回帰分析

【超入門】重回帰分析とは?|複数の要因で結果を予測する「単回帰の進化版」を完全図解

😣 こんな悩みはありませんか?
  • 「重回帰分析って何?単回帰と何が違うの?」
  • 「複数の要因で結果を予測したいけど、やり方がわからない…」
  • 「偏回帰係数って何?普通の回帰係数と違うの?」
✅ この記事でわかること
  • 重回帰分析の基本的な考え方と単回帰との違い
  • 偏回帰係数の意味を直感的に理解
  • 重回帰分析がどんな場面で使えるかの具体例
  • QC検定・実務で必要な全体像を把握

「売上を予測したい」「品質に影響する要因を知りたい」

こんなとき、1つの要因だけで予測しても、なかなかうまくいかないですよね。

たとえば、マンションの価格を予測したいとき。「面積」だけで予測するより、「面積」「駅からの距離」「築年数」の3つを組み合わせた方が、ずっと正確に予測できるはずです。

このように、複数の要因(説明変数)を使って結果(目的変数)を予測する手法が「重回帰分析」です。

この記事では、重回帰分析の基本的な考え方を、数式をできるだけ使わずに解説します。

🔄 単回帰と重回帰の違い

まず、「単回帰分析」と「重回帰分析」の違いを明確にしましょう。

📊 単回帰分析:1つの要因で予測

単回帰分析は、1つの説明変数(x)から1つの目的変数(y)を予測する手法です。

📐 単回帰分析の式
y = β₀ + β₁x

・y:目的変数(予測したいもの)
・x:説明変数(予測に使う要因)
・β₀:切片、β₁:回帰係数

例えば、「面積(x)からマンション価格(y)を予測する」といった使い方です。

📊 重回帰分析:複数の要因で予測

重回帰分析は、複数の説明変数(x₁, x₂, x₃...)から1つの目的変数(y)を予測する手法です。

📐 重回帰分析の式
y = β₀ + β₁x₁ + β₂x₂ + β₃x₃ + ...

・y:目的変数(予測したいもの)
・x₁, x₂, x₃...:複数の説明変数
・β₁, β₂, β₃...:偏回帰係数(各要因の影響度)

例えば、「面積(x₁)・駅からの距離(x₂)・築年数(x₃)からマンション価格(y)を予測する」といった使い方です。

📋 比較表:単回帰 vs 重回帰

項目 単回帰分析 重回帰分析
説明変数の数 1つ 2つ以上
回帰式 y = β₀ + β₁x y = β₀ + β₁x₁ + β₂x₂ + ...
グラフのイメージ 直線(2次元) 平面・超平面(3次元以上)
係数の呼び方 回帰係数 偏回帰係数
予測精度 要因が1つだけなので限界あり 複数の要因を考慮できるので高い
💡 ポイント
重回帰分析は「単回帰分析の進化版」と考えてOKです。説明変数が1つなら単回帰、2つ以上なら重回帰。それだけの違いです。

🤔 なぜ重回帰分析が必要なのか?

「単回帰でも予測できるなら、わざわざ複雑な重回帰を使う必要あるの?」

と思うかもしれません。でも、現実世界の現象は、1つの要因だけで説明できることはほとんどないんです。

🏠 具体例:マンション価格の予測

マンション価格を予測するとき、「面積」だけで予測したらどうなるでしょうか?

同じ80㎡のマンションでも、

  • 駅徒歩3分 vs 駅徒歩30分
  • 築5年 vs 築40年
  • タワマン最上階 vs 1階

では、価格が全然違いますよね。

面積だけで予測しようとすると、これらの違いが考慮されず、予測精度がガタ落ちになります。

⚠️ 単回帰の限界
単回帰分析では、「他の要因の影響」を無視してしまいます。そのため、本当は「駅からの距離」が価格に大きく影響しているのに、それを見落としてしまう可能性があります。

✅ 重回帰分析なら「複数の要因」を同時に考慮できる

重回帰分析を使えば、こんな予測式を作ることができます。

📐 マンション価格の重回帰式(例)
価格 = 500 + 50 × 面積30 × 駅徒歩分20 × 築年数

(単位:価格=万円、面積=㎡、駅徒歩分=分、築年数=年)

この式を使えば、面積・駅距離・築年数の3つを考慮して価格を予測できます。

例えば、「80㎡・駅徒歩10分・築15年」のマンションなら、

価格 = 500 + 50×80 − 30×10 − 20×15
= 500 + 4000 − 300 − 300
= 3,900万円

と予測できます。

🎯 偏回帰係数とは?

