現場の品質管理

【完全図解】CAPA(是正処置・予防処置)とは?応急処置との違いを徹底解説

客先の松本部長から「先月のクレームのCAPAを提出してください」とメールが来た。CAPAって何だっけ?「是正処置」のこと?でも資料には「Corrective Action and Preventive Action」って書いてある。是正処置と予防処置の違いが、実はずっと曖昧だった。

前任者の8D報告書を見ると、D3に「不良品を選別」、D5に「治具を改造」、D7に「他ラインへ水平展開」と書いてある。これって全部「対策」だけど、何が違うんだ?山田課長に聞いたら「お前、4年目だろ。それくらい自分で調べて」と言われた。

実は、これら3つの「対策」は全くの別物です。混同したまま客先報告すると、確実に突き返されます。

😣 こんな経験はありませんか?
  • 「応急処置」「是正処置」「予防処置」の違いがふんわりしている
  • 客先からCAPAを求められたが、何を書けばいいかわからない
  • 8D報告書のD3とD5とD7の違いが説明できない
  • ISO9001の審査で「予防処置はどうしてますか?」と聞かれて固まった
✅ この記事でわかること
  • CAPAの全体像と3つの「対策」の決定的違いを1枚絵で理解
  • 応急処置・是正処置・予防処置を「火事の例え」でスッキリ整理
  • 8D報告書のステップとCAPAの関係
  • 客先監査で突き返されない書き方のコツ
💡 結論を先に
CAPA(Corrective Action and Preventive Action)とは「是正処置と予防処置」のこと。応急処置=火を消す、是正処置=出火原因を断つ、予防処置=他の家でも火が出ないようにする。この3つを混同すると客先報告で確実に詰みます。

CAPAとは?「火事の対応」と全く同じ構造

CAPA(キャパ)とは、Corrective Action and Preventive Actionの略で、日本語では「是正処置および予防処置」のこと。ISO9001、IATF16949、医薬品GMP、FDA(米国食品医薬品局)など、世界中の品質マネジメント規格で要求される最重要プロセスです。

難しそうに聞こえますが、考え方は家で火事が起きたときの対応とまったく同じです。

🔥

家で火事!

天ぷら油から出火。
キッチンが燃えている。

🧯

①応急処置

消火器で今燃えてる火を消す。
(火を止めるだけ)

🔧

②是正処置

ガスコンロをセンサー付きに交換。
(再発防止)

🛡️

③予防処置

家中の電化製品も点検し改善。
(他で起きないように)

💡 ポイント
この3つは全く別の対策です。応急処置だけで終わらせると、また同じ場所から火が出る。是正処置だけで終わらせると、別の場所から火が出る。3点セットで初めてCAPAが完成します。
🔧 現場の声
客先の監査で「対策は?」と聞かれて「不良品を選別しました」とだけ答えると、確実に「それは応急処置でしょ?是正処置と予防処置はどうしましたか?」と突っ込まれます。3つを区別できるかどうかが、品質保証4年目以上のレベル感の境界線です。

応急処置・是正処置・予防処置の決定的違い

3つの違いを表で整理します。これを覚えれば、客先監査で突き刺されることはありません。

項目 応急処置
(Containment)
是正処置
(Corrective Action)
予防処置
(Preventive Action)
目的 被害の拡大を止める 同じ問題の再発を防ぐ 類似問題の発生を防ぐ
タイミング 問題発生直後 真因特定 問題発生前(または後の水平展開)
対象 既に起きた問題そのもの 問題の真因 類似工程・他製品・潜在リスク
必要な分析 なし(即対応) なぜなぜ分析、特性要因図 FMEA、リスクアセスメント
8Dでの位置 D3 D5・D6 D7
具体例 不良品の選別・隔離、客先への代替品送付 治具改造、検査基準改訂、作業手順書修正 他ラインへの水平展開、FMEA見直し
⚠️ 注意
「応急処置」をCAPAに含めるかは規格・業界で違います。ISO9001:2015では応急処置を「Correction(修正)」として、是正処置とは明確に区別しています。8D報告書ではD3として独立工程に。客先がどの定義で求めているか必ず確認しましょう。

①応急処置(Correction)|「火を消す」段階

応急処置とは、不良が発生した直後に、被害拡大を止めるための即時対応のこと。ISO9001では「Correction(修正)」と呼ばれます。火事で言えば「消火器で火を消す」段階です。

