電験三種「法規」のなかで、技術基準適合命令と立入検査は「経済産業大臣が動くと何が起きるか」を問う、いわば国の権限まわりのテーマです。条文を読むと固く見えますが、現場の流れに沿って整理すれば一気に得点源にできます。
こんな悩みはありませんか?
- 第39条と第40条がワンセットで出てくるけれど、どっちが「義務」でどっちが「命令」か混乱する
- 「修理・改造・移転・一時停止・制限」の5つのアクションが頭に入らない
- 立入検査が誰の権限で、どの設備に対して行われるのか整理できていない
- 過去問で「主務大臣」と「経済産業大臣」が混在して出てきて、どちらが正解か迷う
この記事を読めばわかること
- 第39条「維持義務」と第40条「適合命令」がペアで動く仕組みが図で理解できる
- 適合命令の5つのアクションを「軽い順」で覚えられる
- 立入検査(第107条)の対象と権限が誰にあるかを整理できる
- 過去問H18問1・H23問2・R6上問1の典型パターンを得点できるようになる
目次
結論:「維持義務」と「適合命令」、そして「立入検査」の三角関係
先に全体像を示します。経済産業大臣の権限まわりは、3つの条文がワンセットで動きます。
| 条文 | 主体(誰が) | 内容 |
|---|---|---|
| 第39条 維持義務 |
設置者 | 事業用電気工作物を技術基準に適合するよう維持する |
| 第40条 適合命令 |
主務大臣 (経産大臣) |
不適合と認めるとき、設置者に5つのアクションを命じることができる |
| 第107条 立入検査 |
主務大臣 (職員に行わせる) |
事業用電気工作物の設置場所等に立ち入って検査させることができる |
ざっくり言うと、設置者が「維持」しないと → 大臣が「命令」できる → 必要なら「立入検査」もできる、というストーリーです。この三角関係を頭に入れた上で、それぞれを掘り下げていきます。

第39条と第40条は「義務」と「命令」のセット
電気事業法は、「設置者の義務」と「大臣の権限」を必ずペアで設計しています。技術基準まわりのペアが、まさに第39条と第40条です。
第39条:設置者の義務(民間側)
ポイントは「設置するときだけ適合させればよい」ではなく、「使い続けている間ずっと適合させなければならない」という点です。電験で「設置」と「維持」を入れ替えた誤答選択肢がよく登場します(R6上問1で実際に問われたパターンです)。
第39条第2項:技術基準に求められる4つの観点
| 号 | 求められる観点 |
|---|---|
| 第1号 | 人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないこと(人と物の安全) |
| 第2号 | 他の電気的設備その他の物件の機能に、電気的又は磁気的な障害を与えないこと |
| 第3号 | 損壊により一般送配電事業者又は配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないこと |
| 第4号 | 一般送配電事業・配電事業の用に供される場合、その事業に係る電気の供給に著しい支障を生じないこと |
第2号の「電気的又は磁気的な障害」は、過去問のR6上問1で空欄になった選択肢です。「熱的」「機械的」などのダミーで惑わすパターンが定番なので、「磁気的」を必ずキーワード暗記しておきましょう。
第40条:大臣の権限(国側)
主務大臣は、事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは、設置者に対し、修理・改造・移転・使用の一時停止を命じ、又はその使用を制限することができる。
「主務大臣」というのは法令上の総称で、電気事業法の場合は実質的に経済産業大臣を指します。H23問2では、まさにこの読み替えが空欄として問われました。

第40条の「5つのアクション」を軽い順で覚える
第40条で大臣が命令できる内容は、5つあります。これは過去問の空欄穴埋でほぼ毎回問われるので、語順ごと覚えるのがおすすめです。
| 順番 | アクション | 現場でのイメージ |
|---|---|---|
| ① | 修理 | 部品交換や絶縁不良の改修など、ピンポイントで直す |
| ② | 改造 | 設備構造そのものを変更し、技術基準に合わせる |
| ③ | 移転 | 位置自体が問題(離隔距離など)の場合、別の場所へ動かす |
| ④ | 使用の一時停止 | 直すまで設備を止めさせる(操業停止に近い重い処分) |
| ⑤ | 使用を制限 | 一部使用や時間帯制限など、条件付きで使わせる |
「修・改・移・停・制(しゅう・かい・い・てい・せい)」と頭文字で唱えるのが最短です。条文の語順そのままなので、空欄穴埋でも順番を聞かれた瞬間に出てくるようになります。
ちなみに条文上は、①〜④が「命じることができる」、⑤が「制限することができる」と動詞が分かれています。H23問2はまさにこの動詞の分かれ目を含めて全空欄を埋めさせる出題でした。

