電圧の維持義務まわりは、覚える数字は少ないのに、なぜか毎回ぼんやり覚えてしまう論点です。「101の上下6V」「202の上下20V」という、対称じゃない数字の組み合わせが原因。この記事では、丸暗記ではなく現場の感覚で押さえられるように整理します。
こんな悩みはありませんか?
- 101Vと107Vの「±6V」が、95〜107の範囲を示していると即答できない
- 200V系の「±20V」の数字だけ大きいので、しっくり覚えられない
- 周波数の維持義務が「50Hz・60Hz」のどちらの話なのか整理できていない
- 電力会社(一般送配電事業者)の供給義務が、どの条文に紐づくのか不明確
この記事を読めばわかること
- 電気事業法第26条と施行規則第38条の関係が、図でひと目でわかる
- 「101±6V」「202±20V」を、家庭のコンセントの実感とセットで暗記できる
- 周波数の維持義務と、東日本50Hz・西日本60Hzの実務を結びつけて理解できる
- 過去問H21問10・H26問5の頻出パターンを確実に得点できるようになる
目次
結論:覚える数字は「101±6」「202±20」「50/60」の3行だけ
この単元で覚える数字は、たった3行で済みます。先に全体像を示します。
| 標準値 | 維持すべき範囲 | 対象 |
|---|---|---|
| 101V | 95V〜107V (±6V) |
標準電圧100Vの低圧需要家(家庭・小規模店舗など) |
| 202V | 182V〜222V (±20V) |
標準電圧200Vの低圧需要家(業務用エアコン・動力設備など) |
| 50Hz / 60Hz | 標準周波数の値 | 東日本50Hz・西日本60Hz(電力会社ごとに標準値が決まっている) |
この3行を、現場のイメージと条文番号にひもづけて覚えるだけで、電験「法規」のこの単元は満点に近づきます。以降のセクションで、なぜこの数字なのか・どの条文に根拠があるのかを掘り下げていきます。

電力会社の供給義務と維持義務(第26条)の全体像
電圧と周波数の話は、電気事業法第26条が出発点です。誰が・誰のために・何をしなければならないかを、最初にスッキリさせておきましょう。
条文を3つの要素に分解する
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 主体(誰が) | 一般送配電事業者(東京電力PG・関西電力送配電など)。旧法では「電気事業者」と表記された問題が多い |
| 対象(何を) | 供給する電気の電圧の値と周波数の値 |
| 義務の性質 | 努力義務(「維持するように努めなければならない」)。完全な結果保証ではなく、合理的に努力する義務 |
| 具体的な値 | 経済産業省令、つまり電気事業法施行規則 第38条に丸投げされている |
条文末尾の「維持するように努めなければならない」は、過去問で必ず空欄になるキーワードです。「維持しなければならない」(断定)に書き換えられた誤答選択肢が定番なので、「努めなければならない」までセットで覚えてください。
条文の原典はe-Gov法令検索:電気事業法で確認できます。第26条と、後述する施行規則第38条は、必ずワンセットで読むようにしてください。

施行規則第38条|維持すべき電圧の値(表で一発整理)
第26条で「省令で定める値に維持」と言われた内容は、電気事業法施行規則 第38条に表で記載されています。電験で問われるのは、この表そのものです。
維持すべき電圧(施行規則 第38条第1項)
| 標準電圧 | 維持すべき値 | 範囲(換算) |
|---|---|---|
| 100V | 101Vの上下6Vを超えない値 | 95V 〜 107V |
| 200V | 202Vの上下20Vを超えない値 | 182V 〜 222V |
「標準値」と「中心値」がズレている理由
ここで初心者が一番つまずくのが、「標準電圧100Vなのに、なぜ維持値の中心が101Vなのか?」という点です。同様に、200Vの中心が202Vです。この+1V/+2Vは、電気事業の歴史的な経緯による意図的なオフセットです。
配電線の末端ほど電圧降下で値が下がりやすいため、中心値をやや高めに設定することで、需要家側で95V〜107Vの範囲に収まりやすいよう設計されています。家電製品の銘板にも「100V±10%」など余裕を持った仕様が記載されており、それと整合した数字になっています。

「±6V」「±20V」を一発で覚える方法
この単元の暗記ポイントは、たった4つの数字です。語呂や現場イメージとセットで、頭に定着させてしまいましょう。
覚え方①:パーセント換算で対称性を意識する
「±6V」と「±20V」は、絶対値で見ると非対称ですが、標準電圧に対する割合で見ると感覚がそろいます。
| 標準電圧 | 中心値 | 許容±幅 | 標準電圧に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 100V | 101V | ±6V | 中心値の約±6%(6/101) |
| 200V | 202V | ±20V | 中心値の約±10%(20/202) |
100V系は約±6%、200V系は約±10%と覚えると、業務用機器の許容電圧仕様(200V±10%など)とも整合するので、現場感覚で納得できます。
覚え方②:「107V」を上限のキーワードに
100V系の上限107Vは、配電業界・電気主任技術者の世界で頻出する数値です。「107V」というキーワードを覚えると、自動的に「101±6V」が導き出せる仕組みです。
太陽光発電の普及が進んだエリアでは、逆潮流(売電)で電圧が上昇し、需要家側の電圧が107Vの上限に張り付いて売電できなくなるケースが増えています。この「107V問題」は、電圧維持義務の実務面で押さえておくべき重要トピックです。
覚え方③:家のコンセントで想像する
家庭のコンセント(100V系)に電圧計を当てると、平日昼間で103〜105V程度に振れているのが普通です。これが「101V±6V」の範囲内に収まっている実例です。試験中に数字に迷ったら、自宅のコンセント電圧をイメージすれば、95V〜107Vの感覚を取り戻せます。

