📌 この記事でわかること
- 修正項(CT)とは何か?
- なぜ「T²/N」を引くのか?
- 数値実験で「引く意味」を体感する
- 数学的な証明(なぜこの式になるのか)
こんにちは、シラスです。
実験計画法や分散分析、あるいはQC検定の勉強を始めると、必ず登場する謎の計算式があります。
CT = T² / N
教科書には「データの総和(T)を二乗して、データ数(N)で割れ」と書いてあります。そして、平方和(S)を求めるために、必ずこの CT を引き算させられます。
😔 こんなモヤモヤありませんか?
- 「計算手順は覚えたけど、これ、一体何のために引いてるの?」
- 「データの二乗和から引くことに、何の意味があるの?」
- 「そもそも『修正項』って何を『修正』してるの?」
今日は、修正項(CT)がやっている「引く作業」の正体を、具体的な数字のシミュレーションで解き明かします。
目次
🤔 まず「修正項」という言葉について
いきなり「修正項」と言われても、何を修正するのかわかりませんよね。
実はこの名前、英語の「Correction Term」をそのまま訳したものです。
💡 なぜ「修正」と呼ぶの?
私たちが計算したいのは「データのバラつき」です。
でも、データをそのまま二乗して足すと、「平均値の分のエネルギー」も一緒に計算されてしまいます。
この「余計な分」を取り除いて、純粋なバラつきだけにする作業が「修正」です。
だから「修正項」と呼ばれます。
まだピンとこないかもしれません。でも大丈夫です。この後の数値実験で、「あ、そういうことか!」とスッキリしますよ。
👟 結論:修正項とは「下駄(ゲタ)」を脱がす作業
まずは結論からイメージしましょう。
修正項を引くという行為は、グラフの「基準線(ゼロ点)」を平均値の位置までズラす作業です。
📊 修正項(CT)の役割
データ全体が持っている数値のうち、
「平均的な底上げ分(平均値レベル)」を取り除くこと。
🤔 なぜ引くの?
私たちが知りたいのは「平均値からのバラつき」だけ。
データの高さに含まれる「余計な標高(下駄)」が邪魔なので、CTを使ってキャンセルしている。
たとえ話:身長測定と「厚底靴」
こんな場面をイメージしてください。
3人の身長を測りたいのですが、全員が10cmの厚底靴を履いています。
- Aさん:靴込みで173cm(本当は163cm)
- Bさん:靴込みで174cm(本当は164cm)
- Cさん:靴込みで175cm(本当は165cm)
3人の「身長のバラつき」を知りたいとき、
靴を履いたまま測っても、脱いで測っても、バラつきは同じ(±1cm)ですよね?
でも、計算するときは「靴の分(10cm)」が邪魔になります。
この「靴の分を引く」のが修正項の役割です。
まだ「ふーん」くらいかもしれません。では、実際の数字で確かめてみましょう。
🔬 数値実験:データが「100」増えてもバラつきは同じ?
ここに、2つのデータセットがあります。
📊 データA
{ 3, 4, 5 }
📊 データB
{ 103, 104, 105 }
データBは、データAに「100」を足しただけです。
直感的にわかる通り、この2つのグループの「バラつき具合」は全く同じですよね?(どちらも、真ん中から ±1 ズレているだけです)
手順1:そのまま二乗して足してみる(Σx²)
まず、何も考えずにそれぞれのデータを二乗して合計します。
| データ | 計算式 | 結果(Σx²) |
|---|---|---|
| データA | 3² + 4² + 5² = 9 + 16 + 25 | 50 |
| データB | 103² + 104² + 105² | 32,450 |
⚠️ おかしい!
バラつきは同じはずなのに、データBの方は「32,450」という巨大な数字になってしまいました。
これは、データBに含まれる「100」という「底上げ分(下駄)」も一緒に二乗して合計してしまったからです。
このままでは「バラつき」の指標として使えません。
そこで登場するのが修正項(CT)です。
手順2:修正項(T²/N)を計算する
修正項の公式を使います。
| データ | 合計(T) | データ数(N) | CT = T²/N |
|---|---|---|---|
| データA | 12 | 3 | 12²/3 = 144/3 = 48 |
| データB | 312 | 3 | 312²/3 = 97344/3 = 32,448 |
データBの修正項は、ものすごく大きな値(32,448)になりました。これが「底上げ分のエネルギー」です。
手順3:引き算をする(S = Σx² − CT)
さあ、最後に引き算(修正)をします。
| データ | Σx² | CT | 平方和(S) |
|---|---|---|---|
| データA | 50 | 48 | 2 |
| データB | 32,450 | 32,448 | 2 |
🎉 なんと!どちらも「2」になりました!
