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第3章 - 第2回 / 全12回 核
シリーズ全体: 17 / 69記事
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「プローブを買おうとしたら、種類が多すぎて選べない…」
オシロプローブを通販サイトで検索すると、こんな名前がずらり並びます:
- 受動プローブ(パッシブプローブ)
- 能動プローブ(アクティブプローブ/FETプローブ)
- 差動プローブ(高電圧差動/低電圧差動)
- 高耐圧プローブ(100:1、1000:1)
- 電流プローブ(CT、ホール、ロゴスキー)
- 光絶縁プローブ
この記事では、すべてのプローブを 1枚の地図 にまとめ、
あなたの測定目的に合った1本を選べるように整理します。
結論:プローブ全種類 早見表
まず、すべてのプローブを 1枚の表 で整理します。詳細は後ほど解説しますが、この表だけ覚えれば9割の選定に困りません。
| プローブ種類 |
測れるもの |
電圧範囲 |
帯域目安 |
価格目安 |
| 受動プローブ(10:1) |
電圧(GND基準) |
〜300V |
〜500MHz |
1〜3万円 |
| 高耐圧プローブ(100:1〜1000:1) |
高電圧(GND基準) |
〜30kV |
〜100MHz |
5〜30万円 |
| 差動プローブ(高電圧) |
2点間の電圧差 |
〜2000V |
〜200MHz |
10〜50万円 |
| 差動プローブ(低電圧) |
高速デジタル差動信号 |
〜数十V |
〜数GHz |
30〜100万円 |
| 能動プローブ(FETプローブ) |
超高速・微小信号 |
〜数十V |
〜10GHz |
30〜100万円 |
| 電流プローブ |
電流(A) |
mA〜500A |
〜100MHz |
10〜80万円 |
| 光絶縁プローブ |
完全絶縁での電圧 |
〜2000V |
〜1GHz |
100〜300万円 |
ざっくり覚え方
普段は 受動プローブ、大きい電圧は 差動 or 高耐圧、電流は 電流プローブ、超高速は 能動プローブ。
これだけ覚えれば現場の8割はカバーできます。
6種類のプローブの電圧・帯域・価格の早見表
そもそもプローブとは?「ただのケーブル」ではない3つの役割
プローブは、回路の信号をオシロスコープへ届けるための測定器です。見た目はただの線ですが、中に抵抗やコンデンサが入っていて、次の3つの仕事をしています。早見表の「電圧範囲」や「帯域」が種類ごとに違うのは、この3つの性能が種類ごとに違うからです。
| 役割 | 中でしていること(10:1の受動プローブの例) | ケーブルで直結すると |
| ① 信号を弱めてオシロを守る | 先端の9MΩとオシロの入力1MΩで、信号を1/10に分圧する。オシロは10倍して表示する | 大きな電圧がそのまま入力に入り、オシロを壊すおそれがある |
| ② 回路を邪魔しない | 入力抵抗を大きく(10MΩ程度)、入力容量を小さく(十数pF)して、回路から電流をほとんど取らない | 当てた瞬間に回路の状態が変わり、本物と違う波形になる(プローブ効果) |
| ③ 速い信号をなまらせない | 先端と根元のコンデンサで周波数特性をそろえる(補償調整) | 方形波の角が丸くなったり、ヒゲ(リンギング)が出たりする |
プローブの3つの仕事:弱める・邪魔しない・届ける
新品のオシロには受動プローブが付いてくることが多く、ふだんの測定はそれで足ります。高い電圧や、GNDから浮いた2点の間を測るときに、このあと紹介する専用のプローブが要ります。③の補償調整のやり方は プローブの校正と補償調整 で解説しています。
① 受動プローブ(パッシブプローブ)|基本の1本
オシロを買うと 標準で付属 してくる、一番ベーシックなプローブです。「プローブ」と言ったら普通はこれを指します。
特徴
- 内部に 抵抗とコンデンサだけが入っている(電源不要)
- 信号を 10分の1 に縮めてオシロに伝える(=10:1プローブ)
- シンプルな構造で 安価・丈夫
- ただしGND基準の信号しか測れない
こんな測定に向いている
○ デジタル信号(3.3V / 5Vロジック)の観測
○ 電源回路の出力電圧(GND基準)
○ 低圧の信号波形の確認
○ 教育・学習用途
注意
最大入力電圧は 300V程度まで。AC100Vの電源(最大瞬時値141V)はギリ測れますが、AC200Vはアウト。それ以上は 差動プローブか高耐圧プローブ を使ってください。
受動プローブは電源不要で丈夫、1〜3万円
