- 「7つの条件を全部試すと128回も実験が必要…時間もお金も足りない」
- 「直交表を使えば減らせるらしいけど、どう使えばいいか分からない」
- 「L4とかL8とか言われても、どれを選べばいいの?」
- 「割り付けって何?どの列に何を入れればいいの?」
直交表は「魔法の時間割」です。
普通にやると128回必要な実験を、たった8回に減らせます。しかも「どの条件が一番効くか」はちゃんと分かる。この記事では、L4直交表とL8直交表の使い方を「ホテルのバイキング」のたとえで、誰でも分かるように解説します。
実験計画法を学んでいると、必ず出てくるのが「直交表」という言葉。
「L4」「L8」「L16」…なんだか暗号のようですよね。
でも安心してください。直交表の本質は、とてもシンプルです。
「うまく組み合わせれば、少ない回数で全部の情報が手に入る」
これだけです。
この記事を読み終わる頃には、あなたも「なるほど、だから実験回数が減るのか!」と腹落ちしているはずです。
直交表の「そもそもの仕組み」を知りたい方は、まずこちらをお読みください。
👉 【完全図解】直交配列表とは?「実験128回→8回」に激減させる魔法の仕組み
目次
🍽️ 直交表は「ホテルのバイキング」だ
直交表を理解するために、まず「ホテルのバイキング」をイメージしてください。
あなたは今、豪華なホテルのバイキングにいます。
選べる料理は3種類:
・メイン料理(ステーキ or 魚料理)
・サイドディッシュ(サラダ or スープ)
・ドリンク(赤ワイン or 白ワイン)
「どの組み合わせが一番満足度が高いか」を知りたいとします。
🤯 普通にやると「8回」食べなきゃいけない
3つの料理カテゴリ、それぞれ2つの選択肢。全部の組み合わせを試すと…
2 × 2 × 2 = 8通り
つまり、8回バイキングに通わないと「最高の組み合わせ」が分かりません。
お腹も財布も大変ですよね。
✨ でも「4回」で済む方法がある
ここで登場するのが「L4直交表」です。
L4直交表を使うと、4回の食事だけで「どの料理が満足度に一番影響するか」が分かります。
なぜそんなことが可能なのか?
それは、L4直交表が「バランスよく組み合わせを選んでくれる」からです。

📊 L4直交表とは?「最小の魔法陣」
L4直交表は、「3つの因子を4回の実験で調べる」ための表です。
「L」は「Latin square(ラテン方格)」の頭文字、「4」は「4回の実験」を意味します。
| 実験No. | 第1列 | 第2列 | 第3列 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 1 | 1 |
| 2 | 1 | 2 | 2 |
| 3 | 2 | 1 | 2 |
| 4 | 2 | 2 | 1 |
※ 1と2は水準(例:1=ステーキ、2=魚料理)を表します
🔍 この表の「魔法」に気づきましたか?
L4直交表をよく見てください。あることに気づきませんか?
第1列を見てください。「1」が2回、「2」が2回。
第2列も、第3列も同じです。
これは「どの因子も偏りなく試せている」ことを意味します。
たとえば第1列と第2列だけを見ると…
・(1, 1) → 実験No.1
・(1, 2) → 実験No.2
・(2, 1) → 実験No.3
・(2, 2) → 実験No.4
4つの組み合わせが、すべて1回ずつ登場しています!
これが「直交」の意味です。どの因子の組み合わせもバランスよく試せている。
🍽️ バイキングに当てはめてみよう
先ほどのバイキングの例に、L4直交表を当てはめてみましょう。
| 食事No. | メイン料理 | サイド | ドリンク | 満足度 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 🥩 ステーキ | 🥗 サラダ | 🍷 赤ワイン | 85点 |
| 2 | 🥩 ステーキ | 🍲 スープ | 🥂 白ワイン | 78点 |
| 3 | 🐟 魚料理 | 🥗 サラダ | 🥂 白ワイン | 72点 |
| 4 | 🐟 魚料理 | 🍲 スープ | 🍷 赤ワイン | 80点 |
たった4回の食事で、こんなことが分かります。
メイン料理の効果
・ステーキの平均:(85 + 78) ÷ 2 = 81.5点
・魚料理の平均:(72 + 80) ÷ 2 = 76点
→ ステーキの方が満足度が高い!
