- 「サイリスタって何?ダイオードと何が違うの?」
- 「ゲート信号ってどういう意味?」
- 「SCRって略語、何の略?」
ダイオードの次に登場するのが「サイリスタ(SCR)」です。
「pnpn接合」「ゲート信号」「位相制御」など難しそうな言葉が出てきて、「うわ、もう無理…」って思いますよね。
でも大丈夫です。サイリスタは「鍵付きの改札ゲート」をイメージすれば、一発で理解できます!
- サイリスタはゲート信号でON/OFFを制御できる半導体素子
- ダイオードに「鍵」を付けたイメージ
- 一度ONになると、電流がゼロになるまで流れ続ける
- 調光器やモーター制御の「位相制御」に使われる
目次
🔑 サイリスタとは?「鍵付き改札」をイメージしよう
結論から言うと、サイリスタは「ゲート信号でON/OFFを制御できるダイオード」です。
前回学んだダイオードは「普通の改札ゲート」でしたよね。電圧をかければ自動的に電流が流れました。
サイリスタは、その改札に「鍵」が付いたイメージです。鍵を開けないと、電流が流れないんです。

ダイオード = 普通の改札(電圧かければ通れる)
サイリスタ = 鍵付き改札(ゲート信号という「鍵」が必要)
この違いを押さえておけばOKです!
📛 SCRって何の略?正式名称を覚えよう
サイリスタは「SCR」とも呼ばれます。これは正式名称の略です。
SCR = Silicon Controlled Rectifier
(シリコン制御整流器)
「Silicon(シリコン)」は材料、「Controlled(制御された)」はゲートで制御できること、「Rectifier(整流器)」は電流を一方向に流すことを意味しています。
🔌 サイリスタの3つの端子
ダイオードは2本足(アノード・カソード)でしたが、サイリスタは3本足です。
| 端子名 | 役割 | イメージ |
|---|---|---|
| アノード(A) | 電流の入口 | 🚪 改札の入口 |
| カソード(K) | 電流の出口 | 🚶 改札の出口 |
| ゲート(G) | ON/OFFの制御 | 🔑 鍵穴 |
ゲート(G)がサイリスタ最大の特徴です。この端子に「ゲート信号」を送ることで、電流を流すかどうかを制御できます。
⚡ サイリスタの動作|ONとOFFの条件
サイリスタがONになる条件と、OFFになる条件を整理しましょう。
✅ ONになる条件(電流が流れる)
サイリスタをONにするには、2つの条件が必要です。
条件① アノード→カソードに順方向電圧がかかっている
条件② ゲートにゲート信号(トリガ)が入る
この2つが揃って初めて「ガチャッ」と鍵が開いて、電流が流れ始めます。

🔒 サイリスタの最大の特徴「自己保持」
ここがサイリスタの最も重要なポイントです。
一度ONになると、ゲート信号を外しても、電流が流れ続けます。
サイリスタは「一度ONになったら、電流がゼロになるまでOFFにできない」
鍵付き改札で例えると、こんな感じです。
- 最初は改札が閉まっている(OFF状態)
- 鍵(ゲート信号)を差し込むと、改札が開く(ON状態)
- 一度開くと、鍵を抜いても開きっぱなし(自己保持)
- 人が全員通り終わって誰もいなくなると、自動で閉まる(OFF)
❌ OFFになる条件(電流が止まる)
サイリスタをOFFにするには、電流をゼロにするしかありません。
OFF条件: アノード電流がゼロ(または保持電流以下)になる
交流回路では、電流が自然にゼロになる瞬間があるので、そこで自動的にOFFになります。これを「自然転流」と呼びます。
🔄 ダイオードとサイリスタの比較
ここで、ダイオードとサイリスタの違いを表で整理しておきましょう。
| 項目 | ダイオード | サイリスタ(SCR) |
|---|---|---|
| 端子の数 | 2本(A, K) | 3本(A, K, G) |
| ONの条件 | 順方向電圧のみ | 順方向電圧+ゲート信号 |
| OFFの制御 | 自動(逆方向で即OFF) | 電流ゼロでOFF |
| イメージ | 🚪 普通の改札 | 🔐 鍵付き改札 |
| 主な用途 | 整流回路 | 位相制御、調光器 |

💡 サイリスタの使い道「位相制御」
サイリスタの最大の活躍場所が「位相制御」です。
「位相制御」とは、電流を流すタイミングをずらして、電力を調整する技術のことです。
💡 身近な例:調光器(ディマースイッチ)
おしゃれなレストランや映画館で、照明がゆっくり暗くなるのを見たことありませんか?
あれが調光器(ディマー)の仕事です。中にサイリスタが入っています。
交流の波が来るたびに、「どのタイミングでゲート信号を入れるか」を調整します。
早く入れる → たくさん電流が流れる → 明るい
遅く入れる → 少ししか電流が流れない → 暗い
これが位相制御の原理です!
🔌 その他の使い道
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 💡 調光器 | 照明の明るさ調整 |
| 🔥 電気ヒーター | 温度調整 |
| ⚡ 電力変換装置 | 整流器の出力電圧制御 |
| 🚃 電車 | モーターの速度制御(旧型車両) |
🔬 回路記号を覚えよう
サイリスタの回路記号は、ダイオードにゲート端子が追加された形です。
ダイオードの記号 + ゲート端子 = サイリスタ
▷|(ダイオード)→ ▷|←G(サイリスタ)
三角形の横から「G」の線が出ているのがポイント!

📚 まとめ|サイリスタの要点整理
- サイリスタはゲート信号でONを制御できる半導体素子
- SCR = Silicon Controlled Rectifier(シリコン制御整流器)
- 3端子:アノード(A)・カソード(K)・ゲート(G)
- 一度ONになると電流ゼロまでOFFにできない(自己保持)
- 位相制御で調光器やモーター制御に活躍
- サイリスタは「ゲート信号でON、電流ゼロでOFF」がキーワード
- 自己保持特性を問う問題が頻出
- ダイオードとの違い(端子数、制御方法)を整理しておく
- 位相制御の原理と用途(調光器など)を覚える
| ゲート信号(トリガ) | サイリスタをONにするための信号 |
| 自己保持 | ゲート信号を外してもON状態が続くこと |
| 自然転流 | 交流で電流ゼロ時に自動でOFFになること |
| 位相制御 | ゲート信号のタイミングで電力を調整する技術 |
📖 パワーエレクトロニクスシリーズ
5-1-6 半導体素子の比較表|ダイオード・SCR・MOSFET・IGBTを一覧で確認 →
サイリスタは「鍵付きの改札ゲート」でしたね。
ゲート信号という「鍵」でONを制御できる、賢い素子です。
次はトランジスタ(BJT)で、さらに自在な制御を学びましょう!🔑⚡