- スイッチング波形に、立ち上がりのあとにビヨンビヨンと揺れる「リンギング」が出る
- このリンギングが回路の本物の不具合なのか、測定のせいなのか判断できない
- 対策しようにも、何が原因かわからず手が出せない
- 波形にリンギングが出る原因(2種類ある)
- 配線インダクタンスとプローブGNDの「共犯関係」とは何か
- 本物のリンギングと「見かけ上の偽物」を見分ける方法
波形にリンギングが出る原因は2つあります。1つは回路本来のリンギングで、配線インダクタンスと寄生容量がLC共振して起こります。もう1つは「見かけ上のリンギング」で、プローブの長いグランドリード(ワニ口)のインダクタンスとプローブの入力容量が共振して生まれる、測定が作り出した偽物です。グランドリードを短くするだけで消えるリンギングは、後者の偽物です。
目次
そもそもリンギングとは?「電気の揺れ戻し」
リンギングとは、信号が急に変化したあと、波形がビヨンビヨンと揺れて、だんだん落ち着いていく現象です。「減衰振動」とも呼ばれます。鐘(ベル)を叩くと「リーン」と鳴って徐々に消えていく、あの感じに似ているので「リンギング(rinGing=鳴り響く)」と呼ばれます。
電気の世界では、コイル成分(L)とコンデンサ成分(C)が組み合わさると、電気が行ったり来たり揺れる「LC共振」が起こります。これがリンギングの正体です。スイッチング電源やパワエレ回路は、電圧・電流が一瞬で大きく変化するため、リンギングが起きやすい環境です。
ブランコを一度強く押すと、しばらく揺れてから止まりますよね。電気もL(コイル)とC(コンデンサ)があると、エネルギーが両者を行き来して「揺れ」が生まれます。それがリンギングです。

原因①回路本来のリンギング|配線インダクタンスの仕業
1つ目は、回路そのものが持つ本物のリンギングです。犯人は、回路図には描かれていない「寄生成分」です。
どんな配線にも、ごくわずかにコイルのような性質(配線インダクタンス)があります。また部品や配線の間にはコンデンサのような性質(寄生容量)もあります。これらは設計図には現れませんが、確かに存在します。スイッチが高速でON/OFFすると、この配線インダクタンスと寄生容量がLC共振し、本物のリンギングが発生します(出典:ROHM「リンギングとは?」)。
この本物のリンギングは、サージ電圧やノイズの原因になるため、スナバ回路などで対策します。配線インダクタンスとサージの関係は 配線インダクタンスとサージの関係|L×dI/dtがすべてを決める で詳しく解説しています。

原因②見かけ上のリンギング|プローブGNDが犯人
そして、初心者がもっともハマるのが2つ目、「測定が作り出した偽物のリンギング」です。これは回路には存在せず、プローブの当て方が原因で生まれるものです。
犯人はプローブの長いグランドリード(ワニ口クリップのコード)です。この細長いリードにも配線インダクタンスがあります。そしてプローブの先端には入力容量があります。つまり長いグランドリード(L)とプローブの入力容量(C)が、もう一つのLC共振回路を作ってしまうのです(出典:日経クロステック「オシロのリンギングを抑える裏ワザ」)。
これが「共犯関係」の正体
タイトルにある「配線インダクタンスとプローブGNDの共犯関係」とは、まさにこれです。回路側の配線インダクタンスだけでなく、プローブのグランドリードのインダクタンスまでもが共振に加担し、本来より派手なリンギングを画面に映し出すのです。グランドリードが長いほど、この偽リンギングは大きくなります。
スイッチング波形に派手なリンギングが出て、スナバ回路の不良を疑いました。ところが、グランドリードのワニ口をやめて、プローブ先端の短いスプリングクリップ(バネ)に替えた途端、リンギングがほぼ消えました。原因は回路ではなく、長いグランドリードだったのです。危うく問題ない回路を「不良」と判定するところでした。
グランドリードを短くすべき理由は グランドリードを短くする理由|ワニ口の罠 で詳しく解説しています。

本物のリンギング?見分ける簡単テスト
「このリンギングは回路の本物か、測定の偽物か」を見分けるのは、実はとても簡単です。次のテストをしてみてください。
グランドリードを短くしてみる:長いワニ口リードを外し、プローブ先端の短いスプリングクリップ(バネ)に替える。GND接点を測定点のすぐ近くにとる。
波形の変化を見る:リンギングが大きく減った/消えたら、それは「見かけ上の偽物」だった証拠。
残ったら本物:短くしても変わらず残るリンギングは、回路本来のもの。スナバ回路などで対策する。
リンギングを見たら、まず「回路を疑う前にプローブを疑う」。グランドリードを短くしてから判断するのが、無駄な回路改造を防ぐ近道です。

リンギングの対策|偽物と本物で分ける
見かけ上(測定側)の対策
- グランドリードを短くする(スプリングクリップを使う)
- GND接点を測定点のすぐ近くにとる
- ループ面積を最小にする
本物(回路側)の対策
- スナバ回路で振動を吸収する
- 配線を短くしてインダクタンスを減らす
- ゲート抵抗でスイッチング速度を調整する
まずは測定側を疑い、それでも残るなら回路側を対策する。この順番が大切です。本物のリンギングを吸収するスナバ回路は スナバ回路とは?サージ電圧を吸収する仕組み で解説しています。

もう一歩深く|ループ面積がカギ
なぜグランドリードが長いとリンギングが増えるのか、もう一歩だけ深掘りします。キーワードは「ループ面積」です。
プローブの先端と長いグランドリードは、信号が通る「行き」と「帰り」の道を作ります。グランドリードが長いと、この行き帰りが囲む輪っか(ループ)の面積が大きくなります。ループ面積が大きいほどインダクタンスが大きくなり、共振しやすくなる=リンギングが大きくなるのです(出典:OWON「波形が乱れる理由」)。
逆に、短いスプリングクリップでGNDをすぐ近くにとれば、ループ面積はぐっと小さくなり、インダクタンスも減って、偽リンギングが消えます。「グランドリードは短く」が鉄則なのは、このループ面積を小さくするためなのです。
ループ面積とノイズの関係は そもそもノイズとは何か? でも触れています。測定でも回路設計でも、ループ面積を小さくするのは共通の鉄則です。
よくある質問(FAQ)
まとめ
- リンギングは、コイル成分(L)とコンデンサ成分(C)のLC共振で起きる「電気の揺れ」。
- 原因①:回路本来のリンギング(配線インダクタンス+寄生容量)。
- 原因②:見かけ上のリンギング(長いグランドリード+プローブ容量)。これが共犯。
- 見分け方は簡単。グランドリードを短くして、消えれば偽物・残れば本物。
- 鉄則は「回路を疑う前にプローブを疑う」。グランドリードは短く。
派手なリンギングを見ても、すぐ回路を改造してはいけません。まずグランドリードを短くする。それだけで、無駄な作業と誤判定を防げます。これが現場の罠を回避する第一歩です。
実機(DSO-X 3024A+受動プローブ)でスイッチング波形を測定してきた経験をもとに執筆しています。長いグランドリードが作る偽リンギングをスナバ不良と誤判定しかけた失敗など、現場で実際に効いた手順を書いています。
🧭 シリーズ内ナビゲーション
📚 次に読むべき記事
全69記事の全体像と学ぶ順番がわかる、シリーズの目次ページです。
見かけ上のリンギングを生む長いグランドリードの問題を、さらに深掘りします。
本物のリンギングを回路側で抑える代表的な手段を、回路設計の視点から学べます。