立入検査(第107条)の対象と頻度
第40条が「命令」、第107条が「現場を見る権限」です。試験では「誰が」「どこに」「何のために」立ち入れるかが空欄や正誤判定で問われます。
主務大臣は、この法律の施行に必要な限度で、その職員に、事業用電気工作物の設置の場所、事業者の事務所その他の事業場に立ち入り、業務の状況、電気工作物、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
立入検査のポイント整理
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 誰が立ち入るか | 主務大臣(経産大臣)が指定する職員。大臣本人ではなく、産業保安監督部の職員などが実務を行う |
| どこに立ち入るか | 事業用電気工作物の設置場所、事業者の事務所、その他の事業場 |
| 何を検査するか | 業務の状況、電気工作物、帳簿・書類その他の物件 |
| 頻度 | 法律上「○年に1回」と固定された規定はない。事故発生時や定期検査計画に応じて実施される |
| 身分の証明 | 職員は身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない(第107条第○項) |
| 範囲の限定 | 立入検査は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない(行政検査の趣旨) |
「電気事業法では○年に1回の立入検査が義務化されている」という選択肢は誤りです。条文には頻度の規定はなく、必要に応じて実施されます。定期検査の頻度規定は、別途「電気関係報告規則」や省令ベースで運用されています。
条文の原典はe-Gov法令検索:電気事業法で確認できます。第39条→第40条→第107条の流れを通読しておくと、過去問の選択肢の言い回しに迷わなくなります。

過去問の典型パターン|「条文穴埋め型」が9割
この単元は、ありがたいことにほぼ条文の空欄穴埋めで出題されます。条文をそのまま読めるレベルで覚えれば、毎回得点できる「ボーナス問題」です。
| 出題年度 | 問われた条文 | 空欄になる重要キーワード |
|---|---|---|
| 平成18年 問1 | 第40条(適合命令) | 5つのアクション(修理・改造・移転・一時停止・制限) |
| 平成23年 問2 | 第40条(適合命令) | 経済産業大臣/設置する者/修理/移転/制限 |
| 令和6年度上期 問1 | 第39条・第40条セット | 維持/磁気/一時停止(H29問1の再出題) |
R6上問1のように同じ問題が過去から再出題されるのが、この単元の大きな特徴です。最新の出題傾向を反映して、次のブロックではR6上問1を実際に解いてみましょう。

理解度テスト(過去問チャレンジ)
出題:令和6年度上期 法規 問1
次の文章は、「電気事業法」における事業用電気工作物の技術基準への適合に関する記述の一部である。
a) 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように(ア)しなければならない。
b) 上記a)の主務省令に定める技術基準では、次に掲げるところによらなければならない。
- ① 事業用電気工作物は、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること。
- ② 事業用電気工作物は、他の電気的設備その他の物件の機能に電気的又は(イ)的な障害を与えないようにすること。
- ③ 事業用電気工作物の損壊により一般送配電事業者又は配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすること。
- ④ 事業用電気工作物が一般送配電事業又は配電事業の用に供される場合にあっては、その事業用電気工作物の損壊によりその一般送配電事業又は配電事業に係る電気の供給に著しい支障を生じないようにすること。
c) 主務大臣は、事業用電気工作物が上記a)の主務省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を(ウ)すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | |
|---|---|---|---|
| (1) | 設置 | 磁気 | 一時停止 |
| (2) | 維持 | 磁気 | 一時停止 |
| (3) | 設置 | 熱 | 禁止 |
| (4) | 維持 | 熱 | 禁止 |
| (5) | 設置 | 熱 | 一時停止 |
▼ 解答と解説を見る
正解:(2) 維持/磁気/一時停止
- (ア)=維持:第39条第1項は「適合するように維持しなければならない」。「設置」を選んでしまうダミーが定番なので注意。
- (イ)=磁気:第39条第2項第2号は「電気的又は磁気的な障害を与えないように」。本記事のH2「第39条と第40条のペア関係」で引っかけ注意ポイントとして強調した箇所そのものです。
- (ウ)=一時停止:第40条の5つのアクションのうちの一つ。「修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる」と続きます。
本問は平成29年度 法規 問1の再出題です。条文がそのまま選択肢のキーワードに置き換わっているため、条文を一度通読しておけば確実に得点できる典型ボーナス問題です。
出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 公表問題(令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験 法規 問1)
私が勤務する工場で、産業保安監督部の職員さんが来訪して定期検査を受けた場面に立ち会ったことがあります。職員さんが最初に身分証明書を提示し、保安規程・点検記録・主任技術者の選任届などを次々と確認していくのを見て、「あ、これが第107条の立入検査か」と腑に落ちました。条文上は「立入検査」と聞くと厳しい言葉に感じますが、実態は「適切に保安が回っているかの確認」です。試験では「犯罪捜査ではない」という言い回しが選択肢で問われることがあるので、現場のイメージとセットで覚えておくと、選択肢の不適切な言い回しに気づけるようになります。
電験三種・法規シリーズの全体地図
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この記事を書いた人
シラス(@shirasusolo)
30代メーカーエンジニア。電気主任技術者・QC検定保有。「soloblog」で電験三種・統計学を中心に、現場で使える知識を発信中。
最終更新:2026年5月16日 / 本記事は2026年5月時点の法令に基づいています。最新の改正情報は e-Gov法令検索 で必ずご確認ください。