PLC入力回路の仕組みは、「フォトカプラという部品で、外の世界と内部のコンピュータを電気的に切り離しながら、光だけで信号を渡している」と理解すれば9割つかめます。センサの線をつなぐあの端子の奥で、いったい何が起きているのでしょうか。
- センサをつなげば入力ランプは点くけれど、中で何が起きているのか説明できない
- 「絶縁されているから大丈夫」と先輩に言われたが、何から何を守っているのかわからない
- カタログの「DC24V/約4〜7mA」「ON電圧19V以上」「応答時間10ms」の意味が読めない
- フォトカプラという名前は聞くが、なぜわざわざ光に変換するのか腑に落ちない
- 入力端子から内部のCPUまで、信号が通る5つの関門
- フォトカプラが「光」で信号を渡す理由と、絶縁が守っている3つのもの
- 入力仕様(ON電圧・入力電流・応答時間)の読み方と、電流制限抵抗の計算例
- メーカーが違っても通用する、入力回路の共通の考え方
PLCの入力回路とは、外部のスイッチやセンサから来た電気信号を、PLC内部のコンピュータが読める「0か1」の情報に変換する入口の回路のことです。その中心にあるのがフォトカプラで、入ってきた電気をいったん光に変え、その光を内部の受光素子が受け取ることで、外部の配線と内部回路を物理的につながないまま情報だけを渡しています。これにより、現場のノイズや誤配線による高い電圧が、そのままCPUに届くことを防いでいます。
扱う内容:PLCのDC入力ユニットの「内部構造」、すなわち入力端子から電流制限抵抗、フォトカプラ、内部ロジック回路、入力フィルタへと信号が伝わる仕組みと、電気的に絶縁する理由。
扱わない内容:シンク/ソースの選び方、NPN・PNPセンサの構造と結線、コモン端子の考え方、出力回路(リレー・トランジスタ・トライアック)の違い、2線式センサの漏れ電流による誤動作、スキャンタイム。これらはそれぞれ別記事で解説します。この記事は「配線のやり方」ではなく「箱の中身」に絞っています。
PLC入力回路とは?まず定義から
PLCの入力回路とは、外部のスイッチやセンサから届いた電気信号を、PLC内部のCPU(演算をする頭脳のこと)が扱える「ON/OFF」というデジタル情報に変換する、入口専用の電子回路のことです。ハードウェアとしては「入力ユニット」「入力モジュール」と呼ばれる部品の中に入っています。
ここで大事なのは、入力回路がただの「電線の通り道」ではないという点です。もし単なる通り道なら、現場の24Vがそのまま基板の中まで入っていくことになります。しかしPLC内部のCPUが使っている電圧は、多くの場合3.3Vや5Vといった小さな電圧です。24Vがそのまま届いたら、一瞬で壊れてしまいます。
つまり入力回路とは、電圧の高い「現場の世界」と、電圧の低い「コンピュータの世界」の間に立つ通訳兼ボディーガードということです。
会社の受付を思い浮かべてください。外から来た訪問者(センサ信号)を、社長室(CPU)までそのまま通したりはしませんよね。受付で用件だけを聞き取り、内線電話で「お客様がお見えです」と伝えます。訪問者本人は入り口から先には入りません。入力回路がやっているのも、まさにこれです。電気そのものは中に入れず、「来ましたよ」という情報だけを内部に伝えているのです。
信号が通る5つの関門|入力端子からCPUまで
DC入力ユニットの中を信号が進む順番は、メーカーが違ってもほぼ共通で、次の5段階です。この順番さえ頭に入れば、回路図を見たときに迷わなくなります。
入力端子:ネジ止めやスプリング式の端子です。ここに現場からの電線が来ます。端子のすぐ内側には、静電気や瞬間的な高電圧(サージ)を逃がすための保護部品が入っている機種もあります。
電流制限抵抗:24Vをそのまま次の部品に流すと電流が大きすぎて焼けてしまうため、抵抗で電流を数mA(ミリアンペア/1000分の1アンペアのこと)まで絞ります。カタログに書かれた「入力電流」は、ほぼこの抵抗で決まっています。
フォトカプラ:この記事の主役です。絞られた電流で内部のLED(発光ダイオード)を光らせ、その光を向かい合った受光素子が受け取ります。ここが外部と内部の境界線で、電気的にはつながっていません。
内部ロジック回路:受光素子が受けた光は、PLC内部の低い電圧(3.3Vや5V)の信号に整えられます。ここから先は、もう完全にコンピュータの世界です。
入力フィルタ:一定時間(一般的な機種で約10ミリ秒=100分の1秒)続いた信号だけを「本物のON」と認めるふるいです。接点のバタつきやノイズによる一瞬の変化を、ここで捨てています。