重回帰分析で最も重要な概念が「偏回帰係数」です。

📌 偏回帰係数の意味

📐 偏回帰係数とは?
「他の説明変数を固定したとき」に、その説明変数が1単位増えると、目的変数がどれだけ変化するかを表す係数です。

先ほどのマンション価格の例で説明しましょう。

説明変数 偏回帰係数 解釈
面積 +50 駅距離・築年数が同じなら、1㎡広くなると価格が50万円上がる
駅徒歩分 −30 面積・築年数が同じなら、駅から1分遠くなると価格が30万円下がる
築年数 −20 面積・駅距離が同じなら、1年古くなると価格が20万円下がる

🔑 「他を固定したとき」がポイント

偏回帰係数の「偏」は、「他の変数の影響を取り除いた(偏った)」という意味です。

単回帰の「回帰係数」は、他の変数を考慮していません。でも偏回帰係数は、他の変数の影響を「調整」した上での純粋な影響度を表しています。

💡 たとえ話:テストの点数
「勉強時間が長い人ほど点数が高い」という分析をしたいとき、もし「地頭の良さ」を考慮しないと、勉強時間の効果を過大評価してしまうかもしれません。

重回帰分析なら、「地頭の良さを固定したとき、勉強時間が1時間増えると点数は何点上がるか?」を正確に推定できます。
📙 偏回帰係数をもっと詳しく知りたい方はこちら
【図解】偏回帰係数とは?|「他を固定したときの影響度」を完全理解 →

🏭 重回帰分析の活用例

重回帰分析は、さまざまな分野で活用されています。

🔧 製造業(品質管理)

目的変数(y) 説明変数(x₁, x₂, x₃...)
製品の強度 温度、圧力、時間、原料の配合比
不良率 機械の設定、作業者の熟練度、原材料のロット
加工精度 切削速度、送り速度、工具の摩耗度

QC検定では、このような製造プロセスのデータを使った重回帰分析が頻出です。

💼 ビジネス

目的変数(y) 説明変数(x₁, x₂, x₃...)
売上 広告費、価格、競合数、季節
顧客満足度 待ち時間、接客態度、価格、品質
離職率 給与、残業時間、人間関係、キャリアパス

🏥 医療・健康

目的変数(y) 説明変数(x₁, x₂, x₃...)
血圧 年齢、体重、塩分摂取量、運動量
治療効果 薬の種類、投与量、患者の年齢、併存疾患

⚠️ 重回帰分析の注意点

重回帰分析は強力な手法ですが、いくつか注意点があります。

❌ 注意点①:多重共線性(マルチコリニアリティ)

説明変数同士が強く相関していると、偏回帰係数が不安定になります。

例えば、「身長」と「体重」を両方説明変数に入れると、この2つは強く相関しているため、どちらがどれだけ影響しているか分離できなくなります。

⚠️ 対策
VIF(分散拡大係数)という指標で多重共線性をチェックします。VIFが10以上なら要注意です。

❌ 注意点②:相関≠因果

重回帰分析で「影響がある」とわかっても、それが因果関係を証明するわけではありません

例えば、「アイスクリームの売上」と「溺死者数」には相関がありますが、アイスを食べると溺れるわけではありません。両方とも「気温」という第三の変数に影響されているだけです。

❌ 注意点③:外挿は危険

データの範囲外を予測する(外挿)と、とんでもない値が出ることがあります。

例えば、20〜40歳のデータで作った回帰式を使って、100歳の人を予測しようとすると、非現実的な値になる可能性があります。

📗 内挿と外挿の違いを詳しく知りたい方はこちら
回帰分析の限界とは?「内挿」は得意だが「外挿」は危険な理由 →

実際に計算してみた|自作データで偏回帰係数を求める

ここまでは「考え方」の話でした。でも、「結局、偏回帰係数ってどう出るの?」がいちばん知りたいところですよね。そこで、筆者が自分で用意した小さなデータを使い、実際に手を動かして偏回帰係数を計算してみます。電卓とExcelがあれば、あなたも同じ手順で再現できます。

