📊 こんな疑問、ありませんか?
- 「総平方和」って何を計算しているの?
- なぜ「全体のバラつき」を最初に求めるの?
- S_T の具体的な計算手順を知りたい!
こんにちは、シラスです。
前回の記事で、平方和(S)と自由度(f)の関係について学びました。
いよいよ今日から、具体的な計算に入ります。
最初に計算するのは、すべての解析の「土台」であり、「源流」となる数値。
総平方和(ST)
Total Sum of Squares
「総」平方和という名前の通り、これは実験データの「バラつきの総量(全エネルギー)」です。
温度の効果も、材料の違いも、測定誤差も……
全てひっくるめて「今、目の前のデータは合計でどれくらい暴れているのか?」を数値化します。
⚠️ 注意:ここが計算のスタート地点です
もしここで間違えると、この後のF検定も推定も、全てドミノ倒しで崩壊します。
気合を入れて、データの「全貌」を捉えに行きましょう。
✅ この記事で学べること
- 総平方和(ST)の意味=「ホールケーキ丸ごと」のイメージ
- 計算公式:ST = Σx² − CT
- 実践:プラスチック強度のデータで実際に計算
- なぜ「総量」を最初に求めるのか、その理由

目次
1. ST のイメージ:「ホールケーキ」を焼け
分散分析(ANOVA)のゴールは、バラつきを「要因(シグナル)」と「誤差(ノイズ)」に切り分けることでした。
しかし、切り分けるためには、まず「切る前の全体像」を知らなければなりません。
🎂 ケーキ屋さんで考える
🎂
総平方和(ST)とは
「ホールケーキ丸ごと」の大きさです
この巨大なエネルギーの塊を、後で「温度の効果」や「誤差」にナイフで切り分けていきます。
まずは、このホールケーキの総重量を測るのです。
ケーキを6人で分けるとき、あなたはどうしますか?
いきなりナイフを入れますか?
いいえ、まず「ケーキ全体の大きさ」を確認しますよね。
分散分析も同じです。データのバラつきを「効果」と「誤差」に分けるために、まず「バラつき全体の大きさ」を測ります。
📊 ケーキと統計の対応関係
| ケーキの話 | 統計の話 |
|---|---|
| ホールケーキ丸ごと | 総平方和 ST |
| チョコレート部分 | 群間平方和 SA(効果) |
| スポンジ部分 | 群内平方和 Se(誤差) |
🏠 もう一つのたとえ:「家計簿の総支出」
ケーキのイメージがピンとこなければ、家計簿で考えてみましょう。
💰
今月の総支出 = ST
食費も、光熱費も、娯楽費も
全部ひっくるめた金額
📊
内訳を知りたい!
「食費がいくら?」「娯楽費は?」
→ 切り分けて分析
家計簿で「今月どこにお金を使いすぎたか」を調べるとき、まず「総支出」を確認しますよね。
総平方和(ST)は、データの「総支出」。
これを知らないと、内訳(効果・誤差)を分析できません。

2. 計算手順:必殺「CT」を使う
では、計算していきましょう。
定義通りにやるなら「すべてのデータから平均値を引いて、二乗して…」となりますが、実務ではそんな面倒なことはしません。
以前習得した必殺技、「修正項(CT)」を使います。
📐 総平方和(ST)の公式
ST = Σx² − CT
二乗の合計 − 修正項(底上げ分)
🎯 やることは2つだけ
計算手順はとてもシンプルです。
1️⃣
全開で二乗する
何も考えず、手元の全データを
二乗して足し合わせる(Σx²)
2️⃣
下駄を引く
そこから、データの底上げ分である
修正項(CT)を引く
たったこれだけで、純粋な「バラつきの総量」が手に入ります。
🤔 なぜ「CT(修正項)」を引くの?
データをそのまま二乗すると、「平均値からのズレ」だけでなく、「平均値そのものの大きさ」も含まれてしまいます。
CTを引くことで、平均値の「底上げ分」を取り除き、純粋なバラつきだけを取り出せるのです。
🚰 イメージ:「水道メーター」で考える
この計算を水道メーターでたとえてみましょう。
あなたの家の水道メーターが1000を示しています。
でも、入居時にすでに950だったとしたら?
あなたが使った水の量 = 1000 − 950 = 50
| 水道の話 | 統計の話 |
|---|---|
| 今のメーター値(1000) | Σx²(二乗の合計) |
| 入居時の値(950) | CT(修正項=底上げ分) |
| 実際に使った量(50) | ST(純粋なバラつき) |

3. 実践:プラスチック強度の実験
具体的な数字がないと燃えませんよね。
以下のデータで計算してみましょう。
🏭 実験データ(強度)
プラスチックの強度を、2つの温度条件で測定しました。
| 条件 | データ |
|---|---|
| 温度A1(低温) | 3, 4, 5 |
| 温度A2(高温) | 7, 8, 9 |
※計算しやすいよう簡単な数字にしていますが、単位はMPaだと思ってください
ステップ1:修正項(CT)を出す
まずは「下駄(底上げ分)」の計算です。
全データの合計(T)を求める
T = 3 + 4 + 5 + 7 + 8 + 9 = 36
データ数(N)を確認
N = 6個
CT = T² ÷ N = 36² ÷ 6 = 1296 ÷ 6 = 216
ステップ2:データの二乗和(Σx²)を出す
ここが一番の力仕事です。全データを二乗して足します。
各データを二乗する
| データ | 3 | 4 | 5 | 7 | 8 | 9 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 二乗 | 9 | 16 | 25 | 49 | 64 | 81 |
Σx² = 9 + 16 + 25 + 49 + 64 + 81 = 244
ステップ3:引き算して ST 完了!
最後に、二乗和から修正項を引きます。
最終計算
ST = 244 − 216 = 28
🎉 出ました!「28」
これが、この実験データ全体が持っている「バラつきの総エネルギー」です。
ホールケーキの総重量が「28」だと分かりました!
📋 計算結果まとめ
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 合計 T | 3+4+5+7+8+9 | 36 |
| 修正項 CT | 36²÷6 | 216 |
| 二乗和 Σx² | 9+16+25+49+64+81 | 244 |
| 総平方和 ST | 244−216 | 28 |

まとめ:これはまだ「塊(かたまり)」だ
📝 今日のポイント
✅ 総平方和(ST)
実験データのバラつきの
「総量(ホールケーキ)」
✅ 公式
ST = Σx² − CT
二乗和から修正項を引くだけ
✅ 役割
全ての計算の
「土台(分母)」になる
しかし、これだけでは「バラついてるね(28だね)」ということしか分かりません。
私たちが知りたいのは、「そのバラつきのうち、どれくらいが『温度(シグナル)』のせいで、どれくらいが『誤差(ノイズ)』なのか?」です。
🔪 次回、この「28」という数字をナイフで切り分けます。
「群間平方和(SA)」と「群内平方和(Se)」。
この2つに分解できたとき、ついに実験の全貌が見えてきます。
📖 次に読む記事
群間平方和と群内平方和|バラつきを「効果」と「誤差」に分解する|一元配置実験⑦
今回求めた「総平方和(28)」を、「温度の効果」と「誤差」に切り分けます。これができれば、分散分析の8割は理解したも同然です!
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