- 「直行率」と「歩留まり」、どっちも良品の割合じゃないの?
- 上司に「直行率で管理しろ」と言われたが、歩留まりとの違いがわからない
- 2つの数字が食い違うのはなぜ?どっちを目標にすればいい?
- 直行率と歩留まりの「測っているものの違い」
- 同じラインでの計算例(途中式つき)
- どちらをKPI(管理指標)にすべきかの使い分け
直行率(ちょっこうりつ)とは「一発で、手直しなしで良品になった割合」のことです。いっぽう歩留まり(ぶどまり)とは「手直しも含めて、最終的に良品になった割合」のこと。つまり歩留まりは手直しした製品も“良品”として数えますが、直行率は数えません。だから同じラインでも直行率のほうが低く出ます。工程の本当の実力を見たいなら直行率、材料や出荷数のロスを見たいなら歩留まりを使います。
そもそも直行率・歩留まりとは?
どちらも「良品がどれくらいできたか」を表す割合(%)ですが、良品としてカウントする範囲が違います。ここが2つの数字を分ける最大のポイントです。
直行率とは(一発合格の割合)
直行率とは、投入した製品のうち「手直しも作り直しもせず、一発で合格した製品」の割合です。英語では First Pass Yield(一発合格の意味)や FTT(First Time Through)とも呼ばれます。
ポイントは、途中で1回でも手直しした製品は「良品として数えない」こと。つまり「最初から完璧だったもの」だけをカウントする、いちばん厳しい成績表です。
歩留まりとは(最終的な良品の割合)
歩留まりとは、投入した製品(または材料)のうち、最終的に良品として出荷できた割合です。ここでは途中で手直しした製品も、直っていれば良品としてカウントします。
直行率=「一発OKだけ」を数える。歩留まり=「直したものも含めてOK」を数える。だから同じラインなら、必ず 直行率 ≦ 歩留まり になります。

身近なたとえで完全理解|テストの点数で考える
学校のテストで考えるとスッキリします。クラス全員が漢字テストを受けたとしましょう。
直行率は「一発で満点だった人の割合」。追試で満点になった人はカウントしません。
歩留まりは「追試も含めて、最終的に合格した人の割合」。追試でクリアした人も“合格”に入れます。
追試(=手直し)でクリアした人がいる分、最終的な合格率(歩留まり)は高く出ます。でも「そもそも一発で通った実力」を知りたいなら、直行率を見ないといけません。
つまり、歩留まりだけを見ていると「うちのライン、95%も良品が出てる!」と安心してしまいますが、その裏で毎回大量の手直し(追試)をしているかもしれない、ということです。

同じラインで計算してみる|途中式で完全マスター
言葉だけだとピンと来ないので、1つのラインの数字で両方を計算してみます。条件はこれです。
| 項目 | 数量 |
|---|---|
| 投入した数 | 100個 |
| 一発で合格した数 | 80個 |
| 手直しして良品になった数 | 15個 |
| 廃棄した数(直せなかった) | 5個 |
直行率の計算
直行率 = 一発で合格した数 ÷ 投入した数 × 100
数字を入れます。一発合格は80個、投入は100個なので——
直行率 = 80 ÷ 100 × 100 = 80%
つまり、このラインは「一発で完璧だったのは80%」ということです。
歩留まりの計算
歩留まり = 最終的な良品数 ÷ 投入した数 × 100
最終的な良品は「一発合格80個+手直しで直った15個=95個」です。廃棄した5個だけが良品から外れます。
歩留まり = 95 ÷ 100 × 100 = 95%
同じラインなのに、直行率80%・歩留まり95%と15ポイントも差が出ました。この15ポイントの差こそが「手直しの多さ」です。歩留まりだけ見ていると、この15個分の手間とコストが見えません。
工程の「安定した実力」を数値で見る指標としては、工程能力指数Cp・Cpkもあわせて押さえておくと、直行率が高い/低い理由を数字で説明できるようになります。

結局どっちを目標(KPI)にすべき?
現場を本気で良くしたいなら、KPI(管理指標)は直行率を選ぶのがおすすめです。理由は、直行率は「手直し」を許してくれないからです。
歩留まりを目標にすると、「不良が出ても、手直しして直せばOK」という考え方になりがちです。すると手直しの手間やコストが数字に表れず、いつまでも工程そのものが良くなりません。
いっぽう直行率を目標にすると、「そもそも手直しが出ないラインにしよう」という発想になります。これはまさに、各工程が自分の責任で良品だけを次に渡す自工程完結(後工程はお客様)の考え方そのものです。直行率は、いわば自工程完結がどれだけできているかの“成績表”なのです。
現場改善の日常管理は直行率で。原価・材料ロスの把握は歩留まりで。両方を並べて見ると、「良品率は高いのに利益が出ない(=手直しが多い)」といった隠れた問題が一発で見えます。
また、手直しがどれだけコストを食っているかを金額で見える化したいときは、品質コスト(COQ)の考え方が役立ちます。直行率の低さが「いくらの損失か」を経営層に説明するときの武器になります。


よくある間違い・つまずきポイント
①「良品率=直行率」だと思ってしまう
良品率は「最終的に良品だった割合」で、歩留まりに近い考え方です。手直し品も含みます。一発合格だけを見る直行率とは別物なので注意してください。
②工程が多いと直行率は掛け算で下がる
複数の工程を通る製品の全体の直行率は、各工程の直行率を掛け算します。たとえば各工程が95%でも、5工程あると 0.95×0.95×0.95×0.95×0.95 = 約77% まで下がります。「各工程は優秀なのに、全体で見ると意外と低い」のはこのためです。
「各工程95%だから全体も95%くらいでしょ」と思いがちですが、実際は掛け算なので大きく下がります。工程が多いラインほど、この落とし穴に注意です。
③目標値を「なんとなく」で決める
直行率の目標は、業界や工程の難しさによって現実的な水準が大きく変わります。他社の数字をそのまま真似るのではなく、自社の現状値を測ってから「+○%」と積み上げるのが基本です。具体的な水準は自社データで確認しましょう。

よくある質問(FAQ)
- 直行率=一発合格の割合。手直し品は数えない(工程の実力)。
- 歩留まり=最終良品の割合。手直し品も数える(材料・原価のロス)。
- 同じラインなら必ず 直行率 ≦ 歩留まり になる。
- 現場改善のKPIには直行率がおすすめ。自工程完結の成績表になる。
- 工程が多いと直行率は掛け算で大きく下がるので注意。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて品質管理を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
📚 次に読むべき記事
直行率を高める考え方の土台。各工程が良品だけを次に渡す仕組みをやさしく解説します。
直行率が高い/低い理由を「工程の実力」として数値化する指標。あわせて押さえたい定番です。
手直しがいくらの損失かを金額で見える化。低い直行率を経営に説明する武器になります。