夜21時。仕事から帰って、机の上に置いたオーム社「これだけ理論」を開く。
最初のページに書いてあるのは V = IR。
「あぁ、オームの法則ね。中学校でやったやつ」
…そう思って次のページに進んだ瞬間、過去問でこんな問題が出てきます。
抵抗 R₁=2Ω と R₂=3Ω が直列に接続され、回路全体に12Vの電圧が加わっている。R₂の両端の電圧降下はいくらか。
…手が止まりませんか?
「電圧降下って何?」「直列だと電流は同じなんだっけ?」「式、どっちから立てるんだ…?」
大丈夫です。つまずいて当然です。
中学で習った「V=IR」は、実は記号を覚えただけで、その「意味」を教わっていないからです。意味を知らない公式は、応用問題が出た瞬間にフリーズします。
この記事では、目に見えない電気を「水道管」に置き換えて、オームの法則の本質を一生忘れないレベルで脳に刻み込みます。読み終わるころには、上の問題が3秒で解けるようになっているはずです。
- V=IRは知っているのに、過去問になると式が立てられない
- 「電圧降下」「電位差」と言われた瞬間に頭が真っ白になる
- I=V/R と V=IR、どっちを使えばいいか毎回迷う
- 「電流は電圧に比例する」と言われても、ピンとこない
- オームの法則を「水道管」で完全イメージ化できる
- 3つの式(V=IR / I=V/R / R=V/I)を瞬時に使い分けられる
- 電圧降下の意味が直感的にわかる
- 電験三種で頻出の計算パターンを2問解けるようになる
- 01 オームの法則(V=IR)|電圧・電流・抵抗を「水道管」で完全理解 今ここ
- 02 直列回路と並列回路の違い|合成抵抗の公式が一瞬でわかる
- 03 合成抵抗の計算テクニック|複雑回路を一発で解く
- 04 分圧・分流の法則|電圧と電流の分け方を瞬時に計算
- 05 キルヒホッフの法則|第1法則と第2法則の違いを完全理解
- 06 重ね合わせの理|複数電源の回路を分解して解く
- 07 テブナンの定理|複雑回路を等価回路に変換する
💡 難しい数式に絶望する前に。
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目次
そもそも電気回路って何?「水道管とそっくり」と覚えよう
電気回路の話を始める前に、ひとつだけ覚えてほしいことがあります。それは——
これだけです。難しい記号や数式が出てきても、頭の中で「これは水道管の話だ」と翻訳すれば、すべて理解できます。
キッチンの蛇口を思い浮かべてください。蛇口をひねると水が出てきますよね。あの「ジャー」と流れる水と、コンセントから流れてくる電気は、原理がほとんど同じなんです。
電気と水道の対応表(これだけ覚えればOK)
| 電気の世界 | 水道の世界 | 役割イメージ |
|---|---|---|
| 電圧 V [V] ボルト |
🌊 水圧 |
水を押し出す「強さ」。ポンプのパワー |
| 電流 I [A] アンペア |
💧 水の量 |
実際に流れている水の量。1秒間に何リットル流れるか |
| 抵抗 R [Ω] オーム |
🚧 パイプの細さ |
流れの邪魔をする度合い。パイプが細いほど流れにくい |
電気の問題で「V」「I」「R」が出てきたら、頭の中で「水圧・水量・パイプの細さ」に翻訳する。これだけで電験三種の理論問題の半分は怖くなくなります。

電圧V(水圧)とは?「電気を押し出す力」のこと
まず最初の主役、電圧Vから。単位はボルト[V]です。コンセントが「100V」、乾電池が「1.5V」、自動車のバッテリーが「12V」——この数字、聞いたことありますよね。
電圧の正体は、ひとことで言うと「電気を押し出す力の強さ」です。水道で言えば、ポンプの強さ。蛇口の奥にあるポンプが強ければ強いほど、勢いよく水が出てきますよね。それと同じです。
身近な電圧の例
| 機器 | 電圧 | 水道で言うと |
|---|---|---|
| 乾電池(単三) | 1.5V | 手押しポンプ |
| スマホ充電(USB) | 5V | 家庭の蛇口 |
| 自動車バッテリー | 12V | 家庭用シャワー |
| 家庭コンセント | 100V | 高圧洗浄機 |
| エアコン用 | 200V | 業務用洗車機 |
「電圧が高い=電気がたくさん流れる」と思いがちですが、これは半分間違いです。電圧はあくまで「押し出す力」であって、実際にどれだけ流れるかは、次に説明する「抵抗」とのバランスで決まります。

