- 「樹枝状・ループ・ネットワーク方式」と並んでいて、違いがわからない
- どの方式がどんな場所で使われるのか、イメージできない
- 「スポットネットワーク」が試験に出ると聞いたけど、よくわからない
- 配電方式とは何か、なぜ何種類もあるのか
- 樹枝状・ループ・ネットワークの違いと使い分け
- 電験で問われるポイント(スポットネットワーク・カスケーディング)
配電方式は種類が多くて、最初は混乱しますよね。でも、すべては「停電に強くしたいか、安く作りたいか」という1本の天秤で整理できます。この記事では、その軸を使って、図とたとえでやさしく解説します。電験での出題ポイントにも触れていきます。
配電方式とは、変電所から家庭や工場まで電気を届ける「配り方」の種類のことです。代表的なのは、構成がシンプルで安いが停電に弱い「樹枝状(じゅしじょう=放射状)方式」、両端から電気を送れて信頼度を上げた「ループ方式」、複数の経路から並列に供給して停電にとても強い「ネットワーク方式」の3グループです。ざっくり言うと、信頼度を上げるほどコストも上がる、という関係になっています。
目次
そもそも配電方式とは?なぜ何種類もあるの?
まず、配電(はいでん)が何かを確認しましょう。配電とは、変電所(電圧を下げて電気を中継する施設)から、私たちの家やお店、工場まで電気を配ることです。その「配り方の形」が配電方式です。
では、なぜ何種類もあるのでしょうか。理由は、場所によって「求められること」が違うからです。郊外の住宅地と、たくさんのビルが並ぶ都心では、必要な電気の量も、停電したときの困りごとの大きさも、まるで違いますよね。
水道も、1本の管で各家に配るシンプルな方法もあれば、複数の管をつないで「1本が壊れても別の管から水が来る」ようにする方法もあります。後者のほうが断水に強いですが、管をたくさん使うのでお金がかかります。配電方式もこれと同じで、用途に合わせて使い分けるのです。
この記事では、すべての方式を「停電に強いか(信頼度)」と「お金がかかるか(コスト)」という、たった1本の天秤で整理していきます。この軸さえ持っていれば、どの方式が出てきても迷いません。
配電方式=電気の配り方の種類。場所ごとに「信頼度」と「コスト」のバランスが違うので、何種類も用意されている、というわけです。

①樹枝状(放射状)方式|シンプルで安いが停電に弱い
まず一番シンプルな樹枝状方式から。樹枝状方式とは、1本の幹線(みき)から枝分かれするように電気を配る方式です。放射状(ほうしゃじょう)方式とも呼ばれます。
名前のとおり、1本の幹から枝が伸び、その枝からさらに細い枝が分かれていく木のような形です。電気は幹から枝の先端へ、一方通行で流れていきます。郊外の住宅地など、日本の架空配電(電柱の上の配線)で最も多く使われている方式です。
この方式の最大のメリットは、構成がシンプルで、設備が少なく安く作れることです。電線も最小限で済みます。だから、広い地域に経済的に電気を届けたいときに向いています。
1つ目は、停電に弱いこと。電気が一方通行なので、途中で1か所故障すると、その先のすべてが停電します(信頼度が低い)。2つ目は、枝の先端ほど電圧が下がること。電気は流れる道のりが長いほど電圧が落ちる(電圧降下)ので、末端では電圧が低くなりがちです。
この弱点を少し補うために、ふだんは開けておいて、事故のときに別の幹線とつなぎ替える「連絡開閉器(れんらくかいへいき)」を入れることもあります。これで、停電したエリアを別ルートから救えるようにしておくのです。
樹枝状方式=木のように枝分かれする、安くてシンプルな方式。ただし停電に弱く、末端で電圧が下がりやすい。郊外の住宅地でよく使われます。

②ループ(環状)方式|両端から送れて停電に強い
次はループ方式です。ループ方式とは、配電線をぐるっと輪(ループ)の形につなぎ、両側から電気を送れるようにした方式です。環状(かんじょう)方式とも呼ばれます。
行き止まりの一本道(樹枝状)だと、途中が工事で通れなくなったらその先に行けません。でも、ぐるっと回れる環状道路(ループ)なら、片方が通れなくても反対側から回り込めます。ループ方式は、まさにこの「迂回できる道」を電気で作る発想です。
この方式のメリットは、停電に強いこと(信頼度が高い)です。輪のどこか1か所が故障しても、反対側のルートから電気を送り続けられます。樹枝状方式の「一方通行で停電に弱い」という弱点を、大きく改善した形です。
ループの途中には「結合開閉器(けつごうかいへいき)」という装置を入れます。これで輪をつないだり切ったりして、事故のときに故障部分だけを切り離し、残りに電気を送れるようにします。
樹枝状で出てきた「連絡開閉器」と、ループの「結合開閉器」は名前が似ていて混同しがちです。試験では区別して問われることがあるので、「樹枝状=連絡開閉器」「ループ=結合開閉器」とセットで覚えておきましょう。
ループ方式=輪の形にして両側から電気を送れる方式。1か所壊れても迂回できるので、樹枝状より停電に強い。そのぶん設備は少し増えます。

