電力科目の解説

火力発電の熱効率と燃焼計算|発熱量・所内率・燃料消費量・CO2の求め方を例題で図解|計算ツール付き

火力発電の熱効率と燃焼計算を表すアイキャッチ。煙突のある火力発電所と石炭の山と電卓

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 発電端と送電端、どっちの熱効率を求めればいいかわからない
  • kJ/h を kW に直すところで手が止まる
  • 燃料消費量やCO2の量を出す燃焼計算が苦手
この記事でわかること
  • 熱効率の式と、発電端・送電端の違い
  • 単位をそろえるコツ(1kWh=3600kJ)
  • 燃料消費量の逆算とCO2・空気量の燃焼計算
  • 数字を入れるだけの計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

火力発電の熱効率は、燃料が出した熱のうち何%が電気になったかを表す値で、発電端熱効率 η=3600P÷(B×H)(P:発電端出力kW、B:燃料消費量kg/h、H:発熱量kJ/kg)で求めます。送電端熱効率は、所内で使う電力(所内率L)を差し引いて η×(1−L) です。燃焼計算では、炭素12kgが燃えるとCO2が44kgできる、という化学式の比から、CO2の量や必要な空気の量を求めます。

火力発電の熱効率と燃焼計算を表すアイキャッチ。煙突のある火力発電所と石炭の山と電卓

火力発電の熱効率とは?燃料の熱が電気になる割合

火力発電所は、燃料を燃やした熱で水を蒸気にし、蒸気でタービンを回して発電します。燃料の熱がぜんぶ電気になるわけではなく、煙突から出る排ガスや、復水器で海に捨てる熱として多くが失われます。燃料の熱のうち電気になった割合が熱効率です。

場所そこで決まるもの記号
燃料1時間に燃やす量と、1kgあたりの熱B[kg/h]、H[kJ/kg]
発電機の出口発電機がつくった電力発電端出力 P[kW]
所内ポンプ・送風機など発電所の中で使う電力所内率 L
送電線へ外へ送り出す電力送電端出力 P(1−L)

同じ発電所でも、どこで電力をはかるかで熱効率は2つあります。発電機の出口ではかるのが発電端熱効率、所内で使った分を引いて外に出す電力ではかるのが送電端熱効率です。問題文がどちらを聞いているかを、まず確かめましょう。

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火力発電の熱の流れの図。燃料の熱B×Hが発電機で発電端出力Pになり、所内で使う分Lを引いた残りが送電端出力P×(1−L)になる。排ガスと復水器で多くの熱を失う

発熱量と単位のそろえ方|1kWh=3600kJ

発熱量H は、燃料1kgを完全に燃やしたときに出る熱量[kJ/kg]です。燃料消費量B[kg/h]とかけると、1時間あたりに入れた熱量 B×H[kJ/h]になります。

燃料発熱量の目安(kJ/kg)
石炭約26,000
重油約42,000
LNG(液化天然ガス)約50,000〜55,000

発熱量には、燃焼でできた水蒸気が水に戻るときの熱まで含める高位発熱量と、含めない低位発熱量があり、数%ちがいます。試験では、問題文にある発熱量をそのまま使えば大丈夫です。

kJ/h を kW に直す

1kWは1秒に1kJなので、1時間(3600秒)では3600kJです。つまり1kWh=3600kJ。熱量[kJ/h]を3600で割ると、電力と同じkWでくらべられます。

単位をそろえる式

投入熱量[kW]= B[kg/h]× H[kJ/kg]÷ 3600

発熱量と単位の図。石炭は約26,000kJ/kg、重油は約42,000kJ/kg、LNGは約50,000〜55,000kJ/kg。1kWh=3600kJなので、B×Hを3600で割ると投入熱量がkWになる

発電端熱効率と送電端熱効率の求め方|例題で

熱効率の式

発電端熱効率 η = 3600 × P ÷(B × H)
送電端熱効率 η' = η ×(1 − L)

所内率Lは、発電端出力のうち発電所の中で使う電力の割合です。給水ポンプや送風機、石炭を細かくする粉砕機などに使い、数%程度です(石炭火力はやや大きく、ガス火力は小さめ)。

例題:石炭を1時間に2,000kg燃やし、発電端出力6,000kWを得ている。石炭の発熱量は27,000kJ/kg、所内率は5%。発電端熱効率、送電端出力、送電端熱効率を求めよ。

ステップ計算答え
① 投入熱量2,000×27,000÷360015,000kW
② 発電端熱効率6,000÷15,00040%
③ 送電端出力6,000×(1−0.05)5,700kW
④ 送電端熱効率40%×(1−0.05)38%

④は、5,700÷15,000=38%と計算しても同じです。送電端は「分子だけが小さくなる」と覚えると迷いません。

効率は掛け算でつながる

燃料の熱が電気になるまでには、ボイラー(燃料の熱を蒸気へ)、タービン(蒸気の熱を回転へ)、発電機(回転を電気へ)の3段階があります。発電端熱効率=ボイラー効率×タービン室効率×発電機効率で、たとえば 0.90×0.46×0.98≒0.41 です。

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火力発電の熱効率の例題の図。投入熱量は2,000×27,000÷3600で15,000kW、発電端熱効率は40%、送電端出力は5,700kW、送電端熱効率は38%

燃料消費量の逆算|熱効率の式を変形する

熱効率の式をBについて解くと、B=3600×P÷(H×η)です。「出力と熱効率がわかっていて、燃料がどれだけいるか」を聞く問題はこれで解けます。

例題:出力600MW、発電端熱効率40%のLNG火力。LNGの発熱量を50,000kJ/kgとすると、1時間に燃やすLNGは?

