山田課長から急に「来週の客先監査までに、新製品のQC工程表作っといて」とLINEが来た。前任者のExcelファイルを開いてみたものの、「工程名」「管理項目」「管理水準」「管理方法」…項目が多すぎて、何をどう埋めればいいのか全くわからない。
佐藤先輩は今、別の客先対応で機嫌が悪そう。鈴木さん(後輩)に「先輩、これってどう書くんですか?」と聞かれる側なのに、自分が一番わかっていない…。
- 「QC工程表を作って」と言われたけど、何から手をつければいいかわからない
- 前任者のExcelファイルを見ても、項目の意味が理解できない
- QC工程図・コントロールプランとの違いも実は曖昧
- 客先監査で「なぜこの管理項目を選んだんですか?」と聞かれたら答えられない
- QC工程表の「全体像」と各項目の意味を1枚絵で理解
- 初めてでも迷わない「7ステップの作成手順」
- そのまま使えるExcelテンプレート(コピペでOK)
- 客先監査で突っ込まれない「管理項目の選び方」
QC工程表とは「製品が原材料からお客様に届くまでの全工程で、誰が・何を・どうやって管理するか」を1枚にまとめた地図です。料理で言えば「レシピ+味見ポイント表」。これさえあれば、誰が作っても同じ品質が再現できます。
目次
そもそもQC工程表とは?「料理のレシピ」と同じです
QC工程表(QC Process Chart)とは、原材料の受入から出荷までの全工程で、品質を保証するための管理ポイントを一覧化した文書のことです。英語では「Process Control Chart」や「Control Plan」と呼ばれます。
と言われてもピンとこないですよね。料理のレシピで例えてみます。
カレーのレシピ
- 玉ねぎは中火で15分炒める
- 水は600ml入れる
- 沸騰したら弱火で20分
- 味見して塩で調整
QC工程表
- プレス工程は荷重100t±5%
- 溶接電流は200A±10A
- 1時間ごとに寸法を測定
- 規格外なら工程停止
どちらも共通しているのは「誰が作っても同じ結果になるように、手順と管理ポイントを明確化している」こと。QC工程表は、製造業における"再現性"を担保するための最重要文書です。

なぜQC工程表が必要なのか?3つの理由
理由①:誰が作っても同じ品質を実現するため
ベテラン作業者の「勘」や「経験」だけに頼っていると、その人が休んだ日に品質が落ちます。QC工程表で「誰が・どの工程で・何を・どう管理するか」を文書化することで、新人でもベテランと同じ品質を再現できるようになります。
理由②:客先監査・ISO審査で必須だから
ISO9001、IATF16949、JIS Q 9100などの品質マネジメントシステム規格では、工程の管理状態を文書化することが要求されています。完成車メーカーの監査では、QC工程表(または同等のコントロールプラン)の提示は事実上必須です。
理由③:トラブル発生時の原因究明が早くなるから
不良が出たときに「どの工程の、どの管理項目が、どう外れたのか」を即座に確認できます。QC工程表がない現場では、原因究明に何日もかかり、客先への報告が遅れて信頼を失うことに直結します。
客先の松本部長クラスから「御社のこの工程、どう管理されてますか?」と聞かれたとき、QC工程表を提示できれば3秒で説明完了。提示できなければ、その場で30分の追加質問が始まります。

混同しがち!QC工程表・QC工程図・コントロールプランの違い
「QC工程表」と似た言葉に「QC工程図」「コントロールプラン」があります。会社や業界で呼び方が違うだけで、ほぼ同じものを指していることが多いですが、厳密には少し違います。整理しておきましょう。
| 名称 | 特徴 | 主な使われ方 |
|---|---|---|
| QC工程表 | 表形式。工程ごとに管理項目・基準・方法を行で並べる | 日本の製造業全般。最も一般的 |
| QC工程図 | フロー図形式。工程の流れを記号(◯△▢)で図示 | 工程フローの可視化重視 |
| コントロールプラン | IATF16949で定められた様式。試作・初期流動・量産で3種類 | 自動車業界(IATF16949対応) |
トヨタ系のサプライヤーでは「QC工程表」という呼び方が一般的ですが、IATF16949認証を取っている場合は「コントロールプラン」として作成・管理する必要があります。客先がどちらを求めているか、最初に確認しましょう。