③ネットワーク方式|複数経路で停電にとても強い
最後はネットワーク方式です。これは、複数の配電線(回線)を網の目のように並列につなぎ、いくつもの経路から同時に電気を送る方式です。停電にもっとも強いグループです。
1本の道や1つの輪ではなく、たくさんの道が網の目のように張り巡らされているイメージです。1本や2本が切れても、ほかの道がいくらでもあるので、電気が止まりません。これだけ手厚いぶん、設備もコストもかかります。
2つのネットワーク方式
ネットワーク方式には、おもに2種類あります。違いは「広い地域全体に網を張るか」「1か所の大口需要家に集中させるか」です。
低圧ネットワーク方式
(レギュラーネットワーク)
- 地域一帯に網を張る
- 繁華街など負荷が密集した地域向け
- 多数の需要家に高信頼度で供給
スポットネットワーク方式
- 1か所の大口需要家に集中供給
- 大都市中心部の高層ビルなど
- 標準3回線で受電し稼働率が高い
電験ではスポットネットワーク方式がとくに重要です。「大都市中心部の負荷密度が極めて高い大口需要家(高層ビルなど)に適する」と覚えましょう。また、ネットワーク方式の欠点として「カスケーディング」があります。これは、保護がうまく働かないと、1か所の故障が次々と連鎖して広い範囲が停電してしまう現象です。
ネットワーク方式=網の目状に複数経路で送る、もっとも停電に強い方式。地域全体なら低圧ネットワーク、1か所の大ビルならスポットネットワーク。欠点はコストとカスケーディングです。

3方式を一気に比較|信頼度とコストの天秤で整理
ここまでの3方式を、1つの表にまとめます。最初にお伝えした「信頼度を上げるほどコストも上がる」という関係が、きれいに見えてきます。
| 方式 | 信頼度 | コスト | 向いている場所 |
|---|---|---|---|
| 樹枝状(放射状) | 低い | 安い | 郊外の住宅地など |
| ループ(環状) | 中くらい | 中くらい | 市街地など |
| ネットワーク | とても高い | 高い | 繁華街・大都市の大ビル |
表を上から下に見ていくと、信頼度が「低→中→高」と上がるのに合わせて、コストも「安→中→高」と上がっているのがわかります。つまり、停電に強くしたいほどお金がかかる、というシンプルな関係です。
試験対策として、開閉器の名前も整理しておきましょう。樹枝状で使うのが「連絡開閉器」、ループで使うのが「結合開閉器」です。名前が似ているので、方式とセットで覚えるのがコツです。
3方式は「信頼度とコストの天秤」で一直線に並びます。樹枝状=安いが弱い、ループ=中間、ネットワーク=高いが強い。場所に合わせて選ぶ、と覚えれば完璧です。

配電は「電気の旅」の最後の区間
最後に、配電が電力システム全体のどこにあるのかを確認しましょう。これがわかると、配電方式の知識が頭の中で整理されます。
発電所で電気を作る。
高い電圧で遠くまで運ぶ(送電線)。
変電所で電圧を使いやすく下げる。
家庭や工場へ電気を配る(←この記事)。
配電は、発電→送電→変電と続いてきた「電気の旅」の、いちばん最後の区間です。利用者に直接つながる部分なので、停電すると私たちの生活にすぐ影響します。だからこそ、場所に応じた配電方式の使い分けが大切なのです。
配電の1つ手前の「変電」については 変電所の役割と主要機器、もっと手前の「送電」については 送電方式の全体像 でくわしく解説しています。
配電は「発電→送電→変電→配電」の最後の区間。利用者に直結するからこそ、信頼度とコストのバランスで方式を選びます。

よくある質問(FAQ)
まとめ:信頼度とコストの天秤で選ぶ
- 配電方式=電気の配り方の種類。信頼度とコストのバランスで使い分ける。
- 樹枝状(放射状)=安くシンプルだが停電に弱く末端で電圧降下。連絡開閉器を使う。
- ループ(環状)=輪にして両側から送れる。1か所壊れても迂回でき、信頼度が高い。結合開閉器を使う。
- ネットワーク=網の目状で停電にとても強い。地域なら低圧ネットワーク、大ビルならスポットネットワーク。
- 電験頻出はスポットネットワーク(大都市中心部の大口需要家)と欠点のカスケーディング。
配電方式は種類が多くても、「信頼度を上げるほどコストも上がる」という1本の軸で整理すれば怖くありません。電験では開閉器の名前やスポットネットワークが狙われます。次の一歩として、配電の前後(変電・送電)も学ぶと、電力システムの全体像がつかめます。下の記事へどうぞ。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて電気を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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