📚 この記事でわかること
- バートレットの検定が「何のための検定か」がイメージでわかる
- コクラン・ハートレーとの違いがスッキリ理解できる
- 計算式の意味を「オーケストラの音量」で直感的に理解できる
- χ²(カイ二乗)分布を使った判定方法がわかる
前回・前々回で、「コクランの検定」と「ハートレーの検定」を学びましたね。
コクランは「最大のバラつきが全体の何%か」を調べる検定。
ハートレーは「最大と最小の比(何倍か)」を調べる検定でした。
でも、こんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか?
🤔 「最大だけ」や「両端だけ」を見るのって、本当に十分なの?
全部のグループを総合的に判定する方法はないの?
その答えが、今回紹介する「バートレットの検定(Bartlett's test)」です。
🎯 結論から言うと
バートレットの検定は、
「3群以上のバラつきが、全体的に揃っているか?」
を総合的に判定する検定です。
いわば、「オーケストラ全体のハーモニー」をチェックする検定です。

目次
バートレットの検定のイメージ|「オーケストラ」で考える
バートレットの検定を理解するために、「オーケストラの音量バランス」を想像してみましょう。
3つのパートの「音量のバラつき」
オーケストラには、弦楽器・管楽器・打楽器のパートがあります。
それぞれのパート内で、「演奏者ごとの音量のバラつき」を見てみましょう。
3つの検定、それぞれ何を見る?
同じデータでも、コクラン・ハートレー・バートレットは見ているポイントが違います。
🔍 コクランの検定の視点
「打楽器だけ全体の何%を占めてる?」
→ 20 / (10+15+20) = 44%(3群なら33%が理想)
※「1人だけ取りすぎ」を見つける検定
📏 ハートレーの検定の視点
「打楽器は弦楽器の何倍バラついてる?」
→ 20 / 10 = 2倍
※「両端の差」を見る検定
🎼 バートレットの検定の視点
「全パートの音量バランス、全体的に揃ってる?」
→ 全体を総合的に評価して判定
※「オーケストラ全体のハーモニー」を見る検定
比較表で整理しよう
| コクラン | ハートレー | バートレット | |
|---|---|---|---|
| 計算式 | Vmax / ΣVi (最大÷合計) | Vmax / Vmin (最大÷最小) | χ²統計量 (全体を総合評価) |
| 見ているもの | 割合 「全体の何%?」 | 倍率 「何倍違う?」 | 全体のズレ 「揃っている度合い」 |
| イメージ | 🍰 ケーキの取り分 「1人だけ取りすぎ?」 | 📏 身長比べ 「一番と最下位の差は?」 | 🎼 オーケストラ 「全体のハーモニーは?」 |
| 判定に使う分布 | 専用の臨界値表 | 専用の臨界値表 | χ²分布 |
| 正規性への敏感さ | 普通 | 普通 | 非常に敏感 |
💡 バートレットの特徴
バートレットは「最大だけ」「両端だけ」ではなく、全体を見る検定です。
そのため、より精密な判定ができます。
ただし、正規性(データが正規分布に従うこと)に非常に敏感という弱点があります。

バートレットの検定の計算式|「全体のズレ」を測る
計算式は少し複雑に見えますが、「何をやっているか」のイメージを掴めば怖くありません。
バートレットの統計量 χ²
📐 公式(直感的な形)
χ² = (各群の分散が「プール分散」からどれだけズレているか)
÷ 補正係数
ここで重要なのは「プール分散(pooled variance)」という考え方です。
「プール分散」を直感的に理解する
プール分散とは、「全群の分散を合体させた、代表的なバラつき」のことです。
🏊 「プール」の例え
3つの小さなプール(A・B・C)に、それぞれ異なる温度の水が入っています。
これを1つの大きなプールに合体させると、全体の水温はどうなるでしょう?
