基板設計

【完全図解】銅箔厚の選び方|35μm・70μm・105μmの使い分け

😣 こんな悩みはありませんか?
  • 銅箔厚って35μmと70μmで何が違うの?
  • 大電流を流すには銅箔を厚くすればいいの?
  • 厚銅基板はコストが高いって聞くけど、どのくらい違う?
  • 「oz(オンス)」と「μm」の関係がよくわからない
✅ この記事でわかること
  • 銅箔厚の基本と「oz」「μm」の換算方法
  • 35μm・70μm・105μmそれぞれの特徴と用途
  • 許容電流の考え方と簡易計算方法
  • コスト・納期・加工性のトレードオフ
  • 厚銅基板を使うときの注意点

「銅箔厚、どれを選べばいいんだろう…」

基板設計を始めると必ず出てくるこの疑問。特にパワエレ基板では、銅箔厚の選択が許容電流・発熱・コストに直結するため、適切な選択が重要です。

結論から言うと、「厚ければ厚いほど良い」わけではありません。厚くすればコストが上がり、加工精度が落ち、納期も延びます。大切なのは「必要十分な厚さ」を選ぶことです。

この記事では、銅箔厚の基本から選び方まで、初心者でもイメージできるように図解で解説します。

📘 前提知識
この記事は「パワエレ基板設計の全体像」を理解している方向けです。
→ 【入門】パワエレ基板設計の全体像|信号基板との違いを理解する

銅箔厚とは?|「電気の通り道の太さ」

まず、「銅箔厚」とは何かを理解しましょう。

基板の表面には、回路パターンを形成する銅箔(どうはく)が貼り付けられています。この銅箔の「厚さ」が銅箔厚です。

💡 水道管でイメージしよう
銅箔厚は「水道管の太さ」と同じです。

細い管(薄い銅箔)→ 少量の水(電流)しか流せない
太い管(厚い銅箔)→ 大量の水(電流)を流せる

無理に大量の水を細い管に流すと、管が破裂(発熱・焼損)してしまいますよね。銅箔も同じです。

「oz(オンス)」と「μm」の関係|単位を理解する

銅箔厚は「μm(マイクロメートル)」または「oz(オンス)」で表されます。ozはアメリカ由来の単位で、「1平方フィートあたりの銅の重さ」を表しています。

oz表記 μm表記 mm表記 呼び方
1oz 35μm 0.035mm 標準銅箔
2oz 70μm 0.070mm 厚銅
3oz 105μm 0.105mm 厚銅
4oz 140μm 0.140mm 超厚銅
💡 覚え方のコツ
「1oz ≈ 35μm」と覚えておけばOK!
2ozなら35×2=70μm、3ozなら35×3=105μmと計算できます。

35μmはどのくらいの厚さ?|身近なものと比較

35μm(マイクロメートル)と言われてもピンとこない方のために、身近なものと比較してみましょう。

もの 厚さ 銅箔との比較
髪の毛 約80μm 35μm銅箔の約2倍
コピー用紙 約90μm 35μm銅箔の約2.5倍
アルミホイル 約15μm 35μm銅箔の約半分
35μm銅箔 35μm
105μm銅箔 105μm 髪の毛より少し太い

35μm銅箔は髪の毛の半分以下の薄さです。こんなに薄い銅の層に何アンペアもの電流を流すわけですから、設計には注意が必要だとわかりますよね。

銅箔厚と許容電流の関係|なぜ厚いと電流を流せる?