修正項(CT)を引くことで、データに含まれていた「100」という邪魔な下駄がきれいに消え去り、
純粋な「バラつき(2)」だけが残りました。
これが修正項の役割です。
どんなにデータが大きくても、「平均値の分のパワー」を強制的にキャンセルして、バラつきだけをあぶり出すのです。

🎨 イメージ図で理解を深めよう
数値だけではピンとこない方のために、グラフでイメージしてみましょう。
イメージ①:棒グラフの「底」を持ち上げる
【修正前】ゼロを基準にしたグラフ
データB(103, 104, 105)を棒グラフにすると、
3つの棒は「100」のあたりから伸びている。
棒の長さの大部分は「100」という共通の底上げ分。
【修正後】平均値を基準にしたグラフ
基準線を「104(平均値)」まで持ち上げると、
3つの棒は「-1, 0, +1」という純粋なズレだけを表す。
これが「修正」の意味です。
イメージ②:エレベーターの「階数表示」
100階建てのビルがあります。
3人が「103階・104階・105階」にいます。
「3人の高さの差」を知りたいとき、
わざわざ「地上からの高さ(100階分 + α)」を計算する必要はありません。
「104階を基準にして、-1階・0階・+1階」と考えればいい。
修正項は、この「100階分を引く」作業をしています。
一元配置実験の計算の全体像|分散分析表を作るまでの地図|一元配置実験③ →

📐 そもそも、なぜこの式になるの?(数学的な証明)
「意味はわかったけど、なんで T²/N を引くことになるの?」
数式が気になる方のために、中学・高校数学レベルで丁寧に証明してみましょう。
🌸 数式が苦手な方へ
この章は読み飛ばしてもOKです。
大切なのは「修正項 = 下駄を脱がす」というイメージを持つこと。
証明は「なるほど、だからこの式なのか」と納得したい人向けです。
本来、平方和(S)の定義は「偏差(平均とのズレ)の二乗の合計」です。
S = Σ(x − x̄)²
(各データと平均値の差を二乗して、全部足す)
このカッコの中身を展開して、Σを分配していきます。
ステップ1:カッコを展開する
(x − x̄)² = x² − 2x·x̄ + x̄²
これをΣの中に入れます。
S = Σ(x² − 2x·x̄ + x̄²)
ステップ2:Σをバラバラにする
足し算・引き算は分けて書けます。
S = Σx² − Σ(2x·x̄) + Σx̄²
ステップ3:定数を整理する(ここが重要!)
Σに関係ない「定数」を整理します。
- 2とx̄(平均値)は定数なので、Σの外に出せます。
- 最後の項のΣx̄²は、「定数x̄²をデータ数N個分足す」という意味なので、N × x̄²になります。
S = Σx² − 2x̄·Σx + N·x̄²
ステップ4:T(合計)とN(データ数)に置き換える
ここで、以下の関係式を使います。
- データの合計:Σx = T
- 平均値:x̄ = T / N
これを式に代入して整理すると…
S = Σx² − 2(T/N)·T + N·(T/N)²
= Σx² − 2T²/N + T²/N
= Σx² − T²/N
ステップ5:完成!
S = Σx² − T²/N
後ろの部分(T²/N)が、まさに修正項(CT)です!
つまり、修正項はポッと出の公式ではなく、「偏差の二乗」を展開して整理したら自然と出てきたものなのです。
⚠️ 実務での注意点:電卓計算のミスを防ぐ
修正項の意味がわかったところで、実務(QC検定など)での計算ミスを防ぐコツをお伝えします。
🚨 一番多いミス
| ❌ 間違い | 二乗してから、足す → Σx² |
| ⭕️ 正解 | 足してから、二乗する → (Σx)² = T² |
電卓を叩くときは、以下の順番を体に染み込ませてください。
🔢 電卓の手順
① まず全部足す(T)
② 「× =」で二乗する
③ データ数(N)で割る
📝 まとめ
この記事のポイント
- 修正項(CT)は、データの「底上げ分(平均レベル)」をキャンセルする装置
- 修正項を引くことで、純粋なバラつきだけが残る
- 数学的には、偏差の二乗を展開したら自然と出てくる式
- 電卓計算は「足す → 二乗 → 割る」の順番を守る
💡 こう考えると楽しくなる
修正項(CT)は、単なる計算手続きではありません。
「データを原点中心から、平均値中心の視点に切り替えるスイッチ」
こう考えると、毎回の計算が少し楽しくなりませんか?
「よし、まずはこのデータの余計な下駄(CT)を脱がせてやるか!」
と思いながら計算すれば、もう実験計画法は怖くありません。
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- 一元配置実験とは?1つの因子で白黒つける実験の基本形
- 一元配置実験の計算の全体像|分散分析表を作るまでの地図
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