電力科目の解説

樹枝状方式とは?配電方式4種類(ループ・ネットワーク)の違いを図解

樹枝状方式とは何か。配電方式4種類(ループ・ネットワーク)の違い

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こんなふうに思っていませんか?
  • 「樹枝状・ループ・ネットワーク方式」と並んでいて、違いがわからない
  • どの方式がどんな場所で使われるのか、イメージできない
  • 「スポットネットワーク」が試験に出ると聞いたけど、よくわからない
○ この記事でわかること
  • 配電方式とは何か、なぜ何種類もあるのか
  • 樹枝状・ループ・ネットワークの違いと使い分け
  • 電験で問われるポイント(スポットネットワーク・カスケーディング)

配電方式は種類が多くて、最初は混乱しますよね。でも、すべては「停電に強くしたいか、安く作りたいか」という1本の天秤で整理できます。この記事では、その軸を使って、図とたとえでやさしく解説します。電験での出題ポイントにも触れていきます。

○ 結論(まず30秒でわかる答え)

配電方式とは、変電所から家庭や工場まで電気を届ける「配り方」の種類のことです。代表的なのは、構成がシンプルで安いが停電に弱い「樹枝状(じゅしじょう=放射状)方式」、両端から電気を送れて信頼度を上げた「ループ方式」、複数の経路から並列に供給して停電にとても強い「ネットワーク方式」の3グループです。ざっくり言うと、信頼度を上げるほどコストも上がる、という関係になっています。

そもそも配電方式とは?なぜ何種類もあるの?

まず、配電(はいでん)が何かを確認しましょう。配電とは、変電所(電圧を下げて電気を中継する施設)から、私たちの家やお店、工場まで電気を配ることです。その「配り方の形」が配電方式です。

では、なぜ何種類もあるのでしょうか。理由は、場所によって「求められること」が違うからです。郊外の住宅地と、たくさんのビルが並ぶ都心では、必要な電気の量も、停電したときの困りごとの大きさも、まるで違いますよね。

水道でたとえると
水道も、1本の管で各家に配るシンプルな方法もあれば、複数の管をつないで「1本が壊れても別の管から水が来る」ようにする方法もあります。後者のほうが断水に強いですが、管をたくさん使うのでお金がかかります。配電方式もこれと同じで、用途に合わせて使い分けるのです。

この記事では、すべての方式を「停電に強いか(信頼度)」と「お金がかかるか(コスト)」という、たった1本の天秤で整理していきます。この軸さえ持っていれば、どの方式が出てきても迷いません。

つまり
配電方式=電気の配り方の種類。場所ごとに「信頼度」と「コスト」のバランスが違うので、何種類も用意されている、というわけです。
配電方式の信頼度とコストのトレードオフを天秤で示した図。停電への強さを上げるほどコストが上がる
配電方式は信頼度を上げるほどコストも上がる

①樹枝状(放射状)方式|シンプルで安いが停電に弱い

まず一番シンプルな樹枝状方式から。樹枝状方式とは、1本の幹線(みき)から枝分かれするように電気を配る方式です。放射状(ほうしゃじょう)方式とも呼ばれます。

木でたとえると
名前のとおり、1本の幹から枝が伸び、その枝からさらに細い枝が分かれていく木のような形です。電気は幹から枝の先端へ、一方通行で流れていきます。郊外の住宅地など、日本の架空配電(電柱の上の配線)で最も多く使われている方式です。

この方式の最大のメリットは、構成がシンプルで、設備が少なく安く作れることです。電線も最小限で済みます。だから、広い地域に経済的に電気を届けたいときに向いています。

弱点が2つある
1つ目は、停電に弱いこと。電気が一方通行なので、途中で1か所故障すると、その先のすべてが停電します(信頼度が低い)。2つ目は、枝の先端ほど電圧が下がること。電気は流れる道のりが長いほど電圧が落ちる(電圧降下)ので、末端では電圧が低くなりがちです。

この弱点を少し補うために、ふだんは開けておいて、事故のときに別の幹線とつなぎ替える「連絡開閉器(れんらくかいへいき)」を入れることもあります。これで、停電したエリアを別ルートから救えるようにしておくのです。