サイドディッシュの効果
・サラダの平均:(85 + 72) ÷ 2 = 78.5点
・スープの平均:(78 + 80) ÷ 2 = 79点
→ ほぼ同じ。どちらでもOK。
ドリンクの効果
・赤ワインの平均:(85 + 80) ÷ 2 = 82.5点
・白ワインの平均:(78 + 72) ÷ 2 = 75点
→ 赤ワインの方が満足度が高い!
結論:「ステーキ + 赤ワイン」が最高の組み合わせと分かりました。
8回食べなくても、4回で答えが出たのです。これが直交表の威力です。

📊 L8直交表とは?「7つの因子を8回で調べる」
L4直交表は便利ですが、調べられる因子は最大3つまで。
もっと多くの因子を調べたい場合は、L8直交表を使います。
7つの因子(各2水準)を調べようとすると…
普通にやると:2⁷ = 128回の実験が必要
L8直交表を使うと:たった8回で済む
実験回数が16分の1になります!
| No. | 列1 | 列2 | 列3 | 列4 | 列5 | 列6 | 列7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
| 2 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 |
| 3 | 1 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 |
| 4 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 |
| 5 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 |
| 6 | 2 | 1 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 |
| 7 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 |
| 8 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 |
L8直交表も、L4と同じ「魔法の性質」を持っています。
- 各列で「1」と「2」が同じ回数(4回ずつ)出てくる
- どの2列を取り出しても、4つの組み合わせが2回ずつ出てくる
この「バランスの良さ」が、少ない実験回数でも正確な結果を出せる秘密です。
🎯 割り付けとは?「どの列に何を入れるか」を決める
直交表を使う上で、最も重要な作業が「割り付け」です。
割り付けとは、「直交表の各列に、どの因子を対応させるか」を決めること。
割り付けは、「席替えの座席表を作る」ようなものです。
・教室(直交表)には決まった席(列)がある
・生徒(因子)をどの席に座らせるかを決める
・ただし「相性の悪い生徒同士」は離れた席にする必要がある
この「相性の悪い生徒同士」が、交互作用を調べたい因子の組み合わせです。
⚠️ 割り付けで絶対に守るべきルール
L8直交表で最も重要なルールは、「交互作用が出る列を避ける」ことです。
L8直交表では、2つの列を掛け算すると、別の列になるという性質があります。
例:
・列1 × 列2 = 列3 に交互作用が出る
・列1 × 列4 = 列5 に交互作用が出る
・列2 × 列4 = 列6 に交互作用が出る
つまり、列1と列2に因子を割り付けたら、列3には何も入れてはいけない(交互作用が混ざるため)。
これを視覚的に表したのが「線点図」です。
線点図の詳しい使い方はこちらで解説しています。
👉 線点図の正体|なぜ点と線?「L4」で学ぶ、一番やさしい割り付け入門

🔧 実践例:L8直交表で「製品品質」を最適化する
ここからは、実際の製造現場を想定した例で解説します。
調べたい因子は4つ:
A:金型温度(低い or 高い)
B:射出圧力(低い or 高い)
C:冷却時間(短い or 長い)
D:材料ロット(ロット1 or ロット2)
普通にやると 2⁴ = 16回の実験が必要。
でもL8直交表を使えば8回で済みます。
📝 ステップ1:因子を列に割り付ける
4つの因子をL8直交表のどの列に入れるか決めます。
今回は「A×B の交互作用も調べたい」とします。
| 列番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 割り付け | A | B | A×B | C | (空き) | (空き) | D |
※ 列3は「A×Bの交互作用」を見るために空けておく
📝 ステップ2:実験を実施する
割り付けに従って、8回の実験を行い、結果(強度)を記録します。
| No. | A:金型温度 | B:射出圧力 | C:冷却時間 | D:材料ロット | 強度(MPa) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 低い | 低い | 短い | ロット1 | 42 |
| 2 | 低い | 低い | 長い | ロット2 | 48 |
| 3 | 低い | 高い | 短い | ロット2 | 55 |
| 4 | 低い | 高い | 長い | ロット1 | 58 |
| 5 | 高い | 低い | 短い | ロット2 | 52 |
| 6 | 高い | 低い | 長い | ロット1 | 56 |
| 7 | 高い | 高い | 短い | ロット1 | 62 |
| 8 | 高い | 高い | 長い | ロット2 | 65 |
📝 ステップ3:各因子の効果を計算する
各因子の「水準1の平均」と「水準2の平均」を計算して、どの因子が効いているか調べます。
A:金型温度の効果
・低い(実験1,2,3,4)の平均:(42+48+55+58)÷4 = 50.75 MPa
・高い(実験5,6,7,8)の平均:(52+56+62+65)÷4 = 58.75 MPa
→ 差 = 8.0 MPa(効果大!)
