- 「FET」「JFET」「MOSFET」…アルファベットが多すぎて何が何だかわからない
- エンハンスメント形とデプレッション形の違いが、何回読んでも頭に残らない
- BJT(バイポーラトランジスタ)との違いを問われて、試験本番で固まった
- FETの全体像と分類ツリー(接合形・MOS形・エンハンスメント・デプレッション)
- 各FETの動作原理を「水路のゲート」のたとえで直感的に理解する
- BJTとFETの決定的な違い(電流制御 vs 電圧制御)を一発で覚える方法
- 電験三種の過去問で実際に問われた出題ポイントの整理
電験三種の理論科目で、FET(電界効果トランジスタ)は2年に1回以上のペースで出題されている頻出テーマです。令和5年度下期・問11、令和6年度上期・問11、令和6年度下期・問11と、近年は連続出題されています。
しかし、FETの問題は「知っていれば秒で解ける」のに「知らないと全く手が出ない」タイプの問題です。つまり、理解さえすれば、確実に1問もぎ取れるボーナス問題になります。
この記事では、FETを初めて学ぶ方でも理解できるように、すべての種類の動作原理を「水路のゲート」のたとえで一つひとつ丁寧に図解していきます。最後まで読めば、FETに関するどんな出題パターンが来ても迷わなくなるはずです。
目次
そもそもFETとは?「電圧で水門を開け閉めするトランジスタ」
FETは Field Effect Transistor(フィールド・エフェクト・トランジスタ)の略で、日本語では「電界効果トランジスタ」と呼びます。
名前が難しそうですが、やっていることはシンプルです。「ゲート電極に電圧をかけると、ドレーンとソースの間に流れる電流をコントロールできる」――これがFETの本質です。
💧 「水路のゲート」でイメージする
FETを理解する最強のたとえは、水路の水門(ゲート)です。
水路の仕組み
- ソース(S)= 水源(水が出発する場所)
- ドレーン(D)= 排水口(水が到着する場所)
- ゲート(G)= 水門(水量を調整するハンドル)
- チャネル= 水路そのもの(水が通る道)
FETに置き換えると
- ソース(S)= 電子の供給元
- ドレーン(D)= 電子の到着先
- ゲート(G)= 電圧で電流量を制御する端子
- チャネル= 電流の通り道(半導体内部)
ポイントは、ゲートに電圧をかけるだけでチャネル(水路)の広さが変わるということです。ゲートに電流を流す必要はありません。この「電圧で制御する」という点が、BJT(バイポーラトランジスタ)との最大の違いです。
ゲート(G)= 制御端子 / ソース(S)= 電流の入口 / ドレーン(D)= 電流の出口
※ BJTの「ベース・エミッタ・コレクタ」に対応します。

FETの分類を「家系図」で一発理解
FETの種類を問う問題は電験三種で頻出です。まずは全体の家系図を頭に叩き込みましょう。難しく見えますが、分岐はたった2回しかありません。
直接PN接合
酸化膜(絶縁膜)
(ノーマリーON)
(ノーマリーOFF)
① FETは「接合形」と「MOS形」の2種類に分類できる → ◯(頻出)
② 接合形(JFET)はデプレッション形のみ(ゲート電圧ゼロでも電流が流れる)
③ MOS形はデプレッション形とエンハンスメント形の両方がある
④ さらに、nチャネル形とpチャネル形がある(電流の担い手がn形かp形か)
ここからは、それぞれの種類の動作原理を「水路のゲート」のたとえを使いながら順番に解説していきます。なぜそうなるのか、を丁寧に追っていきましょう。

接合形FET(JFET)の動作原理|「最初から開いている水門」
接合形FET(JFET:Junction FET)は、FETの中で最もシンプルな構造を持つタイプです。名前の通り、ゲートとチャネルがPN接合で直接つながっているのが特徴です。
🔧 nチャネルJFETの構造
nチャネルJFETの断面を、工場の水路にたとえて説明します。
nチャネルJFETの構造イメージ
(チャネル=水路)
n形半導体(水路)を、上下のp形半導体(水門)が挟み込む構造
⚡ JFETの動作を3ステップで理解する
ゲートに電圧をかけない(VGS = 0V)状態で、ドレーン−ソース間に電圧VDSをかけると、n形半導体のチャネルを通って電子が移動し、ドレーン電流IDが流れます。
水路のたとえでいえば、水門が最初から全開の状態です。水(電流)はそのまま通り抜けます。
ゲート(p形)とチャネル(n形)のPN接合に逆方向の電圧をかけると、PN接合部に空乏層が広がります。空乏層はキャリア(電子)が存在しない領域なので、チャネルの幅が狭くなります。
水路のたとえでいえば、水門を少し閉じた状態です。水路が狭くなり、水量(電流)が減ります。
逆バイアスをさらに強くすると、空乏層がチャネル全体を埋め尽くし、電流がゼロになります。この電圧をピンチオフ電圧(VP)と呼びます。
水路のたとえでいえば、水門を完全に閉じた状態です。水が一滴も流れなくなります。
JFETはゲート電圧ゼロでも電流が流れる(=ノーマリーON)。
ゲートに逆バイアスをかけることでチャネルを絞り、電流を制御する。
→ だから JFETはデプレッション形のみで、エンハンスメント形は存在しない。
JFETはPN接合で直接つながっているため、ゲートに順方向バイアスをかけるとPN接合に電流が流れてしまいます。「ゲートに電流を流さないで電圧だけで制御する」というFETの大前提が崩れるため、順方向(=チャネルを広げる方向)には使えません。だからJFETは「最初から開いている水門を閉じる方向にだけ制御する」= デプレッション形のみになるのです。

