統計学基礎

積の分散V(XY)とは?確率変数の積の期待値と分散の公式を例題で図解|計算ツール付き

積の分散V(XY)とは何かを表すアイキャッチ。縦と横がばらつく長方形と、2つのサイコロ

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • V(XY)の公式が長くて覚えられない
  • 和の分散はかんたんなのに、積はなぜ3つも項があるの?
  • QC検定1級の積の分散の問題で手が止まる
この記事でわかること
  • 積の期待値と分散の公式
  • 3つの項の意味(長方形の面積で)
  • 公式の導出と例題
  • 平均と標準偏差を入れるだけの計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

XとYが独立なら、積の期待値は E(XY)=E(X)E(Y)、積の分散は V(XY)=V(X)V(Y)+{E(Y)}²V(X)+{E(X)}²V(Y) です。和の分散 V(X)+V(Y) とちがって、相手の平均の2乗がかかった項が出てくるのがポイントです。ばらつきが平均にくらべて小さいときは、変動係数の2乗が足せる((σXY/μXY)²≒CVX²+CVY²)と覚えておくと便利です。

積の分散V(XY)とは何かを表すアイキャッチ。縦と横がばらつく長方形と、2つのサイコロ

積の期待値と分散の公式|和との比較

和 X+Y積 XY
期待値E(X)+E(Y)(いつでも成り立つ)E(X)E(Y)(独立のとき)
分散(独立のとき)V(X)+V(Y)V(X)V(Y)+{E(Y)}²V(X)+{E(X)}²V(Y)

和の分散は分散を足すだけですが、積の分散には相手の平均の2乗がかかった項が入ります。平均が大きいほど、相手のばらつきが何倍にも広げられるからです。

サイコロ2個の積なら、期待値は 3.5×3.5=12.25、分散は (35/12)²+3.5²×35/12+3.5²×35/12≒79.97 です。和の分散 35/6≒5.83 とくらべて、はるかに大きくなります。

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和の分散はなぜ足せるのか

和と積の公式の比較の図。和の期待値はE(X)+E(Y)で分散はV(X)+V(Y)。積の期待値はE(X)E(Y)で、分散はV(X)V(Y)+{E(Y)}²V(X)+{E(X)}²V(Y)

3つの項の意味|長方形の面積で考える

縦X×横Yの長方形の面積を考えます。縦も横も、平均のまわりで少しずつばらつきます。面積のばらつきは、次の3つから生まれます。

項式意味
①{E(Y)}²V(X)横は平均のまま、縦だけがばらつく分
②{E(X)}²V(Y)縦は平均のまま、横だけがばらつく分
③V(X)V(Y)縦と横のずれが重なる分(ふつうはとても小さい)

①は「縦のずれ×平均の横」なので、縦のばらつきが平均の横の長さ倍に広がります。分散は2乗で効くので {E(Y)}² がかかります。③はずれどうしのかけ算なので、ばらつきが平均より十分小さければ、ほとんど無視できます。

積の分散の3つの項の図。長方形の面積のばらつきは、縦だけずれる分{E(Y)}²V(X)、横だけずれる分{E(X)}²V(Y)、両方のずれが重なる小さな分V(X)V(Y)の3つから生まれる

V(XY)の公式の導出

分散の公式 V(Z)=E(Z²)−{E(Z)}² を、Z=XY にあてはめます。

ステップ式
① 分散の公式V(XY)=E(X²Y²)−{E(XY)}²
② 独立なので分けられるE(X²Y²)=E(X²)E(Y²)、E(XY)=E(X)E(Y)
③ 2乗の期待値を分散で表すE(X²)=V(X)+{E(X)}²、E(Y²)=V(Y)+{E(Y)}²
④ 代入して展開{V(X)+E(X)²}{V(Y)+E(Y)²}−E(X)²E(Y)²
⑤ E(X)²E(Y)² が消えるV(X)V(Y)+{E(Y)}²V(X)+{E(X)}²V(Y)

カギは③の E(X²)=V(X)+{E(X)}²(2乗の期待値=分散+期待値の2乗)です。この変形は、期待値と分散の問題で何度も使います。

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期待値と分散の関係

例題:長方形の面積のばらつき

縦Xは平均10cm・標準偏差0.1cm、横Yは平均5cm・標準偏差0.2cm(独立)。面積XYの平均と標準偏差は?

