目次
はじめに
「電車を待っている時間って、なんでこんなにバラつくんだろう?」「新しく買ったスマホ、いつまで使えるかな?」「コンビニのレジ待ち、今日は長そう...」
こんな日常の疑問、実は皆さんも感じたことがあるのではないでしょうか?これらの「待ち時間」や「寿命」には、実は共通したパターンがあるんです。
今日学ぶ「指数分布」は、そんな身の回りの時間を数学で表現したものです。「次に何かが起こるまでの時間」を予測したり、「どのくらい長持ちするか」を計算したりと、私たちの生活に密着した実用的な分布なんです。
指数分布って何?身近な例で理解しよう
こんな場面で指数分布が登場します
日常生活の「待ち時間」
🚌 バス停でバスを待つ時間
📞 コールセンターにつながるまでの時間
🍔 ファストフード店で注文を受け取るまでの時間
📧 次のメールが届くまでの時間
製品の「寿命」
💡 電球が切れるまでの時間
📱 スマホが故障するまでの時間
🔋 バッテリーが切れるまでの時間
💻 パソコンが壊れるまでの時間
指数分布の基本的な計算式
指数分布の基本公式は意外とシンプルです!
基本の公式
P(T > t) = e^(-λt)
T:待ち時間(何時間、何日など)
λ:発生率(1時間に何回、1日に何回など)
t:具体的な時間
e:約2.718(電卓にある「e」ボタン)
平均時間の公式
平均時間 = 1 ÷ λ
例:1時間に平均3回起こる → 平均20分間隔
1日に平均2回起こる → 平均12時間間隔
「忘れっぽい」分布?無記憶性を理解しよう
無記憶性って何?
指数分布の最大の特徴は「無記憶性」です。これを身近な例で説明してみましょう。
例1:スマホの故障
👤 友人A:「俺のスマホ、もう2年使ってるから、そろそろ壊れそう」
👤 友人B:「私のスマホ、まだ買ったばかりだから安心」
📊 指数分布では:
・2年使ったスマホも
・買ったばかりのスマホも
・明日壊れる確率は同じ!
例2:バス待ち
😤 「もう10分も待ってるんだから、そろそろバスが来るはず」
📊 指数分布では:
・10分待った後にさらに5分待つ確率
・最初から5分待つ確率
・これが全く同じ!
実際に計算してみよう!
例1:コンビニのレジ待ち
設定
🏪 平日昼間のコンビニ
👥 1時間に平均12人の客が来る
⏰ 次の客が来るまでの時間は?
ステップ1:発生率λを求める
λ = 12人/時間 = 0.2人/分
ステップ2:平均間隔を計算
平均間隔 = 1 ÷ 0.2 = 5分
ステップ3:具体的な確率を計算
2分以内に次の客が来る確率:
P(T ≤ 2) = 1 - e^(-0.2×2) = 1 - e^(-0.4) = 1 - 0.67 = 0.33 = 33%
5分以内に次の客が来る確率:
P(T ≤ 5) = 1 - e^(-0.2×5) = 1 - e^(-1) = 1 - 0.37 = 0.63 = 63%
10分以上客が来ない確率:
P(T > 10) = e^(-0.2×10) = e^(-2) = 0.14 = 14%
計算結果の表
| 時間 | 客が来る確率 | 客が来ない確率 | 店員の実感 |
|---|---|---|---|
| 2分以内 | 33% | 67% | よくあること |
| 5分以内 | 63% | 37% | だいたいこのくらい |
| 10分以内 | 86% | 14% | まあ普通 |
| 15分以上 | - | 5% | 珍しい |
例2:スマホの寿命予測
設定
📱 あるスマホの平均寿命:3年
🔧 故障までの時間を予測したい
ステップ1:発生率λを求める
λ = 1 ÷ 3年 = 0.333/年
ステップ2:具体的な生存確率を計算
1年後も使える確率:
P(T > 1) = e^(-0.333×1) = e^(-0.333) = 0.72 = 72%
2年後も使える確率:
P(T > 2) = e^(-0.333×2) = e^(-0.666) = 0.51 = 51%
3年後も使える確率:
P(T > 3) = e^(-0.333×3) = e^(-1) = 0.37 = 37%
計算結果の実用表
| 使用期間 | 生存確率 | 故障確率 | 感覚的な表現 | 対策 |
|---|---|---|---|---|
| 6ヶ月 | 85% | 15% | ほぼ安心 | 特になし |
| 1年 | 72% | 28% | まだ大丈夫 | 念のため注意 |
| 2年 | 51% | 49% | 半々の確率 | 買い替え検討 |
| 3年 | 37% | 63% | 結構危険 | 買い替え準備 |
| 4年 | 26% | 74% | かなり危険 | 早急に買い替え |
例3:電車の遅延予測
設定
🚃 某路線の遅延:平均30分に1回発生
⏰ 今から1時間、遅延しない確率は?