つまり
樹枝状方式=木のように枝分かれする、安くてシンプルな方式。ただし停電に弱く、末端で電圧が下がりやすい。郊外の住宅地でよく使われます。
樹枝状配電方式のしくみの図。変電所から枝分かれして一方通行で送るので、1か所の故障で先が停電し、末端は電圧が下がる
樹枝状方式:1か所の故障で先が停電し末端の電圧が下がる

②ループ(環状)方式|両端から送れて停電に強い

次はループ方式です。ループ方式とは、配電線をぐるっと輪(ループ)の形につなぎ、両側から電気を送れるようにした方式です。環状(かんじょう)方式とも呼ばれます。

道路でたとえると
行き止まりの一本道(樹枝状)だと、途中が工事で通れなくなったらその先に行けません。でも、ぐるっと回れる環状道路(ループ)なら、片方が通れなくても反対側から回り込めます。ループ方式は、まさにこの「迂回できる道」を電気で作る発想です。

この方式のメリットは、停電に強いこと(信頼度が高い)です。輪のどこか1か所が故障しても、反対側のルートから電気を送り続けられます。樹枝状方式の「一方通行で停電に弱い」という弱点を、大きく改善した形です。

ループの途中には「結合開閉器(けつごうかいへいき)」という装置を入れます。これで輪をつないだり切ったりして、事故のときに故障部分だけを切り離し、残りに電気を送れるようにします。

ここで混乱しやすい:連絡開閉器との違い
樹枝状で出てきた「連絡開閉器」と、ループの「結合開閉器」は名前が似ていて混同しがちです。試験では区別して問われることがあるので、「樹枝状=連絡開閉器」「ループ=結合開閉器」とセットで覚えておきましょう。
つまり
ループ方式=輪の形にして両側から電気を送れる方式。1か所壊れても迂回できるので、樹枝状より停電に強い。そのぶん設備は少し増えます。
ループ配電(環状配電)のしくみの図。結合開閉器で環状につなぎ、故障しても反対側から送れるので停電に強い
ループ方式:故障しても反対側から送れる

③ネットワーク方式|複数経路で停電にとても強い

最後はネットワーク方式です。これは、複数の配電線(回線)を網の目のように並列につなぎ、いくつもの経路から同時に電気を送る方式です。停電にもっとも強いグループです。

網の目でたとえると
1本の道や1つの輪ではなく、たくさんの道が網の目のように張り巡らされているイメージです。1本や2本が切れても、ほかの道がいくらでもあるので、電気が止まりません。これだけ手厚いぶん、設備もコストもかかります。

2つのネットワーク方式

ネットワーク方式には、おもに2種類あります。違いは「広い地域全体に網を張るか」「1か所の大口需要家に集中させるか」です。

低圧ネットワーク方式
(レギュラーネットワーク)

  • 地域一帯に網を張る
  • 繁華街など負荷が密集した地域向け
  • 多数の需要家に高信頼度で供給

スポットネットワーク方式

  • 1か所の大口需要家に集中供給
  • 大都市中心部の高層ビルなど
  • 標準3回線で受電し稼働率が高い
電験で頻出:スポットネットワークとカスケーディング
電験ではスポットネットワーク方式がとくに重要です。「大都市中心部の負荷密度が極めて高い大口需要家(高層ビルなど)に適する」と覚えましょう。また、ネットワーク方式の欠点として「カスケーディング」があります。これは、保護がうまく働かないと、1か所の故障が次々と連鎖して広い範囲が停電してしまう現象です。
つまり
ネットワーク方式=網の目状に複数経路で送る、もっとも停電に強い方式。地域全体なら低圧ネットワーク、1か所の大ビルならスポットネットワーク。欠点はコストとカスケーディングです。
低圧ネットワーク方式とスポットネットワーク方式の図。地域一帯を網目で、または大ビル1か所を3回線で受電し、どちらも信頼度が高い
低圧ネットワーク方式とスポットネットワーク方式

3方式を一気に比較|信頼度とコストの天秤で整理

ここまでの3方式を、1つの表にまとめます。最初にお伝えした「信頼度を上げるほどコストも上がる」という関係が、きれいに見えてきます。

方式 信頼度 コスト 向いている場所
樹枝状(放射状)低い安い郊外の住宅地など
ループ(環状)中くらい中くらい市街地など
ネットワークとても高い高い繁華街・大都市の大ビル

