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- 力率って何? cosθと言われても三角関数が苦手
- 有効電力・無効電力・皮相電力の関係がごちゃごちゃになる
- 力率改善が、なぜ必要なのかピンとこない
- 力率の意味を「ビールの泡」でイメージできる
- 電力三角形と cosθ=P÷S の関係
- 単相・三相での力率の求め方(計算ツールつき)
- 力率が悪いと困る理由と、進相コンデンサで改善するしくみ
力率とは、電源から送った電力(皮相電力S)のうち、実際に仕事をする電力(有効電力P)の割合のことで、記号ではcosθと書きます。cosθ=P÷Sで求め、θは電圧と電流の波のずれ(位相差)です。モーターのようなコイルがあると電流が遅れて力率が下がります。力率が悪いと同じ仕事に大きな電流が要り、電線の損失や設備の負担が増えるので、進相コンデンサをつないで改善します。

- 1 R-L-C素子の性質|抵抗・コイル・コンデンサの交流特性
- 2 コイルとコンデンサで位相がπ/2ずれる理由
- 3 リアクタンス(XL・XC)とは?周波数で変わる交流抵抗
- 4 インピーダンスの計算|RLC直列回路を直角三角形で攻略
- 5 アドミタンスとは?並列回路の計算が10倍ラクになる逆数の魔法
- 6 力率(cosθ)とは?電気を無駄遣いしている度合いを完全理解 今ここ
- 7 有効電力・無効電力・皮相電力の違い|電気代に関係するのはどれ?
- 8 交流電力の計算|P・Q・Sを電力三角形で一発理解
力率とは?「ビールの泡」でイメージする
力率は、ジョッキ全体(皮相電力)のうち、飲めるビール(有効電力)が何割かを表す数字です。
| ビールでいうと | 電気では | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 飲めるビール(液体) | 有効電力 P | W(ワット) | 熱・光・回転などの仕事になる電力 |
| 泡 | 無効電力 Q | var(バール) | 電源と機器のあいだを行き来するだけで仕事をしない電力 |
| ジョッキ全体 | 皮相電力 S | VA(ボルトアンペア) | 電圧×電流。電源や電線が運ばなければならない量 |
力率0.8なら、ジョッキの8割がビールで、2割が泡という状態です。泡(無効電力)は飲めませんが、ジョッキの容量はふさぎます。電気でも、無効電力は仕事をしないのに電線を流れる電流を増やします。
力率は0から1のあいだの数で、1に近いほど無駄が少なく、1は「泡ゼロ」の状態です。%で「力率80%」のように表すこともあります。
有効・無効・皮相電力の違いをもっとくわしく

なぜ「cosθ」なのか?電力三角形で理解する
有効電力P・無効電力Q・皮相電力Sは直角三角形(電力三角形)をつくり、底辺Pと斜辺Sの比がちょうどcosθになるからです。
力率 cosθ = P ÷ S
S² = P² + Q²(三平方の定理)
直列回路なら cosθ = R ÷ Z
底辺が有効電力P、高さが無効電力Q、斜辺が皮相電力Sです。三角関数のcosは「底辺÷斜辺」なので、P÷Sがそのままcosθになります。3つのうち2つがわかれば、残りの1つは三平方の定理で求められます。
抵抗RとリアクタンスXの直列回路では、インピーダンスZも同じ形の三角形(インピーダンス三角形)になり、cosθ=R÷Zでも力率を求められます。
インピーダンスZの三角形と求め方

θ(位相角)の正体と、遅れ力率・進み力率
θは電圧と電流の波のずれ(位相差)で、ずれがなければ力率1、ずれが大きいほど力率は下がります。
電気ストーブのような抵抗だけの負荷では、電圧と電流が同じタイミングで上がり下がりするので、θ=0°、cos0°=1です。モーターのようにコイルを含む負荷では、コイルが電流の変化をいやがるため、電流が電圧より遅れます。
| 種類 | 原因 | 電流のようす | よくある場面 |
|---|---|---|---|
| 遅れ力率 | コイル(L) | 電圧より遅れる | モーター・変圧器の多い工場。ほとんどがこちら |
| 進み力率 | コンデンサ(C) | 電圧より進む | 負荷が軽いのに進相コンデンサを入れたままのとき |
電験三種の問題で「遅れ」「進み」の指定がないときは、遅れ力率として考えることがほとんどです。力率の値だけでは遅れか進みかはわからないので、「力率0.8(遅れ)」のように書きます。
位相と位相差、進み・遅れをベクトル図で

