QC検定 実践編

【QC検定1級】市場トラブル対応と苦情処理|クレームを品質改善につなげる

😣 こんな悩みはありませんか?
  • クレームが来たとき、まず何をすればいいの?
  • 「応急処置」と「恒久対策」の違いがわからない
  • 再発防止策って具体的に何をするの?
  • 苦情をどうやって品質改善に活かせばいいの?
✅ この記事でわかること
  • 市場トラブル発生時の初動対応の流れ
  • 原因究明の方法(なぜなぜ分析など)
  • 是正処置と予防処置の違い
  • クレームを「宝の山」に変える仕組み

ある日、お客様から電話がかかってきました。

「おたくの製品、壊れたんだけど!どうしてくれるの!?」

こんな電話が来たら、あなたはどうしますか?

「申し訳ございません」と謝る? 「担当者に確認します」と保留にする? とりあえず新品を送る?

実は、クレーム対応には「正しい手順」があります。この手順を間違えると、お客様の怒りは収まらないし、同じ問題が何度も起きてしまいます。

逆に、正しく対応できれば、クレームは「品質改善のヒント」になります。「クレームは宝の山」という言葉があるのは、そのためです。

💡 市場トラブル対応とは?(ひとことで言うと)

「出荷後に発覚した品質問題を、
迅速に解決し、二度と起こさないようにする活動」

この記事では、市場トラブル対応の全体の流れ各ステップで何をすべきかを、身近な例えを交えてわかりやすく解説します。

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目次

市場トラブル対応の全体像|5つのステップ

市場トラブル対応は、大きく5つのステップで進めます。

これは、病院に行ったときの流れに似ています。

🏥 病院の例えで理解する

① 受付:症状を聞く(苦情受付)
② 応急処置:とりあえず痛みを止める(暫定対策)
③ 検査:原因を調べる(原因究明)
④ 治療:根本的に治す(是正処置)
⑤ 予防:再発しないようにする(再発防止・水平展開)

それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

【全体フロー】市場トラブル対応の流れ

ステップやること目的スピード
①苦情受付情報を正確に記録する状況を把握する即時
②暫定対策被害拡大を防ぐ応急処置で時間を稼ぐ24時間以内
③原因究明なぜ起きたかを調べる真の原因を特定する数日〜数週間
④是正処置根本的に直す同じ原因で再発させない数週間〜数ヶ月
⑤再発防止他製品・他工程にも展開類似問題も防ぐ継続的
⚠️ よくある間違い
「とりあえず新品を送って終わり」はNG!それは暫定対策であって、是正処置ではありません。原因を突き止めないと、同じ問題が何度も起きます

ステップ①|苦情受付:最初の30秒が勝負

クレームの電話がかかってきた瞬間から、対応は始まっています。

この最初の対応を間違えると、お客様の怒りは何倍にも膨れ上がります。逆に、正しく対応できれば、「この会社はちゃんとしてる」と信頼を勝ち取れます。

苦情受付で必ず聞き取る「5W1H」

まずは、情報を正確に聞き取ることが最優先です。感情的にならず、冷静に以下の情報を確認します。

📝 苦情受付で確認する5W1H

Who(誰が):お客様の名前、連絡先
What(何が):どの製品が、どんな状態になったか
When(いつ):いつ発生したか、いつ購入したか
Where(どこで):どこで使用していたか
Why(なぜ):どんな使い方をしていたか
How(どのように):どんな症状か、写真はあるか

苦情受付の心得|「傾聴」と「共感」

情報を聞き取ることと同じくらい大切なのが、お客様の気持ちに寄り添うことです。

❌ NG対応✅ OK対応
「それは使い方が悪いですね」「ご不便をおかけして申し訳ございません」
「担当者がいないのでわかりません」「担当者に確認し、本日中にご連絡します」
「規定では対応できません」「何かできることがないか確認いたします」
「前例がないので…」「詳しく状況を教えていただけますか」

