- 「ボード線図って、2本のグラフが並んでるけど、何を表しているのかさっぱりわからない…」
- 「dB(デシベル)とか20log₁₀って出てきた瞬間にフリーズする」
- 「折れ点周波数とか −20dB/dec とか、言葉だけ聞くと難しそうで手がつかない」
- 「電験三種のB問題(計算問題)で毎回ボード線図が出るのに、いつも捨ててしまう…」
- ボード線図=「音量」と「遅れ」の2つのグラフ。これだけ理解すればOK
- 周波数伝達関数 G(jω) の意味を「ラジオの音量ツマミ」で直感理解
- 20log₁₀ のdB変換を暗算で解く方法
- 折れ点周波数と−20dB/dec の傾きで直線近似を描く手順
- 電験三種のB問題(R5下問13, R4下問15, R2問17 等)で10点を確実に取る解法
電験三種の機械科目で、自動制御分野はB問題(計算問題)で出題されると配点が10点になります。そしてそのB問題の頻出テーマが、ボード線図です。R5下問13、R4下問15、R2問17、H29問17、H27問17…と、ほぼ毎年のように出題されています。
つまり、ボード線図を捨てる=毎年10点を捨てるということ。逆に言えば、ボード線図のパターンを押さえれば、毎年10点を「もらえる」のです。
この記事では、ボード線図の基礎を「ラジオの音量ツマミ」に例えて、すべて図解で説明します。数式が苦手な方でも、「なぜdBを使うのか」「折れ点で何が起きるのか」が直感的にわかるようになります。
目次
ボード線図とは?|「音量」と「遅れ」の2つのグラフ
📻 ラジオのイコライザーを思い浮かべてください
ボード線図(Bode plot)とは、「入力の周波数を変えたとき、出力の大きさ(ゲイン)と遅れ(位相)がどう変化するか」を2つのグラフで表したものです。
ラジオやオーディオ機器のイコライザーをイメージしてください。低音域をブーストすると低い音が大きくなり、高音域をカットすると高い音が小さくなります。ボード線図は、まさにこの「どの周波数の信号が、どれだけ大きく(小さく)なり、どれだけ遅れるか」を視覚化したものです。
上のグラフ:ゲイン線図
・横軸:周波数 ω(対数目盛)
・縦軸:ゲイン [dB]
・意味:「音量がどれだけ大きく/小さくなるか」
下のグラフ:位相線図
・横軸:周波数 ω(対数目盛)
・縦軸:位相 [°]
・意味:「出力が入力からどれだけ遅れるか」
ボード線図は上下2段セットで1つです。上がゲイン(大きさ)、下が位相(遅れ)。電験の問題でも必ずこの2段構成で出題されます。「ボード線図=2つのグラフ」と覚えてください。
🤔 なぜ「普通のグラフ」ではなく「対数グラフ」を使うのか?
ボード線図の横軸は対数目盛(1, 10, 100, 1000…と10倍ずつ等間隔になる目盛り)です。なぜわざわざ対数にするのでしょうか?
📻 ラジオで考える
人間の耳が感じる周波数の範囲は 20Hz 〜 20,000Hz(=20kHz)です。
これを普通の目盛りで描くと、20Hz付近がぎゅっと潰れて見えません。
対数目盛にすると:
・20Hz → 200Hz → 2,000Hz → 20,000Hz が等間隔で並ぶ
・低い周波数も高い周波数も均等に見える
さらに、対数目盛にするとグラフの曲線が直線に近似できるという最大のメリットがあります。直線なら手書きでも描けるし、傾きが読み取りやすい。これがボード線図の最大の利点です。

dB(デシベル)の基本|20log₁₀ を暗算で解く
📢 なぜdBを使うのか?|「かけ算を足し算にする魔法」
ゲイン(振幅比)をデシベル[dB]で表す理由は、「かけ算が足し算になる」からです。
📻 ラジオのたとえ
アンプ①で信号を10倍にして、アンプ②で100倍にすると…
・ゲイン(倍率)= 10 × 100 = 1,000倍(かけ算で大きな数になる)
dBに直すと…
・アンプ① = 20dB、アンプ② = 40dB
・合計ゲイン = 20 + 40 = 60dB(足し算で済む!)
💡 dBにすると、直列接続のかけ算が足し算になる。だから対数を使う。
|G(jω)|:ゲイン(振幅比)の絶対値
log₁₀:常用対数(底が10の対数)
🧮 dB変換の暗記表(電験で超頻出)
以下の対応表は丸暗記してください。電験の問題ではこの表の値がそのまま使われます。
| ゲイン(倍率) | dB値 | 計算過程 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 1 | 0 dB | 20 × log₁₀(1) = 0 | 入力と同じ大きさ(増減なし) |
| 2 | ≈ 6 dB | 20 × log₁₀(2) ≈ 6.02 | 2倍に増幅 |
| 10 | 20 dB | 20 × log₁₀(10) = 20 | 10倍に増幅 |
| 100 | 40 dB | 20 × log₁₀(100) = 40 | 100倍に増幅 |
| 1/√2 ≈ 0.707 | −3 dB | 20 × log₁₀(1/√2) ≈ −3.01 | 折れ点周波数でのゲイン(超重要) |
| 0.1 | −20 dB | 20 × log₁₀(0.1) = −20 | 1/10に減衰 |
| 0.01 | −40 dB | 20 × log₁₀(0.01) = −40 | 1/100に減衰 |
・10倍 → +20dB(10倍ごとに20dB増える)
・2倍 → +6dB(2倍で約6dB増える)
・1/√2倍 → −3dB(折れ点のゲイン。最重要!)
・マイナスのdB=信号が小さくなっている(減衰)
・0dB=入力と同じ大きさ(基準)

