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- 図面の寸法の横に「▽S」や「◇」がついているが、何を意味するのかわからない
- 客先から「CC・SCの管理方法を説明してください」と言われて困った
- FMEAやコントロールプランの「特殊特性」の欄に、何を書けばいいか迷っている
- 特殊特性とは何か、CCとSCの違い
- 図面の▽Sなど、客先ごとの記号の意味と記号変換表
- FMEAの影響度(S)からの決め方と、4つの文書への展開
- CC・SCの管理方法と、判定ツール
特殊特性とは、外れると安全・法規・製品の大事な機能に大きな影響が出るため、ほかの寸法や工程条件より厳しく管理すると決めた特性のことです。安全や法規にかかわるものをCC(重要特性)、機能や性能にかかわるものをSC(重要度の高い特性)と分けるのが一般的で、図面には▽Sのような客先ごとの記号で示されます。IATF 16949の8.3.3.3項で、特定・文書化・管理のしかたが求められています。
| 記号・ことば | 意味(一般的な使われ方) |
|---|---|
| ▽S(逆三角にS) | 安全にかかわる重要な特性。CC(重要特性)として扱う |
| ▽R(逆三角にR) | 法規にかかわる特性として説明されることが多い。定義は客先の要求事項で確かめる |
| CC(Critical Characteristic) | 安全・法規にかかわる特性。ポカヨケや全数検査で管理 |
| SC(Significant Characteristic) | 機能・性能にかかわる重要な特性。管理図と工程能力で管理 |
| KC・KPC(Key Characteristic) | 会社によって意味がちがう。CC・SCをまとめた呼び名のこともある |
| 重要保安部品(重保) | ブレーキ・ステアリング・燃料系など、壊れると車の安全に直結する部品 |
記号の形と意味は客先(自動車メーカー)ごとに決まっていて、公開された一覧はほとんどありません。最終的には客先の品質マニュアルやサプライヤー向けの要求事項で確かめてください。

特殊特性とは?CCとSCの違い
自動車1台には何万もの寸法や工程条件があり、全部を同じ厳しさで管理することはできません。そこで「ここだけは絶対に外さない」という特性に印をつけて、ほかより厳しく管理します。これが特殊特性(Special Characteristics)です。
道路の標識にたとえると、CCは「止まれ」、SCは「注意」の標識です。CCを外すと人の安全や法律違反に直結し、SCを外すと製品の働きやお客さまの満足に大きく響きます。
| 項目 | CC(Critical Characteristic) | SC(Significant Characteristic) |
|---|---|---|
| 日本語での呼び方の例 | 重要特性・安全特性・保安特性 | 重要特性・機能特性 |
| 外れたときの影響 | けが・事故、法規違反、リコール | 機能・性能の低下、市場クレーム |
| FMEAの影響度(S)の目安 | 9〜10 | 5〜8(発生度Oも高いもの) |
| 管理の基本 | ポカヨケか全数検査で、不良を出さない・流さない | SPC(管理図)と工程能力の確認で、ばらつきを抑える |
| 例 | ブレーキ部品の締付トルク、燃料配管の気密 | ドアのすき間、モーターの出力特性 |
特殊特性は、寸法や性能などの製品特性だけでなく、溶接電流・締付トルク・焼入れ温度などの工程パラメータにもつけます。外観や寸法を後から測っても良し悪しがわかりにくい工程ほど、工程条件そのものを特殊特性にして管理します。
KC(Key Characteristic)は、会社によって意味がちがう言葉です。GMのKPC(Key Product Characteristic)のようにCC・SCをまとめた呼び名として使う会社もあれば、組付けや後工程に効く特性を表す3つめの区分として使う会社もあります。KCと書かれていたら、その客先の品質マニュアルで定義を確かめましょう。

