- パワエレ基板は2層でいい?4層にすべき?判断基準がわからない
- GND層や電源層はどこに配置すればいいの?
- 層数を増やすとコストが上がるけど、どこまで必要?
- 2層・4層・6層それぞれの特徴と使い分けの判断基準
- パワー層・GND層・信号層の最適な配置パターン
- コストと性能のバランスの取り方
「基板の層数、何層にすればいいんだろう…」
パワエレ基板設計を始めるとき、最初に悩むのが「層構成」です。2層なら安いけど大丈夫?4層にしたらオーバースペック?6層は本当に必要?
実は、層構成の決め方には明確な判断基準があります。「電流値」「ノイズ要件」「実装密度」の3つを見れば、最適な層数が見えてくるのです。
この記事では、パワエレ基板の層構成を「なぜそうするのか」という理由から丁寧に解説します。読み終わる頃には、自信を持って層数を決められるようになりますよ。
目次
層構成とは?|基板の「断面図」を設計する
まず、「層構成(レイヤースタック)」とは何かを明確にしましょう。
基板を横から見ると、銅箔の層と絶縁体(FR-4など)が交互に積み重なっています。この「積み重ね方」を決めるのが層構成設計です。
基板の層構成は「ミルフィーユ」のようなもの。クリーム(絶縁体)とパイ生地(銅箔)を何層にも重ねて、全体の厚さや特性を決めます。
基板の基本構造|銅箔と絶縁体の積層
一般的な基板の構造を見てみましょう。
📐 2層基板の断面構造
総厚:約1.6mm(標準)
2層基板は最もシンプルな構造です。表面(TOP)と裏面(BOT)の2枚の銅箔だけで回路を構成します。
なぜ層数を増やすのか?|3つの理由
2層で済むなら、わざわざ高い4層や6層にする必要はありません。では、なぜ層数を増やすのでしょうか?理由は大きく3つあります。
理由①
電流容量の確保
内層に電源・GNDプレーンを設けて、大電流の経路を確保
理由②
ノイズ対策
GNDプレーンでシールド効果を得て、EMIを低減
理由③
配線密度の向上
信号層を増やして、複雑な回路を小さな基板に収める
パワエレ基板では、特に①電流容量と②ノイズ対策が重要です。信号基板のように「配線が通らないから層を増やす」というより、「電気的性能を上げるために層を増やす」という考え方が基本になります。
2層・4層・6層の特徴比較|一目でわかる早見表
まずは、2層・4層・6層の特徴を一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | 2層 | 4層 | 6層 |
|---|---|---|---|
| コスト | ◎ 安い (基準) |
○ やや高い (1.5〜2倍) |
△ 高い (2〜3倍) |
| GNDプレーン | ✕ なし | ○ 1層 | ◎ 2層可能 |
| ノイズ耐性 | △ 低い | ○ 良好 | ◎ 優秀 |
| 配線自由度 | △ 制限あり | ○ 中程度 | ◎ 高い |
| 放熱性 | ○ 良好 | ◎ 優秀 | ◎ 優秀 |
| 納期 | ◎ 短い | ○ 標準 | △ 長い |
| 主な用途 | 簡易電源 LED駆動 低速スイッチング |
モータードライバ DC-DCコンバータ 中規模インバータ |
高速インバータ EV用パワエレ 複合システム |
2層基板|シンプル&低コストの基本形
2層基板は、最もシンプルでコストの安い構成です。表と裏の2面だけで回路を構成します。
🔧 2層基板の層構成
2層基板のメリット
- コストが安い:4層の1/2〜1/3程度
- 納期が短い:試作基板なら最短即日〜数日
- 設計がシンプル:層間の整合性を考えなくてよい
- 放熱経路が明確:裏面のベタGNDから熱を逃がしやすい
2層基板のデメリット
- GNDプレーンが不完全:配線で分断されやすい
- ノイズ耐性が低い:シールド効果が限定的
- 配線の自由度が低い:交差する配線はジャンパが必要
・電流が10A以下の比較的小規模な回路
・スイッチング周波数が100kHz以下の低速回路
・EMC規格が厳しくない用途(産業機器内蔵など)
・試作・評価用でコストと納期を優先したい場合
4層基板|パワエレの「標準」構成
4層基板は、パワエレ設計で最もよく使われる「標準的な構成」です。内層にGNDプレーンと電源プレーンを配置できるため、2層に比べて大幅に性能が向上します。
🔧 4層基板の層構成(推奨パターン)
総厚:約1.6mm(標準)
・L2にGNDプレーンを配置するのが鉄則。L1の信号に対するリターンパスを最短にする
・GNDとVCCの間隔は薄く(0.2mm程度)してデカップリング効果を高める
・パワー回路と信号回路は物理的に分離する

4層基板のメリット
- GNDプレーンで低インピーダンス:リターン電流が最短経路で流れる
- シールド効果:L2のGNDプレーンがL1とL3の間を遮蔽
- 放熱性向上:内層の銅箔が熱を拡散させる
- デカップリング効果:GND-VCC間の薄い絶縁層がコンデンサとして機能
4層基板のデメリット
- コスト増:2層の1.5〜2倍程度
- 納期増:試作でも1週間程度かかることが多い
- 設計の複雑化:層間の整合性、ビアの配置を考慮する必要
・電流が10A〜50A程度の中規模パワー回路
・スイッチング周波数が100kHz〜1MHz程度
・EMC規格への適合が必要な製品
・モータードライバ、DC-DCコンバータ、小〜中規模インバータ
6層基板|高性能・高密度の選択肢
6層基板は、4層では足りない場合の選択肢です。信号層を増やしたり、GNDプレーンを複数設けたりできます。
🔧 6層基板の層構成(パワエレ向けパターン)
6層の最大のメリットは、GNDプレーンを2層設けられることです。パワーGNDと信号GNDを物理的に分離することで、ノイズの干渉を大幅に低減できます。
・電流が50A以上の大規模パワー回路
・スイッチング周波数が1MHz以上の高速回路
・パワー回路と制御回路が同一基板に混在する場合
・EV用インバータ、高性能モータードライバ、複合電源システム
6層はコストが2層の2〜3倍になります。「4層+基板を分割」という選択肢も検討してください。パワー基板と制御基板を分ければ、それぞれ4層で済むこともあります。
層数の決め方|3つの判断基準
では、実際に層数をどう決めればいいのでしょうか?3つの判断基準を順番にチェックすれば、最適な層数が見えてきます。
🔍 層数決定フローチャート
最大電流は何A?