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電流I(水量)とは?「実際に流れている量」のこと
次は電流I。単位はアンペア[A]です。「ブレーカーが20Aだ」「このケーブルは10Aまで流せる」——こちらも聞いたことがあるはず。
電流の正体は「実際に流れている電気の量」。水道で言えば、蛇口から出てくる水の量です。1秒間にコップ1杯流れていれば「電流が小さい」、1秒間にバケツ1杯流れていれば「電流が大きい」というイメージ。
電流は「結果」です。あなたが直接コントロールするのは「電圧(押す力)」と「抵抗(パイプの細さ)」だけ。その2つのバランスで、結果として電流の大きさが決まります。
「電圧で押し出して、抵抗が邪魔して、最終的に電流が流れる」——この順番が頭に入っていれば、もう電気回路で迷子になりません。
身近な電流の例
| 家電 | 流れる電流 | イメージ |
|---|---|---|
| スマホ充電 | 約1A | ちょろちょろ |
| ノートPC | 約3〜5A | 普通の蛇口くらい |
| 電子レンジ | 約13A | 勢いよくジャー |
| ドライヤー(強) | 約12A | 勢いよくジャー |
| 家のブレーカー | 30〜60A | ここを超えると落ちる |

抵抗R(パイプの細さ)とは?「電気の流れにくさ」のこと
最後の主役、抵抗R。単位はオーム[Ω]です。「100Ωの抵抗」と言われたら、それは「100Ωだけ電気を流れにくくする部品」という意味。
抵抗の正体は、「電気の流れを邪魔する度合い」。水道で言えば、パイプの細さです。
抵抗が小さい(パイプが太い)
- 電気が流れやすい
- 同じ電圧でも電流がたくさん流れる
- 例:銅線(ほぼ0Ω)
抵抗が大きい(パイプが細い)
- 電気が流れにくい
- 同じ電圧でも電流は少ししか流れない
- 例:電気ヒーターの線(数十Ω)
電気ヒーター(ドライヤー、電熱線、IHなど)が熱くなるのは、まさに「抵抗で電気の流れを邪魔している」から。邪魔された電気エネルギーが、熱に変わって出てくるんです。これがジュール熱の正体ですが、それはまた別の記事で。

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ついに本題!オームの法則 V=IR の本当の意味
さて、ここまでで V・I・R の3つの正体がわかりました。いよいよオームの法則の登場です。
V = I × R
電圧 = 電流 × 抵抗
この式が言っているのはシンプル。「ある抵抗Rに、電流Iを流したとき、必要な電圧VはI×Rになる」ということです。
具体例で理解しよう
たとえば、抵抗R = 10Ω のところに、電流I = 2A を流したいとします。必要な電圧Vはいくら?
水道で言うと、「細いパイプに、たくさんの水を流したい → 高い水圧が必要」という当たり前の話。これが V=IR の物理的な意味です。
・細いパイプ(大きなR)にたくさん水を流したい(大きなI) → ものすごい水圧(大きなV)が必要
・太いパイプ(小さなR)なら、少ない水圧(小さなV)でも水はたくさん流れる
3つの式を覚えるな!「求めたいもの」で式を作れ
オームの法則には、よく「3つの公式」が出てきます。
| V = I × R | 電圧Vを求めたいとき |
| I = V ÷ R | 電流Iを求めたいとき |
| R = V ÷ I | 抵抗Rを求めたいとき |
…でも、これを3つ全部覚える必要はありません。覚えるのは V = IR の1つだけ。あとは中学の数学で式を変形するだけです。
式変形のやり方(中学レベルです)
たとえば、電流Iを求めたい場合:
↓ 両辺をRで割る
V ÷ R = I
∴ I = V ÷ R
抵抗Rを求めたい場合も同じ要領で:
↓ 両辺をIで割る
V ÷ I = R
∴ R = V ÷ I
「V = IR」を1つだけ呪文のように唱えてください。試験中、求めたいものが何かを考えて、その場で式変形すればOK。3つ覚えると、本番で「あれ、どっちがV÷Rで、どっちがI÷Rだっけ…」と混乱する原因になります。
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それでも不安な人へ:オームの法則「魔法の三角形」
「式変形が苦手…」という人のために、有名な裏技を紹介します。オームの法則の三角形です。
三角形の使い方
「V」を指で隠す → 残った「I × R」が答え。
V = I × R
「I」を指で隠す → 残った「V/R」が答え(横線の上が分子、下が分母)。
I = V ÷ R
「R」を指で隠す → 残った「V/I」が答え。
R = V ÷ I
本気で電験三種合格を目指すなら、最終的には三角形に頼らず「V=IR」から一瞬で式変形できるようになりましょう。三角形はあくまで「最初の補助輪」です。

