- FR-4以外にどんな基板材質があるの?
- アルミ基板とメタルコア基板、何が違う?
- 放熱が必要なときは、どの材質を選べばいい?
- コストと性能のバランス、どう考えればいい?
- FR-4・CEM-3・アルミ基板・メタルコア基板の構造と特徴
- 「なぜ」その材質が放熱に優れているのか、物理的な理由
- 熱伝導率・耐熱性・コストの具体的な比較
- 用途別の選定基準とフローチャート
「パワエレ基板って、普通のFR-4じゃダメなの?」
結論から言うと、発熱が小さければFR-4で十分。でも、発熱が大きい場合はFR-4では熱を逃がしきれません。
なぜか? それは、FR-4の「熱伝導率」が非常に低いからです。FR-4は電気的な絶縁材料として優秀ですが、熱を伝える能力は「断熱材」に近いレベルなのです。
この記事では、基板材質ごとの特徴を「なぜそうなるのか」という物理的な理由から解説します。理由がわかれば、材質選びで迷うことはなくなりますよ。
目次
基板材質が重要な理由|熱の「逃げ道」を作る
まず、「なぜ基板材質が重要なのか」を理解しましょう。
パワエレ回路では、MOSFETやIGBTなどのパワー半導体が大量の熱を発生させます。この熱を逃がさないと、半導体の温度が上がり続け、最終的には壊れてしまいます。
熱の逃げ道は3つある
部品から発生した熱は、次の3つの経路で逃げていきます。
🔥 熱の3つの逃げ道
① 上方向
部品の上面から
空気中へ放熱
(対流・放射)
② 下方向
基板を通って
裏面・ヒートシンクへ
(伝導)
③ 横方向
銅パターンを通って
周囲に拡散
(伝導)
この中で、②下方向(基板を通る経路)が最も重要です。なぜなら、基板の裏面にヒートシンクを取り付けて効率的に放熱できるからです。
しかし、ここで問題が発生します。基板の材質によって、熱の通りやすさが全く違うのです。
フライパンの材質によって、火の通りが違いますよね。
・鉄のフライパン:熱が均一に広がりにくい
・アルミのフライパン:熱がすぐに広がる
・銅のフライパン:熱が一瞬で全体に広がる
基板も同じです。材質によって「熱の伝わりやすさ」が大きく変わります。
熱伝導率とは?|熱の「通りやすさ」を表す数値
材質の熱の伝わりやすさを数値で表したものが「熱伝導率」です。単位はW/(m・K)で、「1メートルの距離で1℃の温度差があるとき、1秒間に何ワットの熱が伝わるか」を表します。
難しく聞こえますが、要するに「数値が大きいほど、熱が伝わりやすい」と覚えておけばOKです。
| 材質 | 熱伝導率 W/(m・K) |
FR-4との比較 | イメージ |
|---|---|---|---|
| FR-4(ガラスエポキシ) | 0.3 | 1倍(基準) | 🧱 断熱材レベル |
| アルミニウム | 200〜230 | 約700倍 | 🍳 アルミフライパン |
| 銅 | 380〜400 | 約1300倍 | 🥘 銅鍋 |
この表を見ると、驚きの事実がわかります。FR-4は銅の1/1300しか熱を伝えられないのです。
FR-4の熱伝導率0.3 W/(m・K)は、発泡スチロール(0.03)よりは高いですが、木材(0.1〜0.2)と同程度。つまり、FR-4は「熱を通さない」材料なのです。
これが、発熱の大きいパワエレ基板でFR-4だけでは対応できない理由です。
基板材質の種類と特徴|4つの選択肢
パワエレ基板で使われる主な材質は、以下の4種類です。それぞれの構造と特徴を詳しく見ていきましょう。
① FR-4(ガラスエポキシ)|最も一般的な「標準」材質
FR-4は、ガラス繊維をエポキシ樹脂で固めた材料です。「FR」は「Flame Retardant(難燃性)」の略で、火がついても燃え広がりにくい特性を持っています。
📐 FR-4の断面構造
総厚:1.6mm(標準)
なぜFR-4は熱を通さないのか?
