実験計画法

【完全図解】擬水準法とは?|2水準系直交表に3水準因子を入れる「裏技」をL8で徹底解説

😣 こんな悩みはありませんか?
  • L8直交表を使いたいのに、因子の水準が「3つ」で入らない…
  • 「擬水準法」と「多水準作成法」の違いがわからない
  • QC検定1級の過去問で擬水準法が出てきたけど、解説を読んでもピンとこない
  • 「形式的な4水準因子P」って何?なぜ3列も使うの?
✅ この記事でわかること
  • 擬水準法とは何か、なぜ必要なのかが直感的にわかる
  • 多水準作成法との違いを比較表でスッキリ整理
  • L8直交表への3水準因子の割り付け方法を図解でマスター
  • 「重要な水準を擬水準に選ぶ」理由がわかる

「L8直交表を使って実験を計画したいのに、因子Aの水準が3つある…」

こんな状況に直面したことはありませんか?

L8直交表は「2水準」の因子を割り付けるための表です。でも実務では、「温度を3段階で変えたい」「材料を3種類試したい」など、3水準の因子を扱いたい場面がよくありますよね。

そんなときに使える「裏技」が、今回解説する擬水準法(ぎすいじゅんほう)です。

この記事では、擬水準法の考え方を「なぜそうするのか?」から丁寧に解説します。QC検定1級でも頻出のテーマなので、しっかりマスターしていきましょう。

📘 前提知識

この記事を読む前に、L8直交表の基本を押さえておくとスムーズです。

【完全図解】L4直交表・L8直交表の使い方|割り付けの全手順 →

そもそも何が問題なのか?|2水準系直交表と3水準因子のミスマッチ

まずは「なぜ擬水準法が必要なのか?」という問題の背景から理解しましょう。

L8直交表は「2水準専用」の表

L8直交表は、2水準の因子を最大7個まで割り付けられる便利な表です。

たとえば「温度(高/低)」「圧力(高/低)」「時間(長/短)」のように、各因子が2つの水準を持つ場合に使います。

📐 L8直交表の基本スペック
  • 実験回数:8回
  • 列の数:7列
  • 各列の水準:2水準(1と2)
  • 割り付け可能な因子:最大7個(2水準因子)

でも実務では「3水準因子」を使いたい場面がある

ところが、実際の実験では「3つの水準を試したい」という場面がよくあります。

たとえば、こんなケースです。

  • 材料の種類:材料X、材料Y、材料Z の3種類を比較したい
  • 温度:100℃、150℃、200℃ の3段階で効果を見たい
  • 添加量:少量、標準、多量 の3レベルで検証したい

このとき、「じゃあL9直交表(3水準系)を使えばいいのでは?」と思うかもしれません。

確かにそれも一つの選択肢です。でも、他の因子がすべて2水準だったらどうでしょう?

因子 水準数 具体例
因子A(材料) 3水準 X、Y、Z
因子B(温度) 2水準 低、高
因子C(圧力) 2水準 低、高

このように「3水準因子が1つだけ」で、残りは2水準の場合、L9を使うと2水準因子の割り付けが難しくなります。

「できればL8を使いたい。でも3水準因子がある…」

この矛盾を解決するのが、擬水準法なのです。

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直交表の種類と選び方の全体像はこちらで解説しています。

【完全図解】直交配列表とは?「実験128回→8回」に激減させる魔法の仕組み →

2つの解決策|「多水準作成法」と「擬水準法」の違い

2水準系直交表に3水準以上の因子を入れる方法は、大きく分けて2つあります。

方法①:多水準作成法(4水準を作る)

多水準作成法は、2つの列を組み合わせて「4水準」を作る方法です。

たとえば、[1]列と[2]列を使うと、以下のように4つの組み合わせができます。

[1]列 [2]列 組み合わせ 4水準因子
1 1 (1,1) 第1水準
1 2 (1,2) 第2水準
2 1 (2,1) 第3水準
2 2 (2,2) 第4水準

2列 × 2水準 = 4通りの組み合わせができるので、4水準の因子を割り付けられます。

でも、これだと「3水準」の因子には1つ水準が余ってしまいますよね。

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多水準作成法の詳しい解説はこちら。

【実験計画法】多水準作成法とは?L8直交表で「4水準」を作るテクニック →

方法②:擬水準法(3水準を入れる)