→ 10A以下:2層でも可能
→ 10A〜50A:4層推奨
→ 50A以上:6層または基板分割を検討
EMC規格への適合は必要?
→ 不要(内部基板など):2層でも可能
→ 必要(製品として出荷):4層以上を強く推奨
パワー回路と制御回路は同一基板?
→ 別基板:各基板は4層で十分なことが多い
→ 同一基板:6層で分離、または基板分割を検討

判断基準①:電流値|パターン幅と層数の関係
電流値は、層数を決める最も基本的な判断基準です。電流が大きいほど、太いパターンや複数の層が必要になります。
| 電流 | 推奨層数 | 理由 |
|---|---|---|
| 〜10A | 2層でOK | 外層だけで十分な電流容量を確保できる |
| 10A〜30A | 4層推奨 | 内層の電源プレーンで電流経路を分散 |
| 30A〜50A | 4層+厚銅 | 70μm〜105μmの厚銅を併用 |
| 50A以上 | 6層または分割 | 基板分割やバスバー併用も検討 |
判断基準②:ノイズ要件|GNDプレーンの必要性
EMC規格への適合が必要な製品では、GNDプレーンによるシールド効果が重要になります。これは2層では実現しにくく、4層以上が必要になる主な理由です。
❌ 2層のGNDパターン
・配線で分断される
・リターン電流の経路が遠回り
・ループ面積が大きくなりノイズ増加
・シールド効果がほとんどない
✓ 4層のGNDプレーン
・分断されないベタパターン
・リターン電流が最短経路で流れる
・ループ面積が最小化されノイズ低減
・L1とL3の間をシールド
GNDプレーンがあると、信号のリターン電流は「信号パターンの真下」を通ります。これによりループ面積が最小化され、放射ノイズが大幅に減少します。EMC試験で10dB以上の差が出ることも珍しくありません。
判断基準③:回路の複合度|パワーと制御の分離
パワー回路と制御回路が同一基板に載る場合、両者の分離が重要な設計課題になります。
| 構成 | 推奨対応 |
|---|---|
| パワー回路のみ | 4層で十分。電源・GNDプレーンを内層に |
| パワー+簡易制御 | 4層で対応可能。エリア分離を徹底 |
| パワー+高速制御 | 6層でGNDを2層化、または基板分割 |
| 複数電源+制御 | 6層以上、または基板分割を強く推奨 |
コストと性能のバランス|現実的な選択
層数を増やせば性能は上がりますが、コストも上がります。「必要十分」な層数を選ぶことが、現実的な設計には重要です。
層数とコストの関係
| 層数 | コスト目安 (2層=1.0) |
試作納期目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2層 | 1.0 | 即日〜3日 | 最も安価・短納期 |
| 4層 | 1.5〜2.0 | 5〜7日 | コスパ最良 |
| 6層 | 2.5〜3.5 | 7〜14日 | 高性能用途向け |
| 8層以上 | 4.0〜 | 14日〜 | 特殊用途 |
・試作は2層で基本動作を確認、量産で4層に移行する方法もある
・基板を分割して、パワー基板は2層、制御基板は4層という構成も有効
・基板サイズを小さくできれば、層数が多くてもコスト増を抑えられる
コストを優先して2層にしたら、EMC試験で不合格…という失敗談は多いです。やり直しのコストは新規設計の3〜5倍かかることも。最初から適切な層数を選ぶ方が、トータルでは安上がりです。
まとめ|層構成は「電流・ノイズ・複合度」で決める
この記事では、パワエレ基板の層構成の決め方を解説しました。
📝 この記事のまとめ
- 2層:10A以下、EMC要件なし、低コスト優先の場合
- 4層:パワエレの標準構成。10A〜50A、EMC対策必要な場合に最適
- 6層:50A以上、パワー+高速制御が混在する場合
- 層数は「電流値」「ノイズ要件」「回路の複合度」の3点で判断
- 4層のコスパが最も良い。迷ったら4層を選べば間違いない
- コスト削減は「基板分割」「サイズ縮小」で対応する方が安全
🎯 層数クイック判定
試作・評価
10A以下
EMC不要
量産・製品
10A〜50A
EMC対策必要
高性能・複合
50A以上
パワー+制御混在
層構成が決まったら、次は「各層に何を配置するか」という具体的なレイアウト設計に進みます。パワー層・GND層・信号層の配置パターンを学びましょう。
📚 次に読むべき記事
まだ読んでいない方は、パワエレ設計の「4大課題」を先に理解しておきましょう。
パワー半導体の種類と特徴を理解して、適切な部品選定につなげましょう。
パワエレの基本概念から学びたい方はこちら。全体像がさらに明確になります。
この記事は「パワエレ基板設計 基礎編」シリーズの一部です。基礎から順番に学びたい方は、シリーズ記事をご活用ください。