銅箔厚が許容電流に影響する理由を、もう少し詳しく見てみましょう。

電流が流れる「断面積」を考える

電流が流れる銅パターンを横から見ると、幅(W)×厚さ(t)の長方形になっています。この長方形の面積が「断面積」です。

📐 銅パターンの断面積

厚さ t
← 幅 W →

断面図

=

断面積 = W × t

断面積が大きいほど
電流を流しやすい

断面積が大きいほど、電気が流れる「道」が広くなるため、たくさんの電流を流せます。逆に断面積が小さいと、電流が「渋滞」して発熱してしまいます。

📐 断面積を大きくする2つの方法
パターン幅(W)を広げる:スペースがあれば最も簡単
銅箔厚(t)を厚くする:スペースがなくても断面積を増やせる

パワエレ基板では、パターン幅だけでは足りない場合に銅箔厚を上げます。

銅箔厚ごとの許容電流の目安

「パターン幅1mmあたり、どのくらいの電流を流せるか」の目安を示します。これは温度上昇10℃以内を基準にした概算値です。

銅箔厚 幅1mmあたり
許容電流(目安)
10A流すのに
必要な幅
イメージ
35μm
(1oz)
約1A 約10mm 細いストロー
🥤
70μm
(2oz)
約1.5〜2A 約5〜7mm 普通のホース
🚿
105μm
(3oz)
約2.5〜3A 約3〜4mm 太い消防ホース
🧯
⚠️ これはあくまで目安です
実際の許容電流は、周囲温度、エアフロー、パターンが外層か内層か、などによって変わります。正確な値はIPC-2152などの規格や、基板メーカーの計算ツールで確認してください。

具体例で考える|20Aを流すには?

例えば、20Aの電流を流すパターンを設計するとしましょう。銅箔厚によって必要なパターン幅がどう変わるか見てみます。

35μm (1oz)

約20mm幅

→めちゃくちゃ太い!
基板に収まらないかも…

70μm (2oz)

約10〜13mm幅

→現実的なサイズ
多くの場合これで対応可能

105μm (3oz)

約7〜8mm幅

→かなりコンパクト
スペースに余裕がない場合に有効

このように、銅箔を厚くすると同じ電流を流すのに必要なパターン幅が狭くなります。基板サイズに制約がある場合は、銅箔厚を上げることで対応できます。

35μm・70μm・105μmの使い分け|用途別ガイド

では、具体的にどの銅箔厚を選べばいいのか?用途別にまとめます。

35μm(1oz)|信号基板・低電流パワエレの標準

35μm (1oz)
標準銅箔
✅ 向いている用途
  • 信号基板全般
  • LED駆動(数百mA〜数A)
  • 小型DC-DCコンバータ
  • 低電流のゲートドライバ
  • 試作・評価用基板
📊 スペック目安
  • 電流:〜10A程度まで
  • コスト:最も安価(基準)
  • 納期:最も短い
  • 最小パターン幅:0.1mm可能

70μm(2oz)|パワエレの「ちょうどいい」選択肢

70μm (2oz)
パワエレの標準
✅ 向いている用途
  • モータードライバ
  • 中規模DC-DCコンバータ
  • 産業用インバータ
  • バッテリー充電器
  • 電源ユニット
📊 スペック目安
  • 電流:10A〜30A程度
  • コスト:35μmの約1.2〜1.5倍
  • 納期:標準
  • 最小パターン幅:0.15〜0.2mm
💡 迷ったら70μm(2oz)
パワエレ基板で銅箔厚に迷ったら、まず70μm(2oz)を検討してください。35μmより余裕があり、105μmほどコストが上がらない「ちょうどいい」選択肢です。

105μm(3oz)|大電流・高性能向け

105μm (3oz)
大電流向け厚銅
✅ 向いている用途
  • EV・HEV用パワエレ
  • 大電流インバータ
  • 溶接機電源
  • サーバー電源
  • 産業用大型モーター制御
📊 スペック目安
  • 電流:30A〜100A以上
  • コスト:35μmの約1.5〜2倍
  • 納期:やや長い
  • 最小パターン幅:0.2〜0.3mm

用途別早見表|一目でわかる銅箔厚の選び方

用途 電流目安 推奨銅箔厚
信号基板、制御回路 〜1A 35μm
LED駆動、小型電源 1A〜5A 35μm〜70μm
モータードライバ、DC-DC 5A〜20A 70μm
産業用インバータ 20A〜50A 70μm〜105μm
EV用パワエレ、大型電源 50A以上 105μm以上

厚銅基板のトレードオフ|メリットだけじゃない

「じゃあ、全部105μmにすればいいじゃん!」と思うかもしれませんが、厚銅にはデメリットもあります。コスト・納期・加工性のトレードオフを理解しておきましょう。

トレードオフ①:コストが上がる

銅箔厚を上げると、基板のコストが上がります。銅の使用量が増えるだけでなく、加工の難易度も上がるためです。

銅箔厚 コスト目安
(35μm=1.0)
備考
35μm (1oz) 1.0 基準(最も安価)
70μm (2oz) 1.2〜1.5 多くの基板メーカーで対応可
105μm (3oz) 1.5〜2.0 対応メーカーが限られる場合あり
140μm以上 2.0〜 特殊対応、要問合せ