擬水準法は、多水準作成法を応用して「3水準因子」を割り付ける方法です。

考え方はシンプルです。

💡 擬水準法のアイデア

形式的に4水準を作り、そのうち1つの水準を「ダミー(擬水準)」として、
実際の3水準因子の「どれか1水準」を2回使う

たとえば、4つの椅子(第1~第4水準)があって、座る人が3人(A₁、A₂、A₃)しかいない場合を想像してください。

1人が2つの椅子に座ることはできませんが、「同じ人が2回登場する」ことはできますよね。

  • 第1水準 → A₁
  • 第2水準 → A₂
  • 第3水準 → A₃
  • 第4水準 → A₁(もう一度登場) ← これが「擬水準」

この「A₁をもう一度使う」というのが擬水準法の核心です。

多水準作成法と擬水準法の比較

比較項目 多水準作成法 擬水準法
使用する列数 2列 3列(交互作用列を含む)
作れる水準数 4水準 3水準(形式的には4水準)
各水準の実験回数 均等(各2回ずつ) 不均等(擬水準の水準は2倍)
分散分析 列の平方和をそのまま使用 二元表を作成して再計算
メリット 計算がシンプル 重要な水準を多く実験できる
使う場面 4水準因子を入れたいとき 3水準因子を入れたいとき
⚠️ ポイント
擬水準法では、擬水準に選んだ水準(上の例ではA₁)の実験回数が他の水準の2倍になります。
そのため、「重要な水準」「詳しく調べたい水準」を擬水準に選ぶのがポイントです。

擬水準法の考え方|「1つの水準を2回使う」とは?

擬水準法の核心を、もう少し詳しく見ていきましょう。

イメージ:3人家族が4席のテーブルに座る

擬水準法を理解するために、こんな例え話を考えてみましょう。

レストランに行ったら、4人掛けのテーブルに案内されました。でも、あなたの家族は3人。1席余ってしまいます。

このとき、どうしますか?

  • 選択肢A:空席のまま放置する → NG(実験では「空の水準」は作れない)
  • 選択肢B:お父さんに2席分座ってもらう → OK(同じ人が2回登場)

擬水準法は、まさに「選択肢B」の発想です。

席(形式的4水準) 座る人(実際の3水準) 備考
席1(P₁) お父さん(A₁)
席2(P₂) お母さん(A₂)
席3(P₃) 子ども(A₃)
席4(P₄) お父さん(A₁) ← 擬水準(2回目の登場)

この例では、「お父さん(A₁)」が席1と席4の両方に座っています。つまり、A₁の実験回数が他の水準の2倍になるわけです。

なぜ「重要な水準」を擬水準に選ぶのか?

擬水準に選んだ水準は、実験回数が2倍になります。

ということは、その水準に関するデータが多く集まるので、より精度の高い分析ができるということです。

だから、擬水準に選ぶのは:

  • 重要な水準(本命の条件、最も知りたい条件)
  • 実験しやすい水準(コストが低い、準備が簡単)
  • 基準となる水準(現行条件、標準条件)

実務では、「現行の生産条件」を擬水準に選ぶことが多いです。現行条件のデータが多く集まれば、改善効果の比較がしやすくなりますからね。

💡 ポイント
擬水準法では、どの水準を擬水準に選ぶかが重要な設計判断になります。
「詳しく調べたい水準」「重要な水準」を選ぶのがコツです。

L8直交表への割り付け方法|3列を使って4水準を作る

では、具体的にL8直交表へ3水準因子を割り付ける方法を見ていきましょう。

ステップ①:交互作用列を含む3列を選ぶ

擬水準法では、2つの列とその交互作用列(計3列)を使います。

L8直交表では、列同士の交互作用が別の列に現れる関係(交絡)があります。

たとえば、[1]列と[2]列の交互作用は[3]列に現れます

📐 L8の列間の関係(一部)
  • [1] × [2] = [3]
  • [1] × [4] = [5]
  • [2] × [4] = [6]
  • [1] × [2] × [4] = [7]

擬水準法で3水準因子Aを割り付けるには、[1]列、[2]列、[3]列の3列を使います。

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線点図と交互作用列の関係はこちらで詳しく解説しています。