周波数の維持義務|50Hz・60Hzの境界と中身
周波数の維持義務は、電圧と違って具体的な許容幅は条文に書かれていません。条文上の表現は、ざっくり「標準周波数の値に維持するように努める」です。
一般送配電事業者は、その供給する電気の標準周波数の値に維持するように努めなければならない。
東日本と西日本で違う「標準周波数」
| エリア | 標準周波数 | 主な一般送配電事業者 |
|---|---|---|
| 東日本 | 50Hz | 北海道電力NW・東北電力NW・東京電力PG |
| 西日本 | 60Hz | 中部電力PG・北陸電力送配電・関西電力送配電・中国電力NW・四国電力送配電・九州電力送配電・沖縄電力 |
境界は静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を結ぶラインです。両エリアの電力をやりとりするため、周波数変換所(FC)が設置されています。電験「電力」科目でも問われるトピックなので、地理イメージとセットで覚えておくと得です。
なぜ周波数の維持が重要なのか
周波数は、需要と供給のバランスで決まります。需要が供給を上回ると周波数が下がり、供給が需要を上回ると周波数が上がる仕組みです。周波数が標準値から大きく外れると、発電機の脱落や大規模停電(ブラックアウト)につながる可能性があります。
2018年の北海道胆振東部地震では、火力発電所の停止により需給バランスが崩れ周波数が大幅に低下し、連鎖的に系統全体がブラックアウトしました。電圧と周波数の維持義務が、いかに電力インフラの根幹かを示した事例です。

過去問の典型パターン|この単元は条文穴埋め一択
電圧・周波数の維持義務は、過去問でほぼ毎回「条文の空欄穴埋め型」として出題されます。出題年度を見ると、平均しておよそ5年に1回登場する頻出論点です。
| 出題年度 | 問われた条文 | 空欄になる重要キーワード |
|---|---|---|
| 平成21年 問10 | 第26条+施行規則第38条 | 100V系の許容幅/200V系の許容幅/標準周波数 |
| 平成26年 問5 | 施行規則第38条(電圧の維持) | 「101Vの上下6V」「202Vの上下20V」の数字そのもの |
特にH26問5は、本記事のH2「施行規則第38条」で示した表がそのまま空欄になっただけのストレートな出題です。次のブロックで実際に解いて、得点パターンを身体に染み込ませましょう。
理解度テスト(過去問チャレンジ)
出題:平成26年度 法規 問5
次の文章は、「電気事業法」及び「電気事業法施行規則」に基づく、電圧の維持に関する記述である。
電気事業者(卸電気事業者及び特定規模電気事業者を除く。)(現:一般送配電事業者)は、その供給する電気の電圧の値をその電気を供給する場所において、表の左欄の標準電圧に応じて右欄の値に維持するように努めなければならない。
| 標準電圧 | 維持すべき値 |
|---|---|
| 100V | (ア)を超えない値 |
| 200V | (イ)を超えない値 |
上記の記述中の空白箇所(ア)及び(イ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | |
|---|---|---|
| (1) | 100Vの上下4V | 200Vの上下10V |
| (2) | 100Vの上下5V | 200Vの上下15V |
| (3) | 100Vの上下6V | 200Vの上下15V |
| (4) | 101Vの上下6V | 202Vの上下20V |
| (5) | 101Vの上下10V | 202Vの上下20V |
▼ 解答と解説を見る
正解:(4) 101Vの上下6V/202Vの上下20V
- (ア)=101Vの上下6V:施行規則第38条の表の通り。標準電圧100Vのときの維持範囲は95V〜107V。中心値が100Vではなく101Vである点がポイント。
- (イ)=202Vの上下20V:標準電圧200Vのときの維持範囲は182V〜222V。中心値が202V、許容幅が±20V。
「100Vの上下〜」「200Vの上下〜」と書かれているダミー選択肢((1)〜(3))は、中心値が標準値そのものになっている誤りです。本記事のH2「施行規則第38条」の表を覚えていれば、(4)以外は瞬時に消去できます。
出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 公表問題(平成26年度 第三種電気主任技術者試験 法規 問5)
私の自宅にもパナソニックの簡易電圧モニターを設置していますが、平日昼間は103〜105V、夜間は105〜107Vあたりで動いています。「101±6V」の範囲内ですが、太陽光発電が増えた近隣エリアでは、たまに107Vに張り付く瞬間があり、自宅の太陽光発電のパワコンが出力抑制をかけるのを目撃したことがあります。条文の数字が現場の現象とそのまま結びついているのを実感してから、この単元の暗記が一気に楽になりました。家に電圧モニターがあれば、勉強しながら数字を見比べてみるのがおすすめです。
電験三種・法規シリーズの全体地図
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この記事を書いた人
シラス(@shirasusolo)
30代メーカーエンジニア。電気主任技術者・QC検定保有。「soloblog」で電験三種・統計学を中心に、現場で使える知識を発信中。
最終更新:2026年5月16日 / 本記事は2026年5月時点の法令に基づいています。最新の改正情報は e-Gov法令検索 で必ずご確認ください。