※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
お悩み
こんなふうに思っていませんか?
- 重回帰分析とは何か、単回帰と何が違うのかを説明できない
- Excelで出した結果の「係数」「R²」「P値」をどう読めばいいかわからない
- どの要因がどれだけ効いているのかを、数字で示したい
この記事でわかること
- 重回帰分析の意味と、単回帰との違い
- 偏回帰係数と決定係数R²の読み方
- 例題で最後まで手計算する手順と、Excelでのやり方
- 多重共線性など、失敗しないための注意点
結論|まず30秒でわかる答え
重回帰分析とは、温度や時間のような複数の要因(説明変数)を使って、強度のような1つの結果(目的変数)を予測する式 ŷ=b₀+b₁x₁+b₂x₂+… を求める分析方法です。式の係数(偏回帰係数)は「ほかの要因を一定にしたとき、その要因が1増えると結果がどれだけ変わるか」を表します。当てはまりの良さは決定係数R²(0〜1、1に近いほど良い)で確かめます。
重回帰分析は複数の要因から結果を予測する
回帰分析の記事は、初心者が読む順に次の記事にまとめています。
あわせて読みたい
回帰分析の学習ロードマップ|初心者が最短で使いこなす全記事ガイド
最短で使いこなす全記事ガイド
重回帰分析とは?複数の要因から結果を予測する
重回帰分析は、「結果は1つ、原因の候補は2つ以上」のときに、それぞれの原因が結果にどれだけ効いているかを1本の式で表す方法です。
そもそも回帰分析とは何か(説明変数と目的変数、相関との違い、y=ax+b の意味)があいまいなら、先に相関と回帰分析の基礎|単回帰・散布図・相関係数で単回帰の土台を確かめると、重回帰の式が「原因が増えただけ」だとわかります。
| 比べる点 | 単回帰分析 | 重回帰分析 |
| 説明変数(原因)の数 | 1つ | 2つ以上 |
| 式 | ŷ = b₀ + b₁x | ŷ = b₀ + b₁x₁ + b₂x₂ + … |
| 図にすると | 散布図に引いた直線 | (変数が2つなら)空間に置いた平面 |
| 例 | 温度だけで強度を予測 | 温度と時間で強度を予測 |
たとえると
料理の味(結果)は、塩の量だけでなく、砂糖や火加減でも変わります。塩だけで味を説明しようとすると、砂糖の影響まで塩のせいにしてしまいます。重回帰分析は、塩・砂糖・火加減を同時に入れて、「それぞれがどれだけ味を変えているか」を分けて見る方法です。
あわせて読みたい
回帰分析とは?相関との違い・単回帰の式 y=ax+b・4つの前提を初心者向けに図解
まずは要因が1つの単回帰から。相関との違い・y=ax+b・4つの前提
POINT
つまり重回帰分析は、要因どうしの影響を「切り分ける」ための道具です。予測に使えるだけでなく、どの要因を管理すれば結果がよくなるかを考える材料になります。
単回帰は直線、重回帰は平面で予測する
重回帰分析は、単回帰の「最小二乗法」を要因2つ以上に広げたものです。土台になる最小二乗法は次の記事で例題から確かめられます。
あわせて読みたい
最小二乗法とは?回帰直線の求め方を例題で図解|傾きと切片の公式・計算ツール付き
回帰直線の傾きと切片の公式を例題で。計算ツールつき
偏回帰係数とは?「ほかを固定したとき」の影響の大きさ
偏回帰係数は、ほかの説明変数を同じ値に固定したまま、その説明変数だけを1増やしたときに、結果が平均してどれだけ変わるかを表します。
たとえば強度の式が ŷ = 9.56 + 0.80x₁ + 3.59x₂(x₁:温度℃、x₂:時間分)なら、次のように読みます。
- b₁ = 0.80:時間を同じにしたまま温度を1℃上げると、強度は平均して約0.80MPa上がる。
- b₂ = 3.59:温度を同じにしたまま時間を1分のばすと、強度は平均して約3.59MPa上がる。
- b₀ = 9.56:温度も時間も0のときの値(切片)。データの範囲から外れるので、それ自体に意味がないことが多い。
あわせて読みたい