② 高耐圧プローブ|数千Vを安全に測る
受動プローブの「もっと大きな電圧版」です。信号を 100分の1や1000分の1 まで縮めることで、数千V〜数万Vの信号も測れます。
特徴
- 分圧比が 100:1、1000:1 など大きい
- プローブ本体が大きく、安全のための 絶縁が強化 されている
- 受動プローブと同様に電源不要
- 帯域は受動プローブより少し低め(50〜100MHz程度)
こんな測定に向いている
○ 高電圧電源回路の出力(GND基準)
○ X線管・CRTディスプレイの高電圧部
○ 静電気放電(ESD)波形の観測
GND基準でない場所には使えない
高耐圧プローブもGND基準でしか測れません。「ハイサイドの高電圧」を測りたいなら、後述の 差動プローブ を使ってください。
高耐圧プローブはGND基準の電圧だけ測れる
③ 差動プローブ|2点間の電圧差を測る救世主
パワーエレクトロニクスや電源開発の現場で 絶対に必要 になるプローブです。
特徴
- 2本のプローブ先端(プラス・マイナス)を持つ
- その 2点間の電圧差だけを測る
- オシロのGNDから 電気的に絶縁 されている(内部電源で動作)
- GND基準でない場所も安全に測れる
2種類ある:高電圧差動 vs 低電圧差動
| 種類 |
用途 |
代表機種 |
| 高電圧差動 |
パワエレ・モーター・インバータ |
Tek THDP/IsoVu、Keysight N2790 |
| 低電圧差動 |
USB・PCIe等の高速デジタル差動信号 |
Tek P7300、Keysight N7000 |
こんな測定に向いている
○ ハイサイドMOSFETのゲート電圧(VGS)
○ インバータのU・V・W相間電圧
○ 商用電源(AC200V〜400V)の波形
○ 高速通信(USB、PCIe)の差動信号
差動プローブは2点間の電圧差だけを測る
ハイサイドのVgsを測るときの選び方
差動プローブの出番がいちばん多いのが、ハーフブリッジの上側(ハイサイド)のMOSFETの、ゲートとソースの間の電圧Vgsです。ハイサイドのソースは、スイッチングのたびに0Vと入力電圧の間を行き来するので、GNDを基準にして測ることができません。
受動プローブはハイサイドに当てない受動プローブのグランドリードは、オシロを通してコンセントのアースとつながっています。ハイサイドのソースに当てると、その点がアースに短絡され、ヒューズが飛んだり、FETや基板が壊れたりします。回路の電圧が低くても同じです。問題は電圧の高さではなく、ソースがGNDにつながっていないことです。
| 測る場所 | 選ぶもの | 確かめる仕様 |
| ローサイド(ソースがGND) | 受動プローブでよい | — |
| ハイサイド・中低電圧 | 差動プローブ | 帯域・同相電圧の定格・CMRR(同相除去比) |
| ハイサイド・高電圧や高速(SiC・GaNなど) | 高耐圧の差動プローブ、または光絶縁プローブ | 同相電圧の定格と、高い周波数でのCMRR |
| 量産品の状態の見張り | ゲートドライバICの監視機能 | 波形そのものは見えない |
ハイサイドVgsの正しい3つの測り方
差動プローブは、+をゲート、−をソースに当てます。リードは短くし、2本をねじって配線します。リードを離して長く引き回すと、ループが受信アンテナになり、ソースの揺れ(同相の電圧)がVgsの波形に漏れ込みます。同相電圧の定格が足りないプローブを当てると壊れるので、スイッチングノードの最大電圧(たとえば直流400V)に耐える定格を選びます。
高耐圧の差動プローブを選ぶ5つの確認項目
インバーターや数百V以上の電源を測る高耐圧の差動プローブは、カタログに数字がたくさん並びます。見る順番は次の5つです。上ほど「間違えると感電・故障につながる」項目です。
| 順番 | 確認する項目 | 見るところ | よくある見落とし |
| ① | 最大差動電圧と最大同相電圧 | +と−の差として測れる上限(差動)と、2点が大地に対して浮いてよい上限(同相)。両方を超えない | 差動だけ見て、同相の上限を見ていない。ハイサイドではソースの電位そのものが同相電圧になる |
| ② | 測定カテゴリ(CAT) | どこで使ってよいかの区分。同じプローブでも CAT の区分ごとに使ってよい電圧が違う | 電圧だけ見て場所を見ていない。付属のクリップやリードにも別の定格がある |
| ③ | 帯域と、周波数による電圧の下がり(ディレーティング) | 立ち上がりの速い波形なら帯域に余裕があるか。周波数が高いと測ってよい電圧が下がる | 低い周波数の定格のまま、スイッチングの高い周波数の成分を測る |
