基板設計

【完全図解】基板の層構成の決め方|2層・4層・6層をどう使い分けるか

😣 こんな悩みはありませんか?
  • パワエレ基板は2層でいい?4層にすべき?判断基準がわからない
  • GND層や電源層はどこに配置すればいいの?
  • 層数を増やすとコストが上がるけど、どこまで必要?
✅ この記事でわかること
  • 2層・4層・6層それぞれの特徴と使い分けの判断基準
  • パワー層・GND層・信号層の最適な配置パターン
  • コストと性能のバランスの取り方

「基板の層数、何層にすればいいんだろう…」

パワエレ基板設計を始めるとき、最初に悩むのが「層構成」です。2層なら安いけど大丈夫?4層にしたらオーバースペック?6層は本当に必要?

実は、層構成の決め方には明確な判断基準があります。「電流値」「ノイズ要件」「実装密度」の3つを見れば、最適な層数が見えてくるのです。

この記事では、パワエレ基板の層構成を「なぜそうするのか」という理由から丁寧に解説します。読み終わる頃には、自信を持って層数を決められるようになりますよ。

📘 前提知識
この記事は「パワエレ基板設計の全体像」を理解している方向けです。まだ読んでいない方は、先にこちらをご覧ください。
→ 【入門】パワエレ基板設計の全体像|信号基板との違いを理解する

層構成とは?|基板の「断面図」を設計する

まず、「層構成(レイヤースタック)」とは何かを明確にしましょう。

基板を横から見ると、銅箔の層絶縁体(FR-4など)が交互に積み重なっています。この「積み重ね方」を決めるのが層構成設計です。

💡 層構成のイメージ
基板の層構成は「ミルフィーユ」のようなもの。クリーム(絶縁体)とパイ生地(銅箔)を何層にも重ねて、全体の厚さや特性を決めます。

基板の基本構造|銅箔と絶縁体の積層

一般的な基板の構造を見てみましょう。

📐 2層基板の断面構造

L1:部品面(TOP)- 銅箔 35μm
FR-4 コア材(約1.5mm)
L2:はんだ面(BOT)- 銅箔 35μm

総厚:約1.6mm(標準)

2層基板は最もシンプルな構造です。表面(TOP)と裏面(BOT)の2枚の銅箔だけで回路を構成します。

なぜ層数を増やすのか?|3つの理由

2層で済むなら、わざわざ高い4層や6層にする必要はありません。では、なぜ層数を増やすのでしょうか?理由は大きく3つあります。

理由①
電流容量の確保

内層に電源・GNDプレーンを設けて、大電流の経路を確保

📡

理由②
ノイズ対策

GNDプレーンでシールド効果を得て、EMIを低減

📦

理由③
配線密度の向上

信号層を増やして、複雑な回路を小さな基板に収める

パワエレ基板では、特に①電流容量②ノイズ対策が重要です。信号基板のように「配線が通らないから層を増やす」というより、「電気的性能を上げるために層を増やす」という考え方が基本になります。

2層・4層・6層の特徴比較|一目でわかる早見表

まずは、2層・4層・6層の特徴を一覧表で比較してみましょう。

項目 2層 4層 6層
コスト ◎ 安い
(基準)
○ やや高い
(1.5〜2倍)
△ 高い
(2〜3倍)
GNDプレーン ✕ なし ○ 1層 ◎ 2層可能
ノイズ耐性 △ 低い ○ 良好 ◎ 優秀
配線自由度 △ 制限あり ○ 中程度 ◎ 高い
放熱性 ○ 良好 ◎ 優秀 ◎ 優秀
納期 ◎ 短い ○ 標準 △ 長い
主な用途 簡易電源
LED駆動
低速スイッチング
モータードライバ
DC-DCコンバータ
中規模インバータ
高速インバータ
EV用パワエレ
複合システム

2層基板|シンプル&低コストの基本形

2層基板は、最もシンプルでコストの安い構成です。表と裏の2面だけで回路を構成します。

🔧 2層基板の層構成

L1
部品面(TOP):パワー回路 + 信号回路
FR-4(1.6mm)
L2
はんだ面(BOT):GNDベタ + 一部配線

2層基板のメリット

  • コストが安い:4層の1/2〜1/3程度
  • 納期が短い:試作基板なら最短即日〜数日
  • 設計がシンプル:層間の整合性を考えなくてよい
  • 放熱経路が明確:裏面のベタGNDから熱を逃がしやすい

