検定・推定

コクランの検定とは?|「バラつきの足並み」を揃えるための前座検定

コクランの検定とは何か。「バラつきの足並み」を揃えるための前座検定

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この記事でわかること
  • コクランの検定が「何のための検定か」がイメージでわかる
  • なぜ分散分析の「前」にこの検定が必要なのか理解できる
  • F検定との違い(2群 vs 3群以上)がスッキリわかる
  • 計算式の意味を「徒競走の例え」で直感的に理解できる

分散分析(ANOVA)を勉強していると、こんな注意書きに出会いませんか?

「分散分析を行う前に、等分散性の検定を行うこと」

「等分散性? F検定でやるんじゃないの?」

実は、F検定は「2群」の比較にしか使えません。

では、3群以上のバラつきが揃っているかを調べたい時は?

そこで登場するのが、今回紹介する「コクランの検定(Cochran's test)」です。

結論から言うと

コクランの検定は、
「3群以上の中に、1つだけ極端にバラつきが大きいヤツがいないか?」
を調べる検定です。

いわば、「突出した問題児」を見つける検定です。
前提知識
バートレットの検定とは?(2つの群ならF検定) →

「2群」のバラつき比較(F検定)がまだ曖昧な方は、先にこちらをどうぞ

なぜ「等分散性」を確認する必要があるのか?

まず、大前提を確認しましょう。

分散分析(ANOVA)には、「各群のバラつき(分散)がだいたい同じ」という前提条件があります。

運動会の徒競走で考えてみよう

分散分析を「運動会の徒競走」に例えて説明します。

シチュエーション

3つのクラス(A組・B組・C組)の「平均タイム」を比較したい。
「どのクラスが一番速いか?」を判定する。

この時、「各クラスの中でのバラつき(実力差)」はどうあるべきでしょうか?

○ 公平な比較ができる状態
A組
バラつき:小
B組
バラつき:小
C組
バラつき:小

3クラスとも「足並みが揃っている」
→ 平均の比較が公平にできる!

× 公平な比較ができない状態
A組
バラつき:小
B組
バラつき:小
C組
バラつき:大

C組だけ「実力差がバラバラ」
→ 平均の比較が不公平に!

等分散性が必要な理由

C組だけ「足の速い子」と「遅い子」の差が激しいと、
平均タイムの比較が意味をなさなくなります。

「C組の平均が一番速い!」と言っても、
「それ、たまたま速い子がいただけじゃない?」とツッコまれてしまいます。

だから、「各群のバラつきが揃っているか?」を
分散分析の前に確認する必要があるのです。
等分散性を運動会の徒競走にたとえた図。A組・B組は足並みがそろっているが、C組だけ走りがばらばらでばらつきが大きい
等分散性は、組ごとの足並みがそろっているか

コクランの検定の役割|「問題児」を見つける

では、コクランの検定は何をしているのでしょうか?

コクランの検定の目的

「3群以上の中で、
1つだけ極端にバラつきが大きい群がないか?」


を調べる検定です。

先ほどの徒競走の例で言うと、

「A組・B組・C組の中で、
C組だけ異常にバラついてない?」

を調べるのがコクランの検定です。

F検定との違い

「バラつきの比較なら、F検定でいいんじゃないの?」と思うかもしれません。

違いを整理しましょう。

F検定 コクランの検定
比較する群の数 2群のみ 3群以上
調べること AとBのバラつきは
同じか?
1つだけ極端に
バラついている群はないか?
使う場面 t検定の前 分散分析(ANOVA)の前
イメージ 1対1の対決 集団の中の
「問題児探し」
注意:コクランの検定の特徴

コクランの検定は、「最大のバラつき」だけに注目します。

つまり、「一番バラついている群が、突出しているかどうか」を調べます。
「全体的にバラつきが揃っているか」を調べる検定とは少し違います。

(全体の等分散性を調べたい場合は「バートレット検定」を使います)
関連記事
バートレットの検定とは?(2つの群ならF検定) →

F検定で使う「F分布」の意味を復習したい方はこちら

コクランの検定のイメージ図。A・B・Cの3群のうち、C群だけ分散が突出して大きいのを見つける
コクランの検定は、1つだけ突出してばらつく群を探す

コクランの検定の計算式|「最大のバラつき」の割合

計算式を見てみましょう。意味が分かれば、とてもシンプルです。

コクランの統計量 G

公式

G = Vmax / ΣVi
Vmax:各群の分散の中で最大のもの
ΣVi:各群の分散の合計

式の意味を「ケーキの分け方」で理解する

この式は、「全体のバラつきの中で、最大のバラつきがどれくらいの割合を占めるか?」を計算しています。

ケーキの例え

3人でケーキを分けることを想像してください。

理想:3人が均等に1/3ずつ = 約33%ずつ

問題:1人だけが70%も取っている!
→ 「この子だけ取りすぎじゃない?」

コクランの検定は、「最大の分散が、全体の何%を占めているか」を調べて、
その割合が大きすぎたら「問題あり!」と判定します。

具体例で計算してみよう

データ

3つの機械(A・B・C)で製品を作り、それぞれのバラつき(分散)を計算した。

機械 分散 V
A 10
B 12
C 38(最大)
合計 60
計算
G = Vmax / ΣVi = 38 / 60 = 0.633

→ 最大の分散が、全体の63.3%を占めている!