応急処置の典型例

シーン 応急処置の内容
客先で不良発見 代替品を即送付、不良品を回収
社内在庫の汚染 該当ロットを全数選別、ICTAGで隔離
工程内不良 該当工程を即停止、過去ロット調査
流出懸念ロット 出荷停止、客先在庫の選別依頼

応急処置で押さえるべき「3つの範囲」

応急処置を考えるときは、「どこまで疑わしいロットがあるか」を3つの範囲で必ず確認します。これを「3つの倉庫」と呼びます。

範囲①

客先在庫(出荷後・客先工場)

既に客先に納入されているロット。最も急ぐべき対象。客先と協力して選別・回収する。

範囲②

輸送中・自社倉庫(出荷待ち)

物流中・出荷準備中のロット。出荷を即停止し、選別する。

範囲③

仕掛品・原材料(製造中)

工程内にある仕掛品、原材料倉庫の在庫。混入リスクを評価して隔離する。

🔧 現場の声
客先の松本部長クラスから必ず聞かれるのが「市場流出はどこまで?」。「客先A社、B社、C社それぞれ何ロット出荷済み、〇月〇日納入分まで」と即答できる体制を作りましょう。製造ロット番号と出荷管理が紐づいていれば10分で答えられます。

②是正処置(Corrective Action)|「再発を断つ」段階

是正処置とは、不良の真因を取り除き、同じ問題が二度と起こらないようにする恒久対策のこと。火事で言えば「ガスコンロをセンサー付きに交換し、その家で二度と火事が起きないようにする」段階です。

是正処置の最大のポイントは「真因(root cause)に到達しているか」。表面的な原因への対策では、必ず再発します。

是正処置の手順(5ステップ)

STEP 1

事象の正確な記述

何が・いつ・どこで・どの程度起きたのかを5W1Hで記録。曖昧な記述だと真因にたどり着けない。

STEP 2

なぜなぜ分析(5回のWhy)

表面的な原因から「なぜ?」を5回繰り返し、真因に到達する。「人のせい」で止まらないこと。

STEP 3

対策の立案・実施

真因を排除する対策を立案。優先度は「ポカヨケ>手順書改訂>教育」の順。人に頼る対策は最終手段。

STEP 4

効果検証

対策後の不良率を測定。対策前の数値と比較し、効果があったか定量的に証明する。

STEP 5

標準化(歯止め)

QC工程表・作業標準書・FMEAを更新し、対策を「仕組み化」する。これがないと数ヶ月で元に戻る。

対策の優先順位(改善のヒエラルキー)

是正処置を立案するとき、対策には「強さ」の階層があります。上位の対策ほど人に依存せず確実です。

優先度 対策レベル 具体例 効果
★★★★★ 設計・構造変更 部品形状を非対称にして逆組防止 物理的に不良が出ない
★★★★ ポカヨケ導入 治具センサー、画像検査機 人為ミスを機械が防ぐ
★★★ 手順書改訂 作業標準書の改定、写真追加 守られれば効果あり
★★ 教育・訓練 作業者への再教育、KYT 忘れると元に戻る
注意喚起・掲示 「気をつけよう」の貼り紙 ほぼ効果なし
⚠️ 客先監査でアウトの対策
「教育を徹底します」「注意喚起します」だけの是正処置は、客先監査で確実に突き返されます。「次に同じ作業者が交代したら、また同じ不良が出ますよね?」と必ず聞かれる。★★★以上の対策を最低1つ入れることが必須です。

③予防処置(Preventive Action)|「他で起きないように」段階

予防処置とは、類似の問題が他の工程・他の製品・将来発生しないように先回りで対策すること。火事で言えば「家中の電化製品を点検し、コンセントの埃を取り、消火器を全部屋に置く」段階です。

予防処置には2つのパターンがあります。意外と知られていないので、押さえておきましょう。

🔄

パターンA: 水平展開型

不良発生後に、類似工程・他ライン・他製品にも同じ対策を展開する予防処置。8DのD7に相当。

例: ラインAの治具改造をラインB・C・Dにも展開

🔮

パターンB: 先回り型

問題が起きる前に、潜在リスクを洗い出して対策する予防処置。FMEA・リスクアセスメントが代表例。

例: 新製品開発でFMEAを実施し設計変更

予防処置の代表的手法

手法 使う場面
FMEA(故障モード影響解析) 設計・工程の潜在不良を事前抽出
FTA(故障の木解析) トップダウンで重大事故の原因を分析
水平展開(横展) 類似工程・他工場へ同じ対策を展開
QC工程表・コントロールプラン更新 類似工程の管理項目に追加
教訓集(Lessons Learned) 過去事例をデータベース化し新製品開発で参照
変化点管理(4M) 人・設備・材料・方法の変更時にリスク事前評価
⚠️ ISO9001:2015の重要変更
2015年版のISO9001から、「予防処置」という独立要求事項は削除されました。代わりに「リスクベース思考(Risk-based Thinking)」として、QMS全体に予防処置の考え方が組み込まれています。「予防処置どうしてますか?」と聞かれたら、「FMEAとリスクアセスメントを通じて事前にリスクを評価し対策しています」と答えるのが正解です。

