統計学基礎

第9回:分散の加法性|「独立」なら足せる!バラつきの合成法則を徹底解説

😵 こんな悩みはありませんか?
  • 「分散の加法性って何?なんで分散は足せるの?」
  • 「標準偏差は足せないのに、分散は足せる?意味がわからない…」
  • 「『独立』ってどういう意味?」
  • 「V(X+Y) = V(X) + V(Y) の公式、どう使えばいいの?」

統計学で必ず登場する「分散の加法性」。QC検定や統計検定でも頻出の超重要テーマです。

でも、「なぜ分散は足せるのか」「どんな条件で使えるのか」が曖昧なまま公式を暗記していませんか?

この記事では、サイコロ2個の例を使って、分散の加法性を徹底的に図解します。読み終わる頃には「なるほど、そういうことか!」とスッキリするはずです。

📌 この記事の結論
  • 独立な確率変数なら、分散は足し算できる
  • V(X + Y) = V(X) + V(Y) ← これが「分散の加法性」
  • 標準偏差は足せない(2乗してから足して、ルートを取る)
  • 引き算でもV(X − Y) = V(X) + V(Y)(プラスになる!)
📘 前提知識
第5回:分散と標準偏差 - ばらつきを数値化する →

分散の定義を復習してから読むとスムーズです!

🎲 サイコロ2個で考えよう

分散の加法性を理解するために、サイコロを2個振るケースを考えましょう。

サイコロ1個の出目をX、もう1個の出目をYとします。
2個の合計はX + Yですね。

🎯 サイコロ1個の統計量

まず、サイコロ1個の期待値と分散を確認しましょう。

出目 1 2 3 4 5 6
確率 1/6 1/6 1/6 1/6 1/6 1/6
📐 サイコロ1個の統計量

期待値(平均):E(X) = (1+2+3+4+5+6)/6 = 3.5
分散:V(X) = 35/12 ≒ 2.92
標準偏差:σ = √(35/12) ≒ 1.71

では、サイコロを2個振ったとき、合計X + Yの分散はどうなるでしょうか?

🔗 「独立」とは?分散の加法性の条件

分散の加法性が成り立つには、「独立」という条件が必要です。

「独立」とは、一方の結果がもう一方に影響しないことを意味します。

🎲 たとえ話:サイコロは独立?

サイコロXで「6」が出たからといって、サイコロYの出目は変わりませんよね。
Xの結果とYの結果はお互いに影響しない
これが「独立」です。

✅ 独立の例

独立な例 ✅ 独立でない例 ❌
サイコロ2個を振る 身長と体重(相関がある)
コイン2枚を投げる 気温とアイスの売上
工程Aと工程Bの誤差(別機械) 同じ機械の連続測定

➕ 分散の加法性の公式

XとYが独立なら、以下の公式が成り立ちます。

🎯 分散の加法性(超重要!)

V(X + Y) = V(X) + V(Y)

※ XとYが独立の場合に限る

サイコロ2個の合計の分散を計算してみましょう。

V(X + Y) = V(X) + V(Y) = 2.92 + 2.92 = 5.84

はい、分散は単純に足せます!これが分散の加法性です。

⚠️ 注意!標準偏差は足せない

ここで重要な注意点があります。標準偏差は単純に足せません

計算 正しい? 結果
σX + σY = 1.71 + 1.71 ❌ 間違い 3.42
√(V(X) + V(Y)) = √5.84 ✅ 正しい 2.42
💡 標準偏差の合成方法

標準偏差を合成するには、2乗→足す→ルートの3ステップ!

σX+Y = √(σX² + σY²) = √(V(X) + V(Y))

➖ 引き算でも分散は「足す」!

ここで、多くの人が間違えるポイントがあります。

X − Yの分散はどうなるでしょうか?「引き算だから分散も引く」と思いがちですが…

🎯 引き算でも分散は足す!

V(X − Y) = V(X) + V(Y)

※ マイナスではなくプラス!

なぜプラスになるのでしょうか?

🤔 なぜ引き算でもプラス?

分散は「バラつき」を表す量です。バラつきに「マイナス」はありません。

🎯 たとえ話:的当てゲーム

AさんとBさんがそれぞれ的を狙って投げます。
二人の差を考えるとき、バラつきは増えるんです。

なぜなら、Aさんがズレて、Bさんもズレると、
差のバラつきは両方のズレが重なるから!

数学的には、V(−Y) = V(Y) となります。マイナスの符号は分散には影響しないんです。

V(X − Y) = V(X + (−Y)) = V(X) + V(−Y) = V(X) + V(Y)

✖️ 定数倍の分散

もう一つ重要な公式があります。確率変数を定数倍したときの分散です。

📐 定数倍の分散

V(aX) = a²V(X)

定数は「2乗」されて出てくる

例えば、Xを2倍したら、分散は4倍になります。

V(2X) = 2² × V(X) = 4V(X)

📋 分散の公式まとめ

公式 条件 ポイント
V(X + Y) = V(X) + V(Y) X, Y が独立 分散は足せる
V(X − Y) = V(X) + V(Y) X, Y が独立 引き算でもプラス!
V(aX) = a²V(X) aは定数 定数は2乗で出る
V(X + a) = V(X) aは定数 定数を足しても分散は変わらない
📘 関連記事
第10回:共分散とは?2つの変数の関係性を測る魔法の数値 →

独立でない場合は「共分散」が登場します!

