機械科目の解説

【電験三種】変圧器の試験|無負荷試験・短絡試験で何がわかる?完全図解

😰 こんな悩みはありませんか?

  • 無負荷試験と短絡試験、どっちで何を測るの?
  • なぜ「無負荷」で鉄損がわかるの?
  • 短絡って危なくないの?なぜ短絡させる?
  • 試験の回路図が覚えられない…

変圧器には、性能を調べるための2つの重要な試験があります。

それが「無負荷試験」「短絡試験」です。

この2つの試験で、変圧器の「損失」や「等価回路のパラメータ」がすべてわかります。

✅ この記事の結論

無負荷試験 → 鉄損と励磁電流を測定(二次側を開放)
短絡試験 → 銅損と%Zを測定(二次側を短絡)
この2つで変圧器の「すべて」がわかる!

🏥 変圧器の試験 = 健康診断

人間が健康診断を受けるように、変圧器も「試験」で性能をチェックします。

健康診断では「血液検査」や「レントゲン」など、複数の検査がありますよね。
変圧器の試験も同じで、2種類の試験で異なる情報を測定します。

🏥 健康診断で例えると…

無負荷試験 = 安静時の検査(血圧測定など)
→ 何もしていないときの「基本の状態」を見る

短絡試験 = 運動負荷試験(心電図など)
→ 負荷をかけたときの「反応」を見る

項目 無負荷試験 短絡試験
二次側の状態 開放(何も繋がない) 短絡(導線で繋ぐ)
一次側の電圧 定格電圧 低い電圧(数%程度)
測定できるもの 鉄損、励磁電流 銅損、%Z
別名 開放試験 インピーダンス試験

🟢 無負荷試験 ― 鉄損と励磁電流を測定

まずは「無負荷試験」から見ていきましょう。

「無負荷」とは、二次側に何も接続していない状態のことです。

📚 無負荷試験(No-Load Test)

二次側を開放(何も繋がない)した状態で、一次側に定格電圧をかける試験。
別名:開放試験
測定するもの:鉄損 W₀励磁電流 I₀

🔌 無負荷試験の回路図

無負荷試験の回路は、次のようになります。

🤔 なぜ無負荷で「鉄損」がわかる?

これが無負荷試験の最大のポイントです。

二次側を開放すると、二次側には電流が流れません。
つまり、銅損(I²R損)がほぼゼロになります。

一方、鉄損は電圧がかかっていれば発生するので、変わりません。

無負荷試験のカラクリ

・二次側開放 → 二次電流 = 0 → 銅損 ≒ 0
・電圧はかかっている → 鉄損は発生
・だから、電力計の値 ≒ 鉄損!

🚗 車で例えると…

車のエンジンをかけて、ギアを入れずにアイドリングしている状態。

走っていない(負荷がない)けど、エンジンは動いている(電圧はかかっている)。

このとき消費するガソリン = 鉄損(アイドリング損失)のようなもの。

📊 無負荷試験で測定できるもの

① 鉄損 W₀

電力計で測定。
銅損≒0なので、電力計の値≒鉄損

② 励磁電流 I₀

電流計で測定。
定格電流の2〜5%程度と非常に小さい。

③ 励磁アドミタンス

Y₀ = I₀ / V₁ で計算。
等価回路のパラメータ。

📐 無負荷試験の計算公式

📐 無負荷試験で求まる値

鉄損:W₀ ≒ 電力計の読み [W]

励磁電流:I₀ = 電流計の読み [A]

励磁アドミタンス:Y₀ = I₀ / V₁ [S]

励磁コンダクタンス:g₀ = W₀ / V₁² [S]

励磁サセプタンス:b₀ = √(Y₀² − g₀²) [S]

🟠 短絡試験 ― 銅損と%Zを測定

次は「短絡試験」です。

「短絡」と聞くと危ないイメージがありますが、正しい方法で行えば安全です。

📚 短絡試験(Short-Circuit Test)

二次側を短絡(導線で繋ぐ)した状態で、一次側に低い電圧をかけ、定格電流を流す試験。
別名:インピーダンス試験
測定するもの:銅損 Wc百分率インピーダンス %Z

⚠️ なぜ「短絡」しても大丈夫なの?