MOSFET(エンハンスメント形)の動作原理|「電圧をかけて初めて水路が生まれる」
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)は、ゲートとチャネルの間に酸化膜(SiO2)という絶縁体を挟んだ構造のFETです。この酸化膜があるため、ゲートには原理的に電流が全く流れません。これがJFETとの決定的な構造上の違いです。
MOSFETの中でも、電験三種で最も重要なのがエンハンスメント形です。まずはこちらから理解しましょう。
🔧 nチャネル エンハンスメント形MOSFETの構造
nチャネル エンハンスメント形MOSFETの断面イメージ
(チャネルがない)
ソースとドレーン(どちらもn形)の間にp形基板がある。
→ そのままでは電子の通り道(チャネル)が存在しないので、電流は流れない。
⚡ エンハンスメント形の動作を3ステップで理解する
ゲートに電圧をかけない(VGS = 0V)状態では、ソース(n形)とドレーン(n形)の間にp形基板があるだけです。n-p-nの並びは逆バイアスのPN接合を含むので、電流は流れません。
水路のたとえでいえば、そもそも水路が存在しない状態です。
ゲートに正の電圧VGSをかけると、ゲート電極の下の酸化膜がコンデンサのように働きます。金属電極側に正の電荷が溜まり、反対側のp形基板の表面に電子が引き寄せられます。
この引き寄せられた電子によって、p形基板の表面が疑似的なn形の層(反転層)に変わります。これがチャネルです。ソースとドレーンがn形のチャネルでつながり、電流が流れ始めます。
水路のたとえでいえば、電圧というスイッチを入れた瞬間に、地面の中に水路が掘られたようなイメージです。
VGSを大きくすると、反転層(チャネル)がより厚くなり、ドレーン電流IDが増加します。つまり、ゲート電圧を上げるほど電流が増えるのがエンハンスメント形の特徴です。
なお、電流が流れ始めるゲート電圧をしきい値電圧(Vth)と呼びます。VGS > Vth でないとチャネルが形成されません。
・VGS = 0V → 電流は流れない(ノーマリーOFF)
・VGS > Vth → チャネルが形成されて電流が流れ始める
・VGSを大きくする → 電流が増える(enhance = 増強する)
Enhancement = 「強化・増強」という意味です。ゲート電圧をかけてチャネルを「新しく作り出す」=増強するタイプだから、エンハンスメント形と呼ばれます。何もないところからチャネルを「育てる」イメージで覚えましょう。

MOSFET(デプレッション形)の動作原理|「最初からある水路を狭くする」
デプレッション形MOSFETは、構造的にはエンハンスメント形とよく似ていますが、決定的な違いが1つあります。それは、製造段階で最初からチャネル(n形の層)が作り込まれているという点です。
⚡ デプレッション形の動作を3ステップで理解する
ゲートに電圧をかけない(VGS = 0V)状態でも、最初からチャネルが存在するため、ドレーン−ソース間に電圧VDSをかけると電流が流れます。
水路のたとえでいえば、水門もなく、水路がドーンと開通している状態です。JFETと同じ「ノーマリーON」の動作をします。
ゲートに負の電圧をかけると、チャネル内の電子が反発して追い出され、チャネルが狭くなります。電流が減少します。
水路のたとえでいえば、水路を徐々に埋め立てているイメージです。
逆に正の電圧をかけると、さらに電子が引き寄せられてチャネルが広くなり、電流が増加します。
つまりデプレッション形は、正の電圧でも負の電圧でも動作するのが特徴です。正方向に振ればエンハンスメント的に動き、負方向に振ればデプレッション的に動きます。
・VGS = 0V → 電流は流れる(ノーマリーON)
・VGSに負の電圧 → チャネルが狭まり電流減少
・VGSに正の電圧 → チャネルが広がり電流増加
Depletion = 「減少・消耗」という意味です。最初から存在するチャネルを「減らしていく」=消耗させるタイプだから、デプレッション形と呼ばれます。「最初からあるものを削る」イメージで覚えましょう。
📊 エンハンスメント形 vs デプレッション形|一目でわかる比較表
| 比較項目 | エンハンスメント形 | デプレッション形 |
|---|---|---|
| VGS=0Vでの電流 | 流れない(OFF) | 流れる(ON) |
| チャネルの初期状態 | なし(電圧で作る) | あり(最初から存在) |
| 英語の意味 | Enhancement=増強 | Depletion=消耗 |
| 別名 | ノーマリーOFF | ノーマリーON |
| JFETとの関係 | MOSFETのみ | JFET + MOSFET |
| 覚え方 | 「育てる」🌱 | 「削る」⛏️ |

