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トラッキング現象とは?火が出るまでの4段階
トラッキング現象は、プラグを差しっぱなしにしている場所で、気づかないうちにゆっくり進みます。プラグの2本の刃の間は、ふつうは電気を通さない樹脂で仕切られています。ところが、ほこりと湿気がそろうと、そこに小さな電気の通り道ができてしまいます。
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| ① ほこりがたまる | 差しっぱなしのプラグとコンセントのすき間に、ほこりが積もる |
| ② 湿気を吸う | 結露や加湿器の湯気で、ほこりが水分を吸って電気を少し通すようになる |
| ③ 小さな放電をくり返す | 刃と刃の間で、目に見えないほどの小さな火花がパチパチと何度も起きる |
| ④ 樹脂が炭になって発火 | 火花の熱で樹脂の表面が炭になり、炭が電気の通り道(トラック)になって大きな電流が流れ、発火する |
起きやすい場所
| 場所 | 理由 |
|---|---|
| テレビ・冷蔵庫・洗濯機の裏 | 差しっぱなしで、ほこりがたまっても見えない |
| キッチン・洗面所 | 湯気や水はねで湿気が多い |
| 窓ぎわ・北側の部屋 | 冬に結露しやすい |
| 加湿器・水そうの近く | いつも水分が飛んでいる |
| 家具のうしろ・床の上の電源タップ | ほこりがたまりやすく、掃除の手がとどかない |
NITE(製品評価技術基盤機構)の2024年1月25日の発表によると、コンセントや電源タップなどの配線器具の火災事故は、2019〜2023年の5年間で126件あり、2023年は2019年の約2倍にふえています。使い方や設置が原因とみられる50件のうち、いちばん多いのが、ほこりや水分によるトラッキング現象(18件)です。

電気火災の原因は「熱の出すぎ」|3つのパターン
電気火災の多くは、電気の通り道のどこかで熱が出すぎることで起きます。電気が流れると、抵抗のあるところで熱(ジュール熱)が出ます。熱の量は Q=I²Rt(電流の2乗×抵抗×時間)です。ふだんは小さな熱でも、どこかがおかしくなると一気にふえます。
| 原因 | 式のどこがおかしくなる? | たとえ |
|---|---|---|
| トラッキング現象 | 電流が流れてはいけない刃と刃の間に、電流が流れる | 堤防に穴があいて、水がもれ出す |
| 半断線 | 銅線が細くなった一点で、抵抗Rが大きくなる | 4車線の道が1車線になって大渋滞 |
| 過電流(たこ足配線) | 電流Iがふえる。Iは2乗で効く | 細い水道管に、消防ホースの水を流す |
電流が2倍になると熱は4倍になるので、使いすぎはとくに危険です。ジュール熱の計算は、別の記事でくわしく説明しています。
Q=I²Rtの意味と計算

半断線|コードの中で銅線が切れかけている
電気のコードの中には、細い銅線が何十本もたばになって入っています。その一部が切れた状態が半断線です。外側のビニールはきれいなままなので、見た目ではわかりません。
残った少ない銅線に同じ電流が流れるので、切れかけた一点だけ抵抗が大きくなり、そこが熱くなります。さらに、切れた銅線どうしがふれたりはなれたりすると、小さな火花が出ます。この熱と火花でビニールがとけ、ショートや発火につながります。
| 半断線の原因 | なぜ切れる? |
|---|---|
| 家具の脚でコードを踏んでいる | 重さで中の銅線が少しずつつぶれて切れる |
| プラグのつけ根で強く折り曲げている | 曲げが1か所に集中する |
| コードを引っぱってプラグを抜く | つけ根の銅線に力がかかる |
| ドアや窓にはさんでいる | 開け閉めのたびに曲げられる |
抵抗が大きくなる仕組み