2層基板のデメリット

  • GNDプレーンが不完全:配線で分断されやすい
  • ノイズ耐性が低い:シールド効果が限定的
  • 配線の自由度が低い:交差する配線はジャンパが必要
💡 2層基板が向いているケース
・電流が10A以下の比較的小規模な回路
・スイッチング周波数が100kHz以下の低速回路
・EMC規格が厳しくない用途(産業機器内蔵など)
・試作・評価用でコストと納期を優先したい場合

4層基板|パワエレの「標準」構成

4層基板は、パワエレ設計で最もよく使われる「標準的な構成」です。内層にGNDプレーンと電源プレーンを配置できるため、2層に比べて大幅に性能が向上します。

🔧 4層基板の層構成(推奨パターン)

L1
部品面(TOP):パワー回路 + 信号回路
プリプレグ(0.2mm)
L2
GNDプレーン(ベタGND)
コア材(1.0mm)
L3
電源プレーン(VCC/パワー)
プリプレグ(0.2mm)
L4
はんだ面(BOT):信号回路 + 一部パワー

総厚:約1.6mm(標準)

📐 4層の層配置のポイント
L2にGNDプレーンを配置するのが鉄則。L1の信号に対するリターンパスを最短にする
・GNDとVCCの間隔は薄く(0.2mm程度)してデカップリング効果を高める
・パワー回路と信号回路は物理的に分離する

4層基板のメリット

  • GNDプレーンで低インピーダンス:リターン電流が最短経路で流れる
  • シールド効果:L2のGNDプレーンがL1とL3の間を遮蔽
  • 放熱性向上:内層の銅箔が熱を拡散させる
  • デカップリング効果:GND-VCC間の薄い絶縁層がコンデンサとして機能

4層基板のデメリット

  • コスト増:2層の1.5〜2倍程度
  • 納期増:試作でも1週間程度かかることが多い
  • 設計の複雑化:層間の整合性、ビアの配置を考慮する必要
💡 4層基板が向いているケース
・電流が10A〜50A程度の中規模パワー回路
・スイッチング周波数が100kHz〜1MHz程度
EMC規格への適合が必要な製品
・モータードライバ、DC-DCコンバータ、小〜中規模インバータ

6層基板|高性能・高密度の選択肢

6層基板は、4層では足りない場合の選択肢です。信号層を増やしたり、GNDプレーンを複数設けたりできます。

🔧 6層基板の層構成(パワエレ向けパターン)

L1
部品面(TOP):パワー回路
プリプレグ
L2
GNDプレーン①(パワーGND)
コア材
L3
信号層(制御回路)
プリプレグ
L4
電源プレーン(VCC)
コア材
L5
GNDプレーン②(信号GND)
プリプレグ
L6
はんだ面(BOT):信号回路

6層の最大のメリットは、GNDプレーンを2層設けられることです。パワーGNDと信号GNDを物理的に分離することで、ノイズの干渉を大幅に低減できます。

💡 6層基板が向いているケース
・電流が50A以上の大規模パワー回路
・スイッチング周波数が1MHz以上の高速回路
パワー回路と制御回路が同一基板に混在する場合
・EV用インバータ、高性能モータードライバ、複合電源システム
⚠️ 6層を選ぶ前に考えること
6層はコストが2層の2〜3倍になります。「4層+基板を分割」という選択肢も検討してください。パワー基板と制御基板を分ければ、それぞれ4層で済むこともあります。

層数の決め方|3つの判断基準

では、実際に層数をどう決めればいいのでしょうか?3つの判断基準を順番にチェックすれば、最適な層数が見えてきます。

🔍 層数決定フローチャート

CHECK 1

最大電流は何A?

→ 10A以下:2層でも可能
→ 10A〜50A:4層推奨
→ 50A以上:6層または基板分割を検討

CHECK 2

EMC規格への適合は必要?

→ 不要(内部基板など):2層でも可能
→ 必要(製品として出荷):4層以上を強く推奨

CHECK 3

パワー回路と制御回路は同一基板?