図面の▽Sなどの記号の意味
特殊特性を図面でどう示すかは、客先ごとに決まっています。中身の考え方は同じでも、記号がばらばらなのが現場の混乱のもとです。代表的な例をまとめると次のとおりです。
| 客先 | 安全・法規(CC相当) | 機能など(SC相当) | メモ |
|---|---|---|---|
| フォード | ▽(逆三角形) | 「SC」の文字 | CC・SCという呼び方のもとになった体系 |
| GM | KPC(◇で示すことが多い) | KPCに含めて扱う | CC・SCに分けず、重要な特性をKPCとしてまとめる |
| ステランティス(旧FCA) | 盾形の記号(S=安全、E=排ガス) | ◇(ひし形)など | 旧FCAと旧PSAで体系がちがい、図面の世代でも変わる |
| トヨタ系 | ▽の中に文字(▽S=安全、▽R=法規 などと説明されることが多い。公開された一次資料では確かめられない) | 客先の定めによる | ▽Sの付いた特性は、安全にかかわる重要な特性として扱う |
| フォルクスワーゲン | TLD(記録の保管を求める特性) | 客先の定めによる | 法規・安全にかかわる部品は記録を長く残す |
この表は代表的な例で、同じ客先でも部門や図面の年代で記号がちがうことがあります。最終的には、その客先の品質マニュアル(サプライヤー向けの要求事項)で定義を確かめてください。
▽Sがついた寸法を見たら
▽Sの「S」はSafety(安全)の頭文字です。ブレーキ・ステアリング・燃料系など、道路運送車両法の保安基準にかかわる部品(重要保安部品、略して「重保(じゅうほ)」)に多くついています。IATF 16949の言い方ではCCにあたると考えて、いちばん厳しい管理をします。ただし、部品が重保だからといって、その部品のすべての寸法がCCになるわけではありません。▽Sがついている特性が、CCとして管理する対象です。
記号変換表をつくる
IATF 16949の8.3.3.3項では、客先の記号をそのまま使うか、社内の記号を使う場合は記号変換表をつくり、求められたら客先に出すことが求められています。いくつもの客先に部品を出している工場では、次のような表を1枚用意しておくと、FMEAやコントロールプランで記号がぶれません。
| 客先の記号 | 客先での意味 | 社内の記号 | 社内での管理 |
|---|---|---|---|
| ▽S(トヨタ系) | 安全 | CC | ポカヨケか全数検査 |
| ▽(フォード) | 安全・法規 | CC | ポカヨケか全数検査 |
| SC(フォード) | 機能・顧客満足 | SC | SPCと工程能力の確認 |
| ◇(客先A) | 客先の定義による | CCかSC | 定義に合わせて決める |

特殊特性の決め方|3つのルートとFMEAの影響度
特殊特性は「客先が図面で指定してくるもの」だけではありません。IATF 16949では、客先が決めたものに加えて、自社のリスク分析で見つけたものも含めて特定することが求められています。
| ルート | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| ① 客先の指定 | 図面・仕様書・客先の要求事項に記号つきで書かれている | 図面の▽S、◇ |
| ② FMEAの結果 | 設計FMEA・工程FMEAで影響度(S)が高い故障の原因になる特性 | S=10の故障を起こす締付トルク |
| ③ 法規 | 安全・排ガス・リサイクルなどの法規にかかわる特性 | 灯火器の光度、有害物質の含有 |
とくに大事なのが②です。客先から記号が来ていなくても、FMEAで影響度が9〜10になった故障の原因になる特性は、自社で特殊特性にします。「客先の指定がないから特殊特性はない」という説明は、監査でまず通りません。
FMEAの影響度(S)との関係
| FMEAの評価 | 分類の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| S=9〜10 | CCの候補 | 安全・法規にかかわる。発生度に関係なく候補にする |
| S=5〜8、かつ発生度O=4以上 | SCの候補 | 機能に大きく響き、起きやすさもある |
| S=5〜8、O=1〜3 | 客先・社内の基準で判断 | SCにするかどうかを決め、理由を残す |
| S=1〜4 | 一般の特性 | ふつうの品質管理で扱う |
この「S=9〜10はCC、S=5〜8で発生度が高ければSC」という分け方は、フォードの方式がもとになっていて広く使われています。ただ、IATF 16949の規格の本文に数字が書いてあるわけではありません。最終的な基準は、客先の要求と社内の規定で決めます。FMEAの影響度のつけ方は、FMEAの記事で確かめてください。
FMEAの作り方と影響度・発生度・検出度