周波数伝達関数 G(jω)|ゲインと位相を式から読む
🔧 s → jω を代入するだけ
伝達関数 G(s) から周波数応答(ボード線図の元データ)を得るには、s に jω を代入するだけです。ここで j は虚数単位、ω は角周波数[rad/s]です。
例として、1次遅れ要素で見てみましょう。
G(jω) =
この G(jω) は複素数なので、ここから2つの情報を取り出します。
📊 ゲイン(大きさ)
→ dBに変換して上のグラフに描く
🔄 位相(遅れ)
→ そのまま下のグラフに描く
「G(jω)が複素数」と聞くと身構えてしまいますが、やっていることはシンプルです。分母 1+jωT の「大きさ」を√(1²+(ωT)²)で求め、「角度」を arctan(ωT/1) で求めるだけ。複素数の「絶対値」と「偏角」を取る操作です。

1次遅れ要素のボード線図を描く|折れ線近似の全手順
🎯 折れ点周波数とは?
ボード線図を描くうえで最も重要な概念が折れ点周波数です。1次遅れ要素 G(s) = 1/(1+Ts) の場合:
T:時定数 / ωc:折れ点(角)周波数 [rad/s]
折れ点周波数とは、「ゲイン線図の直線近似が折れ曲がるポイント」です。ラジオで言えば、「ここから先の高い音は、どんどん小さくなっていくよ」という境目です。
📊 ゲイン線図の描き方(直線近似)
折れ点周波数 ωc = 1/T を計算する
ω < ωc の区間 → 0dB の水平線を描く
折れ点より左(低い周波数)では、ゲインは0dB(入力と同じ大きさ)のまま
ω > ωc の区間 → −20dB/dec の傾きで直線を描く
折れ点より右(高い周波数)では、周波数が10倍になるごとにゲインが20dBずつ下がる
【1次遅れ要素のゲイン線図(直線近似)】
「dec」は decade(デケード)=周波数が10倍になることです。
−20dB/dec =「周波数が10倍になるごとに、ゲインが20dB下がる」
つまり:
・ω = ωc → 0dB
・ω = 10ωc → −20dB
・ω = 100ωc → −40dB
・ω = 1000ωc → −60dB
「10倍で20下がる」とテンポよく覚えてください。
🔄 位相線図の描き方
位相線図も3つのポイントを押さえれば描けます。
| 周波数 | 位相 | 意味 |
|---|---|---|
| ω → 0 | 0° | 低い周波数では遅れなし(追従できている) |
| ω = 1/T(折れ点) | −45° | 折れ点での位相遅れ=ちょうど真ん中 |
| ω → ∞ | −90° | 高い周波数では最大90°遅れる(でも90°は超えない) |
ゲイン線図:折れ点ωcの左は0dBの水平線、右は−20dB/decの下り坂。折れ点で実際は−3dBだけ凹む。
位相線図:0°からスタートし、折れ点で−45°を通過し、最終的に−90°に向かう。S字カーブを描く。