プールA
24°C
プールB
26°C
プールC
28°C
合体プール
約26°C
→ この「約26°C」がプール水温(代表値)です。
分散でも同じように、「全群を合体させた代表的なバラつき」を計算します。
バートレットが見ているのは「ズレの合計」
バートレットの検定は、こう考えています。
🎼 オーケストラに戻ると…
「全パートの平均的な音量(プール分散)」を基準にして、
「各パートがその基準からどれだけズレているか」を計算。
そのズレを全部足し合わせて、全体のズレ度合いを測ります。
弦楽器のズレ
小さい
管楽器のズレ
小さい
打楽器のズレ
小さい
全体のズレ
小さい
→ 等分散!
全体のズレが小さい → 各パートの音量がだいたい揃っている → 等分散
全体のズレが大きい → どこかのパートが突出している → 等分散でない
計算の流れ(手順)
実際の計算手順を、ステップごとに見ていきましょう。
各群の分散を計算する
グループごとに「バラつき(分散)」を計算します。
例:V₁ = 10, V₂ = 15, V₃ = 20
プール分散を計算する
各群の分散を「データ数で重み付け」して合体させます。
大きなグループの分散ほど、影響力が大きくなります。
χ²統計量を計算する
「各群の分散」と「プール分散」のズレを、対数を使って計算。
さらに補正係数で調整します(詳細は後述)。
⚠️ 計算は複雑なので…
実務ではExcelでの手計算は大変です。
RやPython、統計ソフト(EZR、SPSS、JMPなど)を使うのが現実的です。
QC検定では「計算式の意味」と「判定方法」が問われることが多いので、
「何を見ているか」のイメージをしっかり掴んでおきましょう!

具体例で計算してみよう
実際のデータを使って、バートレットの検定を体験してみましょう。
ケーススタディ:3台の機械の精度比較
Step 1:プール分散を計算
🧮 計算
プール分散 Sp² = Σ(ni-1)Vi / Σ(ni-1)
= (5×4.0 + 5×6.0 + 5×8.0) / 15
= (20 + 30 + 40) / 15
= 6.0
→ 3台の機械を「合体」させた代表的なバラつきは6.0
Step 2:χ²統計量を計算
🧮 計算(簡略版)
詳細な公式は複雑ですが、「やっていること」は以下の通りです。
① 「全体の自由度 × ln(プール分散)」を計算
② 「各群の自由度 × ln(各群の分散)」の合計を計算
③ ①から②を引く
④ 補正係数で割る
このデータの場合、計算すると…
χ² ≈ 1.37
Step 3:判定|χ²分布の臨界値と比較
χ² > 臨界値
等分散でない
(帰無仮説を棄却)
→ 対策が必要!
χ² = 1.37 ≤ 臨界値 5.991
✅ 判定結果:等分散とみなせる
→ 分散分析(ANOVA)に進んでOK!
📝 解釈
「3台の機械のバラつき(4.0, 6.0, 8.0)は多少違うけれど、
統計的には『誤差の範囲内』と判断できます。
オーケストラで言えば、全パートの音量は揃っていると言えます」

バートレットの検定の注意点|「正規性」に要注意!
バートレットの検定には、重要な弱点があります。
正規性に非常に敏感
⚠️ バートレット最大の弱点
バートレットの検定は、「データが正規分布に従っている」ことを前提にしています。
もしデータが正規分布でない場合、
「等分散なのに『等分散でない』と誤判定してしまう」
という問題が起こりやすくなります。
統計学の用語で言うと、「第1種の過誤(あわてんぼうのミス)」が起こりやすい検定です。
正規性が怪しい時はどうする?