表を上から下に見ていくと、信頼度が「低→中→高」と上がるのに合わせて、コストも「安→中→高」と上がっているのがわかります。つまり、停電に強くしたいほどお金がかかる、というシンプルな関係です。

開閉器の名前を取り違えない
試験対策として、開閉器の名前も整理しておきましょう。樹枝状で使うのが「連絡開閉器」、ループで使うのが「結合開閉器」です。名前が似ているので、方式とセットで覚えるのがコツです。
つまり
3方式は「信頼度とコストの天秤」で一直線に並びます。樹枝状=安いが弱い、ループ=中間、ネットワーク=高いが強い。場所に合わせて選ぶ、と覚えれば完璧です。
配電方式の信頼度とコストの比較図。樹枝状は安いが弱く、ループ、ネットワークの順に信頼度もコストも高くなる
樹枝状・ループ・ネットワークの信頼度とコストの比較

配電は「電気の旅」の最後の区間

最後に、配電が電力システム全体のどこにあるのかを確認しましょう。これがわかると、配電方式の知識が頭の中で整理されます。

発電

発電所で電気を作る。

送電

高い電圧で遠くまで運ぶ(送電線)。

変電

変電所で電圧を使いやすく下げる。

配電

家庭や工場へ電気を配る(←この記事)。

配電は、発電→送電→変電と続いてきた「電気の旅」の、いちばん最後の区間です。利用者に直接つながる部分なので、停電すると私たちの生活にすぐ影響します。だからこそ、場所に応じた配電方式の使い分けが大切なのです。

配電線や変圧器の容量を決めるときは、つながる家庭や工場が同時にどれだけ電気を使うかを見積もります。そのときに使うのが需要率と不等率です。負荷率とあわせた計算の手順は、需要率・負荷率・不等率とは?変圧器容量の決め方と計算で解説しています。

電気の旅をたどりたい方へ
配電の1つ手前の「変電」については 変電所の役割と主要機器、もっと手前の「送電」については 送電方式の全体像 でくわしく解説しています。
つまり
配電は「発電→送電→変電→配電」の最後の区間。利用者に直結するからこそ、信頼度とコストのバランスで方式を選びます。
電気が届くまでの流れの図。発電、送電、変電、配電の順で、最後の区間が配電
発電・送電・変電・配電:最後の区間が配電

よくある質問(FAQ)

Q. 配電方式の種類と違いは?

A. 主に樹枝状・ループ・ネットワークの3種です。下にいくほど停電に強く、そのぶんコストも高くなります。

Q. 樹枝状方式の欠点は?

A. 一方通行のため停電に弱く、末端で電圧が下がりやすい点です。安くシンプルなのが利点です。

Q. スポットネットワーク方式はどこで使う?

A. 大都市中心部の高層ビルなど、負荷密度が極めて高い大口需要家に使われます。信頼度がとても高い方式です。

Q. カスケーディングとは?

A. 保護がうまく働かず、1か所の故障が次々連鎖して広範囲が停電する現象です。ネットワーク方式の欠点です。

まとめ:信頼度とコストの天秤で選ぶ

この記事の要点
  • 配電方式=電気の配り方の種類。信頼度とコストのバランスで使い分ける。
  • 樹枝状(放射状)=安くシンプルだが停電に弱く末端で電圧降下。連絡開閉器を使う。
  • ループ(環状)=輪にして両側から送れる。1か所壊れても迂回でき、信頼度が高い。結合開閉器を使う。
  • ネットワーク=網の目状で停電にとても強い。地域なら低圧ネットワーク、大ビルならスポットネットワーク。
  • 電験頻出はスポットネットワーク(大都市中心部の大口需要家)と欠点のカスケーディング。

配電方式は種類が多くても、「信頼度を上げるほどコストも上がる」という1本の軸で整理すれば怖くありません。電験では開閉器の名前やスポットネットワークが狙われます。次の一歩として、配電の前後(変電・送電)も学ぶと、電力システムの全体像がつかめます。下の記事へどうぞ。

配電方式3つのまとめ図。樹枝状は安いが弱い、ループは迂回できる、ネットワークは最強だがコストが一番高い
配電方式3つのまとめ:樹枝状・ループ・ネットワーク
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて電気を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

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