基本要素ごとのボード線図パターン一覧
電験三種で出題される伝達関数は、いくつかの「基本要素」の組み合わせです。各要素のボード線図パターンを覚えておけば、複雑な伝達関数でも分解して描けます。
| 要素 | G(s) | ゲイン線図 | 位相線図 | ラジオのたとえ |
|---|---|---|---|---|
| 比例 (ゲインK) |
K | 20log₁₀K の水平線 | 常に 0° | 音量ツマミを固定。全帯域で同じ音量 |
| 積分 (1/s) |
1/s | −20dB/decの直線(右下がり)。ω=1で0dBを通過 | 常に −90° | 高い音ほど小さくなる。低音ブースト状態 |
| 微分 (s) |
s | +20dB/decの直線(右上がり)。ω=1で0dBを通過 | 常に +90° | 高い音ほど大きくなる。高音ブースト状態 |
| 1次遅れ |
1 1+Ts |
折れ点1/Tの左は0dB、右は−20dB/dec | 0° → −45°(折れ点)→ −90° | 高音カットフィルタ(ローパスフィルタ) |
| 1次進み | 1+Ts | 折れ点1/Tの左は0dB、右は+20dB/dec | 0° → +45°(折れ点)→ +90° | 高音ブーストフィルタ(ハイパスフィルタ) |
| むだ時間 | e−Ls | 常に 0dB(大きさ変わらず) | −Lω(直線的に遅れが増大) | エコー(遅延)のみ。音量は変わらず遅れだけ増える |
dBを使う最大のメリットはここにあります。複数の要素が直列に接続されている場合、全体のゲイン[dB]は各要素のゲイン[dB]を足し算するだけで求まります。位相も同様に足し算です。つまり、各要素のボード線図を個別に描いて重ね合わせれば、複雑な伝達関数のボード線図が完成します。

実例:複合伝達関数のボード線図を描く
📝 例題:G(s) = 10 / s(1+0.1s) のボード線図
この伝達関数は、電験三種の典型的な出題パターンです。まず要素に分解しましょう。
📝 要素分解
G(s) = 10 / s(1+0.1s) を分解すると…
要素① 比例ゲイン K = 10 → 20log₁₀(10) = 20dB の水平線
要素② 積分 1/s → −20dB/dec の右下がり直線(ω=1で0dBを通る)
要素③ 1次遅れ 1/(1+0.1s) → 折れ点 ωc = 1/0.1 = 10 rad/s
折れ点の左は0dB、右は−20dB/dec
📊 ゲイン線図を重ね合わせる
STEP 1:積分 1/s のゲイン線図を描く
ω = 1 で 0dB を通る −20dB/dec の直線。
ただしK=10があるので、全体を+20dB上にシフトする。
→ ω = 1 で 20dB を通る −20dB/dec の直線
STEP 2:折れ点 ω = 10 で追加の折れを加える
ω = 10 以降は、1次遅れの −20dB/dec が加わる。
元々の −20dB/dec と合わせて、合計 −40dB/dec になる。
まとめ:
・ω < 10 → −20dB/dec(積分だけ)
・ω > 10 → −40dB/dec(積分+1次遅れ)
・ω = 10 で傾きが変わる「折れ点」
🔄 位相線図を重ね合わせる
・比例ゲイン K=10 → 位相 0°(影響なし)
・積分 1/s → 常に −90°
・1次遅れ 1/(1+0.1s) → 0° → −45°(ω=10)→ −90°
これを足し算:
・ω → 0 → 0° + (−90°) + 0° = −90°
・ω = 10 → 0° + (−90°) + (−45°) = −135°
・ω → ∞ → 0° + (−90°) + (−90°) = −180°
複合伝達関数のボード線図は、要素ごとに分解 → 個別にボード線図を描く → dBと位相を足し算するだけ。この「分解して足す」がボード線図の最大の強みであり、電験で問われるスキルです。

ゲイン余裕と位相余裕|「あとどれだけ余裕があるか」
電験三種のボード線図の問題では、「ゲイン余裕」「位相余裕」を求めさせる問題がよく出ます。これはフィードバック制御の安定性を判断する指標です。
📻 ラジオのたとえで理解する安定性
📻 ハウリング(キーン!という音)を想像してください
マイクの前にスピーカーを置くと、スピーカーの音をマイクが拾い、それがまたスピーカーから出て…の繰り返しで「キーン!」という発振(不安定)が起きます。
この発振が起きる条件は:
・信号が1周して戻ってきたとき、元と同じ大きさ以上(ゲイン ≥ 0dB)
・かつ位相が−180°(元の信号と同位相で重なってしまう)
逆に言えば、位相が−180°になるときにゲインが0dBより小さければ、発振しない(安定)。
この「どれだけ安全マージンがあるか」がゲイン余裕と位相余裕です。
📊 ゲイン余裕 (GM)
定義:位相が−180°になる周波数でのゲインの0dBからの距離
求め方:
① 位相線図で「−180°」になる周波数ωgcを見つける
② そのωgcでのゲイン[dB]を読む
③ GM = 0 − そのゲイン値
正ならば安定(0dBに対して余裕がある)
🔄 位相余裕 (PM)
定義:ゲインが0dBになる周波数での位相の−180°からの距離
求め方:
① ゲイン線図で「0dB」になる周波数ωpcを見つける
② そのωpcでの位相[°]を読む
③ PM = その位相値 − (−180°)
正ならば安定(−180°に対して余裕がある)
「このボード線図からゲイン余裕と位相余裕を求めよ」「安定かどうか判定せよ」という問題が出ます。
・ゲイン余裕が正、かつ位相余裕が正 → 安定
・どちらかが負またはゼロ → 不安定(または安定限界)
この判定ルールを確実に覚えてください。