偏回帰係数とは?|「他を固定したときの影響度」を中学生でもわかるように完全解説
偏回帰係数の「他を固定したとき」を中学生でもわかるように
注意|ここで間違えやすい
b₂(3.59)がb₁(0.80)より大きいからといって、時間のほうが強く効いているとは言えません。温度は10℃きざみ、時間は1分きざみのように単位がちがうからです。影響の強さを比べたいときは、単位をそろえた標準化偏回帰係数を使います(あとで説明します)。
偏回帰係数は他の要因を固定したときの影響
例題で手計算|温度と時間から強度を予測する
説明変数が2つなら、平方和と積和を計算して2本の連立方程式(正規方程式)を解けば、偏回帰係数が求まります。5つのサンプルで最後まで計算します。
| No. | 温度 x₁(℃) | 時間 x₂(分) | 強度 y(MPa) |
| 1 | 10 | 4 | 32 |
| 2 | 20 | 2 | 33 |
| 3 | 30 | 6 | 55 |
| 4 | 40 | 3 | 52 |
| 5 | 50 | 5 | 68 |
STEP 1 平均
x̄₁ = 150 ÷ 5 = 30、x̄₂ = 20 ÷ 5 = 4、ȳ = 240 ÷ 5 = 48。
STEP 2 平方和と積和
平均からの差(偏差)は、x₁:−20, −10, 0, 10, 20、x₂:0, −2, 2, −1, 1、y:−16, −15, 7, 4, 20。
S₁₁ = 400+100+0+100+400 = 1,000
S₂₂ = 0+4+4+1+1 = 10
S₁₂ = 0+20+0+(−10)+20 = 30
S₁y = 320+150+0+40+400 = 910
S₂y = 0+30+14+(−4)+20 = 60
STEP 3 正規方程式
① 1,000b₁ + 30b₂ = 910
② 30b₁ + 10b₂ = 60
STEP 4 解く
②を3倍:90b₁ + 30b₂ = 180。①から引くと 910b₁ = 730、b₁ ≒ 0.802。
②に戻して 10b₂ = 60 − 30 × 0.802 = 35.93、b₂ ≒ 3.593。
STEP 5 切片と式
b₀ = 48 − 0.802 × 30 − 3.593 × 4 = 48 − 24.07 − 14.37 ≒ 9.56。
重回帰式:ŷ = 9.56 + 0.80x₁ + 3.59x₂。温度35℃・時間4分なら ŷ ≒ 9.56 + 28.07 + 14.37 ≒ 52.0MPa。
注意|説明変数が連動していると解けない
もし時間が 2, 3, 4, 5, 6 のように温度とぴったり同じ順に増えていると、①と②が同じ式になり、b₁とb₂を分けられません(解が1つに決まらない)。これが多重共線性の極端な形です。実験で集めるデータは、要因どうしが連動しないように組み合わせることが大切です。
重回帰分析の手計算の流れ:正規方程式を解く
決定係数R²で当てはまりを確かめる|計算ツールつき
決定係数R²は、結果のばらつきのうち、式で説明できた割合です。0〜1の値で、1に近いほど式がデータによく当てはまっています。
例題では、yの平方和 S_yy = 256+225+49+16+400 = 946、式で説明できる平方和 S_R = b₁S₁y + b₂S₂y = 0.802 × 910 + 3.593 × 60 ≒ 945.6。R² = 945.6 ÷ 946 ≒ 0.9996。小さく作った例なので、ほぼ完ぺきに当てはまっています。実際のデータでは、もっと低い値になるのがふつうです。
説明変数を増やすと、R²は役に立たない変数でも少しずつ上がってしまいます。そのため、変数の数で補正した自由度調整済み決定係数(R*²)もあわせて見ます。
重回帰分析の計算ツール(説明変数2つ)
1行に「x₁ x₂ y」の順で数字を入れてください(空白・カンマ・タブ区切り。Excelから3列をそのまま貼り付けられます)。
はじめから入っている数字は、上の例題です。b₁≒0.802、b₂≒3.593、R²≒0.9996と出れば、手計算と同じです。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