実際に解いてみよう!例題2問
ここまで読んだら、もう実戦できます。手元に紙とペンを用意してください。Excelでもかまいません。
例題1:電流を求める(基本問題)
電圧100V の電源に、抵抗20Ω の電熱線をつないだ。流れる電流は何Aか?
求めたいもの:電流I。
わかっているもの:V = 100V、R = 20Ω。
↓
I = V ÷ R = 100 ÷ 20 = 5A
答え:5A。これは家庭用ドライヤー(弱)くらいの電流ですね。
例題2:電圧降下を求める(電験頻出パターン)
ある回路に 3A の電流が流れている。回路の途中に 4Ω の抵抗があるとき、この抵抗の両端の電圧降下は何Vか?
…ここで「電圧降下って何?」と止まった人、安心してください。
抵抗を通った瞬間に、電圧が「ガクッと下がる量」のこと。水道で言えば、細い部分を通過するときに水圧が落ちる、あの現象です。
計算自体は、ただのオームの法則 V = IR です。難しい言葉に騙されないでください。
求めたいもの:電圧降下V。
わかっているもの:I = 3A、R = 4Ω。
答え:12V。たったこれだけです。
電験三種・理論の問題は、「電圧降下」「端子電圧」「内部抵抗」など、難しそうな専門用語で出題されますが、計算式の正体はほぼV=IR一択です。用語に怯まず、「結局これV=IRじゃん」と気づければ8割勝ち。
初心者がつまずく3つのポイントと対処法
オームの法則は単純なはずなのに、応用問題でつまずく原因はだいたい以下の3つ。先回りして潰しておきましょう。
つまずき①:単位を確認していない
よくあるミス:問題文に「電流が500mA」と書いてあるのに、そのまま「I=500」で計算してしまう。
・1mA(ミリアンペア)= 0.001A
・1kΩ(キロオーム)= 1,000Ω
・1MΩ(メガオーム)= 1,000,000Ω
計算前に、必ず「A」「V」「Ω」の基本単位に揃えてから式に代入するクセをつけてください。
つまずき②:「電圧V」と「電位差V」が同じことに気づかない
電験三種では「電圧」「電位差」「端子電圧」「電圧降下」と、いろんな呼び方が出てきます。混乱しますよね。
細かい違いはありますが、計算上はすべて「単位がV(ボルト)」の同じ仲間。「電位差」と書いてあったら「電圧のことね」と心の中で翻訳してください。
つまずき③:「どの抵抗の話か」を見失う
回路に複数の抵抗があると、「全体の電圧V?それとも、この抵抗だけの電圧V?」と混乱します。
オームの法則 V=IR は、「ある1つの抵抗」と「その抵抗に流れる電流」と「その抵抗の両端の電圧」の関係を表しています。
複数の抵抗が出てきたら、必ず「どの抵抗の話か」を意識して、その抵抗だけにV=IRを適用してください。これは次の記事「直列回路と並列回路の違い」で詳しく扱います。
まとめ:オームの法則は「水道管の常識」だった
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- 電気回路は水道管と同じ。電圧=水圧、電流=水量、抵抗=パイプの細さ
- 覚える式はV=IRの1つだけ。あとは中学の式変形で対応
- 電流Iは「結果」。電圧Vと抵抗Rのバランスで決まる
- 電圧降下も内部抵抗も、計算式の正体はV=IR。専門用語に怯まない
- 計算前に単位を揃える。mA, kΩ, MΩは要注意
オームの法則がイメージで掴めれば、この先に出てくる「直列・並列回路」「キルヒホッフの法則」「テブナンの定理」も、すべて水の流れの応用として直感的に理解できます。
電験三種・理論の60点は、ここから始まります。次の記事へ進みましょう。

📚 次に読むべき記事
直流回路を体系的に学びたいならまずコレ。学習順序が一目でわかります。
オームの法則の次に必ず学ぶ単元。複数の抵抗をどう扱うかがわかります。
オームの法則とセットで覚える「電力の公式」。電気代の計算もこれでわかります。
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