機械科目の解説

サイリスタ整流回路と位相制御|制御角αと出力電圧の式を抵抗負荷・誘導性負荷で図解|計算ツール付き

サイリスタの位相制御を表すアイキャッチ。正弦波の正の半周期のうち、オンにする時刻より後ろの部分だけを使う

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 制御角αが90°のとき、出力電圧は0?それとも半分?
  • (1+cosα)とcosα、どちらの式を使えばいいかわからない
  • 還流ダイオードや転流の意味があいまい
この記事でわかること
  • サイリスタで位相制御する仕組み
  • 負荷の種類で変わる出力電圧の式
  • 還流ダイオード・転流・逆変換
  • 回路とαを選ぶだけの計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

サイリスタ整流回路は、ゲート信号を送るタイミング(制御角α)を遅らせて、直流の出力電圧を調整する回路です。αを大きくするほど出力電圧は下がります。単相全波の場合、抵抗負荷では Vd=0.9V×(1+cosα)÷2、電流が途切れない誘導性負荷では Vd=0.9V×cosα で、負荷の種類で式が変わるのがいちばんの注意点です。

サイリスタの位相制御を表すアイキャッチ。正弦波の正の半周期のうち、オンにする時刻より後ろの部分だけを使う

位相制御とは?ゲートを送るタイミングで電圧を変える

サイリスタは、順方向の電圧がかかっているときにゲート信号を受けると、オンになります。一度オンになると、電流が0になるまでオンのままです。ダイオードは電圧がかかればすぐオンになるので、出力電圧は変えられません。サイリスタはオンにする時刻を遅らせることで、交流のうち使う部分を減らし、平均の出力電圧を下げられます。

ダイオード整流サイリスタ整流
オンになる時刻順方向の電圧がかかった瞬間ゲート信号を受けた瞬間
出力電圧決まった値αで連続して変えられる
使われる場所電源回路直流電動機の速度制御・電気炉・直流送電

制御角α(点弧角)は、ダイオードならオンになっていた時刻(自然点弧点)から、ゲート信号を送るまでの遅れの角度です。α=0°ならダイオード整流と同じで、αを大きくするほど出力電圧は下がります。

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位相制御の図。制御角αが0°なら半周期すべてを使い、60°、120°と大きくするほど使う部分が減って、出力電圧が下がる

出力電圧の式は「負荷の種類」で変わる

同じ回路・同じαでも、負荷が抵抗かコイルかで出力電圧はちがいます。電源電圧が負になったとき、抵抗負荷では電流が0になってサイリスタはオフします。コイルの大きい誘導性負荷では、コイルが電流を流しつづけるので、サイリスタはオンのままで、出力に負の電圧も出てきます。

負荷電源電圧が負になると単相全波の式
抵抗負荷(還流ダイオードありも同じ)電流が0になりオフ。出力は0VVd=0.9V×(1+cosα)÷2
誘導性負荷(電流が途切れない)オンのまま。負の電圧も出るVd=0.9V×cosα
α抵抗負荷誘導性負荷
0°0.9V(最大)0.9V(最大)
60°0.675V(最大の75%)0.45V(50%)
90°0.45V(50%)0
120°0.225V−0.45V(逆変換)

「α=90°で出力0」「α>90°で負になる(逆変換)」は、誘導性負荷の話です。問題文の「抵抗負荷」「インダクタンスが十分大きい」などの言葉で、どちらの式を使うか決めます。

負荷による出力電圧の違いの図。単相全波でα=90°のとき、抵抗負荷は電圧が負にならず最大の半分、誘導性負荷は負の電圧も出て平均0V

単相・三相の出力電圧の式一覧

回路α=0°の値誘導性負荷(電流連続)抵抗負荷
単相半波0.45V―0.45V×(1+cosα)÷2
単相全波0.9V0.9V×cosα0.9V×(1+cosα)÷2
三相半波(E:相電圧)1.17E1.17E×cosαα≦30°:1.17E×cosα
α>30°:0.675E×(1+cos(α+30°))
三相全波(V:線間電圧)1.35V1.35V×cosαα≦60°:1.35V×cosα
α>60°:1.35V×(1+cos(α+60°))

三相では、α=0°の基準(自然点弧点)が相電圧のゼロではなく、相どうしが入れかわる点(30°の位置)にあるので、式が cosα の形になります。抵抗負荷でも、αが小さいあいだは電流が途切れないので誘導性負荷と同じ式で、αが大きくなって電流が途切れると、(1+cos)の形に変わります。