FR-4の主成分であるガラス繊維とエポキシ樹脂は、どちらも熱伝導率が低い材料です。ガラスはコップを持っても熱くないように、熱を伝えにくい性質があります。
さらに、FR-4は「繊維を樹脂で固めた」構造なので、繊維と樹脂の界面で熱が遮られ、さらに熱伝導率が下がります。
✅ メリット
- 最も安価で入手しやすい
- 加工性が良い(多層化も容易)
- 電気絶縁性が高い
- 難燃性(UL94 V-0)
- 納期が短い
❌ デメリット
- 熱伝導率が非常に低い
- 大発熱部品には不向き
- ガラス転移温度(Tg)に上限あり
熱伝導率:0.3 W/(m・K)|Tg:130〜180℃|コスト:最安
② CEM-3(コンポジット)|FR-4の低コスト版
CEM-3は、紙とガラス繊維を組み合わせた「複合材」です。「CEM」は「Composite Epoxy Material」の略。FR-4より安価ですが、性能は若干劣ります。
なぜCEM-3は安いのか?
FR-4は全層がガラス繊維ですが、CEM-3はコア部分に紙を使用しています。紙はガラス繊維より安価なので、材料コストが下がります。
ただし、紙は吸湿性があるため、耐湿性・機械的強度がFR-4より劣ります。そのため、高信頼性が求められる用途には向きません。
✅ メリット
- FR-4より安価(5〜15%程度)
- パンチング加工が可能
- 表面は白色で見た目が良い
❌ デメリット
- 耐湿性がFR-4より低い
- 機械的強度が低い
- 多層化が難しい(主に両面まで)
- 熱伝導率はFR-4と同程度
熱伝導率:0.3 W/(m・K)(FR-4同等)|Tg:130℃程度|コスト:FR-4より安い
CEM-3は、LED電球の基板、リモコン、家電のコントローラなど、コスト重視の民生機器でよく使われます。パワエレ用途では放熱性能に差がないため、FR-4と同様に「低発熱向け」となります。

③ アルミ基板|放熱の「ゲームチェンジャー」
アルミ基板は、アルミニウムの板をベースにした基板です。FR-4とは構造が根本的に異なり、放熱性能が大幅に向上します。
📐 アルミ基板の断面構造
総厚:1.2〜3.2mm
なぜアルミ基板は放熱に優れるのか?
アルミ基板が放熱に優れる理由は、2つの構造的特徴にあります。
理由①:絶縁層が薄い
FR-4の絶縁層は1.5mm程度ありますが、アルミ基板は75〜150μm(0.075〜0.15mm)と非常に薄い。
熱抵抗は「厚さ ÷ 熱伝導率」で決まるので、厚さが1/10〜1/20になれば、熱抵抗も大幅に下がります。
理由②:アルミが熱を拡散
絶縁層を通過した熱は、アルミニウム層で横方向に一気に広がります。
アルミの熱伝導率は200 W/(m・K)以上。熱が「点」から「面」に広がることで、ヒートシンクへ効率よく伝わります。
熱抵抗 = 厚さ ÷ (熱伝導率 × 面積)
同じ面積なら、「厚さが薄い」or「熱伝導率が高い」ほど熱抵抗が下がります。アルミ基板は両方を改善しているため、放熱性能が大幅に向上するのです。
✅ メリット
- 優れた放熱性能
- ヒートシンクに直接取付可能
- 軽量(銅より軽い)
- LED照明で実績豊富
- メタルコアより安価
❌ デメリット
- 片面基板が主流(両面は高コスト)
- 多層化が困難
- FR-4より高コスト
- 絶縁耐圧に注意が必要
熱伝導率:1〜3 W/(m・K)(絶縁層)|ベース:200 W/(m・K)(アルミ)|コスト:FR-4の1.5〜3倍
④ メタルコア基板|最高の放熱性能
メタルコア基板は、基板の中心(コア)に金属層を持つ構造です。多くの場合、コアには銅(カッパー)が使われます。
📐 メタルコア基板の断面構造
両面に回路を配置可能
なぜメタルコア基板は最強なのか?
