こんにちは、シラスです。
これまで、「因子」「水準」「誤差」といった実験の基礎用語を学んできました。
ここからは、いよいよ実践編です。
それらの知識を組み合わせて、実際に実験を行い、データを解析するフェーズに入ります。
その第一歩となるのが、今回紹介する「一元配置実験(いちげんはいちじっけん)」です。
名前は難しそうですが、やっていることは至ってシンプル。
「この条件を変えたら、結果は変わるのか?」
これだけを一点突破で調べる、実験の基本形です。
目次
1. 一元配置実験とは?:一点突破の戦術
まずは定義から押さえましょう。
その水準の違いによる効果を調べる実験。
ポイントは「1つだけ」という点です。
「温度も、圧力も、材料も…」と欲張るのではなく、「まずは温度だけで勝負だ!」とターゲットを絞るのがこの手法の特徴です。
カレー作りで考える 🍛
あなたが「肉の種類」による味の違いを知りたいとします。
- 注目する因子(A): 肉の種類
- 水準: 「牛肉」 vs 「鶏肉」
この時、他の条件(スパイスの量、煮込み時間、隠し味など)は、すべて厳密に固定します。
そうしないと、味が変わった原因が「肉」なのか「スパイス」なのか分からなくなるからです。
この状態で比較するのが一元配置実験です。
2. 具体的な手順(5ステップ)
実験は、以下の手順で進めます。
(※フィッシャーの3原則を思い出してくださいね)
- 因子を選ぶ: 「今回は『肉』を見るぞ」と決める。
- 水準を決める: 「牛肉」と「鶏肉」の2つで比較する。
- 条件を固定する: スパイス量や時間は統一する(局所管理)。
- 実験する(反復・ランダム): 「牛→鶏→鶏→牛…」とランダムに複数回作る。
- 解析する: データをグラフにして、差があるか確認する。
結果のイメージ
実験結果が以下のようになったとします。
- 牛肉: 84点, 86点, 85点 → 平均 85点
- 鶏肉: 79点, 81点, 80点 → 平均 80点
牛肉の方が明らかに点数が高いですね。
誤差(±1点くらい)を考慮しても、5点の差は大きそうです。
これにより、「肉の種類は、カレーの味に影響を与える(有意である)」という結論が出せます。
3. メリットとデメリット
シンプルですが、万能ではありません。
使い所を見極めることが重要です。
- 構造が単純で分かりやすい。
- 計算や解析が簡単(手計算でもできる)。
- 結果のグラフが見やすい。
- 1つしか調べられない(効率が悪い)。
- 他の要因の影響を見逃す可能性がある。
- 交互作用(肉×スパイスの相性など)が見えない。
つまり、一元配置実験は「まずは手始めに、一番怪しいコイツを調べてみよう」という、初期段階の調査に向いています。
まとめ
「まずは一元配置でシンプルに効果を確認する」
「その後、因子を増やして(二元配置や直交表)、さらに深掘りする」
このステップを踏むことが、実験の失敗を防ぐ王道ルートです。
次回は、いよいよこの実験データを数値化して分析するための第一歩、「総平方和($S_T$)の計算」に入ります。
「バラつき」をどうやって計算するのか? その源流を探りに行きましょう。
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次の記事では、
「二元配置実験とは何か?複数の因子を組み合わせて効果を見る方法」
について詳しく解説していきます。
ここを理解すると、複雑な現場の問題もスムーズに設計できるようになります!
ぜひ続けて読んでください!
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