BJTとFETの決定的な違い|「電流制御 vs 電圧制御」を完全理解
電験三種では、「BJT(バイポーラトランジスタ)とFETの違い」が直接問われます(令和6年度上期・問11で出題)。ここは確実に押さえておきましょう。
🔄 制御方法の違いを「蛇口」と「水門」で覚える
BJT(バイポーラトランジスタ)
電流制御素子
ベースに小さな電流を流す → コレクタに大きな電流が流れる
たとえ:蛇口のハンドルを「手の力(=電流)」で回す
→ ハンドルを回すにはエネルギー(電流)が必要
- 入力インピーダンス:低い
- キャリア:自由電子と正孔の両方
- 消費電力:大きい
- 静電気耐性:強い
FET(電界効果トランジスタ)
電圧制御素子
ゲートに電圧をかけるだけ → ドレーン電流が変化する
たとえ:水門を「リモコン(=電圧)」で開閉する
→ リモコンのボタンを押すだけで、力(電流)は不要
- 入力インピーダンス:非常に高い
- キャリア:自由電子または正孔のどちらか
- 消費電力:小さい
- 静電気耐性:弱い(酸化膜が壊れやすい)
📊 BJT vs FET 完全比較表(試験直前チェック用)
| 比較項目 | BJT | FET |
|---|---|---|
| 制御方法 | 電流制御(ベース電流) | 電圧制御(ゲート電圧) |
| 入力インピーダンス | 低い | 非常に高い |
| キャリア | 電子と正孔(バイポーラ) | 電子か正孔(ユニポーラ) |
| 消費電力 | 大きい | 小さい |
| 静電気耐性 | 強い | 弱い(酸化膜破壊) |
| 端子名 | ベース・コレクタ・エミッタ | ゲート・ドレーン・ソース |
| スイッチング速度 | やや遅い | 速い |
| 別名 | バイポーラトランジスタ | ユニポーラトランジスタ |
Bipolar = Bi(2つ)+ polar(極性)→ 電子と正孔の2種類のキャリアが関与
Unipolar = Uni(1つ)+ polar(極性)→ 電子か正孔の1種類のキャリアだけが関与
FETはユニポーラトランジスタとも呼ばれます。この名前は電験三種で直接出題されています。
「バイポーラトランジスタは電圧制御素子、FETは電流制御素子である」→ これは誤り!逆です。
令和6年度上期・問11で実際にこの入れ替えが出題され、正答率を下げています。
BJT=電流制御、FET=電圧制御。絶対に間違えないようにしましょう。

なぜFETの入力インピーダンスは「非常に高い」のか?
FETの特徴として「入力インピーダンスが非常に高い」というフレーズが試験で問われます。しかし、なぜ高いのかを理解していないと、似た表現でひっかけられてしまいます。ここではその「なぜ」を解説します。
🧮 入力インピーダンスの定義
Zin = V入力 / I入力
入力電流が小さいほど、入力インピーダンスは大きくなります。では、FETの入力電流はどれくらい小さいのでしょうか?
BJTの入力部
ベースに電流を流して制御
→ 入力電流がある
→ 入力インピーダンスは低い
(数kΩ〜数十kΩ程度)
JFETの入力部
ゲートに逆バイアスをかけて制御
→ 逆バイアスなので電流はほぼゼロ
→ 入力インピーダンスは高い
(107〜1011Ω)
MOSFETの入力部
ゲートと基板の間に酸化膜(絶縁体)
→ 電流は原理的にゼロ
→ 入力インピーダンスは極めて高い
(1010〜1014Ω)
つまり、FETの入力インピーダンスが高い理由は明快です。ゲートに電流を流さないで、電圧だけで制御するからです。特にMOSFETは酸化膜で完全に絶縁されているため、入力インピーダンスは桁違いに高くなります。
入力インピーダンスが高い(=ゲートが絶縁されている)ということは、静電気がゲートに溜まりやすく逃げにくいということでもあります。わずかな静電気でも酸化膜が破壊される可能性があり、これが「FETは静電気に弱い」と言われる理由です。BJTの方が静電気に強いのは、ベースに電流が流れる(=電荷が逃げる道がある)からです。