→ 別基板:各基板は4層で十分なことが多い
→ 同一基板:6層で分離、または基板分割を検討

判断基準①:電流値|パターン幅と層数の関係

電流値は、層数を決める最も基本的な判断基準です。電流が大きいほど、太いパターンや複数の層が必要になります。

電流 推奨層数 理由
〜10A 2層でOK 外層だけで十分な電流容量を確保できる
10A〜30A 4層推奨 内層の電源プレーンで電流経路を分散
30A〜50A 4層+厚銅 70μm〜105μmの厚銅を併用
50A以上 6層または分割 基板分割やバスバー併用も検討

判断基準②:ノイズ要件|GNDプレーンの必要性

EMC規格への適合が必要な製品では、GNDプレーンによるシールド効果が重要になります。これは2層では実現しにくく、4層以上が必要になる主な理由です。

❌ 2層のGNDパターン

・配線で分断される
・リターン電流の経路が遠回り
・ループ面積が大きくなりノイズ増加
・シールド効果がほとんどない

✓ 4層のGNDプレーン

分断されないベタパターン
・リターン電流が最短経路で流れる
・ループ面積が最小化されノイズ低減
・L1とL3の間をシールド

📐 GNDプレーンの効果
GNDプレーンがあると、信号のリターン電流は「信号パターンの真下」を通ります。これによりループ面積が最小化され、放射ノイズが大幅に減少します。EMC試験で10dB以上の差が出ることも珍しくありません。

判断基準③:回路の複合度|パワーと制御の分離

パワー回路と制御回路が同一基板に載る場合、両者の分離が重要な設計課題になります。

構成 推奨対応
パワー回路のみ 4層で十分。電源・GNDプレーンを内層に
パワー+簡易制御 4層で対応可能。エリア分離を徹底
パワー+高速制御 6層でGNDを2層化、または基板分割
複数電源+制御 6層以上、または基板分割を強く推奨

コストと性能のバランス|現実的な選択

層数を増やせば性能は上がりますが、コストも上がります。「必要十分」な層数を選ぶことが、現実的な設計には重要です。

層数とコストの関係

層数 コスト目安
(2層=1.0)
試作納期目安 備考
2層 1.0 即日〜3日 最も安価・短納期
4層 1.5〜2.0 5〜7日 コスパ最良
6層 2.5〜3.5 7〜14日 高性能用途向け
8層以上 4.0〜 14日〜 特殊用途
💡 コスト削減のヒント
試作は2層で基本動作を確認、量産で4層に移行する方法もある
基板を分割して、パワー基板は2層、制御基板は4層という構成も有効
基板サイズを小さくできれば、層数が多くてもコスト増を抑えられる
⚠️ 「安さ」で失敗しないために
コストを優先して2層にしたら、EMC試験で不合格…という失敗談は多いです。やり直しのコストは新規設計の3〜5倍かかることも。最初から適切な層数を選ぶ方が、トータルでは安上がりです。

まとめ|層構成は「電流・ノイズ・複合度」で決める

この記事では、パワエレ基板の層構成の決め方を解説しました。

📝 この記事のまとめ

  • 2層:10A以下、EMC要件なし、低コスト優先の場合
  • 4層:パワエレの標準構成。10A〜50A、EMC対策必要な場合に最適
  • 6層:50A以上、パワー+高速制御が混在する場合
  • 層数は「電流値」「ノイズ要件」「回路の複合度」の3点で判断
  • 4層のコスパが最も良い。迷ったら4層を選べば間違いない
  • コスト削減は「基板分割」「サイズ縮小」で対応する方が安全

🎯 層数クイック判定

2層

試作・評価
10A以下
EMC不要

4層

量産・製品
10A〜50A
EMC対策必要

6層

高性能・複合
50A以上
パワー+制御混在

層構成が決まったら、次は「各層に何を配置するか」という具体的なレイアウト設計に進みます。パワー層・GND層・信号層の配置パターンを学びましょう。

📚 次に読むべき記事

📘 【入門】パワエレ基板設計の全体像|信号基板との違いを理解する →

まだ読んでいない方は、パワエレ設計の「4大課題」を先に理解しておきましょう。

📗 【一目でわかる】半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・BJT・MOSFET・IGBTを総整理 →

パワー半導体の種類と特徴を理解して、適切な部品選定につなげましょう。

📙 【図解で完全理解】パワーエレクトロニクスとは?|電気を「自由自在に変換」する技術 →

パワエレの基本概念から学びたい方はこちら。全体像がさらに明確になります。

🔗 パワエレ基板設計シリーズ

この記事は「パワエレ基板設計 基礎編」シリーズの一部です。基礎から順番に学びたい方は、シリーズ記事をご活用ください。

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