3群なら本来は33%程度のはずなのに、約2倍も占めている。
「C機だけバラつきすぎでは?」という疑いが生まれる。

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コクランの統計量Gの図。G=最大の分散÷分散の合計。理想は3群が33%ずつだが、1群だけ70%を占めると問題あり
G=最大の分散÷分散の合計:1群が大きく占めると問題

判定方法|G値を臨界値と比較する

計算したG値を、コクランの臨界値表と比較して判定します。

判定ルール

G ≤ 臨界値
判定:等分散とみなせる
(帰無仮説を棄却しない)

→ 分散分析に進んでOK!

G > 臨界値
判定:等分散でない
(帰無仮説を棄却)

→ そのまま分散分析するのは危険!

コクランの臨界値表(抜粋)

有意水準 α = 0.05 の場合の臨界値を示します。

群の数
k
各群のデータ数 n
3 4 5 6 10
3 0.871 0.798 0.746 0.707 0.602
4 0.798 0.684 0.629 0.590 0.492
5 0.746 0.629 0.544 0.507 0.418
6 0.707 0.590 0.507 0.469 0.382
表の見方

k:比較する群の数(機械の台数など)
n:各群のデータ数(繰り返し回数など)

例:3台の機械で、各5回ずつ測定した場合
→ k=3, n=5 の交点 = 0.746 が臨界値
コクランの検定の判定フロー。G値を計算し、G≦臨界値なら等分散とみて分散分析へ進み、G>臨界値なら等分散ではないので対策が必要
G≦臨界値なら分散分析へ、G>臨界値なら対策

具体例で判定してみよう

先ほどの計算例で、実際に判定してみましょう。

ケーススタディ

条件
  • 機械の台数:k = 3
  • 各機械のデータ数:n = 5
  • 計算したG値:0.633
  • 有意水準:α = 0.05
臨界値を確認

表から k=3, n=5 の値を探すと…

臨界値 = 0.746

比較
G = 0.633 ≤ 臨界値 0.746
○ 判定結果

G値が臨界値以下なので、
等分散とみなせる

→ 分散分析(ANOVA)に進んでOK!

もし G > 臨界値 だったら?

等分散性が満たされていないので、以下の対応が必要です。

① データを変換する(対数変換など)
② ノンパラメトリック検定を使う(クラスカル・ウォリス検定など)
③ 問題のある群を除外して再分析

コクランの検定の使いどころ

どんな時にコクランの検定を使うのか、整理しておきましょう。

使うべき場面

  • 分散分析(ANOVA)の前に等分散性を確認したい
  • 3群以上のバラつきを比較したい
  • 「1つだけ極端にバラついている群」がないか調べたい
  • 各群のデータ数が同じ(等反復)の場合

他の等分散性検定との比較

検定名 群の数 特徴
F検定 2群 最も基本的。t検定の前に使う
コクランの検定 3群以上 最大の分散が突出しているかを検定
計算が簡単。等反復が条件
バートレット検定 3群以上 全体の等分散性を検定
正規性に敏感で、非正規データに弱い
ルビーン検定 3群以上 全体の等分散性を検定
正規性に頑健で、実務で推奨される
使い分けのコツ

「1つだけ突出しているか」を調べたい → コクランの検定

「全体的にバラつきが揃っているか」を調べたい → バートレット検定 or ルビーン検定

QC検定や実験計画法では、コクランの検定がよく出題されます!
等分散性の検定の比較図。F検定は2群の分散を比べる、コクランは3群以上で最大の分散と総和を比べる、バートレットは3群以上の全体を比べる(いずれも正規分布が前提)、ルビーンは非正規分布でも使える
F検定・コクラン・バートレット・ルビーンの違い

まとめ|コクランの検定は「問題児探し」

この記事のまとめ
① コクランの検定の目的
3群以上の中で、1つだけ極端にバラつきが大きい群がないかを調べる
→ 「突出した問題児」を見つける検定
② 計算式の意味
G = Vmax / ΣVi
「最大の分散が、全体の何%を占めるか」を計算
→ ケーキを「取りすぎ」ている子を探すイメージ
③ 判定方法
G ≤ 臨界値 → 等分散とみなせる(分散分析OK)
G > 臨界値 → 等分散でない(対策が必要)
④ F検定との違い
F検定 → 2群の比較
コクランの検定 → 3群以上の比較(最大の分散に注目)
覚え方のコツ

コクラン = 「コレだけ」クランク(突出)してない?

最大のバラつきだけに注目して、「この子だけおかしくない?」を調べる検定です。

次に学ぶべきこと

コクランの検定で「等分散性OK」と確認できたら、いよいよ分散分析(ANOVA)に進みましょう。

分散分析では、「3群以上の平均に差があるか?」を判定します。

ここまで読んでくださった方へ

「コクランの検定」、
「問題児探し」のイメージで覚えられましたね!

等分散性の検定は、分散分析の「前座」として地味ですが、
これをサボると分析結果の信頼性がガタ落ちします。

「バラつきの足並みを揃える」という発想を忘れずに、
正しい分析を心がけましょう!

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