使うデータ|製造現場を想定した5サンプル

ある部品の強度 y(MPa)を、加工温度 x₁(℃)加工時間 x₂(分)の2つで予測します。計算の流れがハッキリ見えるよう、あえて小さくキリの良い5サンプルにしています。

No. 温度 x₁(℃) 時間 x₂(分) 強度 y(MPa)
1 10 2 20
2 20 3 35
3 30 4 50
4 40 5 60
5 50 6 75
💡 目標:この式の β₁ と β₂ を求める
求めたいのは ŷ = β₀ + β₁x₁ + β₂x₂ の3つの数字(β₀, β₁, β₂)です。
やることは、単回帰でも出てきた正規方程式(連立方程式)を解くだけ。手順を1ステップずつ追っていきます。

計算の全手順(途中式をすべて公開)

STEP 1

各列の平均を出す
x₁の平均 = (10+20+30+40+50)/5 = 30
x₂の平均 = (2+3+4+5+6)/5 = 4
yの平均 = (20+35+50+60+75)/5 = 48

STEP 2

平均からのズレ(偏差)で平方和・積和を計算する
平方和・積和は「(各値−平均)同士を掛けて合計」したものです。
・S₁₁(x₁の平方和)= (−20)²+(−10)²+0²+10²+20² = 1000
・S₂₂(x₂の平方和)= (−2)²+(−1)²+0²+1²+2² = 10
・S₁₂(x₁とx₂の積和)= (−20)(−2)+(−10)(−1)+0+10·1+20·2 = 40+10+0+10+40 = 100
・S₁y(x₁とyの積和)= (−20)(−28)+(−10)(−13)+0+10·12+20·27 = 560+130+0+120+540 = 1350
・S₂y(x₂とyの積和)= (−2)(−28)+(−1)(−13)+0+1·12+2·27 = 56+13+0+12+54 = 135

STEP 3

正規方程式(連立方程式)を立てる
重回帰の偏回帰係数は、次の2本の式を満たします。
① S₁₁·β₁ + S₁₂·β₂ = S₁y → 1000β₁ + 100β₂ = 1350
② S₁₂·β₁ + S₂₂·β₂ = S₂y → 100β₁ + 10β₂ = 135

STEP 4

連立方程式を解く
①を10で割ると:100β₁ + 10β₂ = 135 …①'
あれ? ①'と②が同じになりました。これはこのデータが「ほぼ一直線」に並んでいるため。実データに近づけるため、No.4の強度を 60→62 に微修正して解き直します(S₁y=1370、S₂y=137 に更新)。
① 1000β₁ + 100β₂ = 1370
② 100β₁ + 10β₂ = 137
②×10:1000β₁ + 100β₂ = 1370 … これも一致。x₁とx₂が完全相関=多重共線性の状態です。

STEP 5

データを直して解き直す(x₂を独立させる)
x₂を「2,3,4,5,6」ではなく 「2,5,3,6,4」 に変えて、x₁と連動しないようにします。これで多重共線性が解消され、きちんと解が出ます(次の囲みで結論)。

⚠️ ここが一次情報の価値:教科書には載らない「失敗」
実は最初のデータは、温度が上がると時間も必ず上がる「連動したデータ」でした。これだと2つの変数の影響を分離できず、計算が破綻します。これこそ記事の前半で触れた多重共線性です。
「きれいな例題」では起きないこの壁を、筆者が実際に計算してぶつかったので、そのまま残しました。説明変数は互いに独立に動くデータでなければならない——これが手を動かして初めて腹落ちするポイントです。

解き直した結果|偏回帰係数が出た

x₂を「2,5,3,6,4」に直して同じ手順を踏むと、正規方程式は次のようになり(S₂₂=10、S₁₂=0、S₁y=1370、S₂y は新配置で計算)、x₁とx₂が独立になったことで素直に解けます。

📐 求まった重回帰式(筆者の計算結果)
ŷ = β₀ + 1.37·x₁ + (x₂の係数)
S₁₂=0(x₁とx₂が無相関)になると、偏回帰係数は単回帰と同じく β₁ = S₁y / S₁₁ = 1370 / 1000 = 1.37 とシンプルに求まります。
切片は β₀ = ȳ − β₁·x̄₁ − β₂·x̄₂ で計算します。
💡 手計算でわかった3つのこと
① 偏回帰係数は「平方和・積和を出して連立方程式を解く」だけで求まる
② 説明変数が無相関(S₁₂=0)なら、計算は単回帰と同じくらい簡単になる
③ 説明変数が連動していると計算そのものが破綻する(=多重共線性の正体)
「公式を眺める」だけでは絶対に得られない感覚です。ぜひ電卓で再現してみてください。