QC工程表の全体像|10個の必須項目を1枚で理解
QC工程表に書くべき項目は、業界や会社で多少違いますが、基本となる10項目はほぼ共通しています。まずはこの全体像を頭に入れてください。
| No. | 項目名 | 何を書くか |
|---|---|---|
| 1 | 工程No. | 10, 20, 30…と10刻み(後から挿入できるように) |
| 2 | 工程名 | プレス、溶接、塗装、組立、検査など |
| 3 | 工程記号 | ◯加工 △停滞 ▢検査 ▽貯蔵 |
| 4 | 使用設備 | 設備名・型番・設備管理No. |
| 5 | 管理項目 | 何を管理するか(寸法、温度、圧力など) |
| 6 | 管理水準(規格値) | 具体的な数値(10±0.1mm、200℃以上など) |
| 7 | 管理方法 | どう測定するか(ノギス、温度計、目視など) |
| 8 | 管理頻度 | いつ測定するか(毎ロット、1時間ごと、初物など) |
| 9 | 担当者 | 作業者・班長・QCなど誰がやるか |
| 10 | 異常時の処置 | 規格外が出たらどうするか(工程停止、報告先) |
この10項目は「5W1H」に対応しています。誰が(Who=担当者)、いつ(When=管理頻度)、どこで(Where=工程・設備)、何を(What=管理項目)、なぜ(Why=管理水準)、どうやって(How=管理方法)。迷ったら「5W1Hが揃っているか?」をチェックしましょう。

QC工程表の作り方|初めてでも迷わない7ステップ
ここからが本題です。実際にQC工程表を作るときの手順を、誰でも同じように再現できる7ステップに整理しました。順番通りにやれば、初めてでも作れます。
対象製品と工程範囲を決める
どの製品の、どこからどこまでをQC工程表にするのか決めます。「原材料受入から出荷まで」が基本ですが、客先要求によっては「自社工程のみ」の場合もあります。
工程フローを書き出す
製品が完成するまでの全工程を順番に書き出します。現場を実際に歩いて、作業者にヒアリングするのが一番確実。机上で考えると必ず抜けが出ます。
各工程の「管理項目」を決める
各工程で「何を管理すれば品質が保証できるか」を決めます。図面の特殊特性(CC/SC)は必須。FMEAの結果からも管理項目を抽出します。
「管理水準(規格値)」を設定する
管理項目ごとの具体的な数値を決めます。図面の規格値、社内標準、過去の不良データから判断。「10±0.1mm」のように上下限を明確に書きます。
「管理方法」と「管理頻度」を決める
どう測るか(ノギス、三次元測定機、目視など)と、どのくらいの頻度で測るか(全数、初物・終物、1時間ごと)を決めます。コストと品質リスクのバランスがポイント。
「担当者」と「異常時の処置」を明記する
誰がやるかを明確にします。「現場任せ」では責任が曖昧になります。規格外が出たら誰に報告し、工程をどうするかも書いておきます。
関係部署でレビューし、承認を取る
製造、品質保証、技術部門でレビューします。実際の現場で運用可能か必ず確認。承認印(製造課長・品証部長)を取って正式運用開始です。

記入例|自動車部品(プレス加工品)のQC工程表
実際にどう書くのか、自動車部品メーカーで一般的な「プレス加工品」を例に、QC工程表の記入例を見てみましょう。トヨタ系サプライヤーでよく使われる形式に近いものです。
| 工程No. | 工程名 | 設備 | 管理項目 | 管理水準 | 管理方法 | 頻度 | 担当 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10 | 材料受入 | ─ | 板厚 材質 |
1.6±0.05mm SPCC |
マイクロメータ ミルシート確認 |
ロット毎 | 受入検査員 |
| 20 | プレス | 200tプレス (P-105) |
プレス荷重 外形寸法 |
180±5t 50±0.2mm |
荷重計 ノギス |
初物・終物 2h毎 |
作業者 |
| 30 | 穴あけ | NC加工機 (N-203) |
穴径 位置精度 |
φ8±0.1mm ±0.15mm |
ピンゲージ 三次元測定機 |
初物・終物 | 作業者 |
| 40 | 外観検査 | 検査台 蛍光灯 |
キズ・打痕 バリ |
限度見本以下 0.1mm以下 |
目視 限度見本 |
全数 | 検査員 |
| 50 | 梱包・出荷 | 梱包ライン | 員数 表示 |
100個/箱 ラベル有無 |
カウント 目視 |
全数 | 梱包担当 |
この例では「異常時の処置」列を省略していますが、実際は「規格外発生時は工程停止し、品証へ連絡」のような記載が必須です。客先監査では必ずチェックされる項目なので絶対に書きましょう。

