理論科目の解説

【電験三種・理論】電磁誘導とファラデーの法則|e=-N(dΦ/dt)を完全理解

「e=-N(dΦ/dt)って、何これ?」「電磁誘導って難しそう…」「このマイナス記号は何のため?」

そんな不安を抱えているあなたへ。電験三種で最重要テーマの一つ、電磁誘導とファラデーの法則を、今日こそ完全にマスターしましょう。

結論から言うと、電磁誘導とは「磁石を動かすと電気が生まれる現象」です。そして、ファラデーの法則 e=-N(dΦ/dt) は、「どのくらいの電圧が生まれるか」を計算する超シンプルな式なんです。

📌 この記事で分かること
  • 電磁誘導の発見物語 - ファラデーが見つけた奇跡の瞬間
  • e=-N(dΦ/dt)の各パーツを中学生レベルで完全理解
  • マイナス記号の意味 - レンツの法則を身近な例で納得
  • 発電所・IH調理器・スマホ充電…身の回りの電磁誘導

この記事では、難しい数式は一切不要です。「動かす→電気が生まれる」というシンプルなイメージだけで、完璧に理解できるように解説します。

自転車のライトが明るくなる理由、スマホが充電できる理由、発電所で電気が作られる理由。すべて同じ原理なんですよ。

電磁誘導とは? - 動かすと電気が生まれる魔法

電磁誘導とは、磁石とコイル(導線をぐるぐる巻いたもの)を使って、磁石を動かすだけで電気を作り出す現象です。

まるで魔法のようですが、これは1831年にイギリスの科学者マイケル・ファラデーが発見した、れっきとした物理現象なんです。この発見が、現代の電気文明の基礎を作りました。

電池がなくても、太陽光がなくても、ただ磁石を動かすだけで電気が生まれる。この不思議な現象を、今から一緒に紐解いていきましょう!

ファラデーの大発見:磁石を動かすと電流が流れた!

1831年、歴史が動いた瞬間

1831年、ファラデーは実験室でコイルと磁石を使った実験をしていました。そして、驚くべき発見をします。

実験① 磁石を動かさない
磁石をコイルの近くに置いただけでは、何も起こりませんでした。電流計の針は動きません。「やっぱりダメか…」

実験② 磁石を近づける
磁石をコイルに近づけた瞬間、なんと電流計の針が動いたんです!「電流が流れた!」ファラデーは驚きました。

実験③ 磁石を遠ざける
今度は磁石をコイルから遠ざけてみました。すると、電流計の針が逆方向に動きました!「しかも逆向きの電流だ!」

💡 ファラデーが発見したこと
  • 磁石が動いているときだけ、電流が流れる
  • 磁石が止まると、電流も止まる
  • 磁石の動く向きで、電流の向きが変わる
つまり、磁束の「変化」こそが電気を生み出す!

身近な例:自転車のライト

自転車のライト(発電機)は、この電磁誘導を利用しています。

ペダルを漕ぐ → タイヤが回る → 発電機の中で磁石が回転する → コイルの中の磁束が変化する → 電気が生まれる → ライトが点く!

速く漕ぐとライトが明るくなるのは、磁石が速く動く=磁束の変化が速い=たくさん電気が生まれるからなんです。

ポイント:「静止」では何も起こらない

ここで超重要なポイントがあります。磁石をコイルの近くに置いただけでは、どんなに強力な磁石でも、電気は生まれません。

「変化」がなければ、電磁誘導は起こらないのです。止まっている磁石からは、何も生まれません。動かすこと、変化させることが、電気を生む鍵なんですね。

ファラデーの法則:e=-N(dΦ/dt)を分解理解

難しそう? いいえ、超シンプルです!