つまり、外部の24Vは関門3の手前までしか入ってきません。入力ユニットのランプが点いているのは「関門3までは電気が届いた」という意味であり、その先の内部回路が正常かどうかまでは保証していません。ここは覚えておくと、後々のトラブル対応でとても効いてきます。

なぜ絶縁するのか?入力回路が守っている3つのもの
絶縁(電気的に切り離すこと)は、コストをかけてでも入れる価値がある機能です。守っているものは、大きく3つあります。
① 高い電圧からCPUを守る
最大の目的がこれです。現場では、DC24Vのつもりの端子にAC100Vが誤って入ることが起こり得ます。絶縁がなければ、その電圧はCPUまで一直線に届き、PLC本体ごと壊れます。絶縁があれば、被害はフォトカプラや入力ユニットまでで止まる可能性が高くなります。絶縁とは「壊れる範囲を先に決めておく設計」でもあるのです。
一般的なフォトカプラは、入力側と出力側の間におよそ2.5kV〜5kV(2500〜5000ボルト)の絶縁耐圧を持っています。数値は部品によって異なりますが、桁として「キロボルト級」であることが重要です。24Vや100Vが相手なら、十分な壁になります。
② ノイズの侵入経路を断つ
工場には、インバータ、電磁接触器、溶接機など、電気的なノイズを出す機器がたくさんあります。センサケーブルは長く引き回されることが多く、そこに乗ったノイズが入力端子までやってきます。
絶縁されていれば、外部側と内部側で「電気の基準点(グラウンド)」が別々になります。基準がつながっていないので、外部側の電位が多少ゆさぶられても、内部の信号はその影響を直接は受けません。ここで混乱しやすいのですが、絶縁はノイズを消す魔法ではなく、ノイズが伝わってくる「道」を物理的に断つという考え方です。
③ 人と設備を漏電・地絡から守る
絶縁が破れたときに何が起きるかを知っておくと、この機能のありがたみが実感できます。電気が本来の道から外れて流れ出す現象については、漏電とは何かの記事で仕組みから解説していますので、あわせて読むと入力回路の絶縁の意味がより立体的に理解できます。
制御盤内の配線作業や測定には、電気工事士等の資格が必要な範囲があります。通電したまま端子に触れる活線作業は、感電および端子間の短絡による重大事故につながるため行わないでください。作業前には必ず電源を遮断し、検電器で無電圧を確認し、第三者が誤って投入できないよう施錠(ロックアウト)と表示(タグアウト)を行ってください。DC24Vの回路であっても、同じ盤内にはAC200V以上の充電部が存在することが一般的です。

フォトカプラの仕組み|電気を光に変えて渡す
フォトカプラとは、発光する部品と受光する部品を1つのパッケージに向かい合わせで封じ込め、電気的につながっていない状態のまま信号を伝える電子部品のことです。「フォト(光)」+「カプラ(つなぐもの)」という名前のとおりの働きをします。光アイソレータ、フォトアイソレータと呼ばれることもありますが、指しているものは同じです。
中身は「LED」と「光で動くスイッチ」の2階建て
一次側(外部・入力側)
- 赤外線LED(目に見えない光を出す発光ダイオード)が入っている
- センサがONすると、電流制限抵抗で絞られた数mAが流れる
- 電流が流れた分だけLEDが光る
- ここまでが現場の24Vの世界
二次側(PLC内部・出力側)
- フォトトランジスタ(光が当たると電気を通すスイッチ)が入っている
- 光を受けている間だけ導通する
- その導通をPLC内部の低い電圧で読み取る
- ここから先はコンピュータの世界
一次側と二次側の間にあるのは、光を通す透明な樹脂だけです。金属の線ではつながっていません。だからこそ、電圧の壁を作りながら情報だけを渡せるのです。つまり、フォトカプラは「窓ガラス越しの手信号」のような部品ということです。ガラスがあるので風(ノイズ)も雨(過電圧)も入ってきませんが、手を振る合図(信号)はちゃんと伝わります。
光にすることで生まれる「向きの制約」
LEDは、電流が決められた向きに流れたときだけ光ります。逆向きでは光りません。ここが入力配線の「向き」の話につながる根っこの部分です。多くのDC入力ユニットは、どちら向きの電流でも動作できるように、一次側のLEDを2個逆向きに並べた構成(双方向タイプ)を採用しています。これによって、1つの機種で異なる配線方式に対応できるようになっています。
「フォトカプラで絶縁されているのだから、どんなつなぎ方をしても壊れない」わけではありません。絶縁されているのは一次側と二次側の間だけで、一次側そのもの(LEDと電流制限抵抗)は普通に壊れます。定格を超えた電圧を加えれば、フォトカプラの入力側が焼損し、その点だけ入力を受け付けなくなります。「1点だけ入力が入らない」という故障は、これが原因のこともあります。