| ④ | CMRR(同相除去比) | 同相の揺れをどれだけ消せるか。周波数ごとの値を見る | 低い周波数の値だけ見る。CMRR は周波数が上がるほど小さくなる |
| ⑤ | 減衰比 | 大小2段で切り替えられるものが多い。大きい側は高い電圧用、小さい側は小さい信号を細かく見る用 | オシロ側の倍率の設定と合っておらず、表示が桁違いになる |
たとえば Keysight の N2790A(帯域100MHz)は、減衰比を 50:1 と 500:1 で切り替え、差動は最大1,400V(直流+交流のピーク)、同相は最大1,000V、CMRR は1MHzで50dBより大きい、と書かれています(メーカーの製品ページより)。このように差動と同相で上限が別に書かれているので、①は両方を照らします。
ピークで比べる定格は実効値ではなく、スイッチングの瞬間の跳ね上がり(サージ)を含んだピーク値で比べます。どれだけ余裕をとるかは決まった規格値がないので、先に回路のピーク電圧を見積もり、それを上回る定格を選びます。周波数による下がりは、データシートの「電圧と周波数」のグラフで確かめます。
CAT の区分は、電源に近い場所ほど大きなサージが入りうるので、数字の大きい区分が要ります(IEC 61010)。目安は、コンセントにつなぐ機器の側が CAT II、分電盤や工場の固定の配線が CAT III、建物への引き込み口や電力量計の側が CAT IV です。CMRR の意味と、差動プローブがGNDから浮いた2点を測れる仕組みは 差動プローブとは で解説しています。数千Vで速い波形を測るなら、下の⑥で紹介する光絶縁プローブ(光絶縁プローブとは)も候補です。
選んだあとも、当てるときは回路の電源を切ってからつなぎ、オシロ側の減衰比の設定を合わせてから電源を入れます。
④ 能動プローブ(FETプローブ)|GHz級の超高速信号用
プローブ先端に 小さなアンプ(FET増幅器) を内蔵した、ハイエンドプローブです。
特徴
- プローブ先端に 増幅器 が入っている(内部電源が必要)
- 静電容量が 超小さい(1pF以下)→ 回路を邪魔しない
- 帯域が広い(数GHzまで対応)
- ただし最大入力電圧は小さい(±数十V程度)
こんな測定に向いている
○ 高速デジタル信号(クロック数百MHz以上)
○ 微小なノイズ・小信号
○ FPGAやCPUなどの内部信号
○ RF回路(無線・通信)
注意
過電圧(最大入力を超える)で 一瞬で壊れます。1本数十万円のプローブが壊れると痛いので、必ず仕様を確認してから使ってください。
アクティブFETプローブは入力容量0.8pFで高速信号を乱さない
⑤ 電流プローブ|配線を切らずに電流を測る
電圧ではなく 電流(A) を測るための特殊なプローブです。配線を切らずに、クランプ(はさむ)だけで電流が測れます。
3つの方式がある
| 方式 |
特徴 |
用途 |
| CT方式 |
交流専用、安価 |
商用電源(50/60Hz)の電流 |
| ホール方式 |
DCも交流も測れる |
電源・モーター・インバータ |
| ロゴスキー方式 |
大電流・柔らかいコイル |
大電力機器、太いケーブル |
こんな測定に向いている
○ スイッチング電源の入出力電流
○ モーターの相電流(U・V・W)
○ 突入電流の観測
○ 効率測定(電圧×電流で電力計算)
電流プローブの便利さ
配線にクランプするだけ=回路を一切いじらず 電流が測れる。これは電圧プローブにはない大きなメリットです。電力測定をするなら必須。
電流プローブのCT・ホール・ロゴスキーの3方式
⑥ 光絶縁プローブ|究極の絶縁性能
最も高性能で、最も高価なプローブです。プローブ先端からオシロまでを 光ファイバー で接続することで、電気的に完全絶縁します。
特徴
- プローブとオシロが 光ファイバー で接続される
- 電気的に完全絶縁 → ノイズの影響を 完全排除
- 差動プローブをはるかに超える性能(CMRR)
- 価格は100万円〜数百万円
こんな測定に向いている
○ SiC・GaNデバイスの高速スイッチング波形
○ EV・HEVのインバータ評価
○ 大電力機器の高精度測定
○ 普通の差動プローブでは見えない微細波形
主力製品
Tektronix「IsoVu」、Keysight「N7000」シリーズなどが有名。大手メーカーの研究開発部門でなければなかなか見かけません。「こんなプローブもあるんだ」程度で覚えておけばOKです。
光絶縁プローブは光ファイバーで高電圧とオシロを完全に分離する
迷ったときの選び方フロー
「結局どれを選べばいいの?」という人のために、選定フローチャートを用意しました。
Q1. 電圧を測りたい?電流を測りたい?
