各枝のコンダクタンス」の合計(電流の流れやすさの合計)
つまり、「流そうとする電流の合計」÷「流れやすさの合計」= 端子電圧です。
オームの法則 V = I / G と同じ形だと気づけば、公式の暗記は不要です。

どんな回路に使えるのか?|ミルマンの定理の適用条件
✅ 使える回路の「形」
ミルマンの定理が使えるのは、「電圧源+直列抵抗」の枝が、2つの共通ノード(端子)の間に並列に接続されている回路です。言葉だけではわかりにくいので、図にすると以下のような構造です。
ミルマンの定理が使える回路の形
↑ すべてが2つの共通端子(ノードAとノードB)の間に並列接続 ↑
端子A─B間の電圧が「ミルマンの公式」で一発で求まる
⚡ 電源がない枝(抵抗だけの枝)がある場合
並列枝の中に「電圧源なし・抵抗だけ」の枝が含まれることがあります。例えば負荷抵抗 RL だけがぶら下がっているケースです。この場合は、その枝の電圧 E = 0 として公式に入れるだけでOKです。
※ 分子の「0/RL」は0になるが、分母の「1/RL」は残る!
「電源がない枝だから関係ない」と思って分母の 1/RL を忘れるのが最も多いミスです。電源がなくても「電流の通り道」は存在するので、分母(コンダクタンスの合計)には必ず含めてください。
❌ 使えない回路
ミルマンの定理は並列接続された枝だけに適用できます。以下の場合は使えません。
| 回路の形 | 使える? | 代替手法 |
|---|---|---|
| 「E+R」が並列接続 | ⭕ | — |
| ブリッジ回路(H型) | ❌ | テブナン・キルヒホッフ |
| 電流源を含む回路 | ❌ | 重ね合わせの理 |
| 梯子型(ラダー回路) | ❌ | テブナン・キルヒホッフ |

なぜこの公式で求まるのか?|キルヒホッフから導出する
「公式を暗記するだけ」では不安ですよね。ここでは、ミルマンの公式がキルヒホッフの電流則(第1法則)から自然に導かれることを示します。「なるほど、だからこの形になるのか」と腹落ちすれば、試験中に公式を忘れても自力で再現できます。
✏️ 導出(2電源の場合)
電圧源 E₁(内部抵抗 R₁)と E₂(内部抵抗 R₂)が並列に接続され、端子電圧を V とします。
各枝に流れる電流をオームの法則で書くと:
枝①の電流:I₁ = (E₁ − V) / R₁
枝②の電流:I₂ = (E₂ − V) / R₂
キルヒホッフの電流則(KCL):端子に流れ込む電流の合計 = 0 なので、
I₁ + I₂ = 0
(E₁ − V)/R₁ + (E₂ − V)/R₂ = 0
この式を V について解きます。
E₁/R₁ − V/R₁ + E₂/R₂ − V/R₂ = 0
E₁/R₁ + E₂/R₂ = V/R₁ + V/R₂
E₁/R₁ + E₂/R₂ = V (1/R₁ + 1/R₂)
両辺を (1/R₁ + 1/R₂) で割ると……
→ ミルマンの公式そのもの!
やったことは「各枝の電流をオームの法則で書く → KCLで合計 = 0 → Vについて解く」の3ステップだけです。つまりミルマンの定理は新しい物理法則ではなく、キルヒホッフの電流則をこの形の回路に適用しただけのショートカット公式です。試験中に公式を忘れても、この導出を辿れば再現できます。
「公式を覚えるだけでいいのでは?」と思うかもしれません。しかし導出を理解しておくと、「負荷抵抗が追加された場合」「電源の極性が逆の場合」など応用問題でも迷わなくなります。品質管理の世界でいう「なぜなぜ分析」と同じで、原理を知っている人は応用が利きます。