お客様は「問題を解決してほしい」だけでなく、「自分の怒りをわかってほしい」という気持ちを持っています。まずは共感することが大切です。

現品の回収|「証拠」を確保する

可能であれば、問題が起きた製品(現品)を回収します。

現品がないと、原因究明ができません。「壊れた製品を捨てないでください」とお願いし、着払いで送ってもらうなどの対応をします。

💡 ポイント
現品を回収できない場合は、写真・動画を送ってもらいましょう。スマホで簡単に撮影できる時代なので、「症状がわかる写真を送っていただけますか」とお願いすると、多くの場合対応してもらえます。

ステップ②|暫定対策:まず火を消す

原因究明には時間がかかります。でも、お客様は今困っています。

だから、原因がわかる前に「とりあえずの対応」をする必要があります。これが暫定対策(応急処置)です。

暫定対策の具体例

対象暫定対策の例
お客様への対応代替品の提供、返金、修理品の貸出し
在庫品への対応出荷停止、倉庫からの隔離
製造ラインへの対応該当工程の全数検査追加、生産停止
流通在庫への対応販売店への連絡、店頭からの撤去
⚠️ 暫定対策の注意点
暫定対策は「時間稼ぎ」です。これで終わりにしてはいけません。「代替品を送ったから解決」ではなく、必ず原因究明→是正処置まで進めましょう。

影響範囲の特定|どこまで広がっている?

暫定対策を打つには、「問題がどこまで広がっているか」を把握する必要があります。

  • 同じロットの製品は何個出荷された?
  • 同じ製造日の製品は?
  • 同じ材料を使った製品は?
  • 同じ作業者が作った製品は?

ここでトレーサビリティ(追跡可能性)が重要になります。製造記録がしっかり残っていれば、影響範囲を素早く特定できます。

ステップ③|原因究明:「真犯人」を見つける

暫定対策で時間を稼いだら、次は「なぜこの問題が起きたのか」を徹底的に調べます。

これが原因究明です。犯罪捜査でいえば「真犯人を見つける」ステップですね。

原因の3つの層|表面原因→直接原因→根本原因

原因には「深さ」があります。表面だけ見ていると、本当の原因にたどり着けません。

🔍 原因の3つの層(例:ネジの締め忘れ)

表面原因(現象):製品が動かない
 ↓ なぜ?
直接原因:ネジが締まっていなかった
 ↓ なぜ?
根本原因:作業標準書にネジ締めの指示がなかった

「ネジが締まっていなかった」で止まると、「次からはちゃんと締めよう」という対策になります。でも、これではまた同じミスが起きます

「作業標準書に指示がなかった」という根本原因まで掘り下げれば、「作業標準書を改訂する」という再発しない対策が打てます。

なぜなぜ分析|「なぜ?」を5回繰り返す

根本原因にたどり着くための代表的な手法が「なぜなぜ分析」です。

やり方は簡単。「なぜ?」を5回繰り返すだけです。

🔄 なぜなぜ分析の例:機械が止まった

問題:機械が止まった

なぜ①:ヒューズが切れたから
なぜ②:過電流が流れたから
なぜ③:軸受部の潤滑が不十分だったから
なぜ④:潤滑ポンプが十分に機能していなかったから
なぜ⑤:潤滑ポンプの軸が摩耗していたから

→ 根本原因:潤滑ポンプの定期点検がされていなかった

「5回」は目安です。3回で根本原因に到達することもあれば、7回かかることもあります。「これ以上掘り下げられない」ところまで到達するのがゴールです。

特性要因図(フィッシュボーン図)|原因を漏れなく洗い出す

原因究明では、「原因の候補を漏れなく洗い出す」ことも大切です。

ここで使うのが特性要因図(フィッシュボーン図、魚の骨図)です。

🐟 特性要因図の4M+1E

Man(人):作業者のミス、教育不足、経験不足
Machine(機械):設備の故障、調整不良、老朽化
Material(材料):材料の不良、ロット違い、保管ミス
Method(方法):作業手順の不備、検査方法の不備
Environment(環境):温度、湿度、照明、騒音