ファラデーの法則は、こう書きます。

📐 ファラデーの電磁誘導の法則
e = -N × (dΦ/dt)

「うわ、難しそう…」と思いましたか? 大丈夫です。この式は、実は掛け算だけでできています。1つずつ分解すれば、中学生でも完璧に理解できます!

e:誘導起電力(生まれる電圧)

eは、誘導起電力と呼ばれます。単位はV(ボルト)です。

簡単に言うと、「どのくらいの電圧が生まれるか」を表す数字です。電池でいう「1.5V」とか「9V」の、あのVですね。

この値が大きいほど、強い電気が生まれます。LED電球を明るく光らせるには、eが大きい方がいいわけです。

N:コイルの巻数

Nは、コイルを何回巻いたかを表す数字です。単位は「回」です。

コイルを1回だけ巻いた場合、Nは1です。10回巻けばN=10、100回巻けばN=100になります。

ここがポイント:巻数が多いほど、生まれる電圧も大きくなります。10回巻けば、1回巻きの10倍の電圧が生まれるんです。

これは、コイルの各ループでそれぞれ電圧が生まれて、それが全部足し算されるからです。10人で荷物を持てば、1人で持つより10倍楽になるのと同じですね。

dΦ/dt:磁束の変化速度

この部分が一番難しそうに見えますが、実はシンプルです。

は「磁束がどれだけ変化したか」、dtは「その変化にかかった時間」です。

つまり、dΦ/dt = 磁束の変化速度です。「1秒間に磁束が何本変化したか」を表します。

🚴 自転車の例で理解
  • ゆっくり漕ぐ → 磁石がゆっくり回る → dΦ/dtが小さい → ライトが暗い
  • 速く漕ぐ → 磁石が速く回る → dΦ/dtが大きい → ライトが明るい
変化が速いほど、たくさん電気が生まれる!

全部まとめると

ファラデーの法則を、日本語で言い換えるとこうなります。

📝 超訳:ファラデーの法則
「生まれる電圧 = コイルの巻数 × 磁束の変化速度」

つまり...
  • コイルをたくさん巻くほど、電圧は大きい
  • 磁石を速く動かすほど、電圧は大きい
  • 磁石が強力なほど、電圧は大きい

どうですか? 全然難しくないですよね。「たくさん巻いて、速く動かせば、たくさん電気が生まれる」。それだけの話なんです。

マイナス記号の謎:レンツの法則

なぜ式にマイナスがつくの?

ファラデーの法則 e=-N(dΦ/dt) には、なぜかマイナス記号がついています。「なぜマイナス?」と思いますよね。

実は、このマイナスには深い意味があります。それがレンツの法則です。

⚖️ レンツの法則
「誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる」

これだけだと難しいので、具体例で説明しますね。

ケース①:磁石を近づける場合

N極の磁石をコイルに近づけたとします。すると、コイルの中の磁束が増えていきますよね。

このとき、コイルは「磁束が増えるのを嫌がって」、反対向きの磁界を作ろうとします。つまり、コイル自身がS極になって、近づいてくるN極を押し返そうとするんです。

これは、手で押されたら自然と押し返したくなる、あの感覚と同じです。「近づくな!」って抵抗するわけですね。

ケース②:磁石を遠ざける場合

今度は、N極の磁石をコイルから遠ざけたとします。すると、コイルの中の磁束が減っていきます。

このとき、コイルは「磁束が減るのを嫌がって」、同じ向きの磁界を作ろうとします。つまり、コイル自身がN極になって、離れていく磁石を引き戻そうとするんです。

これは、友達が離れていくのを引き留めようとする、あの感覚と同じです。「行かないで!」って引き戻すわけですね。

身近な例で理解:熱いものに触る

レンツの法則は、人間の反応と全く同じです。

  • 熱いものが近づいてくる → 手を引っ込める(変化を妨げる)
  • 冷たい風が吹いてくる → 体を丸める(変化を妨げる)
  • 誰かに押される → 押し返す(変化を妨げる)

