- 「検査成績書を作っておいて」と言われたけど、何を書けばいいのかわからない
- 取引先から届いた成績書、どこを見れば「合格」だとわかるの?
- ミルシートとか材料証明書とか、似た書類が多くて混乱する
- 検査成績書とは何か(役割と目的)
- 記載項目の見方(サンプル表つき)
- 初めてでも書ける書き方の手順
- ミルシート・PPAPなど似た書類との違い
検査成績書(けんさせいせきしょ)とは、製品が図面や規格どおりに作られているかを検査し、その結果を証明する書類です。「テストの答案+成績表」のようなもので、寸法や外観などを測って「基準値・公差(許される誤差の範囲)・実測値・判定(OK/NG)」の形でまとめます。取引先に「うちの製品はちゃんと合格していますよ」と示すために提出します。
そもそも検査成績書とは?
検査成績書とは、製品を検査した結果を記録し、「規格や図面の通りにできています」と証明するための書類です。品質を保証する“証拠”として、製品といっしょに取引先へ渡します。
身近なものでたとえると、学校のテストの答案と成績表を合わせたようなものです。「どの項目を(=問題)」「基準はいくつで(=正解)」「実際はいくつだったか(=あなたの答え)」「合格か不合格か(=○×)」を一枚にまとめたもの、とイメージするとわかりやすいです。
検査成績書=製品の「通信簿」。基準(正解)に対して、実際の測定値(回答)が範囲内に収まっているかを示し、最後に「合格(OK)」のハンコを押すイメージです。
検査成績書は何のためにあるの?
検査成績書には、大きく3つの役割があります。
1つ目は品質の証明です。「この製品は基準を満たしています」と、数字で客観的に示せます。口約束ではなく記録が残るので、取引先が安心して受け取れます。
2つ目はトレーサビリティ(追跡)です。ロット番号や検査日を残しておくことで、あとで不具合が起きたとき「いつ・どのロットの製品か」をたどれます。
3つ目は責任の明確化です。検査者と承認者のサインを残すことで、「誰が確認したか」がはっきりします。
この検査成績書は、多くの場合、製品を最終的に出荷する前の検査結果としてまとめられます。検査には受入・工程内・最終・出荷といった段階がありますが、成績書がどの段階の数字かを理解しておくと読み間違いを防げます。段階の違いは製造業の検査4ステージ(受入・工程内・最終・出荷)で整理しています。

検査成績書の記載項目|何が書いてあるの?
検査成績書は、大きく「①基本情報」と「②検査結果」の2つのパートに分かれています。まずはそれぞれに何が入るかを見ていきましょう。
① 基本情報(ヘッダー部分)
用紙の上のほうに書く、製品と検査の「身元」を示す情報です。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 発行者情報 | 会社名・部署名。誰が発行した書類か |
| 文書番号 | 書類を管理するための番号 |
| 発行日 | この成績書を出した日付 |
| 品名・品番 | どの製品の検査か |
| ロットNo.・数量 | 対象のロット番号と検査した数 |
| 検査日 | 実際に検査した日 |
② 検査結果(本体部分)
検査成績書の“心臓部”です。何を測って、結果がどうだったかを表にします。ここで使う言葉を1つずつ噛み砕きます。
何を測るか。例:外径、長さ、外観など。
図面で決められた「ねらいの値」。例:外径10mm。
許される誤差の範囲。例:±0.05mm(9.95〜10.05mmならOK)。
実際に測った値。例:10.02mm。
実測値が公差の範囲に入っているか。OK(合格)かNG(不合格)。
「基準値」と「公差」はセットです。基準値10mm・公差±0.05なら、9.95〜10.05mmの間に入っていれば合格。この範囲を「規格(きかく)」とも呼びます。

サンプルで見方を完全理解|シャフトAの検査成績書
言葉だけだとイメージしにくいので、架空の部品「シャフトA」の検査成績書を例に見ていきます。この製品は、外径・全長・外観の3項目を検査するとします。
| 検査項目 | 基準値 | 公差 | 実測値 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 外径 | 10.00mm | ±0.05 | 10.02mm | OK |
| 全長 | 50.0mm | ±0.2 | 49.9mm | OK |
| 外観 | キズなし | — | 異常なし | OK |
この表の読み方を、外径の行で確認します。基準値は10.00mm、公差は±0.05。つまり合格ラインは「9.95mm〜10.05mm」です。実測値は10.02mmなので、範囲の中に入っています。だから判定は「OK」です。
つまり、見方はシンプルです。「基準値 ± 公差」で範囲を作り、実測値がその中にあればOK、外にあればNG。これだけです。
公差が「+0.1 / −0」のように上下で違う場合があります。この場合は10.0〜10.1mmが合格範囲で、9.9mmはNGです。「±」だけでなく、上限と下限を必ず別々に確認しましょう。
成績書にCpkが載っていたら?
取引先によっては、実測値だけでなくCpk(シーピーケー)という数字の記入を求められることがあります。Cpkとは、かんたんに言えば「その工程が、どれくらい余裕をもって合格範囲に収まっているか」を表す指標です。
1個だけOKでも、たまたまかもしれません。Cpkは「これからもずっと安定して合格を出せる実力があるか」を数字にしたもの。一般に1.33以上が求められることが多いですが、要求値は取引先によって変わります。詳しい意味と計算は工程能力指数Cp・Cpkとは?違いと計算方法で図解しています。