電験三種B問題(10点)の攻略法
📝 B問題で出題される4つのパターン
「G(s) からボード線図を選べ」
→ 要素分解 → 折れ点を計算 → 傾き(−20dB/dec等)を確認 → 選択肢と照合
「ボード線図から G(s) を求めよ」
→ 傾きの変化点(折れ点)を読む → 時定数T=1/ωcを逆算 → 要素を組み立てる
「ゲイン余裕・位相余裕を求めよ」
→ 位相−180°の周波数でゲインを読む(GM) → ゲイン0dBの周波数で位相を読む(PM)
「特定のωでのゲイン[dB]や位相[°]を計算せよ」
→ G(jω)にωの値を代入 → |G(jω)|を計算しdB変換 → arctan で位相を計算
🎯 B問題を解く5ステップ
G(s) を基本要素に分解する(比例K × 積分1/s × 1次遅れ1/(1+Ts) × …)
各要素の折れ点周波数を計算する(ωc = 1/T)
ゲイン線図を描く(各要素のdBを足し算。傾きの変化に注目)
位相線図を描く(各要素の位相を足し算)
問われている値を読む(ゲイン余裕・位相余裕・特定周波数でのdB値など)
⚠️ B問題で失点しないためのチェックリスト
☑️ 要素分解の際、ゲインKを忘れていないか?(K=1以外ならdBシフトが必要)
☑️ 折れ点周波数の単位を確認したか?(rad/s と Hz を混同しない)
☑️ 積分要素 1/s がある場合、初期傾きが−20dB/decから始まることを忘れていないか?
☑️ 位相の足し算で符号を間違えていないか?(1次遅れは「−」、1次進みは「+」)
☑️ ゲイン余裕・位相余裕の定義(どのグラフから何を読むか)を間違えていないか?

ボード線図 暗記カード&まとめ
🎯 試験直前に確認する「ボード線図 暗記カード」
📊 ボード線図=ゲイン[dB]と位相[°]の2段セット
🔢 dB変換=20log₁₀|G(jω)| / 10倍→+20dB / 1/√2倍→−3dB
📐 1次遅れの折れ点=ωc=1/T / 左0dB・右−20dB/dec / 位相−45°
📐 積分1/s =−20dB/dec の直線 / 常に−90°
➕ 複合要素=dBと位相を各要素ごとに足し算
🛡️ ゲイン余裕=位相−180°でのゲインの「0dBからの距離」
🛡️ 位相余裕=ゲイン0dBでの位相の「−180°からの距離」
✅ 両方とも正 → 安定 / 負またはゼロ → 不安定
まとめ|ボード線図は「音量と遅れのグラフ」
✅ ボード線図=ゲイン(音量)と位相(遅れ)の2つのグラフ
✅ dBを使う理由=かけ算が足し算になる(直列接続の処理が楽)
✅ 20log₁₀ の暗記:10倍→20dB、2倍→6dB、1/√2→−3dB
✅ 1次遅れの折れ点 ωc=1/T でゲイン−3dB、位相−45°
✅ 折れ点の右側は−20dB/dec(10倍で20dB下がる)
✅ 複合伝達関数は要素分解 → 個別にボード線図 → dBと位相を足し算
✅ ゲイン余裕・位相余裕で安定性を判定(両方正なら安定)
ボード線図は、電験三種のB問題で毎年のように10点分出題されるテーマです。「dBの変換表を暗記する」「折れ点を計算する」「傾きを確認する」「足し算する」という手順さえ身につければ、確実に得点源にできます。最初は難しく見えても、過去問を3〜5題解けばパターンが見えてきます。
📚 次に読むべき記事
ボード線図で最も頻出の1次遅れ要素。時定数・ステップ応答・63.2%の法則を詳しく解説。
ボード線図で安定性を見るPIDコントローラ。積分動作が−20dB/decの傾きを持つ理由もわかります。
ボード線図の前提となる伝達関数とブロック線図。直列=かけ算がdBでは足し算になる原理。
🚪 この記事を読んでいるあなたへ
ボード線図のB問題は、毎年10点。4科目を通じても、1つのテーマでこれだけ安定して配点があるのは珍しいことです。この10点を「もらえる10点」に変えることが、合格への最短ルートです。