B:射出圧力の効果
・低い(実験1,2,5,6)の平均:(42+48+52+56)÷4 = 49.5 MPa
・高い(実験3,4,7,8)の平均:(55+58+62+65)÷4 = 60.0 MPa
→ 差 = 10.5 MPa(最も効果大!)
C:冷却時間の効果
・短い(実験1,3,5,7)の平均:(42+55+52+62)÷4 = 52.75 MPa
・長い(実験2,4,6,8)の平均:(48+58+56+65)÷4 = 56.75 MPa
→ 差 = 4.0 MPa(やや効果あり)
D:材料ロットの効果
・ロット1(実験1,4,6,7)の平均:(42+58+56+62)÷4 = 54.5 MPa
・ロット2(実験2,3,5,8)の平均:(48+55+52+65)÷4 = 55.0 MPa
→ 差 = 0.5 MPa(ほぼ効果なし)
強度を最大化するには…
A:金型温度 → 高い
B:射出圧力 → 高い
C:冷却時間 → 長い
D:材料ロット → どちらでもOK(効果なし)
たった8回の実験で、最適条件が見つかりました!
🤔 L4とL8、どちらを選ぶ?
直交表の選び方は、「調べたい因子の数」で決まります。
| 直交表 | 実験回数 | 調べられる因子数 | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| L4 | 4回 | 最大3因子 | 因子が少ない、まず試したい時 |
| L8 | 8回 | 最大7因子 | 因子が多い、交互作用も見たい時 |
| L16 | 16回 | 最大15因子 | 因子がとても多い時 |
- 因子が2〜3個 → L4 で十分
- 因子が4〜7個 → L8 を使う
- 交互作用も調べたい → 余裕を持って大きめの直交表を選ぶ
- 迷ったらL8 → 汎用性が高く、実務で最も使われる

📝 まとめ:直交表は「魔法の時間割」
- 直交表は、実験回数を大幅に減らしながら、正確な結果を得るための「魔法の組み合わせ表」
- L4直交表:4回の実験で最大3因子を調べられる
- L8直交表:8回の実験で最大7因子を調べられる(128回→8回!)
- 割り付け:直交表の「どの列に、どの因子を入れるか」を決める作業
- 交互作用を調べたい場合は、その列を空けておく必要がある
- 直交表を使えば、少ない実験で「どの因子が一番効くか」「最適条件は何か」が分かる
直交表は、一見すると「ただの数字の表」に見えます。
でも実は、先人の数学者たちが考え抜いた「究極のバランス」が詰まった芸術作品なのです。
このバランスのおかげで、私たちは少ない実験回数で、多くの情報を得ることができます。
まずはL4直交表から試してみてください。3つの因子を4回の実験で調べるだけでも、その威力を実感できるはずです。
実験の組み合わせを効率的に設計するための表。どの2列を取り出しても、すべての組み合わせが均等に登場する性質(直交性)を持つ。
直交表の種類を表す記号。「L」はLatin square(ラテン方格)、数字は実験回数を意味する。L8なら8回の実験で使う表。
直交表の各列に、どの因子を対応させるかを決める作業。交互作用を考慮して適切な列を選ぶ必要がある。
実験で変化させる条件のこと。例:温度、圧力、時間など。英語ではFactor。
因子が取りうる具体的な値。例:温度の因子なら「100℃」と「150℃」の2水準。英語ではLevel。
2つの因子が組み合わさったときに生まれる特別な効果。因子AとBの交互作用は「A×B」と書く。
- □ L4直交表の構造を暗記している
- □ L8直交表の構造を理解している
- □ 「直交」の意味を説明できる
- □ 割り付けの手順を理解している
- □ 交互作用が出る列を避ける理由を説明できる
- □ 各因子の効果を計算できる
- □ 最適条件を導き出せる
🧪 直交表をマスターすれば、あなたの実験効率は劇的に変わります。
まずはL4から試してみましょう!
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