nチャネルとpチャネルの違い|電流の担い手が違うだけ
FETの分類でもう1つ覚えておくべきなのが、nチャネルとpチャネルの違いです。これは名前ほど難しくありません。チャネル(電流の通り道)を流れるキャリアが違うだけです。
| 比較項目 | nチャネル形 | pチャネル形 |
|---|---|---|
| チャネルの種類 | n形半導体 | p形半導体 |
| 電流の担い手(キャリア) | 自由電子(マイナスの電荷) | 正孔(プラスの電荷) |
| ゲート電圧の極性 (エンハンスメント形) |
正の電圧(+VGS)でON | 負の電圧(-VGS)でON |
| 実務での主流 | ⭐ 圧倒的に主流 | CMOS回路で使用 |
「ゲート電圧で自由電子又は正孔の移動を制御できる」→ 正しい(令和6年度下期・問11で出題)
nチャネルなら自由電子を制御し、pチャネルなら正孔を制御します。FETは「どちらか一方だけ」を使うのでユニポーラと呼ばれるのでしたね。

電験三種の出題パターン|これさえ覚えれば解ける「7つの頻出知識」
ここまでの内容を踏まえて、電験三種でFETが出題されたときに確認すべき知識を整理します。以下の7項目を押さえておけば、どの出題パターンが来ても対応できます。
✅ 試験本番で確認すべき7つの頻出知識
JFETとMOSFETの分類を問う問題は超頻出です。
BJTが「電流制御」。入れ替えのひっかけに注意。
ゲートに電流が流れないため。BJTの入力インピーダンスは低い。
電子または正孔の「一方だけ」が関与(Uni=1つ)。BJTはバイポーラ(Bi=2つ)。
「ゲート電圧に関係なくチャネルができる」は誤り。令和6年度下期で出題。
酸化膜(MOSFETの場合)が静電気で破壊される。令和6年度上期で出題。
ゲートに電流が流れないため、制御に必要なエネルギーが極めて小さい。
FETの問題は「論説問題」として出題されることがほとんどです。計算は不要で、正しい/誤っている記述を選ぶ形式です。つまり、上記7つの知識を正確に暗記していれば、本番で数十秒で正答にたどり着けます。計算問題に時間を残すためにも、ここは知識の正確さで勝負です。

FET完全マップ|全種類を1枚の表で最終確認
最後に、この記事で学んだFETの全種類を1つの表にまとめます。試験直前の最終チェックに使ってください。
| 分類 | 種類 | ゲート構造 | VGS=0V | チャネルの初期状態 | 制御の方向 |
|---|---|---|---|---|---|
| 接合形 (JFET) |
デプレッション形 (これしかない) |
PN接合 (直接接触) |
ON | あり | 逆バイアスで チャネルを絞る |
| MOS形 (MOSFET) |
デプレッション形 | 酸化膜 (絶縁・非接触) |
ON | あり (製造時に作り込み) |
正負どちらでも 制御可能 |
| エンハンスメント形 | OFF | なし (電圧で形成) |
電圧をかけて チャネルを作る |
① FETは電圧で電流を制御するトランジスタ(水門のイメージ)
② 接合形(JFET)=PN接合で直結、デプレッション形のみ
③ MOS形(MOSFET)=酸化膜で絶縁、デプレッション形とエンハンスメント形の両方あり
④ エンハンスメント形 = VGS=0Vで電流が流れない(ノーマリーOFF)
⑤ デプレッション形 = VGS=0Vで電流が流れる(ノーマリーON)
⑥ BJTとの違い:電流制御 vs 電圧制御、バイポーラ vs ユニポーラ、静電気耐性
⑦ 入力インピーダンスが高い理由=ゲートに電流が流れないから

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BJT(バイポーラトランジスタ)の仕組みを復習。FETとの違いがより鮮明になります。
FETの動作原理の土台となるPN接合と空乏層の知識を固めたい方に。
パワーエレクトロニクスの視点からMOSFETの特徴を深掘り。機械科目にも対応。
「FETの仕組みなんて覚えて何の役に立つんだろう…」と思うことがあるかもしれません。でも、電験三種の合格は確実にキャリアを変えます。私自身、30代で取得して年収・評価・転職の選択肢が大きく変わりました。
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