ステップ計算答え
① 平均10×550cm²
② {E(Y)}²V(X)5²×0.1²=25×0.010.25
③ {E(X)}²V(Y)10²×0.2²=100×0.044
④ V(X)V(Y)0.01×0.040.0004
⑤ 分散と標準偏差0.25+4+0.0004=4.2504σ≒2.06cm²

分散のほとんど(約94%)は③の横のばらつきから来ています。面積のばらつきを減らしたいなら、横の寸法を管理するのが効果的、とわかります。

変動係数で近似する

V(X)V(Y) を無視して両辺を {E(X)E(Y)}² で割ると、(σXY÷μXY)²≒(σX÷μX)²+(σY÷μY)² になります。つまり、積では変動係数(標準偏差÷平均)の2乗が足せるのです。例題なら 50×√(0.01²+0.04²)≒2.06 で、ほぼ同じ値です。

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和の平均・分散と部品組立の問題

積の分散の例題の図。縦10±0.1、横5±0.2の長方形の面積は平均50、縦の分0.25、横の分4、重なり0.0004で分散4.2504、標準偏差は約2.06

積の期待値と分散の計算ツール

XとYの平均と標準偏差を入れてください(XとYは独立とします)。最初は例題の数字が入っています。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。XとYが独立のときの公式で計算しています。

独立でないときと、よくある間違い

XとYに関係があるときは、E(XY)=E(X)E(Y)+Cov(X, Y) となり、この記事の分散の公式もそのままは使えません。問題文で「独立」と書かれているかを、まず確かめましょう。

よくある間違い正しい考え方
V(XY)=V(X)V(Y)相手の平均の2乗がかかった2つの項を忘れない
{E(X)}² と E(X²) を同じとするE(X²)=V(X)+{E(X)}²。分散の分だけ大きい
独立でないのに E(XY)=E(X)E(Y)共分散の分だけずれる
標準偏差どうしをかける分散を求めてからルート
和と同じく分散を足す積は3つの項。近似なら変動係数の2乗を足す
積の分散のよくある間違いの図。V(XY)は3つの項、E(X²)はV(X)+{E(X)}²、E(XY)=E(X)E(Y)は独立のときだけ、標準偏差は分散を出してからルートをとる

よくある質問

Q. 積の分散の公式は?

A. XとYが独立なら V(XY)=V(X)V(Y)+{E(Y)}²V(X)+{E(X)}²V(Y) です。相手の平均の2乗がかかった項が入るのが特徴です。

Q. 積の期待値はいつ E(X)E(Y) になる?

A. XとYが独立のとき(もっと広くは共分散が0のとき)です。関係があるときは共分散の分が加わります。

Q. なぜ積の分散は和より複雑なの?

A. かけ算では、片方のずれが相手の平均倍に広げられるからです。その広がり方が {E(Y)}²V(X) と {E(X)}²V(Y) です。

Q. V(X)V(Y) の項は無視していい?

A. ばらつきが平均より十分小さければ、ほかの2つにくらべてとても小さいので、近似では無視できます。

Q. 変動係数で近似するとは?

A. 積の変動係数の2乗は、XとYの変動係数の2乗の和にほぼ等しい、という近似です。ばらつきが小さいときに使えます。

まとめ
  • 独立なら E(XY)=E(X)E(Y)
  • V(XY)=V(X)V(Y)+{E(Y)}²V(X)+{E(X)}²V(Y)
  • 相手の平均の2乗がかかるのが和とのちがい
  • 導出のカギは E(X²)=V(X)+{E(X)}²
  • ばらつきが小さければ変動係数の2乗が足せる
積の分散のまとめの図。独立ならE(XY)=E(X)E(Y)、V(XY)は3つの項、相手の平均の2乗がかかる、ばらつきが小さければ変動係数の2乗が足せる
この記事の理解を深める本と道具
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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