自然界は、変化を嫌がる性質があるんです。これが、マイナス記号の正体です。

エネルギー保存則との関係

なぜ自然界は変化を嫌がるのでしょうか? それはエネルギー保存則があるからです。

もし誘導電流が「変化を助ける向き」に流れたら、どうなるでしょう? 磁石を近づけると、コイルも引き寄せる力を出す。すると磁石は勝手に加速して、どんどん速くなっていきます。

これは永久機関です。何もエネルギーを与えなくても、勝手に動き続ける機械。でも、そんなものは自然界に存在しません。

だから、誘導電流は必ず「変化を妨げる向き」に流れます。磁石を動かすには力が必要で、その力が電気エネルギーに変換されるんです。マイナス記号は、この自然の摂理を表しているわけですね。

💡 マイナス記号の意味まとめ
  • 近づく → 押し返す(反対向きの電流)
  • 離れる → 引き戻す(反対向きの電流)
  • 常に変化を妨げる = マイナス記号
  • エネルギー保存則を守るため

電磁誘導の実用例:すべてはe=-N(dΦ/dt)

身の回りは電磁誘導だらけ!

電磁誘導は、現代文明を支える超重要技術です。あなたの身の回りにも、電磁誘導を使ったものがたくさんあります。

①発電所(発電機)

火力発電所、水力発電所、原子力発電所。すべて電磁誘導で電気を作っています

水や蒸気でタービン(羽根車)を回す → コイルが磁界の中で回転する → 磁束が変化する → 電気が生まれる。この原理で、日本中の電気が作られているんです。

②変圧器(トランス)

スマホの充電器の中には、変圧器が入っています。

コンセントの100Vを、スマホに必要な5Vに変換しています。1次コイルに交流電流を流す → 磁束が変化する → 2次コイルに電圧が誘導される。巻数比を変えることで、電圧を自由に調整できるんです。

③IH調理器

IHクッキングヒーターも、電磁誘導を利用しています。

IHのコイルに高周波の電流を流す → 鍋の底で磁束が激しく変化する → 鍋の中に渦電流が流れる → 抵抗で熱が発生する。鍋自体が発熱するので、効率がいいんですね。

④非接触充電(ワイヤレス充電)

スマホや電動歯ブラシのワイヤレス充電も、電磁誘導です。

充電台のコイルに交流電流を流す → 磁界が空間に広がる → スマホの中のコイルで磁束が変化する → 電圧が誘導される → 充電完了! ケーブルなしで電力を伝送できる、すごい技術ですね。

技術 磁束を変化させる方法 用途
発電機 コイルを回転させる 電気を作る
変圧器 交流電流を流す 電圧を変える
IH調理器 高周波電流を流す 調理する
非接触充電 交流磁界を発生 ケーブルなし充電

すべてに共通するのは、「磁束を変化させる」という原理です。変化の方法は違っても、根本は同じ e=-N(dΦ/dt) なんですね。

まとめ:電磁誘導を完全マスター

電磁誘導とファラデーの法則、いかがでしたか? 難しそうに見えた e=-N(dΦ/dt) も、イメージで理解すれば超シンプルでしたね。

✅ 重要ポイント総まとめ
  • 電磁誘導:磁石を動かすと電気が生まれる現象
  • ファラデーの法則:e=-N(dΦ/dt) で電圧を計算
  • e:生まれる電圧(誘導起電力)
  • N:コイルの巻数(多いほど電圧大)
  • dΦ/dt:磁束の変化速度(速いほど電圧大)
  • マイナス記号:変化を妨げる向き(レンツの法則)
  • 実用例:発電所、変圧器、IH、ワイヤレス充電など

電験三種では、この電磁誘導の知識をもとに、発電機、変圧器、誘導電動機といった機械の問題が出題されます。今回学んだ基礎がすべての土台になるので、しっかり理解してくださいね。

今日学んだ内容を何度も復習して、「磁石を動かせば電気が生まれる」というイメージを完璧に自分のものにしてください。数式よりも、イメージが大切です。

あなたの合格を心から応援しています。頑張ってください!

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