普通、短絡は大電流が流れて危険です。でも短絡試験では安全に行えます。

その秘密は、一次側にかける電圧を「ものすごく低く」することです。

⚠️ 短絡試験の安全のカラクリ

・二次側を短絡 → 電流が流れやすい状態
・一次側は定格電圧の数%(3〜10%程度)しかかけない
・だから、定格電流程度しか流れない → 安全!

このとき一次側にかけている電圧が、まさに「%Z(百分率インピーダンス)」なのです!

🔌 短絡試験の回路図

短絡試験の回路は、次のようになります。

ポイントは「二次側を短絡」して、「一次側は低い電圧から徐々に上げる」ことです。

📋 短絡試験の手順

  1. 二次側の端子を導線で短絡する
  2. 一次側の電圧を0Vからゆっくり上げていく
  3. 電流計が定格電流を示したら、そこで止める
  4. そのときの電圧・電流・電力を記録する

🤔 なぜ短絡で「銅損」がわかる?

短絡試験では、一次側にかける電圧が非常に低い(定格の数%)です。

電圧が低いと、鉄心の磁束も非常に小さくなります。
だから、鉄損がほぼゼロになります。

短絡試験のカラクリ

・一次電圧が低い → 磁束が小さい → 鉄損 ≒ 0
・定格電流は流れている → 銅損は発生
・だから、電力計の値 ≒ 銅損!

🏋️ ジムで例えると…

重りを持って筋トレをすると、筋肉が熱くなりますよね(=銅損)。

でも、ただ立っているだけなら熱くなりません(=鉄損が小さい状態)。

短絡試験は「純粋に筋肉の消耗(銅損)だけを測る」ようなものです。

📊 短絡試験で測定できるもの

① 銅損 Wc

電力計で測定。
鉄損≒0なので、電力計の値≒銅損

② 短絡電圧 Vs

電圧計で測定。
定格電流を流すのに必要な電圧。

③ %Z(百分率インピーダンス)

%Z = (Vs / V₁n) × 100
短絡電圧の定格電圧に対する割合。

📐 短絡試験の計算公式

📐 短絡試験で求まる値

銅損:Wc ≒ 電力計の読み [W]

短絡電圧:Vs = 電圧計の読み [V]

%Z = (Vs / V₁n) × 100 [%]

インピーダンス:Z = Vs / In [Ω]

抵抗:r = Wc / In² [Ω]

リアクタンス:x = √(Z² − r²) [Ω]

🧮 短絡試験の計算例

📝 例題

【条件】
・定格容量:10kVA
・定格電圧:6,600V / 200V
・短絡試験の結果:Vs = 330V、In = 1.515A、Wc = 200W

【%Zを求める】
%Z = (Vs / V₁n) × 100 = (330 / 6,600) × 100 = 5%

【インピーダンスを求める】
Z = Vs / In = 330 / 1.515 = 218Ω

🔄 2つの試験の関係 ― 損失と等価回路

無負荷試験と短絡試験は、それぞれ等価回路の異なる部分のパラメータを測定しています。

📊 試験と等価回路の対応

無負荷試験 短絡試験
励磁回路のパラメータ 漏れインピーダンスのパラメータ
g₀、b₀、Y₀ r、x、Z
鉄損 W₀ 銅損 Wc
励磁電流 I₀ %Z

🧠 暗記のコツ

無負荷試験 = 「(む)」→「だな電流(励磁電流)」と「鉄損」を測る

短絡試験 = 「絡(たんらく)」→「たん純に抵抗(%Z)」と「銅損」を測る

📊 公式まとめ

試験 二次側 一次電圧 測定できるもの
無負荷試験 開放 定格電圧 鉄損 W₀、励磁電流 I₀
短絡試験 短絡 低電圧(%Z程度) 銅損 Wc、%Z

📝 まとめ:変圧器の試験

☕ 今日のおさらい

  • 無負荷試験:二次側開放、定格電圧をかける
  •  → 銅損≒0なので、鉄損と励磁電流を測定
  • 短絡試験:二次側短絡、低電圧で定格電流を流す
  •  → 鉄損≒0なので、銅損と%Zを測定
  • 2つの試験で等価回路の全パラメータが求まる

無負荷試験と短絡試験は、変圧器の「健康診断」です。
この2つをセットで覚えておきましょう!

次の記事では、三相変圧器の結線(Y-Δ、Δ-Y など)について学びます。

🏥

変圧器の試験、マスターできましたか?
「無負荷→鉄損、短絡→銅損」をセットで覚えましょう!

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