🏭 実務での活用例|製造業の品質管理

分散の加法性は、製造業の品質管理で大活躍します。

🔧 例題:部品の組み立て

部品Aと部品Bを組み合わせて製品を作ります。それぞれの寸法のバラつきは以下の通りです。

部品 目標寸法 標準偏差 σ 分散 σ²
部品A 50mm 0.3mm 0.09mm²
部品B 30mm 0.4mm 0.16mm²

問題:組み立て後の全長(A + B)のバラつき(標準偏差)はいくらになる?

📝 解答

Step 1:分散を足す
V(A + B) = V(A) + V(B) = 0.09 + 0.16 = 0.25mm²

Step 2:平方根を取って標準偏差へ
σA+B = √0.25 = 0.5mm

⚠️ 間違いやすいポイント

間違い:0.3 + 0.4 = 0.7mm(標準偏差を直接足す)
正解:√(0.3² + 0.4²) = √0.25 = 0.5mm

標準偏差を直接足すと、バラつきを過大評価してしまいます!

💡 なぜ直接足すと大きくなる?

部品AとBが同時に最大にズレる確率は低いですよね。

Aが大きくズレているとき、Bは小さいかもしれない。逆もあり得る。
だから、単純に足し合わせるよりも、実際のバラつきは小さくなるんです。

🎯 たとえ話:ピタゴラスの定理

分散の加法性は、ピタゴラスの定理に似ています。

直角三角形で、斜辺c = √(a² + b²) ですよね。
3² + 4² = 9 + 16 = 25 → √25 = 5

標準偏差の合成も同じ!
σ² + σ² を足して √ を取るイメージです。

📚 まとめ|分散の加法性の要点

✅ この記事のポイント
  • 独立な確率変数なら、分散は足し算できる
  • 標準偏差は足せない(2乗→足す→ルートの3ステップ)
  • 引き算でもV(X−Y) = V(X) + V(Y)(プラスになる!)
  • 定数倍はV(aX) = a²V(X)(2乗で出てくる)
  • 製造業の公差計算で必須の知識
🎯 覚えるべき公式
V(X + Y) = V(X) + V(Y) 独立なら足せる
V(X − Y) = V(X) + V(Y) 引き算でもプラス!
V(aX) = a²V(X) 定数は2乗で出る
V(X + a) = V(X) 定数を足しても分散は不変
🎯 QC検定・統計検定 対策ポイント
  • V(X − Y)がプラスになる理由を説明できるように
  • 標準偏差の合成方法「2乗→足す→ルート」を暗記
  • 「独立」の条件を確認する問題に注意
  • 公差計算への応用問題が頻出
❌ よくある間違い
  • 標準偏差を直接足す(σX + σY は間違い!)
  • V(X − Y) = V(X) − V(Y) と計算する(マイナスではない!)
  • 独立でない変数に加法性を適用する

📖 統計学基礎シリーズ

👆 前の記事

第8回:期待値 - 確率分布の中心を知る →

期待値の性質を復習

👇 次の記事

第10回:共分散とは? →

独立でない場合の分散計算

分散の加法性は「独立ならバラつきは足せる」という法則でしたね。

標準偏差は直接足せないけど、「2乗→足す→ルート」で合成できます。
引き算でもプラスになるのがポイント!

次は「共分散」で、独立でない場合を学びましょう!➕📊

統計学のおすすめ書籍

統計学の「数式アレルギー」を治してくれた一冊

「Σ(シグマ)や ∫(インテグラル)を見ただけで眠くなる…」 そんな私を救ってくれたのが、小島寛之先生の『完全独習 統計学入門』です。

この本は、難しい記号を一切使いません。 「中学レベルの数学」と「日本語」だけで、検定や推定の本質を驚くほど分かりやすく解説してくれます。

「計算はソフトに任せるけど、統計の『こころ(意味)』だけはちゃんと理解したい」 そう願う学生やエンジニアにとって、これ以上の入門書はありません。

¥2,420 (2025/11/23 09:57時点 | Amazon調べ)

【QC2級】「どこが出るか」がひと目で分かる!最短合格へのバイブル

私がQC検定2級に合格した際、使い倒したのがこの一冊です。

この本の最大の特徴は、「各単元の平均配点(何点分出るか)」が明記されていること。 「ここは出るから集中」「ここは出ないから流す」という戦略が立てやすく、最短ルートで合格ラインを突破できます。

解説が分かりやすいため、私はさらに上の「QC1級」を受験する際にも、基礎の確認用として辞書代わりに使っていました。 迷ったらまずはこれを選んでおけば間違いありません。

タグ

-統計学基礎