トレードオフ②:納期が延びる

厚銅基板は加工に時間がかかるため、納期が延びます。特に試作では、この差が大きく響くことがあります。

35μm

📅

即日〜3日
(クイックサービス対応)

70μm

📅📅

5〜7日
(標準納期)

105μm

📅📅📅

7〜14日
(要確認)

トレードオフ③:加工精度が落ちる

これが最も重要なポイントです。銅箔が厚いと、細いパターンが作りにくくなります

💡 なぜ加工精度が落ちるのか?
基板のパターンは「エッチング」で作ります。銅箔を溶かして不要な部分を除去する方法です。

厚い銅箔をエッチングすると、横方向にも溶けてしまう(サイドエッチング)ため、パターンの端が斜めになり、細いパターンが作れなくなります。

📐 サイドエッチングのイメージ

35μm(薄い)

断面がほぼ垂直
→ 細いパターンOK

105μm(厚い)

断面が台形
→ 細いパターン困難

銅箔厚ごとの最小パターン幅・間隔

銅箔厚 最小パターン幅
(目安)
最小パターン間隔
(目安)
35μm (1oz) 0.1mm 0.1mm
70μm (2oz) 0.15〜0.2mm 0.15〜0.2mm
105μm (3oz) 0.2〜0.3mm 0.2〜0.3mm
140μm (4oz) 0.3〜0.4mm 0.3〜0.4mm
⚠️ 厚銅+細パターンは要注意
厚銅基板で細いパターン(0.2mm以下)を引こうとすると、製造できない・歩留まりが悪いなどの問題が起きます。厚銅を選ぶ場合は、パターン幅に余裕を持った設計が必要です。

厚銅基板を使うときの注意点

70μm以上の厚銅基板を使う場合、いくつか追加で注意すべき点があります。

注意点①:レジストの厚塗りが必要

銅箔が厚いと、パターンの「段差」が大きくなります。この段差をソルダーレジスト(緑色の保護膜)でカバーするために、レジストを厚く塗る必要があります。

レジストが薄いと、パターンの角が露出してしまい、はんだブリッジや絶縁不良の原因になります。基板発注時に「厚銅対応」を明示しておきましょう。

注意点②:実装時の熱管理

厚銅基板は熱伝導が良いため、はんだ付け時に熱が逃げやすいという特性があります。リフロー条件の調整や、プリヒートの強化が必要になる場合があります。

注意点③:内層と外層で銅箔厚を変える

4層以上の基板では、「外層だけ厚銅、内層は標準」という構成も可能です。これにより、コストを抑えつつ、外層の大電流パターンに対応できます。

📐 層ごとに銅箔厚を変える例

L1(外層):70μm — パワーパターン
プリプレグ
L2(内層):35μm — GNDプレーン
コア材
L3(内層):35μm — 電源プレーン
プリプレグ
L4(外層):70μm — パワーパターン

外層70μm + 内層35μmの組み合わせ

銅箔厚の選び方フローチャート

最後に、銅箔厚を選ぶためのフローチャートをまとめます。このフローに沿って考えれば、最適な銅箔厚が見つかります。

🔍 銅箔厚選定フローチャート

START:最大電流を確認
Q1:最大電流は10A以上?
No(10A未満)
→ 35μm (1oz)
標準銅箔でOK
Yes(10A以上)↓
Q2:最大電流は30A以上?
No(10〜30A)
→ 70μm (2oz)
パワエレの標準
Yes(30A以上)↓
Q3:パターン幅を広げる余裕がある?
Yes
→ 70μm + 幅広パターン
コスト抑えて対応
No
→ 105μm (3oz)
厚銅で対応

まとめ|銅箔厚は「必要十分」を選ぶ

この記事では、パワエレ基板の銅箔厚の選び方を解説しました。

📝 この記事のまとめ

  • 銅箔厚は「電気の通り道の太さ」。厚いほど大電流を流せる
  • 1oz = 35μmと覚えれば換算は簡単
  • 35μm:信号基板・低電流向け(〜10A)
  • 70μm:パワエレの標準(10A〜30A)、迷ったらこれ
  • 105μm:大電流向け(30A以上)、コスト・加工性に注意
  • 厚くするほどコスト↑、納期↑、加工精度↓
  • 「厚ければ良い」ではなく「必要十分」を選ぶ

銅箔厚の選択は、電流・コスト・スペースのバランスです。この記事を参考に、あなたの設計に最適な銅箔厚を選んでください。

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