電源の極性が逆の場合|符号を間違えないためのルール
実際の問題では、すべての電源が同じ方向に電圧を出しているとは限りません。ある電源だけ極性が逆(反対向き)になっていることがあります。この場合の処理方法を確認しておきましょう。
📏 符号のルール
端子電圧 V の「+側」を決める(基準ノードを選ぶ)
各電源について、+側のノードに向かって電流を流す方向の電圧を+とする
逆向きの電源は E を負の値(−E)として公式に代入する
正の向きの電源
+側のノードに向かって
電流を流す方向
→ そのまま +E で代入
逆向きの電源
+側のノードから
電流を引き抜く方向
→ −E として代入
極性が逆の電源のとき、分子の E/R を負にするのを忘れるパターンです。回路図の電源の+−記号を必ず確認し、基準ノードに対してどちら向きかを判断してから代入してください。

【計算例①】2つの電源が並列|基本問題
📝 問題
回路構成:
・枝①:E₁ = 12V、R₁ = 2Ω(内部抵抗)
・枝②:E₂ = 6V、R₂ = 3Ω(内部抵抗)
・枝③:RL = 6Ω(負荷抵抗のみ、電源なし)
・3つの枝が同じ2端子間に並列に接続
✏️ 解法
枝③は電源がない(E = 0)ので、分子には寄与しませんが、分母にはRLのコンダクタンスを入れることを忘れないでください。
分子:
E₁/R₁ + E₂/R₂ + 0/RL
= 12/2 + 6/3 + 0
= 6 + 2 = 8 [A]
分母:
1/R₁ + 1/R₂ + 1/RL
= 1/2 + 1/3 + 1/6
= 3/6 + 2/6 + 1/6 = 6/6 = 1 [S]
キルヒホッフで解くと連立方程式が必要ですが、ミルマンの定理なら分数の足し算だけで答えが出ました。
端子電圧 V はすべての電源電圧の間の値になるはずです。この問題では E₁=12V と E₂=6V の間、つまり 6V < V < 12V になるのが正常です。V = 8V はこの範囲内なので、計算は正しそうだと確認できます。

【計算例②】極性が逆の電源がある回路|電験三種レベル
📝 問題
回路構成:
・枝①:E₁ = 20V(A側が+)、R₁ = 5Ω
・枝②:E₂ = 10V(A側が−、つまり逆向き)、R₂ = 10Ω
・枝③:E₃ = 15V(A側が+)、R₃ = 10Ω
✏️ 解法
VAB の基準をA側+とします。枝②の電源はA側が−なので、E₂ = −10V として代入します。
分子:
E₁/R₁ + E₂/R₂ + E₃/R₃
= 20/5 + (−10)/10 + 15/10
= 4 + (−1) + 1.5 = 4.5 [A]
分母:
1/R₁ + 1/R₂ + 1/R₃
= 1/5 + 1/10 + 1/10
= 2/10 + 1/10 + 1/10 = 4/10 = 0.4 [S]
結果が正の値なので、A側が+です。もし逆向き電源の影響が大きく結果が負になった場合は、端子の+−が逆転している(B側が+)ことを意味します。
電験三種の令和5年度下期 問6も、まさにこの「並列電源+極性注意」パターンです。ミルマンの公式を知っていれば1分以内に正解できますが、知らないとキルヒホッフの連立方程式に5分以上かかります。この1つの公式で1問確保できると考えれば、覚える価値は十分あります。

端子電圧から各枝の電流も求める|ミルマン+オームの法則
ミルマンの定理で端子電圧 V が求まれば、各枝の電流はオームの法則で一瞬です。追加の定理は不要です。
📐 各枝の電流の求め方
※ V:ミルマンの公式で求めた端子電圧
計算例①(V = 8V)で各枝の電流を求めてみましょう。
枝①: I₁ = (E₁ − V) / R₁ = (12 − 8) / 2 = 2A(E₁→端子方向に流れる)
枝②: I₂ = (E₂ − V) / R₂ = (6 − 8) / 3 = −2/3 A ≒ −0.67A
枝③: IL = V / RL = 8 / 6 = 4/3 A ≒ 1.33A
枝②の電流が −0.67A になりました。これはE₂が電力を「供給」しているのではなく、「充電されている(電流が逆に流れ込んでいる)」ことを意味します。端子電圧 V = 8V が E₂ = 6V より高いため、E₂側に電流が逆流しているわけです。バッテリーの並列接続で起きる実際の現象です。
検算: I₁ + I₂ + IL は KCL(キルヒホッフの電流則)を満たすか確認しましょう。端子に流れ込む電流(I₁)=端子から流れ出る電流(−I₂ + IL)になればOKです。
I₁ + I₂ − IL = 2 + (−2/3) − 4/3 = 6/3 − 2/3 − 4/3 = 0 ✅