8D報告書とCAPAの関係|D1〜D8で全部つながる

自動車業界で標準的なクレーム対応フォーマット8D報告書には、応急処置・是正処置・予防処置がきれいに組み込まれています。8Dの各ステップとCAPAの対応を見てみましょう。

ステップ 名称 CAPA区分
D1 チーム編成 準備
D2 問題の記述 準備
D3 暫定処置(Containment) 応急処置
D4 真因の特定 分析
D5 是正処置の選定 是正処置
D6 是正処置の実施・効果確認 是正処置
D7 再発防止・水平展開 予防処置
D8 チームへの感謝・認識 完了
💡 ポイント
8D報告書がきれいに書ける人は、自然とCAPAの3つを区別できています。逆に言えば、D3とD5・D6とD7で書く内容が混ざっている報告書は、CAPAの理解が浅い証拠。客先監査では真っ先に指摘されます。

実例:プレス工程で寸法不良が発生した場合

区分 具体的な対策内容
応急処置(D3) 該当ロット全数選別。客先在庫A工場分も選別依頼。出荷停止。
是正処置(D5・D6) 真因「金型の摩耗閾値が不明確」→金型寿命管理を導入。摩耗センサーを取付け、自動停止機能を追加。
予防処置(D7) 同種金型を使う他のプレス機5台にも同じセンサーを展開。新規金型のFMEAに「摩耗管理」を追加。
🔧 現場の声
客先の松本部長クラスから「水平展開はどこまで?」と必ず聞かれます。「同じ金型を使う他のラインは?他工場では?」と。事前に「展開先リスト」を作って答えられるようにしましょう。これがあるだけで、客先の信頼が大きく変わります。

客先で突き返されないCAPA報告書のテンプレート

実際にCAPA報告書を書くときに「これだけ押さえておけば大丈夫」というテンプレート構成を紹介します。客先のフォーマット指定がない場合は、これをベースにアレンジしてください。

CAPA報告書の必須記載項目

項番 項目 記載内容
1 事象 いつ・どこで・誰が・何を・どう発見したか(5W1H)
2 影響範囲 影響ロット・影響数・市場流出有無
3 応急処置 選別・隔離・代替品送付の内容と完了日
4 流出原因(なぜ流出した?) 検査で検出できなかった原因をなぜなぜ分析
5 発生原因(なぜ発生した?) 不良が発生した工程の真因をなぜなぜ分析
6 是正処置 流出原因・発生原因それぞれへの恒久対策と完了日
7 効果検証 対策後のデータ(不良率・検査結果)で効果を証明
8 予防処置(水平展開) 類似工程・他製品への展開計画と完了日
9 標準化(歯止め) QC工程表・FMEA・作業標準書の改訂内容
10 承認・記録 作成者・承認者(品証部長・製造課長)・承認日

「流出原因」と「発生原因」を分けるのが超重要

CAPA報告書で初心者がやりがちなミスが「発生原因しか書いていない」こと。実は不良対策では2つの原因を分けて分析する必要があります。

🏭

発生原因

なぜ不良が発生したか?

例:金型摩耗で寸法が規格外になった

🚪

流出原因

なぜ不良が流出したか?

例:出荷検査が抜取で全数見ていなかった

⚠️ 客先監査の頻出指摘
発生原因と流出原因が分けて書かれていない」は客先監査の頻出指摘トップ3です。発生は「作る側」の問題、流出は「検査する側」の問題。両方への対策がなければ、また流出します。

CAPAでやりがちなNGパターン5選

NG①「教育を徹底します」だけで終わる

最も多いNGパターン。「作業者に再教育しました」は★★レベルの弱い対策で、人が交代したらまた発生します。客先監査で「次に新人が入ったらまた起きますよね?」と必ず突かれる。★★★以上の仕組み化を最低1つ加えるのが必須です。

NG②「人のせい」で真因が止まる

「作業者の確認不足」「経験不足」で真因が止まっているCAPA報告書は、ほぼ100%突き返されます。「なぜ確認不足が起こり得る仕組みになっていたか?」まで掘り下げる必要があります。