同じものを指しているのに、資料によって名前が変わるので混乱しがちです。「入力ユニット」「入力モジュール」「DIユニット(Digital Inputの略)」はすべて同じ、入力を受け取る部品を指します。「フォトカプラ」「ホトカプラ」「光結合素子」「フォトアイソレータ」も同じ部品です。「入力フィルタ時間」「入力応答時間」「デジタルフィルタ設定」も、狙いはどれも同じで、短すぎる信号を無視するための時間設定です。呼び方が違うだけで中身は同じなので、マニュアルを読むときは名前ではなく「どの関門の話をしているか」で判断すると迷いません。

入力仕様の読み方|ON電圧・入力電流・応答時間は何を意味するか
カタログに並ぶ数値は、すべてここまで説明した5つの関門のどれかを説明しています。対応関係で整理すると、一気に読めるようになります。
| 仕様の項目 | 一般的な値の例 | どの関門の話か/読み方 |
|---|---|---|
| 定格入力電圧 | DC24V | 関門1〜2。この電圧をかけたときに正しく動くよう設計されている、という意味です。 |
| 定格入力電流 | 約4〜7mA | 関門2。電流制限抵抗で決まる値。センサ側が供給できる電流と突き合わせて確認します。 |
| ON電圧/ON電流 | 19V以上/3mA以上 | 関門3。これ以上ならLEDが確実に光り、ONと判定される下限のラインです。 |
| OFF電圧/OFF電流 | 11V以下/1.7mA以下 | 関門3。これ以下なら確実にOFFと判定される上限。この2つの間は「不定領域」です。 |
| 入力抵抗 | 約3.3〜5.6kΩ | 関門2。電流制限抵抗の値そのもの。入力電流はこの抵抗から逆算できます。 |
| 応答時間(OFF→ON) | 10ms(標準) | 関門5。1ms・5ms・20ms・70msなどに変更できる機種もあります。 |
| 絶縁方式 | フォトカプラ絶縁 | 関門3。この記載がなければ、絶縁されていないタイプの可能性があります。 |
上の表の数値は、DC24V入力ユニットで一般的に見られる値の例です。ON電圧・OFF電流のしきい値は機種によって明確に異なりますので、実際の設計や検証では必ず使用機種のマニュアルで確認してください。特に「OFF電流」の値は、センサ側の残留電流が問題になるかどうかを判断する基準になります。
入力電流はこう決まっている(電流制限抵抗の計算)
「入力電流 約5mA」という数値がどこから来るのか、実際に手を動かして確かめてみましょう。回路はとてもシンプルで、電源電圧からLEDが消費する分を引き、残りを抵抗で受け持つ、という考え方だけです。
与えられた条件
E=24 V(入力電圧)/VF=1.2 V(LEDが消費する電圧。順方向電圧といいます)/IF=5 mA=0.005 A(流したい電流)
答え:4.7kΩを使えば約4.85mAが流れ、狙いどおりの入力電流になります。抵抗で発生する熱は約0.11Wなので、定格1/4W(0.25W)の抵抗であれば、半分程度の余裕をみても収まります。
検算:逆算すると 4.85mA × 4700Ω = 22.8V となり、これに VF=1.2V を足すと 24V。最初の条件に一致するので計算は合っています。
この計算からわかるのは、入力回路が常に少しずつ発熱しているという事実です。入力点数が64点あって、そのすべてが同時にONすれば、抵抗だけで約7Wの熱が生まれます。入力ユニットに「同時ON率」の制限が書かれているのは、このためです。抵抗に電流が流れると熱になる仕組みそのものは、ジュール熱とはの記事で基礎から整理しています。
入力回路の種類|DC入力・AC入力・絶縁なしタイプ
入力回路にはいくつかの型があります。現場で圧倒的に多いのはDC24Vのフォトカプラ絶縁タイプですが、他の型を知っておくと選定時に迷いません。
| 種類 | 絶縁の中身 | 得意なこと | 注意点 |
|---|---|---|---|
| DC入力 (フォトカプラ絶縁) |
LEDと受光素子。樹脂を挟んで非接触 | 最も一般的。センサ類との相性がよく、応答も速い | DC24V電源を別途用意する必要がある |
| 高速DC入力 | 高速タイプのフォトカプラ | 短いパルスを取りこぼさない。カウンタ用途向け | フィルタが浅いぶんノイズに弱くなりやすい |
| AC入力 | 整流したうえでフォトカプラ、または変圧器 | 既設のAC100V/200V操作回路をそのまま受けられる | 応答が遅い。感電リスクが高く、配線区分に注意 |