直流回路の「三大定理」使い分けガイド
直流回路で複数電源の問題を解く定理は、大きく3つあります。ミルマンの定理・テブナンの定理・重ね合わせの理です。それぞれ得意な回路の「形」が違うので、問題を見た瞬間に「どの武器を抜くか」を判断できるようになりましょう。
🗺️ 回路の形で選ぶフローチャート
回路の形は 「E+R」が並列に並んでいる 構造?
→ YES → ミルマンの定理(最速!)
→ NO → 次へ
電源が2~3個で、電流源と電圧源が混在している?
→ YES → 重ね合わせの理
→ それ以外 → キルヒホッフの法則で連立方程式
| 比較項目 | ミルマン | テブナン | 重ね合わせ |
|---|---|---|---|
| 得意な形 | 並列電源回路 | 任意の複雑回路 | 電圧源+電流源の混在 |
| 計算量 | 最小(分数の足し算のみ) | 中(等価回路の作成) | 電源の数だけサブ回路 |
| 連立方程式 | 不要 | 不要 | 不要 |
| 求まるもの | 端子電圧(→各枝電流も可) | 特定箇所の電圧 or 電流 | 回路全体の電流分布 |
| 適用制限 | 並列構造のみ | なし(万能) | 線形回路のみ、電力NG |
| 電験での出題頻度 | 2~3年に1回 | ほぼ毎年 | 2年に1回 |
最初にテブナンを試みるのが電験三種の王道戦略ですが、回路図を見た瞬間に「あ、これ並列電源だ」と気づけたら、ミルマンで30秒で解いて次の問題に進むことが可能です。テブナンが万能型の「日本刀」だとすれば、ミルマンは並列電源専用の「狙撃銃」。使える場面は限られますが、ハマったときの破壊力は最大です。

【保存版】ミルマンの定理 手順チートシート
⓪ 確認:回路が「並列電源構造」であるか?
→ YES なら以下へ進む。NO ならテブナン or キルヒホッフへ。
① 端子電圧 V の基準(+側)を決める
② 各電源の極性を確認する
・基準方向と同じ → +E
・基準方向と逆 → −E
・電源なし(抵抗のみ) → E = 0
③ 公式に代入して計算
④ 必要なら各枝の電流を求める
Ik = (Ek − V) / Rk
❶ 電源なし枝のコンダクタンス(1/RL)を分母に入れ忘れる
❷ 逆向き電源の E を負にし忘れる
❸ 端子電圧 V を求めた後、各枝電流の式でV の代入を忘れる

まとめ
ミルマンの定理は、「並列電源回路」専用の最速解法です。テブナンの定理や重ね合わせの理では数分かかる問題が、ミルマンなら分数の足し算だけで30秒で解けます。
- ミルマンの定理は「各電源の電圧を、コンダクタンスで重み付け平均」する公式
- 分子 = ΣEk/Rk(各電源が流そうとする電流の合計)
- 分母 = Σ1/Rk(全枝のコンダクタンスの合計)
- 電源なしの枝 → 分子は0、分母には必ず入れる
- 逆向き電源 → E を負の値として代入
- 端子電圧が求まれば、各枝の電流は I = (E−V)/R で一瞬
これで、電験三種・理論科目の直流回路で使える武器が4つ揃いました。オームの法則、キルヒホッフの法則、テブナンの定理、重ね合わせの理、そしてミルマンの定理。問題の回路図を見た瞬間に「この形にはこの武器だ」と反射的に判断できるまで、計算例を繰り返し解いてください。
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電流源と電圧源が混在する回路はこちら。分解→足し算のテクニックを習得。
直流回路の全体像を把握し、学習の抜け漏れを確認したい方はこちら。
回路の定理を1つずつ積み重ねているあなたは、確実に合格に近づいています。「こんなに覚えることがあるのか」と感じるかもしれませんが、本質はすべて「オームの法則」と「キルヒホッフの法則」の応用です。原理を理解した上での暗記は、忘れにくく、応用も利きます。
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