└ 電流 → 電流プローブ
└ 電圧 → Q2へ
Q2. GND基準で測れる?
└ Yes → Q3へ
└ No(ハイサイド・2点間) → 差動プローブ
Q3. 電圧の大きさは?
└ 300V以下 → 受動プローブ(10:1)
└ 300V〜30kV → 高耐圧プローブ
Q4. 信号は超高速(数百MHz以上)?
└ Yes → 能動プローブ(FETプローブ)
└ No → 上記の選択でOK
Q5. ノイズ環境が厳しく、精密測定が必要?
└ Yes → 光絶縁プローブ(要相談)
○ 現場の3本セット
一般的な電子機器開発の現場では、以下の3本があれば9割の測定をカバーできます:
① 受動プローブ(10:1)× 2〜4本
② 高電圧差動プローブ × 1本
③ 電流プローブ × 1本
5つの質問でプローブを選ぶフロー
よくある質問
Q1. 「受動」と「能動」って何が違うのですか?
受動=中身が抵抗・コンデンサだけ(電源不要)。
能動=中身にトランジスタ(増幅器)が入っている(電源必要)。
能動の方が高性能ですが、価格も高く、過電圧で壊れやすいです。
Q2. 1:1プローブ(減衰なし)も存在するけど、いつ使う?
低電圧・低周波の小信号を測るとき限定です。減衰しないので画面に大きく映りますが、入力範囲が狭く、高周波で性能が悪化します。現代ではあまり使われません。
Q3. 同じ「差動プローブ」でも、高電圧用と低電圧用、どう違う?
高電圧差動は数百〜2000Vを安全に測るためのもの(パワエレ向け)。低電圧差動は数十V以下の高速差動信号(USB・PCIe等)を高精度で測るためのもの。用途が全く違います。
Q4. 高いプローブはレンタルできますか?
はい。レンテック、オリックス・レンテックなどの計測器レンタル会社で、差動プローブや電流プローブを月単位で借りられます。年に数回しか使わない高額プローブは、買わずに借りるのも賢い選択です。
まとめ
○ プローブは6種類に大別される
○ 受動:日常使い、付属品。GND基準300Vまで
○ 高耐圧:数千V以上の高電圧、GND基準のみ
○ 差動:2点間電圧、ハイサイド測定の救世主
○ 能動(FET):超高速・微小信号、GHz帯対応
○ 電流:配線を切らずに電流測定、3方式あり
○ 光絶縁:最高性能、研究開発レベル
○ 現場の3本セット:受動 + 高電圧差動 + 電流プローブ
プローブ選びは「測定したい信号の種類」で9割決まります。迷ったらこの記事の選定フローを思い出してください。次の記事からは、日常使いの主役「受動プローブ」を深掘りしていきます。
現場の3本セット:受動・高電圧差動・電流プローブ
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの道具
回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。
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おすすめの道具
流れている電流を、回路を切らずに測りたいときに便利です。電線をはさむだけで交流の電流を測れる、日置電機のACクランプメーター CM3289です。
ポチップ
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。
つまずきやすい「違い」を一気に解決
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