特殊特性の判定ツール|CC・SC・一般のどれ?
客先の記号、法規とのかかわり、FMEAの影響度(S)と発生度(O)を入れてください。CC・SC・一般の特性のどれにあたるかと、管理のしかたの目安を出します。
入力すると、その場で判定し直します。入力した内容は画面の中で判定するだけで、どこにも送信されません。
特殊特性は4つの文書に同じ記号で書く
特殊特性を決めただけでは、現場の作業は何も変わりません。IATF 16949では、特殊特性を次の文書に固有の記号で示すことが求められています。
| 文書 | 書くこと | 主に書く部門 |
|---|---|---|
| ① 図面 | 寸法や特性のそばに客先の記号(または社内の記号) | 設計 |
| ② FMEA | 「特殊特性」の欄に記号。どの故障とつながるか | 設計・品質 |
| ③ コントロールプラン | 記号と、管理方法・測る数・頻度・異常のときの反応計画 | 生産技術・品質 |
| ④ 作業指示書 | 作業者が見る紙に記号と、守るポイント | 製造 |
監査でいちばん指摘されやすいのは、文書どうしの食いちがいです。「図面には記号があるのにFMEAにない」「コントロールプランにはあるのに作業指示書にない」といったものです。書く部門がばらばらなので、どこかで抜けます。特殊特性の一覧表(特殊特性リスト)を1枚つくり、4つの文書を横に並べて照らし合わせると、抜けを見つけやすくなります。
コントロールプランの書き方と記載項目

CCとSCの管理方法
| 管理の手段 | CC(安全・法規) | SC(機能・性能) |
|---|---|---|
| 基本の考え方 | 不良を1つもつくらない・流さない | ばらつきを小さく保つ |
| 検査・防止 | ポカヨケか全数検査 | 抜き取り検査と管理図 |
| 工程能力 | 量産前にPpk 1.67以上をめざす(客先の要求による) | 量産前Ppk 1.67以上、量産中Cpk 1.33以上がよくある目安 |
| 測定器 | MSA(ゲージR&R)で測定のばらつきを確かめる | MSAで確かめる |
| 異常のとき | ラインを止め、さかのぼって隔離し、客先に知らせる手順を決めておく | 原因を調べて処置し、必要なら全数検査に切り替える |
| 記録 | 長く保管する(客先の指定年数) | 決められた期間保管する |
工程能力の数字は、AIAGのPPAPのマニュアルで、量産前の初期工程調査の指数が1.67をこえれば合格、1.33〜1.67なら条件つき、1.33未満なら不合格とされているのがもとになっています。量産に入ってからの目標は客先によってちがい、CCにはさらに高い値を求める客先もあります。数字は必ず客先の要求事項で確かめてください。
CCでポカヨケか全数検査が基本になるのは、工程能力が高くても、まれに出る1個の不良が人のけがにつながるからです。抜き取り検査は「たまに出る不良」を見のがします。
ポカヨケの種類と事例

特殊特性でよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 客先の指定がないから特殊特性はない | FMEAで影響度が高い特性は自社で特殊特性にする |
| 部品が重保なら、すべての寸法がCC | ▽Sなどの記号がついた特性がCC |
| 図面に記号をつければ終わり | FMEA・コントロールプラン・作業指示書にも同じ記号で書く |
| Cpkが高ければCCも抜き取りでよい | CCはポカヨケか全数検査で、まれな不良も流さない |
| 特殊特性は寸法だけ | 溶接電流・締付トルクなどの工程条件にもつける |

特殊特性を書き込む QC工程表の作り方と記入例は、次の記事で解説しています。
初めて任された人向けの作り方。テンプレートつき
よくある質問
- 特殊特性=外れると安全・法規・大事な機能に響くので、厳しく管理する特性
- CCは安全・法規、SCは機能・性能。記号は客先ごとにちがうので記号変換表をつくる
- 客先の指定・FMEAの影響度・法規の3つのルートで決める
- 図面・FMEA・コントロールプラン・作業指示書に同じ記号で書く
- CCはポカヨケか全数検査、SCは管理図と工程能力で管理する

特殊特性の管理を求めているIATF 16949の全体像を、入門書でつかんでおきたいときに向いています。IATF 16949の入門書の改訂版で、IATF 16949とは何かから、規格要求事項の概要、認証審査、認証取得までの準備の要点までを解説しています(日本規格協会、大森直敏 著)。
品質管理の全体を、1冊で見渡したいときに向いています。品質管理と品質改善の基本を、図解でわかりやすくまとめた本です(日本実業出版社)。
品質管理を、教科書で基本から学び直したいときに向いています。品質管理の基本をわかりやすく解説した教科書です(第5版)。
特殊特性を洗い出す入口の1つが、設計の段階で故障モードを評価する設計FMEAです。
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
特殊特性は、新製品の立ち上げ(APQP)の中で、FMEA・コントロールプラン・PPAPとつながっていきます。全体の地図から見ておきましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。