データが正規分布に従っているか怪しい場合は、「ルビーン検定(Levene's test)」を使いましょう。
| バートレット検定 | ルビーン検定 | |
|---|---|---|
| 正規性への敏感さ | 非常に敏感 (正規分布が前提) | 頑健(ロバスト) (非正規でもOK) |
| 精度 | 高い (正規なら最強) | 普通 (汎用性重視) |
| おすすめの場面 | 正規性が確認済み QC検定の問題 | 実務での汎用的な使用 正規性が不明な場合 |
💡 実務でのアドバイス
「正規性が明らかに成り立つ」場合 → バートレット検定(精度が高い)
「正規性がよくわからない」場合 → ルビーン検定(安全策)
QC検定ではバートレット検定が出題されることが多いので、
計算方法と判定方法をしっかり覚えておきましょう!
3つの検定、どう使い分ける?
最後に、コクラン・ハートレー・バートレットの使い分けを整理しましょう。
| こんな時は… | 使う検定 |
|---|---|
| 「1つだけ突出」していないか調べたい | コクランの検定 |
| 「両端の差(倍率)」を調べたい 計算を簡単に済ませたい | ハートレーの検定 |
| 「全体的に揃っているか」を厳密に調べたい 正規性が確認済み | バートレットの検定 |
| 正規性がよくわからない とりあえず安全策で | ルビーン検定 |
| 2群の比較 | F検定 |
まとめ|バートレットは「全体のハーモニー」を見る
📝 この記事のまとめ
① バートレットの検定の目的
3群以上のバラつきが「全体的に揃っているか」を総合判定
→ オーケストラ全体のハーモニーをチェックする検定
② 計算式の意味
「プール分散(全体の代表値)」と「各群の分散」のズレを測定
→ ズレが小さければ等分散、大きければ等分散でない
③ 判定方法
χ² ≤ 臨界値 → 等分散とみなせる(分散分析OK)
χ² > 臨界値 → 等分散でない(対策が必要)
④ コクラン・ハートレーとの違い
コクラン:最大だけに注目(突出を探す)
ハートレー:両端だけに注目(倍率を見る)
バートレット:全体を総合的に評価
⑤ 注意点
正規性に非常に敏感なので、
正規性が怪しい場合はルビーン検定を使う
🎓 覚え方のコツ
バートレット = 「バート」レットは「全パート」を見る
「最大だけ」「両端だけ」ではなく、
全パート(全群)のバランスを総合判定する検定です。
次に学ぶべきこと
コクラン・ハートレー・バートレットで「等分散性OK」と確認できたら、いよいよ分散分析(ANOVA)に進みましょう!
分散分析では、「3群以上の平均に差があるか?」を判定します。
📚 関連記事
💪 ここまで読んでくださった方へ
「バートレットの検定」、
「全体のハーモニーを見る」というイメージで覚えられましたね!
コクラン・ハートレー・バートレット、
3つの等分散性検定をマスターしました。
分散分析の「前座」として、
しっかり使いこなせるようになりましょう!
統計学のおすすめ書籍
統計学の「数式アレルギー」を治してくれた一冊
「Σ(シグマ)や ∫(インテグラル)を見ただけで眠くなる…」 そんな私を救ってくれたのが、小島寛之先生の『完全独習 統計学入門』です。
この本は、難しい記号を一切使いません。 「中学レベルの数学」と「日本語」だけで、検定や推定の本質を驚くほど分かりやすく解説してくれます。
「計算はソフトに任せるけど、統計の『こころ(意味)』だけはちゃんと理解したい」 そう願う学生やエンジニアにとって、これ以上の入門書はありません。
【QC2級】「どこが出るか」がひと目で分かる!最短合格へのバイブル
私がQC検定2級に合格した際、使い倒したのがこの一冊です。
この本の最大の特徴は、「各単元の平均配点(何点分出るか)」が明記されていること。 「ここは出るから集中」「ここは出ないから流す」という戦略が立てやすく、最短ルートで合格ラインを突破できます。
解説が分かりやすいため、私はさらに上の「QC1級」を受験する際にも、基礎の確認用として辞書代わりに使っていました。 迷ったらまずはこれを選んでおけば間違いありません。