Excelで重回帰分析をするやり方と、結果の見方
Excelでは、分析ツールの「回帰分析」で、説明変数の列をまとめて指定すれば重回帰分析ができます。
STEP 1
「ファイル」→「オプション」→「アドイン」から、分析ツールを有効にする(最初の1回だけ)。
STEP 2
「データ」タブ→「データ分析」→「回帰分析」を選ぶ。
STEP 3
「入力Y範囲」に結果の列、「入力X範囲」に説明変数の列をまとめて(となり合った2列以上)指定する。見出しを含めるなら「ラベル」にチェック。
STEP 4
OKを押すと、新しいシートに結果が出る。
| 出力の項目 | 意味 | 見方 |
| 重決定 R2 | 決定係数 | 1に近いほど当てはまりがよい |
| 補正 R2 | 自由度調整済み決定係数 | 変数の数がちがうモデルを比べるときに使う |
| 有意F | 式全体が意味をもつかのP値 | 0.05より小さければ、式全体として意味がある |
| 係数 | 切片と偏回帰係数 | 重回帰式の数字 |
| P-値 | その変数の係数が0かどうかの検定 | 0.05より小さければ、その変数は効いていると判断する |
関数だけで求めたいときは、=LINEST(yの範囲, xの範囲, TRUE, TRUE) を使います。結果は偏回帰係数が「最後の変数から逆の順」で並ぶので注意してください。
Excelの回帰分析の出力:補正R2・有意F・P値の見方
重回帰分析の注意点|多重共線性・相関と因果・外挿
重回帰分析は便利ですが、説明変数どうしの連動、相関と因果の取り違え、データ範囲の外での予測の3つで失敗しやすくなります。
| 注意点 | 何が起きるか | どうするか |
| 多重共線性 | 説明変数どうしの相関が強いと、係数が不安定になり、符号が逆になることもある | VIF(目安10、きびしくは5)を確かめ、似た変数はどちらかを外す |
| 相関と因果の取り違え | 係数が大きくても、その変数が原因とは限らない | 技術的な理由で説明できるか確かめ、必要なら実験で確かめる |
| 外挿 | 集めたデータの範囲の外では、式が当てはまる保証がない | 予測はデータの範囲の中で行う |
| データが少ない | 変数の数に対してデータが少ないと、偶然に合わせた式になる | 説明変数の数の10倍程度のデータを目安に集める |
あわせて読みたい
【図解】多重共線性(VIF)とは?|重回帰がうまくいかない原因
係数がおかしくなる原因、多重共線性とVIF
知っておくと便利な2つの工夫
- 標準化偏回帰係数:すべての変数を平均0・標準偏差1にそろえてから求めた係数。単位に左右されないので、どの要因の影響が強いかを比べられる。この例題では温度が約0.82、時間が約0.37で、係数そのもの(0.80と3.59)とは逆に、温度のほうが強く効いているとわかる。
- ダミー変数:「設備A/設備B」のような種類のデータは、0と1の数字に置きかえて説明変数に入れられる。
重回帰分析の3つの注意点:多重共線性・因果・範囲外
重回帰分析の進め方7ステップと、QC検定での出題
重回帰分析は、式を出して終わりではなく、全体の有意性・各変数の効き方・残差の確認まで行って完成です。
1
目的と候補の説明変数を決め、データを集めて散布図で確かめる
3
分散分析で、式全体が意味をもつか確かめる(F検定)
4
決定係数R²・自由度調整済みR*²で当てはまりを見る
5
偏回帰係数のt検定で、どの変数が効いているかを見る
6
残差とVIFで、式に問題がないか確かめる(回帰診断)
QC検定では、重回帰分析は主に1級(準1級)の範囲で、2級は単回帰分析が中心です(最新のレベル表で確かめてください)。1級では、分散分析表の穴埋め、F検定による式の有意性、偏回帰係数のt検定や区間推定が問われます。与えられた平方和や積和から計算する問題が多いので、例題の正規方程式の流れを一度手で追っておくと解きやすくなります。