メタルコア基板の最大の特徴は、コアの銅が「熱の高速道路」として機能することです。
理由①:銅の熱伝導率が最高
銅の熱伝導率は380〜400 W/(m・K)で、アルミの約2倍。金属の中でも最高クラスの熱伝導率を持ちます。
熱が発生した瞬間に、コアの銅が熱を吸い取り、基板全体に広げます。
理由②:両面から放熱できる
アルミ基板は片面構造が主流ですが、メタルコア基板は両面に回路を配置できます。
さらに、コアの銅がサーマルビアの代わりとなり、表面から裏面への熱伝導が非常にスムーズです。
✅ メリット
- 最高の放熱性能
- 両面基板が可能
- 熱の横方向拡散が非常に優秀
- 高信頼性が求められる用途に
❌ デメリット
- コストが最も高い
- 重量が重い
- 対応できるメーカーが限られる
- 加工が難しい
熱伝導率:380 W/(m・K)(銅コア)|両面対応:可能|コスト:FR-4の3〜10倍

4つの材質を徹底比較|一覧表で見る
ここまでの内容を一覧表にまとめました。用途に応じて最適な材質を選ぶ参考にしてください。
| 項目 | FR-4 | CEM-3 | アルミ基板 | メタルコア |
|---|---|---|---|---|
| 熱伝導率 | 0.3 W/(m・K) ❌ 低い |
0.3 W/(m・K) ❌ 低い |
1〜3 W/(m・K) ○ 中程度 |
380 W/(m・K) ◎ 最高 |
| 放熱性能 | ★☆☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| コスト | 1.0倍 ◎ 最安 |
0.85〜0.95倍 ◎ 最安 |
1.5〜3倍 △ やや高い |
3〜10倍 ❌ 高い |
| 多層化 | ◎ 容易 | △ 両面まで | ❌ 困難 | ○ 両面可能 |
| 耐熱温度(Tg) | 130〜180℃ | 130℃程度 | 150〜200℃ | 150〜200℃ |
| 重量 | ◎ 軽い | ◎ 軽い | ○ やや重い | △ 重い |
| 主な用途 | 信号基板 低発熱パワエレ 制御回路 |
LED電球 リモコン 民生機器 |
LED照明 モータードライバ 電源基板 |
EV/HEV 大電力インバータ 高信頼用途 |
用途別の選定基準|どう選べばいい?
材質選びで最も重要なのは、「部品の発熱量」と「放熱手段」を確認することです。
選定の基本的な考え方
部品の発熱量を確認する
MOSFET、IGBT、インダクタなど、発熱が大きい部品の損失(W)を計算または推定する
放熱手段を確認する
ヒートシンクは取り付けられる?ファンはある? 筐体への熱伝導は可能?
コスト・納期の制約を確認する
予算は十分? 納期に余裕はある? 特殊材質に対応できるメーカーは?
発熱量による選定目安
| 発熱量 (1部品あたり) |
推奨材質 | 備考 |
|---|---|---|
| 〜1W | FR-4 / CEM-3 | 自然放熱で対応可能 |
| 1W〜5W | FR-4 + サーマルビア | サーマルビアで裏面に熱を逃がす |
| 5W〜20W | アルミ基板 | ヒートシンク併用が望ましい |
| 20W以上 | メタルコア基板 | 強制空冷・水冷を検討 |
実際の選定では、周囲温度、エアフロー、部品配置、許容温度上昇などを総合的に考慮する必要があります。シミュレーションや試作での検証を推奨します。

材質選定フローチャート
最後に、材質を選ぶためのフローチャートをまとめます。
🔍 基板材質選定フローチャート
サーマルビア併用を検討
コスパ良好
放熱設計を頑張る
最高の放熱性能
まとめ|材質選びは「発熱」と「コスト」のバランス
この記事では、パワエレ基板の材質選びを「なぜそうなるのか」という物理的な理由から解説しました。
📝 この記事のまとめ
- FR-4は熱伝導率が低く「断熱材」に近い → 低発熱向け
- CEM-3はFR-4の低コスト版 → 民生機器向け
- アルミ基板は薄い絶縁層+アルミベースで放熱性向上 → コスパ良好
- メタルコア基板は銅コアで最高の放熱性能 → 高性能・高コスト
- 選定のポイントは「発熱量」と「放熱手段」を確認すること
- 5W/個以上の発熱があれば、アルミ基板以上を検討
材質選びに「正解」はありません。発熱・コスト・信頼性のバランスを考えて、あなたの設計に最適な材質を選んでください。
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材質と合わせて、銅箔厚の選び方も確認しておきましょう。
層構成の選び方と合わせて、基板設計の基礎を固めましょう。
この記事は「パワエレ基板設計 基礎編」シリーズの一部です。基礎から順番に学びたい方は、シリーズ記事をご活用ください。