ステップ1:発生率λを求める
λ = 1回 ÷ 30分 = 2回/時間
ステップ2:遅延しない確率を計算
1時間遅延しない確率:
P(T > 1) = e^(-2×1) = e^(-2) = 0.14 = 14%
30分遅延しない確率:
P(T > 0.5) = e^(-2×0.5) = e^(-1) = 0.37 = 37%
15分遅延しない確率:
P(T > 0.25) = e^(-2×0.25) = e^(-0.5) = 0.61 = 61%
通勤時間の計画表
| 余裕時間 | 遅延しない確率 | 実用的なアドバイス |
|---|---|---|
| 15分 | 61% | ちょっと不安 |
| 30分 | 37% | 結構リスキー |
| 45分 | 22% | 危険 |
| 60分 | 14% | 非常に危険 |
計算を簡単にするコツ
電卓での計算方法
eの計算が面倒な時の近似
e^(-0.5) ≈ 0.6 (正確には0.61)
e^(-1) ≈ 0.4 (正確には0.37)
e^(-2) ≈ 0.1 (正確には0.14)
e^(-3) ≈ 0.05 (正確には0.05)
スマホの電卓アプリ活用
📱 iPhoneの計算機:横向きにして「e^x」ボタン
📱 Androidの計算機:「関数」モードで「exp」ボタン
💻 Google検索:「e^(-2)」と検索すれば答えが出る
暗算でできる概算
覚えやすい目安
λt = 0.5 → 約60%生存
λt = 1 → 約40%生存
λt = 2 → 約15%生存
λt = 3 → 約5%生存
実用的な使い方
例:平均寿命10年の製品
5年後生存率 ≈ 60%(λt = 0.5)
10年後生存率 ≈ 40%(λt = 1)
20年後生存率 ≈ 15%(λt = 2)
身近な場面での指数分布
場面1:お客さんの来店パターン
カフェの店長さんの計算例
☕ 朝の通勤時間:平均2分間隔(λ = 0.5/分)
5分間お客さんが来ない確率:
P(T > 5) = e^(-0.5×5) = e^(-2.5) ≈ 0.08 = 8%
→「5分以上お客さんが来ないのは稀」
→「スタッフが手を抜く時間はほぼない」
場面2:家電の買い替えタイミング
主婦の実用計算
👩 洗濯機の平均寿命10年(λ = 0.1/年)
5年後の生存率:
P(T > 5) = e^(-0.1×5) = e^(-0.5) ≈ 0.61 = 61%
→「5年使った洗濯機の61%はまだ使える」
→「でも39%は故障している」
→「7-8年目から買い替え検討開始が妥当」
指数分布が活躍する職場
IT系の職場
システム管理者の計算例
💻 サーバーの平均故障間隔:720時間(30日)
λ = 1 ÷ 720 ≈ 0.0014/時間
1週間(168時間)無故障の確率:
P(T > 168) = e^(-0.0014×168) = e^(-0.23) ≈ 0.79 = 79%
→「週末の3連休でも79%の確率で大丈夫」
→「でも21%の確率で緊急対応が必要」
まとめ:指数分布と上手に付き合おう
指数分布の計算は、基本公式「P(T > t) = e^(-λt)」と「平均 = 1/λ」さえ覚えれば、スマホの電卓で簡単にできます。完璧な予測はできませんが、確率的な傾向を数値で把握することで、より良い準備や計画ができるようになります。
計算のポイント
🧮 計算手順
1. 平均間隔から λ を求める(λ = 1 ÷ 平均間隔)
2. 知りたい時間 t を決める
3. e^(-λt) を計算する(スマホ電卓活用)
4. 結果を%で解釈する
🎯 実用的な目安
✅ λt = 0.5 → 約60%生存(よくある状況)
✅ λt = 1 → 約40%生存(平均的な状況)
✅ λt = 2 → 約15%生存(やや稀な状況)
✅ λt = 3 → 約5%生存(かなり稀な状況)