| 絶縁なし入力 | なし。抵抗分圧などで直接読む | 安価・小型。基板内や機器内部の短い配線向き | 外部への引き出しには不向き。故障がCPUに波及する |
| 安全入力 | 絶縁に加え、2系統で相互監視する構成 | 故障そのものを検出できる。非常停止などに使う | 通常の入力ユニットでは代用できない |
「絶縁なし入力」は手抜きではなく、用途が違うだけです。1台の機器の中で、基板から基板へ数センチの配線でつなぐだけなら、ノイズも誤配線リスクも小さいため絶縁は不要と判断できます。逆に、盤の外へ数十メートル伸びていく信号線を絶縁なしで受けるのは、かなり危険な設計です。距離と環境で選ぶ、と覚えてください。
入力ユニットを選ぶときの確認チェックリスト
- 接続する機器の出力形式(接点なのか、半導体出力なのか)を確認したか
- センサ側が供給できる電流が、入力ユニットのON電流を上回っているか
- 機器がOFFのときの残留電流が、入力ユニットのOFF電流を下回っているか
- 検出したい信号の最短時間が、入力フィルタ時間より長いか
- 同時ONする点数が、ユニットの同時ON率の制限内に収まっているか
- 盤外へ長く引き回す信号を、絶縁なしタイプで受けていないか
- 非常停止など安全に関わる信号を、通常入力で代用していないか
入力回路まわりでよくある3つの誤解
仕組みがわかると、現場でよく聞く「なんとなくの理解」のどこがズレているのかが見えてきます。はじめは誰でも戸惑うところなので、順に確認していきましょう。
誤解1「入力ランプが点いていれば正常」
入力表示ランプの多くは、フォトカプラの手前側、つまり一次側に付いています。ランプが点いているのは「電流がLEDまで届いた」という意味であり、その光が内部に正しく伝わったことまでは示していません。ランプは点いているのにプログラム上のデバイスがONしない場合、フォトカプラの二次側や内部回路の故障が疑われます。ランプは関門3の手前までの証明書だと考えてください。
誤解2「絶縁されているからノイズ対策は不要」
フォトカプラは直流的には完全に切り離されていますが、一次側と二次側の間にはごくわずかな静電容量(寄生容量)が存在します。立ち上がりの非常に急なノイズは、この容量を通り抜けて二次側に届くことがあります。だからこそ、シールド線の使用やケーブルの引き回しといった対策が、絶縁とは別に必要になるのです。絶縁は万能の盾ではなく、「大半のノイズを止める、とても優秀な一枚目の壁」という位置づけです。
誤解3「フォトカプラは半導体だから劣化しない」
フォトカプラの一次側はLEDです。LEDは長時間の通電で徐々に光量が落ちていく性質があり、これを光劣化と呼びます。光量が落ちると、二次側が受け取る信号も弱くなり、いずれON判定のしきい値を割り込みます。常時ONし続ける入力点(機器の運転状態を示す信号など)ほど、この劣化は早く進みます。10年、20年と動き続ける設備で「特定の入力だけときどき入らない」という症状が出たとき、候補に入れておくとよい原因です。
- 定義シンクとソースの違い|電流の向きで決まる2つの考え方
- 手順シンク・ソース配線のやり方|結線図の描き方と確認方法
- 定義NPNとPNPの違い|センサ出力形式の見分け方
- 定義PLCのコモン端子とは|共通線がある理由
- トラブル2線式センサの漏れ電流でOFFにならない原因と対処
よくある質問(FAQ)
- PLCの入力回路とは、外部の電気信号を内部のCPUが読めるON/OFF情報に変換する入口の回路のこと
- 信号は「入力端子 → 電流制限抵抗 → フォトカプラ → 内部ロジック → 入力フィルタ」の5つの関門を通る
- フォトカプラは電気を光に変えて渡す部品で、一次側と二次側は金属でつながっていない
- 絶縁が守っているのは、CPU(過電圧から)、信号の正確さ(ノイズから)、そして人と設備(漏電から)の3つ
- カタログのON電圧・入力電流・応答時間は、どれも5つの関門のどこかを説明した数値である
- 絶縁は万能ではなく、寄生容量を通る高速ノイズやLEDの光劣化という限界もある
メーカーで電気設計・制御・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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入力回路が守っている「絶縁」が破れたとき何が起きるのか、根本から理解できます。
電流制限抵抗の発熱と、入力ユニットの同時ON率制限の理由がつながります。
入力で受け取った信号が、その後どう判断され動作につながるのかの全体像がつかめます。