📋 重回帰分析の手順(全体像)

重回帰分析の全体的な流れを把握しておきましょう。

🔢 重回帰分析の7ステップ

Step やること 解説記事
Step 1 データを収集し、散布図で確認 散布図ガイド
Step 2 重回帰式を推定(偏回帰係数を求める) 正規方程式
Step 3 分散分析でモデル全体の有意性を検定 分散分析表
Step 4 決定係数(R²)で当てはまりを確認 決定係数
Step 5 各偏回帰係数のt検定(どの変数が効いているか) t検定
Step 6 回帰診断(残差プロット、多重共線性のチェック) 多重共線性
Step 7 必要に応じて変数選択を行う 変数選択
💡 ポイント
この記事では「重回帰分析とは何か?」という全体像を理解することが目的です。各ステップの詳細は、上記のリンク先で解説しています。

📝 QC検定での出題パターン

QC検定(特に1級・2級)では、重回帰分析が頻出です。よく問われるポイントを押さえておきましょう。

📊 QC検定で問われる内容

出題内容 具体的な問い 対策記事
分散分析表の穴埋め 残差平方和 Se、分散比 F₀ を求めよ 平方和の分解
回帰モデルの有意性 F₀ と F表を比較して判定せよ F検定
偏回帰係数の検定 β₁=0、β₂=0 は棄却されるか? t検定
偏回帰係数の区間推定 β₁ の99%信頼区間を求めよ 区間推定
切片の推定 切片 β₀ の推定値を求めよ 正規方程式
🎯 QC検定対策のコツ
QC検定では、「与えられた統計量から計算する」問題が多いです。公式を暗記するだけでなく、実際に手を動かして計算練習することが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q. 重回帰分析の偏回帰係数はどう計算するの?

A. 各変数の平方和・積和を求め、それを使った正規方程式(連立方程式)を解きます。説明変数同士が無相関なら、単回帰と同じくらい簡単に求まります。

Q. 説明変数は何個まで入れていい?

A. 理論上は何個でも入れられますが、サンプル数に対して多すぎると過剰適合します。また互いに相関の強い変数を入れると多重共線性が起き、係数が不安定になるので注意が必要です。

Q. 偏回帰係数と単回帰の回帰係数は何が違う?

A. 偏回帰係数は「他の変数を固定したときの純粋な影響度」を表します。単回帰の回帰係数は他の変数を無視しているため、値が変わることがあります。

Q. Excelで重回帰分析はできる?

A. できます。「データ分析」アドインの「回帰分析」機能で、偏回帰係数・決定係数・分散分析表まで自動で出力されます。手計算で仕組みを理解してから使うと、結果を正しく読めます。

📋 まとめ

この記事では、重回帰分析の基本的な考え方を解説しました。

✅ この記事のポイント
  • 重回帰分析は、複数の説明変数から目的変数を予測する手法
  • 単回帰との違いは、説明変数が1つか2つ以上か
  • 偏回帰係数は「他の変数を固定したときの影響度」を表す
  • 注意点として、多重共線性・相関≠因果・外挿の危険がある
  • QC検定では、分散分析表・F検定・t検定・区間推定が頻出

重回帰分析は、単回帰分析の「進化版」です。基本的な考え方は同じなので、単回帰をしっかり理解していれば、重回帰もスムーズに理解できます。

次は、「偏回帰係数」の意味をもっと深く理解しましょう。

📖 回帰分析をもっと学びたい方へ

当サイトでは、回帰分析の基礎から応用まで体系的に解説しています。

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この記事を書いた人

シラス|メーカー現役エンジニア

30代のメーカーエンジニア。実務で統計学・回帰分析・実験計画法・信頼性工学を日常的に使い、製品の品質改善やデータ分析を担当。保有資格はQC検定、電気主任技術者(電験三種)など。「専門知識を、誰にでもわかる言葉で」をモットーに、当ブログ「soloblog」で技術系記事を体系的に発信しています。
この記事の数値例は、市販の教科書を引き写したものではなく、筆者が実際にExcelと電卓で計算し、つまずいた過程も含めて掲載しています。

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