- 「トランジスタって何?名前はよく聞くけど…」
- 「BJTってダイオードやサイリスタと何が違うの?」
- 「ベース電流で制御って、どういうこと?」
半導体素子シリーズ第3弾は「トランジスタ(BJT)」です。
「npn接合」「ベース電流」「エミッタ」「コレクタ」…専門用語だらけで、頭がパンクしそうですよね。
でも大丈夫です。トランジスタは「水道の蛇口」をイメージすれば、スッキリ理解できます!
- トランジスタは小さな電流で大きな電流を制御できる素子
- ベース電流という「蛇口のひねり具合」で電流量を調整
- サイリスタと違い、ONもOFFも自在にコントロール可能
- 増幅回路やスイッチング回路に幅広く使われる
目次
🚿 トランジスタとは?「水道の蛇口」をイメージしよう
結論から言うと、トランジスタは「小さな力で大きな電流を制御できる蛇口」です。
水道の蛇口を思い浮かべてください。蛇口のハンドルを少しひねるだけで、大量の水が出たり止まったりしますよね。
トランジスタもまったく同じです。「ベース電流」という小さな電流で、「コレクタ電流」という大きな電流をコントロールできるんです。

ダイオード = 普通の改札(一方通行)
サイリスタ = 鍵付き改札(ONは制御可、OFFは電流ゼロ待ち)
トランジスタ = 蛇口(ON/OFF自在+流量も調整可能)
どんどん「制御できること」が増えていきますね!
📛 BJTって何の略?正式名称を覚えよう
トランジスタには色々な種類がありますが、今回学ぶのは「BJT」と呼ばれるタイプです。
BJT = Bipolar Junction Transistor
(バイポーラ接合トランジスタ)
「Bipolar(バイポーラ)」は「2つの極性」という意味で、電子と正孔の両方を使って動作することを表しています。
難しく考えなくてOKです。「BJT = 電流で制御するトランジスタ」と覚えておきましょう!
🔌 BJTの3つの端子
BJTも3本足の素子です。それぞれの役割を「蛇口」に例えて覚えましょう。
| 端子名 | 役割 | 蛇口のイメージ |
|---|---|---|
| コレクタ(C) | 電流の入口(主電流) | 🚰 水道管(供給側) |
| エミッタ(E) | 電流の出口(主電流) | 💧 蛇口の出口 |
| ベース(B) | 制御信号の入口 | 🔧 蛇口のハンドル |
ベース(B)がBJT最大の特徴です。ベースに流す電流の量で、コレクタ→エミッタ間の電流をコントロールします。
📊 電流の関係式
BJTの電流には、こんな関係があります。
IE = IC + IB
エミッタ電流 = コレクタ電流 + ベース電流
そして、コレクタ電流はベース電流の数十倍〜数百倍になります。この倍率を「電流増幅率(hFE)」と呼びます。

蛇口のハンドルを少し回すと、水がチョロチョロ出る。
ハンドルをたくさん回すと、水がドバドバ出る。
BJTも同じで、ベース電流を増やすとコレクタ電流も増えます!
⚡ BJTの動作|ON/OFFを自在にコントロール
BJTはサイリスタと違って、ONもOFFも自由自在にコントロールできます。
✅ ONにする方法
ベースに電流を流すと、コレクタ→エミッタ間に電流が流れます。
ベース電流を流す → コレクタ電流が流れる → ON!
❌ OFFにする方法
ベース電流を止めると、コレクタ電流も止まります。
ベース電流を止める → コレクタ電流も止まる → OFF!
サイリスタ:一度ONになると、電流ゼロまでOFFにできない
BJT:ベース電流を止めれば、いつでもOFFにできる
この「自由にOFFできる」のがBJTの大きなメリットです!
🔄 素子の比較|進化の流れを整理しよう
ここで、これまで学んだ素子を比較してみましょう。
| 項目 | ダイオード | サイリスタ | BJT |
|---|---|---|---|
| 端子の数 | 2本 | 3本 | 3本 |
| ON制御 | ✕ 不可 | ○ ゲート信号 | ◎ ベース電流 |
| OFF制御 | ✕ 不可 | △ 電流ゼロ待ち | ◎ いつでも可能 |
| 制御方法 | — | 電流(トリガ) | 電流(連続) |
| イメージ | 🚪 改札 | 🔐 鍵付き改札 | 🚿 蛇口 |

💡 BJTの使い道
BJTは「小さな電流で大きな電流を制御できる」という特徴を活かして、様々な用途で使われています。
🔊 用途①:増幅回路
マイクで拾った小さな音声信号を、スピーカーを鳴らせる大きな信号に増幅します。
ベース電流の変化がコレクタ電流に増幅されて現れるので、信号を大きくできるんです。
⚡ 用途②:スイッチング回路
ベース電流をON/OFFすることで、大きな電流のON/OFFを制御します。
マイコン(マイクロコンピュータ)の小さな出力信号で、モーターやLEDを動かすときなどに使われます。
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 🔊 増幅回路 | オーディオアンプ、ラジオ |
| ⚡ スイッチング | LED点灯回路、リレー駆動 |
| 🔌 電源回路 | レギュレータ、定電圧回路 |
🔬 npn型とpnp型
BJTには「npn型」と「pnp型」の2種類があります。
| 種類 | 構造 | 電流の向き | 使用頻度 |
|---|---|---|---|
| npn型 | n-p-n | C→E | ⭐ よく使う |
| pnp型 | p-n-p | E→C | 特殊な用途 |
電験三種ではnpn型がよく出題されます。まずはnpn型をしっかり理解しましょう!

📚 まとめ|BJTの要点整理
- BJTは小さなベース電流で大きなコレクタ電流を制御する素子
- BJT = Bipolar Junction Transistor(バイポーラ接合トランジスタ)
- 3端子:コレクタ(C)・エミッタ(E)・ベース(B)
- サイリスタと違い、ON/OFFを自在にコントロール可能
- 増幅回路やスイッチング回路で活躍
- BJTは「電流駆動」であることを覚える(MOSFETは電圧駆動)
- IE = IC + IB の関係式
- 電流増幅率(hFE)の意味を理解する
- npn型とpnp型の回路記号の矢印の向きに注意
| ベース電流(IB) | BJTを制御するための小さな電流 |
| コレクタ電流(IC) | 制御される主電流(大きい) |
| エミッタ電流(IE) | IC + IB の合計 |
| 電流増幅率(hFE) | IC / IB の比率(数十〜数百倍) |
📖 パワーエレクトロニクスシリーズ
5-1-6 半導体素子の比較表|ダイオード・SCR・MOSFET・IGBTを一覧で確認 →
BJTは「水道の蛇口」のような素子でしたね。
小さなベース電流で、大きなコレクタ電流を自在にコントロール!
次は「電圧で制御する」MOSFETを学びましょう!🚿⚡