これらの観点から原因を洗い出し、最も可能性の高いものを「なぜなぜ分析」で深掘りします。

原因究明の注意点|「犯人探し」にしない

原因究明で絶対にやってはいけないのが、「犯人探し」にしてしまうことです。

❌ ダメな例
「誰がこのミスをしたんだ!」
「Aさんが作業したときに問題が起きている」
「責任者を処分しろ」

これをやると、みんなミスを隠すようになります。そして、同じ問題が繰り返されます。

原因究明の目的は「再発防止」であって、「誰かを罰する」ことではありません。「人」ではなく「仕組み」に目を向けましょう。

✅ 良い例
「なぜミスが起きやすい状況だったのか」
「どうすればミスを防げる仕組みにできるか」
「作業標準書に問題はないか」

ステップ④|是正処置:根本から直す

原因がわかったら、次は「根本的に直す」ステップです。これが是正処置です。

病院で言えば「治療」にあたる部分。風邪薬で熱を下げるのではなく、病気の原因を取り除くイメージです。

是正処置と暫定対策の違い

暫定対策と是正処置の違いを、もう一度整理しておきましょう。

暫定対策是正処置
目的被害拡大を止める根本原因を取り除く
タイミング原因究明前(即時)原因究明後
持続性一時的恒久的
例え解熱剤で熱を下げる感染症の原因菌を治療する
具体例全数検査を追加する設計を変更してミスが起きない構造にする

是正処置の考え方|「人」より「仕組み」を変える

是正処置で大切なのは、「人に頼らない仕組み」を作ることです。

「次からは気をつける」「もっと注意する」という対策は、是正処置として不十分です。人間は必ずミスをするからです。

✅ 良い是正処置の例

ポカヨケ(間違い防止):形状を変えて、間違った向きでは組み立てられないようにする

自動化:人の作業を機械に置き換える

設計変更:そもそもその作業が不要になる設計にする

作業標準書の改訂:手順を明確にして、誰でも同じようにできるようにする

検査の自動化:人の目視検査を画像検査装置に置き換える
❌ 不十分な是正処置の例

「作業者に注意した」
「注意喚起の張り紙をした」
「朝礼で周知した」
「ダブルチェックを追加した」(チェックする人もミスする)

是正処置の有効性確認|「本当に効いたか」を検証する

是正処置を実施したら、「本当に効果があったか」を確認します。

「対策を打ったから大丈夫」ではなく、データで効果を検証することが大切です。

  • 不良率は下がったか?
  • 同じ原因のクレームは再発していないか?
  • 工程能力指数(Cpk)は改善したか?

効果がなければ、原因究明からやり直しです。

ステップ⑤|再発防止と水平展開:「横」にも広げる

是正処置で「この問題」は解決しました。でも、似たような問題が別の製品・別の工程で起きる可能性はどうでしょうか?

ここで必要なのが「水平展開」です。

水平展開とは?|「縦」から「横」へ

🔄 水平展開のイメージ

是正処置:問題が起きた「この製品」「この工程」を直す(縦方向)

水平展開:「他の製品」「他の工程」にも同じ対策を適用する(横方向)

たとえば、「作業標準書にネジ締めの指示がなかった」という根本原因が見つかったとします。

このとき、「他の製品の作業標準書にも同じ抜けがないか」を確認するのが水平展開です。

水平展開の具体例

是正処置(縦)水平展開(横)
製品Aの作業標準書を改訂製品B、C、Dの作業標準書も点検・改訂
第1工場の設備にポカヨケ設置第2、第3工場の同種設備にも設置
材料Xの受入検査を強化同じサプライヤーから購入する材料Y、Zも検査強化
作業者Aに再教育を実施同じ工程の作業者全員に教育を実施

予防処置との違い|「起きてから」vs「起きる前に」

似た言葉に「予防処置」があります。是正処置との違いを整理しておきましょう。

是正処置予防処置
いつ行う?問題が起きた後問題が起きる前
何を対象に?発生した不適合潜在的な不適合
目的は?再発防止未然防止
例え病気になってから治療する健康診断で病気を予防する

クレームは「宝の山」|苦情を改善につなげる仕組み

ここまで、クレーム対応の「守り」の側面を見てきました。

でも、クレームには「攻め」の価値もあります。それが「クレームは宝の山」という考え方です。

なぜクレームは「宝」なのか?