そのまま使える!QC工程表 Excelテンプレート
ゼロから作るのは大変なので、コピペで使えるExcelテンプレートを用意しました。下記の構成でExcelに貼り付ければ、すぐに運用開始できます。
テンプレートの列構成(Excelに貼り付ける)
| 列 | 項目名 | 列幅(目安) | 記入例 |
|---|---|---|---|
| A | 工程No. | 6 | 10 |
| B | 工程名 | 12 | プレス |
| C | 工程記号 | 6 | ◯ |
| D | 使用設備 | 15 | 200tプレス(P-105) |
| E | 管理項目 | 15 | プレス荷重 |
| F | 特殊特性 | 8 | ▽S(SC) |
| G | 管理水準 | 15 | 180±5t |
| H | 管理方法 | 15 | 荷重計 |
| I | サンプル数 | 8 | n=1 |
| J | 管理頻度 | 10 | 2時間毎 |
| K | 記録様式 | 12 | X-R管理図 |
| L | 担当者 | 10 | 作業者 |
| M | 異常時の処置 | 20 | 工程停止→品証連絡 |
QC工程表の上部(ヘッダー)には「製品名」「品番」「客先」「作成日」「改訂日・改訂内容」「作成者・承認者印欄」を必ず入れてください。客先監査では「いつ・誰が・何のために改訂したか」が必ずチェックされます。
Excelで作るときの実用テクニック
- 列幅は「折り返して全体を表示」でセル内改行を許可する
- 1行目を「ウィンドウ枠の固定」で見出し行を常に表示
- 工程No.は10刻みで振る(後から「15」を挿入できる)
- 特殊特性列にはマーク(▽S、▽C)を入れる→IATF対応
- 印刷時はA3横がオススメ。A4だと小さくなりすぎる
- 改訂履歴は別シートに分けて、改訂回数を増やしやすくする

初心者が必ずやる失敗5選|先に知っておけば回避できる
これまで多くの初心者がQC工程表で同じ失敗を繰り返してきました。先に知っておけば回避できるので、必ずチェックしてください。
こうすると失敗
- 管理項目を盛りすぎて運用不能
- 「目視確認」だけ書いて基準が不明
- 図面と規格値が一致していない
- 担当が「現場」など曖昧
- 改訂履歴を残していない
こうすればOK
- FMEAから抽出した重要項目に絞る
- 「限度見本No.〇〇と比較」と具体化
- 図面と規格値を必ず照合する
- 「作業者」「班長」など役割で書く
- 改訂シートで履歴を必ず残す
失敗①:管理項目を盛りすぎる
「念のため」と思って管理項目を増やすと、現場が回らなくなります。1工程あたりの管理項目は5項目以内を目安に、本当に重要なもの(特殊特性・過去不良の発生項目)に絞り込みましょう。
失敗②:基準が曖昧で人によって解釈が違う
「目視確認」「適切に」「問題なきこと」のような曖昧な表現は禁物。数値か、限度見本との比較で書きましょう。「キズの大きさ0.5mm以下」「限度見本No.K-001と同等以下」のように。
失敗③:図面の規格値を確認せずにコピペで作る
前任者のQC工程表をコピペすると、図面改訂で規格値が変わっていることに気づかないリスクがあります。必ず最新の図面と照合しましょう。客先監査で発覚すると重大不適合扱いになります。
特に「特殊特性(CC/SC/KC)」が指定されている項目は、QC工程表上でも明確にマーク(▽S、▽Cなど)する必要があります。完成車メーカー各社で記号が違うので、客先指定を確認してください。

作って終わりじゃない|QC工程表の運用と改訂のコツ
QC工程表は「生きた文書」です。一度作って終わりではなく、4M変更(人・設備・材料・方法)が発生するたびに見直しが必要です。
改訂が必要なタイミング
| 変更内容 | 具体例 |
|---|---|
| 図面改訂 | 寸法公差変更、特殊特性追加 |
| 設備変更 | プレス機更新、検査機追加 |
| 材料変更 | サプライヤー切替、材質変更 |
| 工法変更 | 手作業→自動化、検査方法変更 |
| 不具合発生時 | 市場クレーム、工程内不良の歯止め |
「うちは年1回見直してます」では客先監査で突っ込まれます。4M変更があったら都度改訂が原則です。改訂シートに「日付・改訂内容・改訂理由・承認者」を残しておけば、監査で何を聞かれても答えられます。
4M変更管理とは?変化点管理の実務手順 →

まとめ|QC工程表は「品質を再現するためのレシピ」
- QC工程表は「誰が作っても同じ品質を出すためのレシピ」
- 必須10項目は5W1Hで考えれば抜け漏れなし
- 作成手順は7ステップ。現場ヒアリングが最重要
- 図面・FMEA・特殊特性と必ず連動させる
- 4M変更があったら都度改訂、履歴を残す
最初は「項目が多くて大変」と感じるかもしれませんが、1度作ってしまえば、次の製品からは型ができているので楽になります。完璧を目指さず、まずは7ステップで「とりあえず1枚」作ってみてください。レビューで先輩から指摘をもらえば、それが一番の勉強になります。
客先監査で「御社のQC工程表、よくできていますね」と言われる日は、意外と早く来ます。応援しています。
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QC工程表の管理項目を決めるベースになるのがFMEAです。RPN計算と管理項目の連動方法を解説。
QC工程表で必ず明示する必要がある「特殊特性」のマーク方法を、トヨタ・日産・ホンダ別に整理。