例題で計算する

例題①:単相全波・V=100V・α=60°

負荷計算答え
抵抗負荷0.9×100×(1+0.5)÷267.5V
誘導性負荷0.9×100×0.545V

例題②:三相全波・線間電圧200V

α計算答え
30°(どちらの負荷も)1.35×200×cos30°約234V
90°(誘導性負荷)1.35×200×cos90°0V
90°(抵抗負荷)1.35×200×(1+cos150°)約36V
位相制御の例題の図。単相全波100V・α=60°で、抵抗負荷は67.5V、誘導性負荷は45V。三相全波200V・α=30°は1.35×200×cos30°で約234V

還流ダイオードと転流

還流ダイオード:出力電圧が負にならないようにする

誘導性負荷の両端に、逆向きにダイオードをつなぎます(還流ダイオード)。電源電圧が負になると、負荷の電流はサイリスタではなく還流ダイオードを通って流れつづけ、サイリスタはオフします。

還流ダイオードなし(誘導性負荷)還流ダイオードあり
出力電圧の負の部分出る出ない(0Vになる)
平均出力電圧0.9V×cosα0.9V×(1+cosα)÷2(抵抗負荷と同じ)
逆変換(α>90°で電力を電源に戻す)できるできない

転流:電流が次の素子に乗りかえること

方式転流のさせ方例
他励式(自然転流・電源転流)交流電源の電圧の向きが変わることを利用して、次の素子に電流を移すサイリスタ整流回路
自励式(強制転流)自分で電流を切れる素子(IGBTなど)や転流回路で、電流を止めて移す電圧形インバータ

実際には電源側のインダクタンスのため、転流は一瞬では終わらず、2つの素子が同時にオンになる期間(重なり角u)ができます。重なり角があると、出力電圧はその分だけ少し下がります。

還流ダイオードと転流の図。還流ダイオードがあると出力電圧が負にならず、逆変換はできない。他励式は交流電源の電圧で転流する自然転流、自励式は素子や転流回路で電流を切る強制転流

位相制御の出力電圧の計算ツール

回路・負荷・電圧・制御角αを選んでください。三相全波は線間電圧、三相半波は相電圧を入れます。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。重なり角とサイリスタの電圧降下は考えていません。

位相制御のよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
(1+cosα)の式で α=90°なら0V抵抗負荷なら最大の半分。0Vになるのは誘導性負荷(cosα)
どんな負荷でも α>90°で逆変換できる逆変換は、電流が途切れない誘導性負荷で、還流ダイオードがないときだけ
自然転流は自励式交流電源で転流するのが他励式(自然転流)。自励式は強制転流
三相半波も線間電圧で 1.17V三相半波は相電圧E、三相全波は線間電圧Vを使う
αを大きくすると出力電圧が上がるαは遅れの角度。大きいほど出力電圧は下がる
位相制御のよくある間違いの図。抵抗負荷ではα=90°で最大の半分、逆変換は誘導性負荷で還流ダイオードがないときだけ、自然転流は他励式、αが大きいほど出力電圧は下がる
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よくある質問

Q. 位相制御とは?

A. サイリスタにゲート信号を送るタイミング(制御角α)を遅らせて、交流のうち使う部分を減らし、直流の出力電圧を調整する方法です。

Q. 制御角αとは?

A. ダイオードならオンになっていた時刻(自然点弧点)から、ゲート信号を送るまでの遅れの角度です。点弧角ともいいます。

Q. 単相全波でα=90°のとき出力電圧は?

A. 抵抗負荷なら0.9V×(1+0)÷2で最大の半分、電流が途切れない誘導性負荷なら0.9V×cos90°で0Vです。

Q. 還流ダイオードの役割は?

A. 電源電圧が負のあいだ負荷の電流を流しつづけ、出力電圧が負にならないようにします。平均電圧は上がりますが、逆変換はできなくなります。

Q. 他励式と自励式の違いは?

A. 他励式は交流電源の電圧を使って転流させる方式(自然転流)、自励式は素子自身や転流回路で電流を止める方式(強制転流)です。

まとめ
  • 位相制御=ゲートのタイミングαで出力電圧を変える
  • αが大きいほど出力電圧は下がる
  • 抵抗負荷は(1+cosα)÷2、誘導性負荷はcosα
  • 逆変換は誘導性負荷・還流ダイオードなしでα>90°
  • 他励式=自然転流、自励式=強制転流
サイリスタの位相制御のまとめの図。αでオンにする時刻を遅らせる、抵抗負荷は(1+cosα)÷2、誘導性負荷はcosα、還流ダイオードで出力が負にならない
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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