【実験計画法】線点図の正体|なぜ点と線?「L4」で学ぶ割り付け入門 →

ステップ②:3列の組み合わせで形式的4水準因子Pを作る

[1]列、[2]列、[3]列の値の組み合わせを見ると、L8の8行で以下のパターンが現れます。

実験No. [1]列 [2]列 [3]列 形式的4水準P
1 1 1 1 P₁
2 1 1 2 P₁
3 1 2 2 P₂
4 1 2 1 P₂
5 2 1 2 P₃
6 2 1 1 P₃
7 2 2 1 P₄
8 2 2 2 P₄

ここで重要なのは、P₁~P₄がそれぞれ2回ずつ現れるということです。

つまり、形式的な4水準因子Pは、各水準が2回ずつ均等に実験されます。

⚠️ 注意
上の表で「P₁、P₁、P₂、P₂…」と同じ水準が連続しているのは、直交表の並び順の関係です。
実際の実験はランダムな順序で行うので、連続実験による影響はありません。

ステップ③:形式的4水準Pと実際の3水準Aを対応させる

いよいよ、形式的な4水準(P₁~P₄)と実際の3水準(A₁、A₂、A₃)を対応させます。

ここで、どの水準を擬水準(2回使う水準)にするかを決める必要があります。

今回は、A₁を重要な水準として、擬水準に選ぶことにしましょう。

形式的4水準P 実際の3水準A 実験回数
P₁ A₁ 2回
P₂ A₂ 2回
P₃ A₃ 2回
P₄(擬水準) A₁(再利用) 2回

この対応関係により、最終的な各水準の実験回数は以下のようになります。

水準 対応するP 合計実験回数
A₁ P₁ + P₄ 4回(2倍)
A₂ P₂ 2回
A₃ P₃ 2回

このように、A₁(擬水準に選んだ水準)は4回、A₂とA₃は各2回の実験になります。

💡 ポイント
擬水準法では、水準によって実験回数(繰返し数)が不均等になります。
この不均等さが、後の分散分析の計算に影響してきます(後編で詳しく解説)。

完成した割り付け表

以上をまとめると、L8直交表への割り付けは以下のようになります。

例として、因子A(3水準:材料X, Y, Z)と因子B(2水準:低, 高)を割り付ける場合を考えます。

No. [1]
A
[2]
A
[3]
A
[4]
B
[5]
A×B
[6]
A×B
[7]
A×B
因子A
(実際)
因子B
(実際)
1 1 1 1 1 1 1 1 材料X
2 1 1 2 2 2 2 2 材料X
3 1 2 2 1 2 1 2 材料Y
4 1 2 1 2 1 2 1 材料Y
5 2 1 2 1 1 2 1 材料Z
6 2 1 1 2 2 1 2 材料Z
7 2 2 1 1 2 2 1 材料X(擬)
8 2 2 2 2 1 1 2 材料X(擬)

黄色でハイライトした7行目と8行目が「擬水準」で、材料X(A₁)が再度登場しています。

まとめ|擬水準法の全体像

この記事では、擬水準法の考え方と割り付け方法を解説しました。

📐 擬水準法のポイントまとめ
  • 目的:2水準系直交表(L8など)に3水準因子を割り付ける
  • 方法:3列を使って形式的4水準因子Pを作り、1水準を2回使う
  • 擬水準の選び方:重要な水準、詳しく調べたい水準を選ぶ
  • 結果:擬水準に選んだ水準の実験回数が2倍になる
  • 注意点:分散分析では二元表を作成して計算する必要がある

擬水準法を使えば、L8直交表のまま3水準因子を扱えるので、実験計画の柔軟性が大きく広がります。

ただし、分散分析の計算は通常の直交表とは異なる方法が必要です。

次の【後編】では、擬水準を含む因子の平方和・自由度の計算方法を、具体的な例題で詳しく解説します。

📝 後編の内容(予告)
  • 擬水準を含む因子Aの平方和の求め方
  • AB二元表の作成と繰返し数の違いへの対処
  • 交互作用A×Bの平方和の計算
  • 誤差の平方和の2つの求め方
  • 自由度の計算方法

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📘 【実験計画法】多水準作成法とは?L8直交表で「4水準」を作るテクニック →

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