NG③ 効果検証のデータがない

「対策しました→効果ありました」だけでは不十分。対策前と対策後の数値データ(不良率、検査結果、Cpk値など)で定量的に証明する必要があります。「対策前0.5% → 対策後0.0%(n=1,000)」のように。

NG④ 水平展開を「該当なし」と書く

予防処置の欄に「該当なし」「対象工程なし」と書くのは絶対NG。同じ設備・同じ工法・同じ材料を使っている工程を必ず洗い出し、評価の上で展開可否を記載しましょう。「展開検討対象は5工程、結果〇工程に展開」が正しい書き方。

NG⑤ 標準化(歯止め)を忘れる

対策をやったまま、QC工程表やFMEAを更新していないケース。これだと3〜6ヶ月後に必ず元に戻ります。「QC工程表 Rev.5へ改訂」「FMEAに故障モード追加」など、文書化と承認まで完了させましょう。

こうすると失敗

  • 「教育徹底」だけで終わる
  • 「人のミス」で真因が止まる
  • 効果検証データがない
  • 水平展開が「該当なし」
  • QC工程表を更新していない

こうすればOK

  • ★★★以上の仕組み化を必ず追加
  • 「仕組みの欠陥」まで掘る
  • 対策前後の数値で定量証明
  • 展開検討範囲を明示する
  • 文書改訂・承認まで完了
🔧 現場の声
CAPAは「報告書を書いて終わり」ではなく、「仕組みを変えて初めて完了」です。客先監査では半年後にもう一度訪問されて「対策が定着していますか?」を確認されることがあります。歯止めをサボるとそこで全てが崩れます。

ISO9001・QC検定1級での出題ポイント

ISO9001:2015での要求事項

ISO9001:2015では、CAPAは以下の箇条で要求されています。

箇条 タイトル 要求内容
6.1 リスク・機会の取組み 予防処置の代わり(リスクベース思考)
8.7 不適合製品の管理 応急処置(隔離・選別)に相当
10.2 不適合および是正処置 是正処置の中核要求事項
10.3 継続的改善 CAPAの仕組み全体の有効性
⚠️ ISO審査での頻出質問
「予防処置はどうしていますか?」と聞かれたら、以下を答えればOK:
①FMEAでリスクの事前抽出をしている
②過去の不適合からの水平展開を実施している
③マネジメントレビューでリスク評価を年次で実施している
この3つで「リスクベース思考」が回っていることを示せます。

QC検定1級での出題傾向

QC検定1級では、CAPAは「品質保証」分野の頻出テーマです。出題パターンは以下の通り。

  • 論述問題: 「応急処置・是正処置・予防処置の違いを具体例とともに述べよ」
  • 記述問題: 「8D報告書のD3とD7に書くべき内容を簡潔に説明せよ」
  • 選択問題: ISO9001:2015で予防処置がどう変わったか
  • 事例問題: 与えられた不良事例に対し、応急・是正・予防の対策を立案
💡 暗記ポイント
応急処置=Containment(D3)」「是正処置=Corrective Action(D5・D6)」「予防処置=Preventive Action(D7・FMEA)」の3つの英語と8Dステップの対応をセットで覚えましょう。論述で間違えると減点が大きいです。

まとめ|CAPAの3点セットで品質保証の本物のスキルになる

📝 この記事のポイント
  • CAPA = Corrective Action and Preventive Action(是正+予防)
  • 応急処置(火を消す)・是正処置(原因を断つ)・予防処置(他で起きないようにする)の3点セット
  • 8D報告書のD3=応急、D5/D6=是正、D7=予防に対応
  • 対策には強さの階層あり。★★★以上の仕組み化が必須
  • 発生原因と流出原因を分けて分析する
  • 標準化(QC工程表・FMEA改訂)まで完了して初めてCAPA終了
  • ISO9001:2015では予防処置→「リスクベース思考」に進化

CAPAは「クレーム対応の作業」ではなく、「会社の品質体質を変える仕組み」です。応急処置だけで終わる組織は同じ不良を何度も繰り返し、是正処置で止まる組織は他工程で類似不良を出し、予防処置まで回せる組織だけが本当の意味で品質を作り込めます。

田中さんも、次にクレームを受けたときは「3点セットで対応できているか?」を意識してください。CAPAをきちんと書ける品質保証担当者は、客先からも社内からも信頼されます。応援しています。

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📘 なぜなぜ分析が「人のせい」で終わる理由と対策|製造業5事例で修正法を完全図解 →

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