たこ足配線の過電流と、そのほかの原因
電源タップや壁のコンセントは、ふつう合計15A(100Vで1,500W)までです。電子レンジ(約1,000W)とドライヤー(約1,200W)を同じタップで使うと2,200Wになり、コードや差込口が熱くなります。合計の計算や、なぜ1,500Wなのかは、タコ足配線の記事に計算ツールつきでまとめています。
1500Wの理由と火事の仕組み
この続きと一緒に読まれている記事
| そのほかの原因 | 何が起きる? |
|---|---|
| プラグの差しこみが浅い・刃がゆるい | ふれる面積が小さく、そこが熱くなる(接触不良) |
| コードを束ねたり、巻いたまま使う | 熱が逃げず、たまって高温になる |
| 古い電源タップを使い続ける | 差込口のばねが弱って接触不良になる。ほこりもたまっている |
| コードの上にカーペットや家具 | 熱がこもり、踏まれて半断線にもなる |
電源タップは消耗品で、何年も使うと差込口のばねが弱くなり、コードの被覆も熱と時間で劣化します。日本配線システム工業会は、テーブルタップの交換の目安を3〜5年としています。これは「その年数で必ず壊れる」という意味ではなく、点検と交換を考えるきっかけの目安です。年数より大事なのは、今の状態です。次のサインが1つでもあれば、使い始めて何年かに関係なく、使うのをやめて交換します。
| 交換のサイン | 中で起きていること |
|---|---|
| タップ・コード・プラグが熱い | 電流の流しすぎか、接点のゆるみで抵抗がふえて発熱している |
| コードを動かすと点いたり消えたりする | 中の銅線の一部が切れた半断線 |
| プラグの抜き差しがゆるい | 刃受けのばねが弱り、接触不良で発熱しやすい |
| 刃の根元が焦げている・溶けている | すでに火花(放電)や異常な発熱が起きたあと |
| 本体やコードのひび割れ・キズ | 絶縁がやぶれ、ショートや漏電につながる |
| プラグの刃が曲がっている | 刃受けと点でしか接しなくなり、そこが熱くなる |
焦げたあとは、ふき取っても中の劣化は元に戻りません。曲がった刃を手で戻したり、ひび割れにビニールテープを巻いたりして使い続けるのも危険です。
出典:パナソニック「配線器具(テーブルタップ・延長コードなど) サポート」(交換の目安3〜5年は日本配線システム工業会の推奨として記載)

家のコンセントの危険度チェック
家のコンセントまわりで、あてはまるものにチェックをつけてください。どの原因の危険が高いかと、今日やることを出します。
チェックした内容は画面の中で判定するだけで、どこにも送信されません。焦げたにおいや煙がある場合は、チェックより先にブレーカーを切り、消防(119)に連絡してください。
電気火災を防ぐ対策|今日からできること
| 原因 | 対策 |
|---|---|
| トラッキング現象 | 年に1〜2回はプラグを抜き、乾いた布でほこりをふく。使わない家電はプラグを抜く。トラッキング防止のカバーや、刃のつけ根に絶縁のカバーがついたプラグを使う |
| 半断線 | コードを踏まない・はさまない・強く曲げない。プラグは本体を持って抜く。異常があるコードはすぐ使うのをやめる |
| 過電流 | タップの合計は1,500W以内。電子レンジ・ドライヤー・ヒーターは壁のコンセントに直接さす。タップにタップをつながない |
| 接触不良・発熱 | プラグは奥までしっかりさす。コードは束ねずに使う。古い電源タップは交換する |
掃除のときは、必ずプラグを抜いてから、乾いた布でふきます。ぬれたぞうきんでふくと、かえって湿気をあたえてしまいます。焦げたあとや変色があるコンセントは、自分で直さず、電気工事士のいる電気工事店に相談してください。

電気火災のよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 電源を切っていれば、差しっぱなしでも安全 | 差してあるだけで刃の間に100Vがかかり、トラッキングは起きる |
| 外側がきれいなコードは大丈夫 | 半断線は中の銅線で起きる。動かして電源が切れたら危険 |
| ブレーカーが落ちないなら使いすぎではない | 部屋の安全ブレーカーが守るのは壁の中の電線(多くは20A)。タップ1つ(多くは15A・1,500W)の使いすぎは防げない |
| コードはきれいに巻いて使う | 巻いたまま・束ねたままだと熱がこもる。ほどいて使う |
| ほこりはぬれた布でふく | プラグを抜いて、乾いた布でふく |

よくある質問