計算答え
3600×600,000÷(50,000×0.40)108,000kg/h=108t/h

出力のkWをMWのまま入れてしまうと、答えが1000分の1になります。kWにそろえてから計算しましょう。

燃焼計算|CO2の量と必要な空気の量

燃焼計算は、化学式の重さの比を使う計算です。炭素Cの原子量は12、酸素Oは16、水素Hは1なので、炭素12kgは酸素32kgと結びついてCO2が44kgできます。

燃える物化学式重さの比1kgあたりのCO2
炭素C+O2→CO212:32:4444÷12≒3.67kg
水素2H2+O2→2H2O4:32:360(水になる)
メタン(LNGの主成分)CH4+2O2→CO2+2H2O16:64:44:3644÷16=2.75kg

理論空気量と空気比

気体は種類によらず、1kmolが標準状態で22.4m³N(ノルマル立方メートル)です。炭素1kgは1/12kmolなので、必要な酸素は 22.4÷12≒1.87m³N。水素1kgは 22.4÷4=5.6m³N です。空気中の酸素は体積で21%なので、酸素の量を0.21で割ると理論空気量になります。

実際の燃焼では、燃え残りを防ぐために理論空気量より多めに空気を送ります。その倍率が空気比m(石炭やガスで1.1〜1.3程度)で、実際の空気量=理論空気量×mです。

例題:石炭の燃焼でできるCO2と空気の量

さきほどの例題の石炭(2,000kg/h)が、重さで70%の炭素をふくむとします(水素は考えない)。

求めるもの計算答え
燃える炭素2,000×0.701,400kg/h
CO21,400×44÷12約5,133kg/h(約5.1t/h)
理論酸素量1,400×22.4÷12約2,613m³N/h
理論空気量2,613÷0.21約12,444m³N/h
実際の空気量(空気比1.2)12,444×1.2約14,933m³N/h
燃焼計算の図。炭素12kgと酸素32kgが結びついてCO2が44kgできるので、炭素1kgからCO2は約3.67kg。理論空気量は必要な酸素の量を0.21で割って求める

火力発電の熱効率・燃焼の計算ツール

発電端出力・燃料消費量・発熱量などを入れてください。熱効率と、CO2・空気の量をまとめて計算します。最初は記事の例題の数字が入っています。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。CO2と空気の量は、燃料の炭素と水素がすべて燃えるとして計算しています(硫黄や燃料中の酸素は考えていません)。

熱効率・燃焼計算のよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
B×Hのまま出力とくらべるkJ/hは3600で割ってkWにそろえる
送電端熱効率で分母も小さくする分母(投入熱量)は同じ。分子だけ(1−L)倍
出力をMWのまま式に入れるkWにそろえる(1MW=1,000kW)
炭素1kgからCO2も1kgCO2は44÷12≒3.67倍の重さになる
酸素の量を必要な空気の量とする空気中の酸素は21%。0.21で割る
熱効率と燃焼計算のよくある間違いの図。B×Hは3600で割ってkWにする、送電端熱効率は分子だけ1−L倍、炭素1kgからCO2は約3.67kg、酸素の量を0.21で割ると空気の量
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よくある質問

Q. 火力発電の熱効率の求め方は?

A. 発電端熱効率=3600×発電端出力kW÷(燃料消費量kg/h×発熱量kJ/kg)です。3600はkJ/hをkWに直すための数です。

Q. 発電端熱効率と送電端熱効率の違いは?

A. 発電端は発電機の出口の電力、送電端は所内で使う電力を引いた電力で考えます。送電端=発電端×(1−所内率)です。

Q. 所内率とは?

A. 発電した電力のうち、給水ポンプや送風機など発電所の中で使う電力の割合です。数%程度です。

Q. 炭素1kgが燃えるとCO2は何kg?

A. C+O2→CO2の重さの比が12:44なので、44÷12≒3.67kgです。燃料の重さより重くなるのは、空気中の酸素が結びつくからです。

Q. 空気比とは?

A. 実際に送る空気の量が、理論空気量の何倍かを表す値です。燃え残りを防ぐため1より大きくします。

まとめ
  • 発電端熱効率 η=3600P÷(B×H)
  • 送電端熱効率=η×(1−所内率)。分母は変えない
  • 1kWh=3600kJ。kJ/hは3600で割ってkWに
  • 燃料消費量は B=3600P÷(H×η)で逆算
  • 炭素12kg→CO2 44kg。酸素÷0.21で理論空気量
火力発電の熱効率と燃焼計算のまとめの図。発電端熱効率は3600P÷(B×H)、送電端はη×(1−L)、燃料消費量は3600P÷(H×η)、炭素12kgからCO2が44kg
この記事の理解を深める本と道具
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S
シラス
電験三種 / QC検定1級 / パワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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