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- 設計FMEAと工程FMEAの違いを、ひとことで説明できない
- 工程FMEAは作ったことがあるが、設計FMEAの書き方がわからない
- 客先監査で「DFMEAとPFMEAの整合性」を聞かれて困った
- 設計FMEA(DFMEA)とは何か、工程FMEAとの違い
- AIAG-VDAの7ステップに沿った作り方
- シャフトを例にした、構造から対策までの記入例
- 品質保証部がレビューで見るところと、よくある失敗
設計FMEA(DFMEA:Design FMEA)とは、製品の設計の段階で、部品や製品が「どんな壊れ方をするか(故障モード)」「壊れたら使う人に何が起きるか(影響)」「なぜ壊れるか(原因)」を洗い出し、リスクの大きいものから図面が決まる前に手を打つための分析です。工程FMEAが「作り方の失敗」を見るのに対し、設計FMEAは「モノの壊れ方」を見ます。

- FMEAとは(設計と工程)
- 設計FMEA(DFMEA)(この記事)
- AIAG-VDA FMEA
- FTA(FMEAとの違い)
設計FMEAと工程FMEAの違い|「壊れ方」か「作り方の失敗」か
見る項目(故障モード→影響→原因→対策)は同じですが、分析する相手がちがいます。設計FMEAは製品の設計、工程FMEAは製造の工程です。
FMEAとは何か、7ステップの全体の流れ、S・O・Dの評価基準とRPNの計算、そのまま使える様式例は、FMEAとは?設計FMEAと工程FMEAの違い・作り方(様式例つき)にまとめています。工程FMEAの作り方を先に見ておくと、この記事の設計FMEAとの対比がはっきりします。
| 比べる点 | 設計FMEA(DFMEA) | 工程FMEA(PFMEA) |
|---|---|---|
| 分析する相手 | 製品の設計・構造 | 製造の工程 |
| 故障モードの例 | 折れる・変形する・漏れる・腐食する・絶縁がこわれる | 締め付け不足・寸法ずれ・部品の付け間違い・溶接不良 |
| 原因の例 | 材料の選定ミス・肉厚不足・応力集中・公差の決め方 | 設備の調整ミス・作業手順のミス・材料のばらつき |
| 予防の手段 | 設計計算・CAE解析・設計基準 | ポカヨケ・作業標準・条件の管理 |
| 検出の手段 | 設計レビュー・試作の評価試験・耐久試験 | 寸法・外観・機能の検査、管理図 |
| 作る時期 | 設計の段階(図面が決まる前) | 工程の設計の段階(量産準備) |
| 中心になる部門 | 設計(品質保証がレビュー) | 生産技術・品質保証 |
DFMEAとPFMEAは「つながっている」
設計だけでは潰しきれないリスクは、工程FMEAに引き継ぎます。たとえばシャフトの破断に対して、設計では応力解析と疲労試験で手を打っても、「材料のロットのばらつきで強度が足りなくなる」リスクは残ります。これを工程FMEAで「材料の硬さが規格外」という不具合として受け取り、受け入れ検査で硬さを測る、という形で管理します。安全や法規にかかわる特別特性は、工程FMEAとコントロールプランに必ず引き継ぎます。
APQPの中で、設計FMEAはどこで作る?

設計FMEAで見つけた故障モードには、ミスが起きない仕組みで対策することもあります。その代表がポカヨケです。
ポカヨケの種類と事例30選
設計FMEAの作り方|AIAG-VDAの7ステップ
手順はAIAG-VDA FMEA(2019年)の7ステップで進めます。枠組みは工程FMEAと同じで、書く中身が「工程」から「製品の構造と機能」に変わります。
| ステップ | 設計FMEAでやること |
|---|---|
| 1 計画と準備 | 対象の範囲・目的・チーム(設計・品質保証・生産技術・評価)・期限を決める |
| 2 構造分析 | 製品をシステム→サブシステム→部品に分ける |
| 3 機能分析 | 部品ごとの機能と要求(数値)を書く |
| 4 故障分析 | 故障影響←故障モード←故障原因の連鎖をつくる |
| 5 リスク分析 | 予防と検出の手段を書き、S・O・Dを評価してAP(H・M・L)を決める |
| 6 最適化 | APの高いものに対策を決めて実行し、再評価する |
| 7 結果の文書化 | 記録して、顧客や関係部署と共有する |
記入例|電動ウォーターポンプのシャフト(ステップ2・3)
構造分析:電動ウォーターポンプ(システム)→ 回転軸部(サブシステム)→ シャフト(分析する部品)。同じ階層にベアリングやインペラがあります。
| 機能(動詞で書く) | 要求(数値で書く) |
|---|---|
| モーターの回転力をインペラに伝える | トルク5N·m以上、最大8,000rpm |
| 使う環境で破損しない | 疲労寿命10年相当、安全率2.0以上 |
| 冷却液の漏れを防ぐ(シール面の精度を保つ) | 表面粗さRa0.4以下、真円度0.01mm以下 |
「シャフト」と名前だけ書くと、故障モードが出てきません。「回転力を伝える」と書けば、その裏返しの「伝えられない(折れる)」が故障モードになります。
AIAG-VDAの7ステップとRPNからAPへの変更