検査成績書の書き方|初めてでも迷わない5ステップ
初めて任されると身構えてしまいますが、順番どおりに進めれば大丈夫です。ここでは基本の流れを5つのステップに分けて説明します。
図面から検査項目を書き出す。図面に指示された寸法・公差・外観条件を、そのまま検査項目の欄に写します。「何を測るべきか」は図面が教えてくれます。
基準値と公差を記入する。図面の数値をそのまま基準値・公差の欄に入れます。ここを間違えると合否判定がまるごとズレるので、指差し確認が大切です。
実際に測って実測値を書く。ノギスやマイクロメーターなどで測定し、読み取った値を記入します。校正済み(正しく測れると確認された)測定器を使うのが基本です。
判定(OK/NG)を書く。実測値が「基準値±公差」の範囲に入っているかを確認し、OKかNGを記入します。
検査者・承認者がサインする。検査した人と、それを確認した上司などがサイン(押印)します。これで書類として完成です。
迷ったら「図面が正解、成績書はその答え合わせ」と考えてください。図面に書かれていないことを勝手に足したり省いたりしないのが基本です。
測定値そのものが信頼できるか?
ここで見落としがちなのが、「そもそも測った値は正しいのか?」という点です。同じ製品でも、測る人や測定器が変わると値が少しズレることがあります。
成績書に書いた数字が信頼できるものかを確かめる仕組みがMSA(測定システム解析)・ゲージR&Rです。取引先が厳しい場合、測定値のばらつきまで管理を求められることがあります。「正しく作る」だけでなく「正しく測る」も品質のうち、というわけです。

検査成績書と似た書類の違い|ミルシート・PPAP
現場では「ミルシート」「材料証明書」「PPAP」など、検査成績書と紛らわしい書類がたくさん出てきます。混乱しやすいので、違いを整理しておきましょう。
検査成績書とミルシートの違い
いちばん間違えやすいのがこの2つです。違いは「証明する対象」にあります。
検査成績書
- 証明する対象:加工後の完成品・部品
- 内容:寸法・外観・機能などの検査結果
- 作る人:加工・製造した会社
ミルシート(鋼材検査証明書)
- 証明する対象:加工前の材料・素材
- 内容:化学成分・機械的性質など
- 作る人:鉄鋼メーカーなど材料の供給元
つまり、ミルシートは「使っている材料の品質」を、検査成績書は「作った製品の品質」を証明します。材料と製品、どちらの通信簿なのかで区別すると覚えやすいです。
PPAPとの関係
自動車業界などでは、量産を始める前に「この部品はちゃんと作れます」と証明するPPAP(ピーパップ)という書類一式の提出を求められます。このPPAPの中の1つとして、寸法測定結果や試験結果、つまり検査成績書にあたるデータが含まれます。
言いかえると、検査成績書はPPAPという大きなパッケージの中の「部品」の1つです。PPAP全体でどんな書類が必要かはPPAPとは?18の提出書類を1つずつ解説でまとめています。「成績書を出したのに、まだ書類が足りないと言われた」という人は、PPAP全体の中での位置づけを確認すると理解が進みます。
| 書類 | 証明する対象 |
|---|---|
| 検査成績書 | 完成品・部品の検査結果 |
| ミルシート | 材料・素材の品質 |
| PPAP | 量産できる能力(書類一式) |

よくある間違い・つまずきポイント
①「±」の思い込みで判定をミスする
公差は必ずしも上下対称(±)とは限りません。「+0.1 / −0」のような片側公差もあります。「たぶん±だろう」で判定すると、本来NGのものをOKにしてしまう危険があります。上限と下限を毎回確認しましょう。
②実測値を「四捨五入しすぎる」
10.049mmを「10.0mm」と丸めて書くと、本当は合格ギリギリだったことが見えなくなります。図面の公差の桁数に合わせて記録するのが基本です。丸め方も品質のうちです。
「OKなんだから細かい値はどうでもいい」と思いがちですが、実測値のばらつきは工程の実力を知る大切なデータです。丸めすぎると、あとでCpkを計算するときに使えなくなります。
③検査項目を図面と照合しない
前回の成績書をコピーして使い回すと、図面が改訂されていたときに古い基準で判定してしまいます。必ず最新の図面と照らし合わせてから作成しましょう。
④サイン欄を空欄のまま提出する
検査者・承認者のサインがない成績書は、「誰も責任を持っていない書類」とみなされます。取引先で受け取り拒否されることもあるので、提出前に必ず確認しましょう。

よくある質問(FAQ)
- 検査成績書とは、製品が図面どおりかを検査し結果を証明する書類。
- 見方は「基準値±公差」で範囲を作り、実測値が中ならOK。
- 書き方は「図面から項目→基準値→実測→判定→サイン」の5ステップ。
- ミルシートは材料、検査成績書は完成品と、証明対象が違う。
- PPAPの提出書類の1つとしても使われる。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて品質管理を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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