実は、クレームを言ってくるお客様はほんの一部です。

📊 クレームの氷山の一角

不満を持ったお客様のうち、クレームを言う人は約4%と言われています。

残りの96%は黙って他社製品に乗り換えるだけ。

つまり、クレームは「問題を教えてくれる貴重な声」なのです。

クレームを言ってくれるお客様は、言い換えれば「タダで品質改善のヒントを教えてくれる人」です。

苦情データの分析|パレート図で優先順位をつける

クレームを「宝」に変えるには、苦情データを蓄積・分析する必要があります。

代表的な分析手法がパレート図です。

📊 パレート図でわかること

苦情を種類別に集計し、多い順に並べると、「上位20%の原因が、全体の80%の苦情を占める」ことがよくあります(パレートの法則)。

この「上位20%」に集中して対策することで、効率的に品質改善ができます。

苦情管理台帳|情報を「資産」として蓄積する

クレーム情報は、苦情管理台帳(クレーム台帳)に記録して蓄積します。

記録すべき情報は以下の通りです。

  • 受付日時、対応者
  • お客様情報(名前、連絡先)
  • 製品情報(型番、製造日、ロット番号)
  • 苦情内容(現象、状況)
  • 暫定対策の内容
  • 原因究明の結果
  • 是正処置の内容
  • 効果確認の結果
  • 水平展開の範囲

この台帳を定期的に分析することで、「繰り返し起きている問題」「特定の製品に集中している問題」などが見えてきます。

まとめ|クレーム対応は「ピンチをチャンスに変える」活動

この記事では、市場トラブル対応と苦情処理の全体像を解説しました。

📝 この記事のポイント

✅ 市場トラブル対応は5つのステップ:苦情受付→暫定対策→原因究明→是正処置→再発防止

苦情受付では5W1Hを正確に聞き取り、傾聴と共感を心がける

暫定対策は「応急処置」。原因がわかる前に被害拡大を防ぐ

原因究明では「なぜなぜ分析」で根本原因まで掘り下げる

是正処置は「人に頼らない仕組み」を作ること。注意喚起だけではNG

水平展開で他製品・他工程にも対策を広げる

✅ クレームは「宝の山」。苦情データを分析して品質改善に活かす

クレームは嫌なものです。でも、正しく対応すれば、お客様の信頼を取り戻し、製品の品質を向上させるチャンスに変わります。

「ピンチをチャンスに」——これが市場トラブル対応の本質です。

キーワード解説一覧|試験対策用

用語意味
市場トラブル製品出荷後に市場(お客様)で発覚した品質問題
苦情(クレーム)お客様から寄せられる製品への不満・問題報告
苦情処理苦情を受け付け、対応し、再発防止につなげる一連の活動
暫定対策(応急処置)原因究明前に行う、被害拡大を防ぐための一時的な対策
恒久対策根本原因を取り除き、再発を防ぐための永続的な対策
原因究明問題が発生した真の原因(根本原因)を特定する活動
根本原因問題の最も深いところにある原因。これを取り除けば再発しない
なぜなぜ分析「なぜ?」を繰り返して根本原因にたどり着く手法
特性要因図(フィッシュボーン図)原因を4M+1Eなどの観点で漏れなく洗い出す図
是正処置発生した不適合の根本原因を取り除き、再発を防止する処置
予防処置潜在的な不適合の原因を取り除き、発生を未然に防止する処置
水平展開是正処置を他製品・他工程・他部門にも適用すること
再発防止同じ原因による問題が二度と起きないようにすること
ポカヨケ人間のミス(ポカ)を物理的に防ぐ仕組み
トレーサビリティ製品の製造履歴を追跡できる仕組み
現品問題が発生した実際の製品。原因究明の証拠となる
苦情管理台帳苦情情報を記録・蓄積するための台帳(データベース)
パレート図問題を種類別に集計し、重要な少数を特定するための図
有効性確認是正処置が実際に効果を発揮しているかを検証すること
5W1HWho, What, When, Where, Why, Howの6つの観点で情報を整理する手法

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