ステップ4 故障分析|影響←モード←原因の連鎖をつくる
故障分析が設計FMEAの中心です。部品の故障モードを真ん中に置き、上の階層への影響と、下の階層の原因を1本の鎖でつなぎます。
| 機能 | 故障モード | 故障影響 | 故障原因 |
|---|---|---|---|
| 回転力を伝える | シャフトが折れる | ポンプ停止→冷却できない→オーバーヒート(安全) | 応力集中部のR不足、材料強度の選定ミス、共振周波数と回転数の重なり |
| 回転力を伝える | シャフトが曲がる | 異常な振動→ベアリングの早期摩耗→寿命低下 | 軸径が細い(剛性不足)、熱膨張の考慮不足 |
| 漏れを防ぐ | シール面から漏れる | 冷却液の漏れ→車両の汚損・火災のおそれ | 表面粗さの指定が甘い、真円度の公差が不適切 |
設計FMEAの原因は、設計で手を打てるもの(材料の選び方・形状・公差の決め方など)だけを書きます。「締め付けを間違える」は工程FMEAの範囲です。
故障の木解析FTAとFMEAの使い分け

ステップ5 リスク分析|S・O・DでAP(優先度)を決める
重大度S・発生度O・検出度Dを1〜10で評価し、AIAG-VDAのAP表でH(対策が必要)・M・Lを決めます。S×O×Dの掛け算(RPN)ではありません。
| 評価 | 設計FMEAでの見方 |
|---|---|
| S 重大度 | 使う人への影響の大きさ。安全・法規にかかわれば9〜10 |
| O 発生度 | 設計の予防の手段がどれだけ効いているか。実績のある設計基準なら低く、新しい設計なら高く |
| D 検出度 | 設計の検証(試作の試験など)で、量産前に見つけられるか。今の試験で見つけられなければ高く |
| 故障原因 | 予防 | 検出 | S | O | D | AP |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 応力集中部のR不足(破断) | CAEで安全率を確認 | 試作品の疲労試験100万回 | 9 | 3 | 3 | M |
| 共振周波数と回転数の重なり(破断) | 固有値解析(実績なし) | 今の試験に確認項目なし | 9 | 6 | 7 | H |
| 表面粗さの指定が甘い(漏れ) | 設計基準で粗さを指定(実績あり) | リーク試験 | 7 | 2 | 2 | L |
APは、AIAG-VDAのAP表(S・O・Dの組み合わせの表)で決めます。顧客が独自の基準を決めている場合は、そちらに従います。

ステップ6・7 対策・再評価と文書化
APがHのものには必ず対策を決めます。方向は「発生しにくくする(Oを下げる)」と「見つけやすくする(Dを下げる)」の2つです。
| 方向 | 共振のリスクへの対策の例 | 担当・期限 |
|---|---|---|
| 予防を強くする(O↓) | 軸径を変えて固有振動数を使う回転数から離す。CAEをやり直し、余裕を20%以上とる | 設計・2回目のDRまで |
| 検出を強くする(D↓) | 加振試験を評価計画に足し、共振点を実測で確かめる | 試験評価・妥当性確認の試験まで |
対策のあとにS・O・Dを評価し直し、「対策前H→対策後M(またはL)」と変化がわかるように記録します。
品質保証部がレビューで見る3つのところ
- S=9〜10の項目:安全・法規にかかわる故障モードがもれていないか
- 検出の書き方:「設計レビューで確認」ではなく「○○試験で△△を確かめる」と具体的か
- 工程FMEAとのつながり:特別特性が、工程FMEAとコントロールプランの管理項目に入っているか
特殊特性(CC/SC)の記号と管理
コントロールプランとQC工程表の書き方

設計FMEAでよくある失敗5つ
| 失敗 | 正しくは |
|---|---|
| 故障モードに「寸法ずれ」「締め付け不足」を書く | 「折れる」「漏れる」「腐食する」など、モノの壊れ方を書く |
| 原因に「作業者のミス」を書く | 材料の選び方・公差・応力など、設計で手を打てる原因を書く |
| 検出が「設計レビューで確認」だけ | どの試験で、何を、何個確かめるかを書く |
| 特別特性が工程FMEAに引き継がれていない | DFMEA→PFMEA→コントロールプランの対応を表で確かめる |
| 量産が始まってから作る | 図面が決まる前に作る。あとから作ったFMEAはリスクを潰せない |

よくある質問
- 設計FMEAは「モノの壊れ方」、工程FMEAは「作り方の失敗」
- 設計で潰しきれないリスクと特別特性は工程FMEAに引き継ぐ
- AIAG-VDAの7ステップ:構造→機能→故障→リスク→最適化
- 機能は動詞で書き、その否定が故障モード
- APはS・O・Dの表で決め、Hには必ず対策と再評価
- 図面が決まる前に作る

設計FMEAを、IATF 16949のコアツール全体の中で位置づけて学びたいときに向いています。IATF 16949のコアツール(APQP・コントロールプラン・PPAP・FMEA・SPC・MSA)を、図解で解説した本です。第4版は、APQP参照マニュアル第3版とコントロールプラン参照マニュアル第1版に対応しています(日科技連出版社、岩波好夫 著)。
品質管理の全体を、1冊で見渡したいときに向いています。品質管理と品質改善の基本を、図解でわかりやすくまとめた本です(日本実業出版社)。
品質管理を、教科書で基本から学び直したいときに向いています。品質管理の基本をわかりやすく解説した教科書です(第5版)。
設計で故障を防ぐ基本の1つが、部品を定格ギリギリで使わない「ディレーティング」です。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
設計FMEAの作り方がわかったら、FMEA全体の様式と、AP表の使い方を押さえましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。