力率の求め方|単相・三相の公式と例題
力率は、有効電力Pを「電圧×電流」で割って求めます。三相では電圧×電流に√3をかけます。
| わかっている値 | 力率の求め方 |
|---|---|
| P と S | cosθ = P ÷ S |
| P と Q | S = √(P²+Q²) を出してから P ÷ S |
| 単相の V・I・P | cosθ = P ÷ (V×I) |
| 三相の V(線間)・I・P | cosθ = P ÷ (√3×V×I) |
| 直列回路の R と Z | cosθ = R ÷ Z |
例題1|PとQから力率を求める
有効電力P=300W、無効電力Q=400varの負荷の力率は?
S=√(300²+400²)=√250000=500VA、cosθ=300÷500=0.6。3:4:5の直角三角形は電験三種でよく出ます。5:12:13、8:15:17も覚えておくと、電卓なしで解けます。
例題2|三相のモーターの力率を求める
三相200Vのモーターに50Aが流れ、有効電力が13.86kWのときの力率は?
S=√3×200×50=約17,320VA、cosθ=13,860÷17,320=約0.80。√3を忘れると0.80ではなく1.39になり、1を超えてしまいます。1を超えたら、式のどこかが間違っている合図です。
三相電力P=√3VIcosθの√3はどこから来る?
力率の計算ツール
はじめから入っている数字は、例題2と、下の「改善の効果」の例です。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
P・Q・Sの計算パターンを電力三角形で

力率が悪いと何が困る?3つの理由
同じ仕事(同じ有効電力)でも、力率が悪いほど大きな電流が必要になり、損失・設備・料金の3つで損をします。
有効電力が同じなら、電流は力率に反比例します。800Wの仕事をするのに、力率1なら800VA分の電流で済みますが、力率0.8なら1,000VA分の電流が要ります。ビールなら、泡が多いほど大きなジョッキが必要になるのと同じです。
| 困ること | 理由 |
|---|---|
| ① 電線の損失が増える | 損失は I²R で、電流の2乗に比例する。力率0.8を1.0にすると、電流は20%減り、損失は36%減る |
| ② 設備が大きくなる | 変圧器や電線は皮相電力(kVA)と電流で選ぶので、力率が悪いと太い電線や大きな変圧器が要る。電圧降下も大きくなる |
| ③ 基本料金が上がる | 高圧で受電する工場などの契約では、力率85%を基準に、よければ基本料金を割り引き、悪ければ割り増す制度が一般的(くわしくは契約の約款で確かめる) |
送電線の電圧降下と電力損失の計算

力率改善のしくみ|進相コンデンサで「泡」を消す
負荷と並列にコンデンサ(進相コンデンサ)をつなぐと、コイルの遅れ電流をコンデンサの進み電流が打ち消し、無効電力Qが減って力率が上がります。
電力三角形で見ると、有効電力Pはそのままで、高さQだけが縮みます。すると斜辺Sが短くなり、電源から流れる電流が減ります。必要なコンデンサの容量は次の式で求めます。
Qc = P × (tanθ₁ − tanθ₂)[kvar]
θ₁:改善前の位相角、θ₂:改善後の位相角
たとえば有効電力100kWの負荷を、力率0.7から0.95に改善する場合、tanθ₁=約1.020、tanθ₂=約0.329なので、Qc=100×(1.020−0.329)=約69kvarです。皮相電力は約143kVAから約105kVAになり、電線を流れる電流は約26%、電線の損失は約46%減ります(上の計算ツール②で確かめられます)。
負荷が軽い夜間などにコンデンサを入れたままにすると、進み力率になり、電圧が上がることがあります。実務では0.95前後を目標にし、負荷に合わせてコンデンサを入り切りする自動力率調整装置を使うこともあります。
進み力率で電圧が上がる?フェランチ効果と調相設備

力率でよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 力率=効率 | 効率は「入力のうち出力になった割合」。力率は「送った電力のうち仕事をする電力の割合」で、別のもの |
| 無効電力は熱になって消える | 無効電力そのものは行き来するだけ。損をするのは、それで増えた電流が電線で熱になる分 |
| 三相でもP÷(V×I)で求める | 三相は √3×V×I で割る。答えが1を超えたら見直す |
| 力率は1に近づけるほどよい | 入れすぎると進み力率で電圧が上がる。0.95前後が目安 |
| コンデンサは直列につなぐ | 力率改善の進相コンデンサは、負荷と並列につなぐ |

よくある質問
- 力率 cosθ=P÷S。ジョッキ全体のうち、飲めるビールの割合
- P・Q・Sは直角三角形。S²=P²+Q²
- θは電圧と電流のずれ。コイルで遅れ、コンデンサで進む
- 単相はP÷(V×I)、三相はP÷(√3×V×I)。1を超えたら見直す
- 力率が悪いと電流が増え、損失・設備・料金で損をする
- 進相コンデンサを並列に入れて改善。目標は0.95前後

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メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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