重回帰分析の進め方7ステップ
重回帰分析でよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
| 係数の大きい変数ほど、強く効いている | 単位で大きさが変わる。比べるなら標準化偏回帰係数 |
| R²が高ければ、良い式だ | 変数を増やせばR²は上がる。補正R²・P値・残差もあわせて見る |
| 単回帰の係数と、重回帰の係数は同じになる | ほかの変数の影響を除くので、ふつうは値が変わる(同じになるのは説明変数どうしが無相関のとき) |
| 係数の符号が予想と逆でも、そのまま使う | 多重共線性のサインのことが多い。VIFと変数の組み合わせを見直す |
| 式があれば、どんな条件でも予測できる | データの範囲の外(外挿)は保証されない |
影響の強さは標準化偏回帰係数で比べる
重回帰分析で使う式(偏回帰係数・決定係数R²・VIF)は、次の記事で1枚に整理しています。
あわせて読みたい
回帰分析・重回帰分析の公式一覧|単回帰の式・決定係数R²・偏回帰係数・VIFを1枚で整理
単回帰の式・決定係数R²・偏回帰係数・VIFを1枚で
よくある質問
Q. 重回帰分析とは何ですか?
A. 複数の説明変数から1つの目的変数を予測する式を求め、要因ごとの影響の大きさを表す分析方法です。
Q. 単回帰分析との違いは?
A. 単回帰は説明変数が1つ、重回帰は2つ以上です。重回帰では変数どうしの影響を切り分けられます。
Q. 偏回帰係数とは?
A. ほかの説明変数を一定にしたまま、その変数を1増やしたときに結果が平均してどれだけ変わるかを表す数です。
Q. 決定係数R²の目安は?
A. 分野や目的で違い、決まった基準はありません。補正R²やP値、残差とあわせて判断します。
Q. Excelで重回帰分析はできる?
A. できます。分析ツールの「回帰分析」で入力X範囲に複数の列を指定するか、LINEST関数を使います。
Q. 多重共線性とは?
A. 説明変数どうしの相関が強く、係数が不安定になる状態です。VIFが10を超えると疑うのが目安です。
Q. 回帰分析と重回帰分析の違いは?
A. 回帰分析は、原因から結果を予測する式を求める方法の総称です。説明変数が1つなら単回帰分析、2つ以上なら重回帰分析と呼びます。
Q. 階層的重回帰分析とは?
A. 説明変数をいくつかのまとまりに分け、順番に式へ加えて、決定係数R²がどれだけ増えるかを見る方法です。後から加えた変数の上乗せの効果を確かめられます。
まとめ
- 重回帰分析は、複数の要因から1つの結果を予測し、要因ごとの影響を切り分ける方法
- 偏回帰係数は「ほかを固定して1増やしたときの変化」。比べるなら標準化偏回帰係数
- 2変数なら、平方和・積和から正規方程式を解けば手計算できる(例題:ŷ=9.56+0.80x₁+3.59x₂)
- 当てはまりはR²と補正R²、効き方はP値で見る。Excelは分析ツールの回帰分析
- 多重共線性・相関と因果・外挿に注意する
重回帰分析のまとめ:偏回帰係数・R²・P値
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本
回帰分析の土台になる統計の基礎を、資格の勉強で体系的に固めたいなら、統計検定2級がひとつの目標になります。日本統計学会が編集した、統計検定2級の公式問題集です。CBT方式試験の出題範囲と出題形式にのっとった問題と解説を収録しています(実務教育出版)。
¥2,200 (2026/10/08 08:09時点 | Amazon調べ)
ポチップ
おすすめの本
回帰分析の考え方を、楽しく復習したいときに向いています。回帰分析の考え方を、マンガで解説した本です(オーム社)。
¥2,420 (2026/03/02 21:00時点 | Amazon調べ)
ポチップ
おすすめの本
「重回帰分析」の土台になる統計学を、本でじっくり学び直したいときに向いています。統計学を独学で学べるように書かれた入門書です(ダイヤモンド社、小島寛之 著)。
¥2,420 (2025/11/23 09:57時点 | Amazon調べ)
ポチップ
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。
つまずきやすい「違い」を一気に解決
計算力アップ・資格対策